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『突然炎のごとく』 Jules et Jim (1962)

フランソワ・トリュフォーDVD-BOX「14の恋の物語」[III]

作品メモ

フランソワ・トリュフォー監督の初期の代表作。
原作はアンリ=ピエール・ロシェ、脚本はトリュフォーとジャン・グリュオー、音楽ジョルジュ・ドルリュー。

原題は「ジュールとジム」。
ジュールとジムという友人ふたりとカトリーヌという女性が紡ぎ出す人間模様を描きます。
2人の男性とひとりの女性という設定の映画は数多く作られているでしょうけど、これはある種基本形のような作品。

出演は、ドイツ人のジュールがオスカー・ヴェルナー、フランス人のジムがアンリ・セール、カトリーヌがジャンヌ・モロー。
個人的には、序盤に出ていたテレーズ(マリー・デュボア)も気になるキャラでした。

ロケ地

IMDbでは

Alpes-Maritimes, France
Alsace, France
Belleville, Paris 19, Paris, France
Cimetière du Père-Lachaise – 16 rue Repos, Paris 20, Paris, France
Côte d’Azur, France
Grave of Oscar Wilde, Père Lachaise – 65 Boulevard de Ménilmontant, Paris 20, Paris, France
Paris, France
Quais de la Seine, Paris, France
Rouen, Seine-Maritime, France
Saint-Paul-de-Vence, Alpes-Maritimes, France
Villa Castel – 83 rue Couronnes, Belleville, Paris 19, Paris, France

ほぼ半世紀前の作品。
今からロケ地を探すのは難しいですが、わかったところをメモしていきます。

OPの橋

タイトルバックのカーブを描いた橋。
草がボウボウ生えているところを子供たちが駆けっこします。
調査中。

ジュールの家

IMDbのこちらでしょうか。

Villa Castel
83 rue Couronnes, Belleville, Paris 19, Paris, France

現在建っている建物が当時のものかどうかは判別できません。

女神像

3人で駆ける陸橋

映画のメインビジュアル的な場面。
有名な場所でしょうからロケ地はあちこちで書かれていて調べるまでもなく……と思いきや、全然資料がなくて困りました。

  • かなり長い歩行者用の陸橋で、下は駅や操車場のように何本もの線路がある。
  • やや高いところにある道路から降りてきて渡る。
  • 道路の側面は∩型の建材で固められている(走っている3人の背景に見える)。
  • 渡りきって向かって右に降りると、普通の線路際。

そんな地理的条件から、ここではないかと思われますが、どうでしょう?
橋自体は形が違っていますが、橋に降りていくところの柵の形などは今でも面影が残っています。

各ウェブマップでは Passerelle de Valmy と名前が出ています。
画像はあまり見つかりませんでした。

  • http://www.panoramio.com/photo/5601595
  • http://fr.structurae.de/photos/index.cfm?JS=25337

例によって間違っていたらすみませんが、もしこれで正解なら嬉しいです。
なにせパリ市内を線路づたいにGoogle Earthでさんざんさまよったもので……。
余談ですがこの場面、ゴダールの『はなればなれに』(=ベルトリッチの『ドリーマーズ』)を連想しますね。

※2012/02/07追記
この陸橋で正解のようでした。 コメント欄に情報が寄せられていますので、そちらをご覧ください。

海岸近くの白い家

3人が借りた家。
IMDbのこのあたりでしょうか。
詳細は不明。

Saint-Paul-de-Vence, Alpes-Maritimes, France

カトリーヌが川に飛び込むところ

3457300368_c1349a98a0.jpg セーヌ川の川幅が狭いところなので見当がつきました。
ノートル・ダム大聖堂に渡るドゥブル橋の下です。

この場面、スタントが飛び込めない状態になってしまったためジャンヌ・モロー本人がどぼん。
深夜の現場で野次馬とやりあいながらのぶっつけ本番、一度きりのテイク。

アルザス地方での撮影

山荘とその周辺の一連の場面は、フランス北東部アルザス地方のヴォージュ山脈(→ Wikipedia)で撮影されています。

兵士の像

800px_Memorial_at_Hartmannswillerkopf.JPG ジムが訪れたこの第一次大戦のメモリアルは、下記Hartmannswillerkopfにあるようです。

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

広大な墓地

800px_Hartmannsweilerkopf_Cemetary.JPG

場所はHartmannswillerkopf (またはVieil Armand)。
第一次大戦の仏独の激戦地で、山上に広大な墓地やミュージアム、モニュメントなどがあるようです。

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

マップ↓

ジムがやってきた駅

カトリーヌと娘が迎えにきた駅。
その後も何度か登場します。

上記メモリアルの周辺の駅を片端から見ていっても該当するものがなく、最後は廃線になった鉄道をたどっていってなんとか見つけることができました。
こちらにあった駅です。

