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『道』 La strada (1954)

道【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

作品メモ

NHK BSハイビジョンはこの1月イタリア特集。
3連休中は「イタリア映画の巨匠」と題して、ヴィスコンティとフェリーニの代表作を放映。

1/8(土) 『若者のすべて』
1/9(日) 『道』
1/10(月) 『魂のジュリエッタ』

10日からの夜10時は帯で放送。

1/10(月) 『あゝ結婚』
1/11(火) 『ひまわり』
1/11(水) 『黄金の七人』
1/11(木) 『続 黄金の七人 レインボー作戦』

『道』をハイビジョンで見るのは初めてでしたが、映像はまずまずで、ありがたく保存。
ただ海外では2枚組のクライテリオン盤が出ていますので、そちらの画質や内容も気になります。

アカデミー賞で外国語映画賞が設けられて最初の受賞作。キネマ旬報外国映画ベストテン第1位。
監督はもちろんフェデリコ・フェリーニ。
製作がディノ・デ・ラウレンティスにカルロ・ポンティとイタリア映画界を代表する名前。
脚本トゥリオ・ピネリ、フェデリコ・フェリーニ。
撮影オテッロ・マルテッリ。
音楽ニーノ・ロータ。

出演は、ジェルソミーナに監督の奥さんジュリエッタ・マシーナ。
ザンパノにアンソニー・クイン。
二人とも神がかり的名演ですが、イルマットのリチャード・ベースハートも素晴らしい演技でした。
個人的にはあくまで『原子力潜水艦シービュー号』のネルソン提督ですが……

ジュリエッタ・マシーナはイタリア人、アンソニー・クインはメキシコ出身のアメリカ人、リチャード・ベースハートはアメリカ人。
セリフはイタリア語。
ネイティブ以外は吹き替えでしょうか?

『チネチッタの魂~イタリア映画75年の軌跡~』

NHK BShiでは上記の特集に関連して、『チネチッタの魂~イタリア映画75年の軌跡~』という番組も放映されました。
1/4(火)20:00~ と 1/11(火)10:00~。

井筒和幸監督がチネチッタスタジオを訪れる様子を中心に、イタリア映画の歴史や名監督をざっくり紹介する内容。
実は2回あった放送をどちらも見損ね&録画し損ねてしまい、初めてNHKオンデマンドを利用してみました。
とりあえず登録して「見逃し番組」コーナーに進み、1日210円也のコースでパソコンにて鑑賞。
最高画質にすればハイビジョンには及びませんがかなりの画質で、それこそちょっと見損なった番組を気軽に見るには十分のレベル。
逆説めきますが、これなら映像コンテンツはみんなネットで見れば良いわけで、地上波デジタルいらないよという気もしてきます。

肝心の番組内容ですが、ベテランスタッフへのインタビューや貴重な資料を盛り込んでさすがNHK的充実感。
これで210円ならまあOKでしょうか。
『道』に関しては後半ロケ地を訪問するくだりがあって思わず身を乗り出してしまいました。
ひとつは「バニョーレジョ村」というところで、後述のIMDbのリストにあるBagnoregio。

  • スタッフのひとりがこの村の出身で監督に紹介、ロケ地となった。
  • 村ではオート三輪を含む映画にまつわるものが展示されている。
  • そこで登場した82歳の女性。オート三輪は彼女のお店で荷物の運搬用に使っていたもので、買うから改良してくれと監督が彼女の夫に頼んだ。
  • 結婚式の場面はこの村で撮影。この女性は花嫁を演じていた。出席者も大半が村人たちのエキストラ。
  • 綱渡りの曲芸もこの村で撮影。現場に足を運んだ井筒監督、感慨深げに見上げる。

もうひとつは「フィウミキーノ海岸」で、IMDbのリストにあるFiumicino。
映画のラストはここで撮影されたという紹介だけで、具体的な撮影ポイントは紹介されませんでした。

参考までにチネチッタスタジオはウェブマップではこちら。

『カサノバ』の女神の巨大な首があるのはここ(Bing Mapsを西向きにすると見えます)。

※2014/08/11追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1990年とのことです。

スタジオ入口。

地下鉄CINECITTA駅。

オート三輪

映画の中ではたしかアメリカ製というセリフがありました。
でもこちら↓の掲示板で、Moto Guzzi(モト・グッチ)のErcole(ヘラクレス)ではないかというやりとりがあります。

http://motoguzziercole.forumup.it/about97-motoguzziercole.html

イタリア語なのでちんぷんかんぷんですが、途中の書き込みに”Mr. Ugo Trucco”とい名前が出ていまして、NHKの番組で出てきた女性と姓が同じ。つまりオート三輪を改造して提供したご主人ということになります。

