『狼は天使の匂い』 La course du lièvre à travers les champs (1972)

狼は天使の匂い [DVD]

男たちの美学

作品メモ

『雨の訪問者』に続き、NHK BS2の深夜枠で放送された懐かしいフランス製サスペンス映画。
『雨の~』同様大きなレンタル屋さんに行かないとなかなか見る機会がありませんでしたが(しかもVHS……)、昨年一気にDVDがリリース。そしてこんなふうにBSで放送と、幸せな状況になりました。

その昔ロバート・ライアンもジャン=ルイ・トランティニャンも知らなかった頃にテレビで見て、わけがわからなかった覚えがあります。
記憶に残るのは、映像の美しさとビー玉、そして個性的な男たちときれいな女優さんたち。
その後何度か観て筋立てはかろうじて把握できましたが、やはりこの映画、ストーリーよりは雰囲気を、リアリティよりはファンタジーを楽しむ映画なのでしょう。
この映画で抽出された男たちの美学は、後年の香港ノワールものに着実に受け継がれていると思います。

監督ルネ・クレマン、製作セルジュ・シルベルマン。
デイヴィッド・グーディスの原作”Black Friday”をセバスチャン・ジャプリゾが脚色。
フランス語原題は「ウサギは野を駆ける」の意。
英題”…and Hope to Die”

狼は天使の匂い (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) “Black Friday”は後年早川書房より邦題と同タイトルで翻訳出版。
ややこしいですが、脚本のセバスチャン・ジャプリゾがノベライズした作品も原題「ウサギは野を駆ける」のタイトルで翻訳されています。

キャスト(ちょっとネタばれ入り)

主人公のトニーがジャン=ルイ・トランティニャン。
わけありの過去を持ちロマの男たちに追われていましたが、ひょんなことからギャング一味のアジトに身を寄せることとなり彼らの計画に加わっていく……そんな展開です。

一味のボスのチャーリーがロバート・ライアン。
いぶし銀といいますか渋さたっぷりの好演ですが、翌年惜しくも亡くなっていてこれは最晩年の代表作。

仲間は……
元ボクサーで腕っ節は強いがオツムの方は今ひとつのマットーネがアルド・レイ。

両腕に時計をつけてしまうリッツィオがジャン・ガヴァン Jean Gaven。
『雨の訪問者』ではヒロインの知人のトゥーサン警視役でした。
余談ですが、IMDbのトリビアに日本の『宇宙刑事ギャバン』が彼の名からとられているように書かれていますが、ジャン・ギャバン(Jean Gabin)の間違いではないでしょうか??

他に、すぐに死んじゃうレナーはLouis Aubertという俳優さんですが、他に出演作はほとんどありません。
しばらく生きてるポールは、Daniel Breton。
IMDbを見る限りこれが映画デビューで、むしろスタントマンとして活躍している様子。今でも現役というのが凄いです。
『狼は~』のあの場面も、きっと本人が演じていたことでしょう。

女性陣は、チャーリーのお相手シュガーがレア・マッサリ。

ポールの妹ペッパーが、ティサ・ファロー。私生活ではミア・ファローの妹です。
その後の出演作は『サンゲリア』とか『戦場の謝肉祭』とかそんなんばっかりですが、本作はこれ1本で十分おつりが出る良い役柄。
女優業は1980年で引退、その後は看護師として活躍しているそうです。

マーチング・バンドの彼女はナディヌ・ナボコフ Nadine Navokovという女優さん。
IMDbによれば映画はこれ1本、あとはTV出演が数本だけ。

冒頭のママンは、エレン・バール Ellen Bahl。
『さらば友よ』では最初の方に出てくるセレブな家の妻役。『雨の訪問者』ではとある被害者の恋人役。

ジャン=ルイ・トランティニャンがフランス、ロバート・ライアンやアルド・レイ、ティサ・ファローはアメリカ、レア・マッサリはイタリアと、俳優さんのお国は様々。
NHK BS放送版では皆フランス語をしゃべっていました。

ネタばれメモ

ビーン・ボール

リッツィオが見事なコントロールでマストラゴスを倒す場面。
じ~っと見ていて気づきましたが、実はボールは投げたふりして手に持っています。
命中したボールは、リッツィオの背後の建物から飛び出してきているのでした。
でもこのくらいの距離なら『エイリアン4』のシガニー・ウィーバーのように(バスケットボール)、細工無しで勝負して欲しかったかも。

ロケ地

IMDbでは

Montréal, Québec, Canada
Paris Studios Cinéma, Billancourt, Hauts-de-Seine, France

というわけで、主なロケ地はカナダのモントリオールです。
以下例によって順に見ていきますが、モントリオールの建物といってもピンとくるものがあまりなく、各種画像検索やGoogle MapsのSV(ストリートビュー)などを利用して少しずつ調べていきました。

