『白蘭の歌』 (1939)

作品メモ

ひとつ前のエントリー『蘇州夜曲 (”支那の夜”より)』に続けて、同じく日本映画専門チャンネルで今月(2015年1月)「李香蘭、そして山口淑子」特集の1本として放送されているこちらをチェック。

長谷川一夫&李香蘭による大陸三部作の第1作。
この後の『蘇州夜曲 (”支那の夜”より)』『熱砂の誓ひ』は東宝と華北電影公司の製作ですが、『白蘭の歌』は東宝と満映の製作。奉天(瀋陽)や承徳といった当時の満州国エリアが舞台となっています。

2人が演じるのは、満鉄の鉄道技師松村康吉と承徳の富豪の娘李雪香。
東宝の人気スターと満映の新進スターという組み合わせですが、長谷川一夫さんは松竹から東宝に移籍して2年目。活躍の場を現代劇にも広げようかといったところでしょうか。
知りませんでしたが、Wikipediaによると一説では「ミーハー」の語源にもなっているとのこと。 そういえばわが母親は生前長谷川一夫さんの話になるとウットリしておりましたが、ミーハーだったのかなあ……

製作森田信義、原作久米正雄、渡辺邦男、撮影友成達雄、音楽服部正。   

タイトルバックで流れるのが、作詞久米正雄、作曲服部良一、歌渡辺はま子の「いとしあの星」。
映画タイトル曲「白蘭の歌」は、作詞サトウ・ハチロー、作曲竹岡信幸、歌伊藤久男・二葉あき子で最後に流れます。

『蘇州夜曲』でも書きましたが、この時代の映画は物語や描き方などいろいろ微妙な面があるやもしれません。当サイトはあくまで撮影地を確認しようという試みで成り立っていますので、その点ご了承の上でご覧いただければ幸いです。

目にゴミ

目にごみが入ったのを取ろうとしていて顔が接近、ハタから見ると誤解を招く構図となるという、メロものお約束の場面が登場します。
これはいったいどの映画から始まったのでしょうね??

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
ロケ地に関する資料や詳しく解説したサイトなどがあるかもしれませんが、そういったもので答え合わせはしていませんので、間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

『蘇州夜曲』同様、Googleマップが大陸では今いちのため、今回も百度(Baidu、バイドゥ)と騰訊(Tencent、テンセント)のウェブマップを併記しています(ご利用は自己責任でお願い致します)。

タイトルバック

タイトルバックで登場しているのは、承徳市にあるユネスコの世界遺産外八廟W
映画でも登場する避暑山荘の周辺にある寺院の総称。

承徳(承德 Chéngdé Chengde)Wはヒロイン李雪香の実家があるという設定。当時は熱河省。

「主演 長谷川一夫」

右へのパン。
「東寶満映提携作品」に続いて「長谷川一夫」とトップでクレジットされます。
おそらく普陀宗乘之廟(後述)からの眺めと思いますが、調査中。

「李香蘭 霧立のぼる」

右へのパンが「李香蘭 霧立のぼる」のクレジットで止まり、じわりと現れる門は、外八廟のひとつであるこちら。

普陀宗乘之廟(普陀宗乘之庙 Putuo Zongcheng Temple)W

その門(瑠璃牌坊)。

By Malcolm Browne via flickr
(CC BY-ND 2.0)

同じショットで「歌の蘭白」と映画タイトルが出ますが、もちろん右から読みませう。

「白蘭の歌」

映画タイトルの背景でじわりと現れた場所は、調査中。

「製作 森田信義」

続いて右へパンしているとき、「製作 森田信義」のあたりで写っていたところ。
これも普陀宗乘之廟で、カメラ位置は上の方の本堂のあたりですね。

By 颐园新居 via Wikimedia Commons
(CC BY-SA 3.0)

お寺や後ろの山並みが、何十年も経った今でも変わっていないのが、当たり前のことのはずなのに何故か不思議な気がします。

Photo from Wikimedia Commons
(public domain)

上のアングルを逆から見るとこういった感じでしょうか。
撮影は1902年以前とのことで、映画撮影時よりさらに30年遡ります。

このお寺は、映画の後半で「荒城の月」が流れる中雪香がひとり物憂げに歩く場面でも登場します。

「配役」

配役が役名まで含めてクレジットされるところ。
高い塀の上のように見えますが、場所は調査中。

「満映」まで

配役のクレジットから「満映」が出るまでの左へのパンは、こちらでしょうか?

普寧寺(普宁寺 Puning Temple)W

「満映」以後

「満映」のクレジットでOLして現れ、再度左へパンしていくカメラで捉えられているのは、普陀宗乘之廟と普寧寺の間にあるこちら。

須彌福壽之廟(须弥福寿之庙 Xumi Fushou Temple)W

By Gisling via Wikimedia Commons
(CC BY-SA 3.0)

映画のカメラ位置は向って左側の山の中腹ですが、もっと後ろに引くとこういったアングルでしょうか。
山の向こう側に普寧寺が頭をのぞかせています。

池のほとり

セリフから、設定上は奉天Wとわかります。
現在の瀋陽市(沈阳市、Shenyang)W。古来より瀋陽、盛京、奉天……といろいろ名前がぐるぐる変わってきているようです。