参考までにこの車種については、こういったところをどうぞ。

  • http://www.motoguzziercole.it/ 
  • http://www.guzzi-ercole.de/

ギャラ

IMDbのトリビアによると、アンソニー・クインははじめギャラを歩合で提示されたのにエージェントが前払いにしてしまって、結果数百万ドルを受取損なったそうな(本人談)。
ここらへん『絶対の危機』のマックイーンと同じ。
……ですが、『絶対の危機』ならニヤニヤしてしまうエピソードでも、『道』となると生臭い話は微妙に感じてしまうのは差別でしょうか??

ロケ地

IMDbでは、

Bagnoregio, Viterbo, Lazio, Italy
Fiumicino, Rome, Lazio, Italy
Ovindoli, L’Aquila, Abruzzo, Italy
Ponti-De Laurentiis Studios, Rome, Lazio, Italy (studio)
Rocca di Mezzo, L’Aquila, Abruzzo, Italy (street scenes)

半世紀以上前の映画で手懸りは町名のみと、難易度かなり高いです。
以下、各町の英語版Wikipediaへのリンク。

Bagnoregio WFiumicino WOvindoli W、 Rocca di Mezzo W

ロード・ムービーとしても一級のこの映画。
撮影場所を解明することでかえって興ざめするおそれもありますが、以下ただのお楽しみと言うことでお許しを。
わかった範囲をメモしていきます。

家族との別れ

0:02

海辺の村。
場所は調査中。
建物に”RISTORANTE SENESI”の文字。
車載カメラのショットで最後に右側に入ってくる建物が少し特徴的なので、今も建っていれば場所を特定することができるかもしれません。

※19/11/13追記
コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによると、”RISTORANTE SENESI”は、現在のこちら↓

Hotel Mediterraneo
Str. Valmontorio, 239, 04100 Foce Verde LT

冒頭子供たちがジェルソミーナを迎えに来る海辺も、この目の前か近くと思われます。
ザンパノのバイクが止っていたのは(=RISTORANTE SENSENIとある壁)こちら側でしょうか?

バイクがスタートして、子供たちが追いかけてくるショットは ↓

おそらくここで正解なのだと思いますが、現存する建物とはうまく照合できませんでした。

最初の町

0:06

大道芸を披露するところ。
調査中。

※19/11/13追記
コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによるとこちら↓

Viale Spagna, 00040 Torvaianica RM

具体的には、このあたりの建物の前と思われます。

路傍

ESSOの看板が見える道ばた。
ジェルソミーナに役割を与えるところ。
調査中。

記念碑のある町

0:14

ジェルソミーナも参加して、道化芝居を披露。
比較的大きな町で、背後に丸いレリーフの付いた白いモニュメント。 調査中。

※19/11/13追記
コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによると記念碑があるのはこちら↓の広場

Piazza Giovanni Battista Grassi, Fiumicino

演じていたのは、広場の南側、広い歩道部分でしょうか。

Fiumicinoということで、そこはなんとラストの町でした。
記念碑は、戦没者慰霊碑とのことです。

ザンパノを待つ街角

0:21

夜の女と出かけてしまったザンパノをジェルソミーナがひたすら待ち続けるところ。 調査中。

ザンパノが寝ていた空き地

※19/11/13項目追加

0:23
酔っ払ったザンパノが寝ていたところ。

コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによるとやはりFiumicinoで、これら↓の通りに挟まれた空き地のようです。

Via Giovanni Cena, Fiumicino Via Corrado Tommasi Crudeli, Fiumicino

しゃがんだジェルソミーナの頭のあたりに見える建物は、過去のSVで確認できます↓

結婚式

0:28

前述のように、次の綱渡りの村バニョレージョ(NHKテロップではバジョーレジョ)で撮影。
テーブルを囲んでいるのは大半が村人たちのエキストラ。
花嫁を演じたのは、オート三輪を提供したお店の奥さん。