Lautenbach (ラウテンバッハ)

これらの写真が決め手となりました。

  • http://florirail.free.fr/album%20photos/photos%20avant%2092.htm
  • http://florirail.free.fr/la%20ligne/HISTOIRE%20DETAILLEE.htm
  • http://municipalitebuhloise.blogspot.com/

路線は、Ligne Bollwiller – Lautenbach (ボルヴィラー・ラウテンバッハ線)

この駅はこちらの↓写真のように終点でした。

  • http://florirail.free.fr/images/photos%20anciennes/CP%20lautenbach%20gare%203%20detail%20LEGER.jpg

現在はこのあたりは線路が道路に替わっています。
駅舎があったのはこの位置 ↓

※2012/02/07追記
なんとここもストリート・ビューが利用できるようになっていました。googleおそるべし。

山荘

上記メモリアル及び駅の周辺をGoogle Earthで探してみたところ、地形などから、墓地の西側1km弱のところにあるこの建物ではないかと思いました。

個人宅であれば場所を明示して良いものかどうかためらわれるところですが、さらに調べてみると、こちらの物件とわかりました。

Chalet du Ski Club Cernay
http://www.skiclubcernay.com/

撮影に使われたことがサイト内で明記されていますので、ここで書いても大丈夫でしょう。
こちら↓に撮影関連の記事がまとめられています。

http://www.skiclubcernay.com/?cat=24

他のサイトではたとえば……

  • http://www.baladapied.com/Balades/REFUGES/SC%20Cernay.htm
  • http://www.alsace-vosges-rando.com/01_adresse2.htm
  • http://www.tourisme68.com/index.php?option=com_lei&Itemid=57&menu=&a=voirFiche&menu=&idProduit=240000832

以下は余談。

この山はMolkenrainというらしいです。

4人が山荘を出て斜面を下っていく場面で背景にちらりと映る建物はこちら。
レストランのようです。

Ferme-auberge du Molkenrain
Route des Crêtes, 68700 Wattwiller

  • http://www.panoramio.com/photo/11651350
  • http://www.qype.fr/place/502798-Ferme-Auberge-du-Molkenrain-Wattwiller
  • http://www.baladapied.com/Balades/FERMAUBERGES/Molkenrain%200.htm
霧に包まれた湖畔

4人で水切りするところ(1:10頃)。
上記山荘の周辺を探してみましたが、こちらのようです。

800px_Lac_de_la_Lauch_20.JPG Lac de la Lauch (ロシュ湖)

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

マップ↓

最初に年季の入ったダムの上を歩くカットがありますが、ダムは湖の東側にあります。
北端に水門があり、カメラはそのあたりからダムの上をやってくる4人を南向きで捉えています。
こちら↓の画像が映画のアングルと同じで決め手になりました。

  • http://fr.structurae.de/photos/index.cfm?JS=25175

欄干は作り替えられていますが、その他は映画と変わっていないようです。

参考・撮影中の滞在ホテル

検索していたら、こんなホテルを見つけました。
アルザスでの数週間、トリュフォー監督やジャンヌ・モローがこちらに泊まったそうです。

Hotel du Parc
http://www.alsacehotel.com/uk/historique.htm

撮影エリアの山間部から平野部に出るところにあるタンヌ(Thann → Wikipedia)という町です。
たしかにロケに便利な場所ですね。

水車小屋

これはおそらくこちらでしょう。

Moulin d’Andé (ムーラン・ダンデ)
65 rue du moulin 27430 Andé
http://www.moulinande.com/

映画館

内部しか映りませんが(1:41頃)、こちらでしょうか?

Le Studio des Ursulines
http://www.studiodesursulines.com/

画像を見る限り、客席の柱やロビーの壁などは映画と同じに見えます。

※12/7/2 追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1990年とのことです。

映画本編では写らなかった外観。

崩れた橋

調査中。
IMDbのリストを消去法でみると”Rouen, Seine-Maritime, France”ぐらいしか残っていませんが、そこまで大きな町でもないような気がします。

崩れた橋といえば『ブーベの恋人』も印象に残っていますが、こちらはなんとか場所をつきとめました。 → 『ブーベの恋人』
『突然炎のごとく』の方はおそらく修復してしまっているでしょうから、資料がない場合よほど映像にヒントがないと突き止めるのは難しそうです。

余談ですが、この場面、なぜか『存在の耐えられない軽さ』を思い出します。

※2012/02/07追記
画像検索で粘ったら場所がわかりました。
パリの西北西、約50kmのところにあるLimayW
川はセーヌ川。

マップではこちら↓

横から見た映画のショットをSVで再現すると、こんな感じ。

この橋はWikipediaに項目がありますが、『突然炎のごとく』の撮影場所であることは書かれていないようです。
でも背景に2本の煙突が見える崩れた橋がそうそうあるとは思えませんので、これで正解でしょう。