実際の撮影はおそらくタイトルバック同様承徳ではないかと思われますが、手掛かり少なく断定は出来ません。

この場面、雪香がいきなり「何日君再来」を歌い出し、松村もそれに続きます。
曲の良さもあってなかなか素敵な場面になっているように見えますが、たとえばWikipediaの何日君再来Wを見ると、この曲ですらいろいろな見方があり、なかなか難しいものだと思います。

街並み

歌に合わせて、街並みが数ショットインサートされます。
これは奉天(当時)。
ネットにアップされている当時の画像でチェックしますと、人々が行き交う賑やかなところは四平街という目抜き通りのようです。
こちら↓が街並みの2ショット目(左側から、逆光)とほぼ同じ位置&アングルの画像。

「四平街」は現在も瀋陽市内に見られますがそちらではなく(吉林省の四平街とも別)、当時城内にあった通りで、具体的には現在の中街(中街步行街)。
騰訊地図のストリートビューで再現できました。

上の「街景」で「沈阳第二百货商店(瀋陽市第二百貨商店)」「何氏眼科近视治疗中心(何氏眼科近視治療中心)」の袖看板が出ているところが、映画で中心やや左側に写っている建物で、上掲アーカイブスの百貨店、吉順絲房。
映画で右手奥に写っている建物(上に小さい天蓋が載っている)は、上記アーカイブスの画像で奥に建っているビル。
こちらも騰訊地図のストリートビューで確認できます。

右の方が間口がやや狭いですが、2つのビルは作りが似ていますね。

2人の出会い

2人のなれそめを描く場面。
「何日君再来」が終わる頃、人力車でやってきたところ。
気になりますが、場所不明。

蓮の池と楼閣

回想が終わり、ふたたび現在の2人(同じ場所で回想もカットバックされます)。
蓮の葉がいっぱいの水辺をゆっくりと歩きますが、背景に2層の楼閣が連なっているのが見られます。
これは承徳の避暑山荘。

具体的には、庭園内のこちら。
並んだ楼閣は、中国のマップでは「水心榭」と示されています。
2人が歩いていたのは、その東側。

By tak.wing via flickr
(CC BY-SA 2.0)

映画とほぼ同じアングル。
手前、蓮の葉でいっぱいになっているのが楼閣の東南側にある銀湖。

By Ana Paula Hirama via flickr
(CC BY-SA 2.0)

映画とは反対の西側から。
手前は楼閣の北西側にある下湖。
冬はかちんこちんですね。

承徳市(承德市 Chengde)WはGoogle Earthの物差しでざっくり測って、北京の北東170kmほどのところ。
映画では雪香の実家があるところという設定……ですが、あくまでこの場面は奉天という設定であるように思えます。

雪香の今の住まい

0:07
雪香の従兄・程資文がやってきたところ。
街中にあるビル。0:36にも登場
叔父程應棋の家(兼店舗?)で、ここから音楽学校へ通っているという設定。
「堂元天」、右から読んで「天元堂」と看板が出ています。

場所ですが、当時のいろいろな画像をネットで拾ってみたところ、こちらも前述した城内の繁華街、四平街(現在の中街)であることがわかりました。

おそらく四平街を西へ行ったあたりではないかと思われます。
同じ場所で鐘楼(または鼓楼)の下の部分が見える画像や、信号が見える画像がありますので、この交差点のあたりでしょうか? 現在の様子からはまったく当時の雰囲気をうかがい知ることは出来ませんが。

故郷の寺院と橋

0:08
雪香が日本語文を読み上げているときに写る場所。
タイトルバックでも登場しているこちら。

須彌福壽之廟(须弥福寿之庙 Xumi Fushou Temple)W

よく見ると、背景に西側の普陀宗乘之廟が見えていますね。

1:01頃、雪香が故郷を離れる場面で写っているのも須彌福壽之廟。

局長の家

0:15
かなり立派な住まいです。場所は不明。

奉天駅

0:19

「奉天」と駅名標示が出ています。ホンモノでしょうか?
ホームの作りなどは、当時の画像と一致しているように見えます。

瀋陽駅(沈阳站)W

大連

埠頭

開拓団が乗った船が到着したところ。
設定も撮影も大連でしょうか。 具体的にはこのあたりと思われます。

上のSVで振り返ったところにあるクラシカルな建物は、やはり当時のものでしょう。
現在は大連港集団のビルのようです。

大連忠霊塔

現在の労働公園(劳动公园)Wにありました。
すでに無くなっていますので、マップは略。

水師営

水師謍會見所と書かれてあります。

水師営W

場所はこちら。
百度のストリートビューで、建物の屋根を確認できます。

Wikipediaによれば、1996年に復元されたものとのことです。
逆に言えば、映画で登場したのはホンモノということでしょうか。

203高地

「爾霊山」と刻まれた碑が建立されています。

「移民村へ」

0:38
列車は佳木斯(チャムス、ジャムス)W行。
駅名は「八虎力」。

鉄道総局

1:02
雪香が松村を探してやってきたところ。
写っているのは奉天の鉄道総局で、場所は駅から1kmほど北のこちら↓
建物は現存し、マップでは辽宁省海洋渔业厅(遼寧省海洋漁業庁)となっています。

昔の画像ではすぐに照合できましたが、マップ上どこにあったのか意外と手こずってしまいました……

資料

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更新履歴

  • 2015/03/21 「関連記事」項目追加。誤字修正(全部「百蘭」になってました……)
  • 2015/01/22 新規アップ

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