綱渡りの広場

祝祭といいますか何かの儀式に引き続き、夜になって綱渡りの曲芸が披露されるところ。
上記の番組でも紹介されたように、IMDbのリストにあるこちら。

Bagnoregio(バニョレージョ ) W,Viterbo, Lazio, Italy

番組では「ローマから北へクルマで2時間」と紹介。
Google Earthのものさしでざっくり測って100kmのところです。Civita di Bagnoregio Wが名所。

綱渡りの広場はマップではこちら(※14/8/9 ストリートビューに切替)。

広場中央南側に高い塔がありますが、これが映画の中で電飾が施されていた教会。

こちら↓のページで広場のパノラマ写真を見ることができます(リストの一番上)。
見上げることもできますので、綱渡りを見つめるジェルソミーナになりきれるかも。

http://www.tuscia360.it/scheda.php?l=en&q=bagnoregio

前述の通り、名物オート三輪はこの村にもともとあったもの。

サーカスのテント

イルマットと別れた街角

1:10

調査中。
間近に5階建ての団地。
背後にもう少し背の高いマンション群。
翌朝の場面では、北側(?)に教会。

※19/11/13追記
コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによるとローマ市内Via Corintoのこのあたり

背景の鐘楼は、

サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(Basilica di San Paolo fuori le mura)W

ほりやんさんがコメント欄でお書きの通り、SVではなかなかうまく見えません。

自分の家はどっちと聞くところ。

修道院

※19/11/13追記
1:14

コメント欄で、ほりやんさんからロケ地情報が書き込まれている掲示板(イタリア語)をご紹介いただきました(2019年11月4日 19:50)。

https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

これによると

Piazza Sant’Agostino 10 a Bagnoregio (Viterbo)

Bagnoregioということで、これはなんと綱渡りの広場と同じ町ですね。
広場からわずか400mほど東へ進んだところです。

イルマットと再会

残雪の街

雪が残る街角で芸を披露するものの、ジェルソミーナがおかしなそぶりをみせ始めるところ。
IMDbのリストを片端からチェックしていって見つけました。

ローマの東110kmのRocca di Mezzo(ロッカ・ディ・メッツォ) W
町の中心のPiazza Principe di Piemonteという広場。
芸を披露していた街角はここで、壊れかけたジェルソミーナが立ち尽くすショットはこんなアングル(カメラ西向き)。

  • Google Maps(SV)

こちら↓はウェブカム。最新の様子をどうぞ(左側の建物の角)。

  • http://www.roccadimezzo.org/index.php?option=com_content&view=article&id=1142&Itemid=453

周囲の建物はほとんど撮影当時と同じ。
例えば、「では太鼓を合図に」のロングショットで背景に見える建物もそのまま建っています(カメラ北向き)。

毎度のことですが、ヨーロッパの街並みのロングライフぶりに感嘆。

廃墟

ジェルソミーナを置き去りにするところ。
石を積み上げた壁だけが残っている廃墟。
背景に雪山。

おそらく上記Rocca di Mezzo、あるいはIMDbのリストにあるOvindoliの周辺。
参考までに、Rocca di Mezzoの南側でSVを南向きにすると、廃墟のロングショットの背景とそっくりになります。

ザンパノが去っていくロングショットは、数km南へ移動したこのあたりかも(カメラ北向き)。

IMDbのリストにあるOvindoliの近くです。

ラストの港町

IMDbのリストで海に面しているのはこちらだけ。

Fiumicino(フィウミキーノ) W

BShiの番組の中で井筒監督が歩いていたのは海岸に出る通りのちょうどここ。

ザンパノが歌声に気づくのは堤防沿いの長い道ですが、その向こう側をよく見ると海ではなく対岸があるので川のようです。
フィウミキーノを東西に流れる川の北側、河口近くがいちばんそれらしいですが、確証なし。

ザンパノと女性が一緒に写っているショットはなく、女性のいた場所が同じかどうかは不明。
ザンパノが入った海もここなのでしょうけど、それ以上は突き止めようがなさそうです。
参考までに、番組の最後に井筒監督が「いいリストランテがありますよ」と指さしたのは、この並び。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2019/11/13 「町」を「記念碑のある町」に変更 「ザンパノが寝ていた空き地」項目追加 「家族との別れ」「最初の町」「記念碑のある町」「イルマットと別れた街角」「修道院」追記
  • 2014/08/11 「『チネチッタの魂~イタリア映画75年の軌跡~』」にmilouさんの画像を追加
  • 2014/08/09 「綱渡りの広場」をストリートビューに切替

