記事内の商品画像には広告リンクが含まれています

『暁の追跡』 (1950)

暁の追跡 [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『億万長者』(1954)と同じく市川崑監督の白黒映画。1950年10月公開ということで時代はもう少しさかのぼっています。
同じ場所が登場することもあり、ついでにこちらもチェック。
東京は新橋駅前の交番に勤務する警察官の日常を描き、最後はタイトル通り大がかりな暁の追跡劇が繰り広げられます。
公開時タイトル『曉の逃走』『曉の追跡』。

出演は池部良、田崎潤、水島道太郎、野上千鶴子、杉葉子、北林谷栄、伊藤雄之助など。
監督市川崑、脚本新藤兼人、撮影横山実、音楽飯田信夫。
後援國家地方警察本部、援助東京警視廳、企案國家地方警察本部警務部長警視長中川淳……とものものしいクレジットが続き、なんだか堅苦しい映画のように思えてしまいますが、始まってみればひとりの警察官の悩める姿や恋人との微笑ましいひとときがふつうに青春映画していますし、アクションシーンもたっぷり見応えがありました。

リアルに真夏の撮影だったのでしょうか、登場人物がいつも汗びっしょりなのも印象に残ります。室内では強いライトも当たっていたでしょうから、さぞ大変だったことと思います。

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

OP

最初のショット。
わかりづらいですが、おそらく東京駅丸の内北口、現在の新大手町ビルヂングのあたりから、カメラ東向きで国鉄の線路越しに八重洲側を捉えたものと思われます。

路地

その後池部良さんが歩いて行く通りは、左端にNEW TOKYOの袖看板が出ていることからすぐに判明。
当時の日劇の向かい、ニュートキヨーの右側の路地で、国鉄の線路に斜めに交わるこちら↓

振り返れば当時の日劇が映るはず。
これまでのエントリーで言えば、『早春』(1956)でそうしたカットがありました。

By inagara
(CC BY-SA-2.0)

現在はこんな感じですが、映画とさほど変わっていないという噂も……(滝汗)

By inagara
(CC BY-SA-2.0)

角をぐるりと回ったところ。

先日たまたまこちらの方へ来たので、自前の画像でご紹介。

0:03
昔の新橋駅の汐留側(東側)。

この駅舎はぎりぎり自分の記憶にもあり、懐かしく見ることができました。

交番はその南側のおそらくこのあたり↓

今は手前(東側)に新幹線の線路が通っているので、この部分のスペースは映画よりは狭くなっていると思います。
当時の空撮画像ではこういったところ↓

はじめ交番はスタジオセットで編集で組み合わせているのかと思いましたが、例えば0:09頃、酔っ払いが絡んでくる場面で、真横からのショットの背景に新橋駅の昔の駅舎の側面が見えているので、実際にこの位置に置かれていたことは間違いなさそうです。

高架での追跡

ホントに電車が迫り来る線路を横切っているようで、ハラハラします。
列車がこちらに向かってくるショットで、右側に煙突を掲げた大きなビルが建っていますが、新橋駅の北側、線路の西側に沿って建っていたこちら↓

新橋第一ホテルW

ひとつ前のエントリー『億万長者』でも登場しています(0:48頃)。

海水浴場

鎌倉の由比ヶ浜。

海辺でたわむれる水着姿の池部良さんと杉葉子さん、お二人ともフォトジェニックでナイスカップル♪

転職活動

0:41頃、証券会社の知人に相談したのは、おそらく日本橋兜町のこちらの橋。カメラ北向き。

今では運河は埋め立てられ、首都高速が走っています。
この後省線(国鉄)神田駅のホームや、有楽町駅近くのビルの屋上からの眺めなど、昭和のタイムカプセル映像が続きます。
池部さん、転職はなかなか難しそう。高度成長のビッグウェーブはもう少し先のこと。

暁の追跡

1:10頃からの捕物は、最大の見所。
ミニチュアまで使って力が入っています。

撮影は清洲橋の東側一帯で行われたものと思われます。
今ではだいぶ様子が違っていますので、細かいチェックは昔の空撮画像に頼らざるを得ません。

1:12頃出動した車両部隊が橋を渡りながらこちらに向かってきますが、これが清洲橋。

別の部隊がやってきた橋は、その南側、現在水門となっているあたりに架かっていたこちら。

トラス橋を右手に横切っていくショットは、おそらく現在上に首都高速が架かっているこの位置↓ カメラ東南向き。

運河は埋め立てられ、橋の面影はまったくありません。

次に隊列が渡りかけて止まったのは、おそらくこちら↓

その直後(1:14頃)阿久根運送商會が写りますが、橋や道路構成、建物の形状などからこちらではないかと思われます。

確証はありませんので、正解がおわかりになった方、ぜひツッコンでください。

資料

更新履歴

  • 2018/11/18 「作品メモ」旧題タイトル誤記修正
  • 2018/11/15 新規アップ

コメント

  1. 赤松 幸吉 より:

    池部良が若い! 背が高い! カッコいい!

    制作は1950年、日本はまだ連合軍の占領下にあった時代で、この頃の映画やニュース・フイルムを見ると東京の道路標識、駅やビルディングの案内などには進駐軍用に英語表記が至る所に掲示されているのに気づく。

    すでに70年近く前の映画なので、スタッフ・キャストとも全員泉下の人となられたと思いきや、杉葉子さん(90歳)がご存命でいらっしゃいます。

    市川崑監督はほぼオール・ロケーションで撮影を敢行、屋内シーンもセットではなく、実際のビルや事務所を使用するなどして、ドキュメンタリー・タッチに徹しているため、リアリティや臨場感が画面よりほとばしり出ます。

    東京在住で高齢者の方なら、この映画のロケ地を記憶の片隅からあぶり出す事ができるのではないか。

    居ながら様にとっても、この映画は戦後直後の東京を巡る、もってこいのマテリアルではなかったでしょうか(ミニチュアには気がつかなかった)。

    清洲橋、勝鬨橋などの本体は変わっていないようで、「当時の日劇の向かい、ニュートキヨーの右側の路地」(この映画には登場しないが、「上野のアメ横ガード下」なども)も街筋や雰囲気は戦後のままのような気がします。

    和製ジェームズ・キャグニー(James Cagney)の富田仲次郎がマシンガンをぶっ放した倉庫街も街頭ロケとは驚き。

    公開時タイトル『曉の逃走』ではなく、『曉の追跡』ですね。
    (同じ年に東宝で池部良主演の「暁の脱走」という映画もありますね)。

  2. 居ながらシネマ より:

    赤松さん、コメントありがとうございます。
    旧題タイトル違いご指摘恐縮です。以前『早春』で間違って書いていたのを自分でそのままコピペしてしまっていました。
    あれは(崩れる場面)ミニチュアではないですかね? 見た目そんな感じだったのであまり細かく見ないでそのように書いてしまいましたが。

    当時の空撮画像を見ると、48年の時点でも屋根が無くなっている建物が点在していますので、記事で書いたあたりのそういった建物で撮影されたのかと思います。
    それをこうやって空撮で確認できるのも、米軍が撮影したからで、気持ちやや複雑でしょうか。

タイトルとURLをコピーしました