なお2本の煙突は火力発電所の模様。

墓地

Cimetière du Père-Lachaise ペール・ラシェーズ墓地
16 rue Repos, Paris 20, Paris, France

ロケ地マップ

パリ

アルザス

資料

関連記事

ジョルジュ・ドルリュー

ジャンヌ・モロー関連作

更新履歴

  • 2018/03/11 タグ「ジャンヌ・モロー」追加
  • 2014/05/29 milouさんの画像をPicasaウェブアルバムに切替
  • 2012/07/02 「映画館」にmilouさんの画像を追加
  • 2012/02/07 「ジムがやってきた駅」「崩れた橋」に記事とSV追記

コメント

  1. milou より:

    Passerelle de Valmy で正解ですね。

    撮影風景の写真記事付きブログが見つかりました。

    http://cailloutendre.unblog.net/?p=1571

  2. inagara より:

    milou様

    またまたコメントありがとうございます。
    正解みたいでれしいです。
    このブログ、よく見つけられましたね。
    撮影風景も楽しいですが、昔の陸橋の写真が貴重ですね。こういう画像をずっと探していたんですよ。
    これでスッキリ。ありがとうございました!

    このエントリーは拙サイトの中でもけっこう時間かけて調べたものです。
    陸橋の他、山頂のメモリアル、駅、山荘、湖など、全然資料がなく、フランス語もできないので苦労しました。
    心残りは冒頭の湾曲した橋と、ラスト近くのダイブする橋。
    今WOWOWで毎週土曜日にトリュフォー特集をやっていて、「突然~」もHDで録画できていますので、いつかじっくり探してみたいと思っています。

  3. inagara より:

    崩れた橋の場所がわかりましたので、追記しました。
    もやもやがスッキリ。

  4. Bill McCreary より:

    >この橋はWikipediaに項目がありますが、『突然炎のごとく』の撮影場所であることは書かれていないようです。

    拙コメント投稿時のWikipediaには、その旨が記載されていました。

    >L’avant-dernière scène du film Jules et Jim, de François Truffaut, a été tournée sur le pont.

    ただ2009年時でも、この映画のクライマックスシーンの撮影のロケ地であることが記載されていないというのはちょっと「え!?」というところはありますね。フランス語版のこの映画のWikipediaでも、この橋のことは記されています。2009年では、まだあまり知られていなかったんですかね?

    >『突然炎のごとく』の方はおそらく修復してしまっているでしょうから

    けっきょく修復されなかったんですね・・・。

    ところで本日、「午前十時の映画祭」で、『ソフィーの選択』を観て、おもいっきり鬱になってしまいましたが、橋というのはやはり映画の大きなポイントになりますね。貴サイトに私がコメントさせていただいた作品でも、『イージー・ライダー』でも、コロラド川に架かる橋や、ラスト近くの橋、『恋は緑の風の中』の複数の橋、『ブラック・レイン』の、ニューヨークや大阪のいくつかの橋など。

    この映画に話を戻しますと、個人的には、オスカー・ウェルナーがよかったと思います。『華氏451』は、監督は同じでも映画の内容も言語も全く違うので比較したってしょうがないのですが、やや彼が地味だったように感じまじた。

  5. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、コメントをこちらへ移動させていただきました。

    このエントリーは、映画が好きなこともありますが、マップでうろうろしてロケ地を探し当てる喜び?にハマってしまった記念すべきエントリーでもあります。

    Wikipediaの更新履歴を見ると、映画の記事では2013年4月、橋の記事では2016年8月に初記載ですね。ついでにIMDbも見るとだいぶ更新されていて、この橋も今ではFilming Locationsに含まれていました。
    どんどん集合知?が積み重なっている感じですが、うちのサイトもどこかでお役に立っていればうれしいかもと思います。
    逆に、何年か越しでようやく見つけたときは、いちおうWikiとIMDbの最新状態を確認した方が良さげですね。とっくに掲載されていたというのもありそうですので。

    橋は映画に登場する物件の中でも調べやすいですね。形がそれぞれ特徴的ですし、川をたどっていけばしらみつぶし総当たり作戦でもいけますので。
    このエントリーの跨線橋とダイブした崩れた橋は、どちらもしらみつぶし作戦で見つけましたが、もう一度やれと言われたら半老眼にキツいのでもうできないかも orz..

    映画の作り手側からすると、橋は絵になりますし、場所や移動の象徴にもなりますので、映画の中に取り入れやすいのかもしれませんね。

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