コメント

  1. ほりやん より:

    ネルソン提督つながりで、調べてみましたが、以下のサイトはイタリア語なので、あまり自信がありません。

    https://www.davinotti.com/index.php?forum=50012662

    「家族との別れ」は、
    Strada Valmontorio,239
    RISTORANTE SENESI は HOTEL Mediterraneo になっているとのことです。
    ジェルソミーナの家はSVでは見られませんが地図上に印があります。

    「最初の町」は、
    Viale Spagna, 00040 Torvaianica RM

    「町」は、
    piazza G. B. Grassi, Fiumicino
    見物人の背後に戦没者慰霊碑が見えます。

    「イルマットと別れた街角」は、
    20 Via Corinto
    聖堂の鐘楼は木々で見えないので
    90 Via Corinto
    まで戻ると、鐘楼の先っぽが見えます。
    聖堂をはっきり見るには
    190 Via Ostiense

    「修道院」は
    Strada Teverina 01100 Viterbo

    ちなみに、ザンパノが酔って眠っていた空き地は
    15 Via Giovanni Cena, Fiumicino
    14 Via Corrado Tommasi Crudeli, Fiumicino
    この二つの通りにはさまれたところです。

  2. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、コメントありがとうございます。
    これはまたほぼ完全なデータですね。私もイタリア語はちんぷんかんぷんですが、画像だけで十分理解できそうです。
    書き写しになってしまうかと思いますが、のちほど更新しておきます。ありがとうございました。

  3. ぶぶちん より:

    こんな貴重なサイトがあるとは驚きです やはり 石の文化だと残りが違いますね 6,7階のビルがそのまま残ってますが同じ地震国なのに大したことです 日本だと全滅ですね

  4. 居ながらシネマ より:

    ぶぶちんさん、「同じ地震国なのに」って、ごもっともです。
    日本なら「跡」でしかないところに、ちゃんと上物が残って建っていますし。
    もっとも掘ったらいろいろ出てきそうですから、恒常的に残るというよりは、それなりに時代で上書きされてきているのでしょうけど。
    たしかブラタモリのパリ編で、パリ改造前の路地がそのまま地下道として残っている箇所が紹介されていて、面白かったです。

  5. ぶぶちん より:

    居ながら様、アンソニー・クインがギャラを損したとのことですが、彼の自伝では、彼がフェリーニに最初に要求した固定ギャラは映画の総予算とほぼ同額だったので、勘弁してくれ、無理だとなってまけたようですね。彼はセシル・B・デミルの娘と結婚してますが、自伝を読むと結構、金、上のような名誉にはがめつい感じがします。映画の中身に集中したいですね。でも彼の粗野な演技はすばらしかったです。逆にジュリエッタ・マシーナは個人的には気に入りません。彼女の気品、知性ある地の雰囲気が隠しようがなく、知恵遅れの女性にはとても見えないのです。勝手な感想で失礼いたしました。

  6. 居ながらシネマ より:

    ぶぶちんさん、コメントありがとうございます。
    返信遅れまして大変申し訳ありません。

    いや~がめついですね(笑)
    自伝があるのですか?
    俳優の自伝はたいてい自分に都合良くつづられていそうですが、自伝のエピソードで読者にがめついという印象をあたえるというのは、なかなかなものかと思われます(汗)。
    もっとも名誉とお金に関してそのくらいでないと、トップ俳優としてやっていけないのかもしれませんね……
    ジュリエッタ・マシーナについては実は結構私も同感なのですが、とはいえモノクロ映像で描かれたふたりの姿はやはり絶品で、記事を更新するため久々に本編見返したところ、気がつけば最後までぐいぐい惹きつけられて見終えてしまいました。

  7. はぴたん94 より:

    [道]は30年間位のあいだに何度も観ました。
    何故か心に残り、考えさせられる作品ですね。
    素晴らしいページを用意してくださったことに感謝します。
    ありがとうございます

  8. 居ながらシネマ より:

    はぴたん94さん、コメントありがとうございます。
    良い悪いという評価を超えて、ともかくしみじみ来る映画ですよね。
    たまたまテレビで放映しているのを見かけると、録画は持っていてもついそのまま見続けてしまいます。
    拙記事が少しでも鑑賞のお役に立ったのでしたらとてもうれしいです。
    ありがとうございました。

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