階段

書店のある街並み。
その前から登っていく狭い階段。
登った先のちょっとした広場。背後には崩れかけた古い建物。
このあたりどー見てもパリ市内のように思えるのですが、やっぱりモントリオールなのでしょうか??
よく見ると少年たちの背後の壁に”RUE ……”なんとかと通りの名前が見えますが、おそらく小道具でヒントにはならないでしょう。

英語・フランス語併記の標識が「アメリカ国境まで5マイル」とあり、Canadian Pacificの貨車が映ります。 そこがカナダであることがわかりやすく示されているわけですが、場所は不明。
Canadian Pacificの駅であることは間違いないと思いますが、具体的には特定できていません。
“BEAVER CROSSING”という駅名も映っていますが、おそらく撮影用の小道具でしょう。

ヒントとしては……

  • 単線
  • ただし貨車はホームの手前で車止めに停止しているので、少なくともその部分は分岐線あり
  • 太陽光から考えて、どちらかと言えば南北方向に走っている
  • 駅舎はクラシックな外観
  • 信号が駅舎のひさしを突き抜けている
  • 線路に添って電信柱

たとえばこういった↓サイトも見てみましたが、駅舎が一致するものはありませんでした。

http://yourrailwaypictures.com/TrainStations/

回想

トニーが刺される回想シーン。
モノクロの静止画で描かれます。
裁判所の外という設定でしょうか?

場所は調査中。
ヒントは、6本の柱(1列)、広い階段、両側に街灯。
候補としては、裁判所、博物館、教会、大学等。

これかと思ったら違っていたところ。

ヒッチハイクしようとしたトニーが追っ手の車に追いつかれるところ。
行く手に見える立派な橋はセントローレンス川にかかるこちら↓

ジャック・カルティエ橋

マップ↓

  • Google Maps(SV)


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この時追っ手が乗っていたのは、ヴァンデン・プラ・プリンセス(1961)。

巨大な丸い建築物

車に追われてトニーが逃げ込んだところ。
巨大な蜂の巣のような形をしていますが、そこは上記の橋のすぐ真下、セントローレンス川に浮かぶサン・テレーヌ島で、万博会場だったところ(後の方のニュースでも明らかになります)。
もともとはアメリカ館だったようです。

800px_Biosphere_in_Montreal.jpg Montreal Biosphère バイオスフィア

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

マップ↓

設計は「宇宙船地球号」のバックミンスター・フラー (Buckminster Fuller)。

1976年に火災発生。

  • http://www.flickr.com/photos/ouno/3719777684/

周囲のアクリル素材の部分が焼失したとのこと。
っつーかアクリル使いますかね、こういうのに。
映画に登場しているのはもちろん火災の前のオリジナル。
現在は素通しのようになってすっきりしています。

一味のアジト

川沿いのコテージをしらみつぶしに探せば見つかるかもしれませんが、さすがにその気力はありませんでした。
映画の時点でかなり痛んでいますので、もうなくなっている可能性も高いですし。

「スタート地点」

Place des Arts
http://www.laplacedesarts.com

マップ↓

  • Google Maps(SV)


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「ゴール」

警察本部という設定。
スタート地点のすぐそばにあるはずですが、実際には何ブロックもはなれたこちらで、警察とも全然関係のないビルです。

Tour TELUS (Telus Tower)
630 Boulevard René-Lévesque Ouest, Montreal, QC

映画で”UNIVERSITY”という道路標識が一部見えますが、こちら。

拘置所

Saint-Vincent-de-Paul Penitentiary サンヴァンサン・ド・ポール刑務所

計画の目的

回想で、ホテルから出てきたマッカーシーとトボガンがマスコミに囲まれながら車にのるところ。
車の背後に一瞬映る広場はヴァンドーム広場のようです。
ホテルには”RITZ”の表示。
というわけで、リッツ・パリ(Hôtel Ritz Paris)の前となり、 この場面に関してはモントリオールではありません。

797px_Hotel_Ritz_Paris.jpg

Photo from Wikipedia (public domain).

マップ↓

計画実行

はしご車を使ったスペクタクルな場面はスクリーンプロセスでしょうか。
同年の『リスボン特急』などもこのぐらいの仕上がりでしたので、当時のクオリティとしては標準なのかもしれませんが、今見返すとどうしてもゆるいといいますか、大ざっぱな映像に見えてしまいます。
その前に計画そのものもだいぶ大ざっぱな気がしてしまうわけですが。

銃撃戦

川縁の広い空き地での銃撃戦。
ロングショットでバイオスフィアが映っていますので、その近くだとわかりました。
カメラアングルから逆算して、バイオスフィアの南側4kmほどのところのこのあたりです。

現在はMontreal Technoparcという名前でいくつかの施設があります。

Wikipediaの記事によると、長らくゴミ処理場として使われていて万博の際に駐車場として使われたそうです。
確かに画面をよく見ると”Autobus”などの標識が映っていて、駐車場であったことがうかがえます。
おそらく万博の後そのまま放置されていたのを撮影に使ったのではないでしょうか?

ロケ地マップ


より大きな地図で 狼は天使の匂い を表示

資料


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