『遠雷』 (1981)

遠雷 [Blu-ray]

ペロリだな

作品メモ

ひとつ前のエントリー『青春の蹉跌』は、にっかつロマンポルノ出身神代辰巳監督の一般映画第一作でしたが、同じようにロマンポルノで活躍した後一般映画へ進出した監督さんは当時けっこういたように思います。
今から振り返れば、日本映画が厳しい状況にある中で、映画制作現場の力を保持・伝承し若い才能を育てるという役割の一端をロマンポルノが担っていたわけですね。

この『遠雷』は、根岸吉太郎監督の最初の一般映画作品。『狂った果実』と同年です。
立松和平さん原作で、舞台は栃木県宇都宮市。
急速な人口増加と都市化が進む中で、農地を守りトマト栽培を続けようとする若者を描きます。

時代も場所も異なりますが、ついつい同じATGの『祭りの準備』と並べてみたくなる作品で、そうと思って見ていると江藤潤さんが急に出てきてビックリ(友情出演)。
どちらも肩の凝らないATG映画として、自分の中では良き印象が残っている作品です。

キャスト、スタッフ

主人公和田満夫に永島敏行さん。
『祭りの準備』は「ここから出て行かないとダメだ」と思わざるを得ないような世界でしたが、『遠雷』は「ここでしがみついてやっていくんだ」感が濃厚で、永島さんのキャラにぴったり。

お見合い相手花村あや子に石田えりさん。
天真爛漫なようでしたたかな面もしっかりあるキャラがとても魅力的。
最後は、頑張る2人の前途に幸あれ、と素直に思いたくなるような……
……とムズかしい話よりなにより、『スペースバンパイア』のマチルダ・メイと並んで、思わず拝みたくなる美しさは永遠のもの。

急に思い出しましたが、当時私が読んでいたような映画雑誌は、「キネ旬」や「スクリーン」「ロードショー」ではなく肌色写真満載の「EIGANO TOMO」とかでして(滝汗)、引用されていたセリフも「ペロリだな」だったような 😉

満夫の家族は……
一緒に住む祖母に原泉さん。演技なのか素なのか、ふとわからなくなるぐらいの名演でした。
母に七尾伶子さん。
東京に出て行った兄和田哲夫に森本レオさん。口ひげは珍しいかも。
その妻和田敏江に鹿沼えりさん。お懐かしや。にっかつ時代好きな女優さんでした。
満夫の父に先頃亡くなられてしまったケーシー高峰さん。長い間楽しませてくださってありがとう、グラッチェ。
そのお相手チイに藤田弓子さん。この2人は怪演といいますか、非常にインパクトありました。

満夫の友人中森広次にジョニー大倉さん。
広次と一緒に通っていたスナックのカエデに横山リエさん。
カエデの夫に蟹江敬三さん。ビニールハウス前での演技は、一瞬でキャラクターを表現していてお見事。
あや子の母に『アナタハン』の根岸明美さん。

カメオ的に友情出演するのが、農協職員役の江藤潤さん。
また原作者立松和平さん自身が、市役所職員(かな?)役で登場。地元感たっぷりのアクセントでセリフもあります。

……と並べてみても、半数以上がすでに鬼籍に入られています。
このところのエントリーで、「先頃惜しくも」をしばしば使うようになってしまっていますが、自分が親しんできた俳優さんがすでにこの世を去られていることに気づくと、やはり寂しいものがあります。

脚本荒井晴彦さん、撮影安藤庄平さん。
音楽はここでも井上尭之さん。

 
 
 

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

ビニールハウス

団地のそばのビニールハウス。
2棟が少し斜めにずれて並び、通りを挟んで別の棟が同じように並んでいます。
今のところ判明していませんが、当時の空撮画像で鋭意調査中。

0:29頃蟹江敬三さんが登場する場面で、背景の山が写ります。これが手がかりになるかも。
他に1:19 1:26 2:11等で登場。

  

トラクター

タイトルバックで、出荷に往復するトラクターの進路。
路傍をトコトコ走るさまは、なんだか『ストレイト・ストーリー』みたい♪

赤い橋

こちら(下反町町)↓  カメラ西向き。川は田川というようです。

新幹線高架

左折してくぐるところ。

1974-78の空撮では、新幹線が見当たりません。 WikipediaWによると、東北新幹線は1982年6月22日に大宮駅・盛岡駅間が暫定開業とのことで、映画の当時はまだ建設中あるいは試験走行中ということになります。

救急車が来た団地

0:08
何棟も並んでいるマンモス団地。ビニールハウスの側の団地とは別。
救急車の場面の他、トマトを売りに来る場面やお地蔵さんを運ぶ場面(笑)など、何度か登場します。
場所はこちら↓

建物の他、バス停や電話ボックスもほぼ同じ位置に現存。
バス停には「瑞穂二丁目」とあります。名称は瑞穂野団地で良いのでしょうか?

スナックあざみ

藤田朋子さん演じるチイの店。
現存していました。
お店の名前は違いますが、やはりスナックの看板が出ていますので書いてしまいますと……

0:15頃満夫が川縁をやってくるアングル↓

0:42頃公次と2人で橋を渡ってやってくるアングル↓

橋は架け替えられていますが、背景の塗装会社の看板は(きれいにはなりましたが)同じように出ています。

ホテル

0:33
「モーテルいくべ」でやってきたところ。
調べても仕方ないと思いましたが(汗)、場所はこちら↓

現在は別の名前に変っています。
本編では、田んぼの中にぽつんとホテルがあり、右折した後背景に新幹線の高架と鉄塔が見えるという位置関係でしたが、今や同じ趣向の建物が所狭しと軒を連ねています。

夜の川

0:41
コイを採ったところ。
背景の看板に「香蘭」とありますが、こちら。

ただ位置関係が合わないので、おそらく移転?

チイの店もこの川のほとりにありました。
マップを見ると、「かまがわプロムナード」となっています。今は下に降りて散策できるのでしょうか?
「かまがわ」は漢字では「釜川W

夜の公園

0:55
お地蔵さんを盗む直前にやけ酒あおったところ。
前掲マンモス団地の中の公園。

ガソリンスタント

1:09
あや子の勤務先。
この位置↓にありましたが、もう無くなっています(宇都宮市越戸)。

2人並んで会話するショットで、背景に見える3階建ての建物(1階が駐車スペース)は現存していて、「越戸クリニック」となっています(外壁の色は変っています)。

ステーキ店

その後2人で入ったステーキ店は、同じ通り(越戸通り)、向かいの少し東側。
店名が同じかどうかはわかりませんが、現在もステーキ屋さんのこちら↓と思われます(建物自体は建て替えられています)。

宇都宮駅

1:32
兄と家族を迎えにきたところ。

駅前はペデストリアンデッキが出来てすっかり様変わりですが、通りの向かいの建物はそのままですね。

※19/4/29追記
Bill McCrearyさんから画像を提供していただきました。

ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
宇都宮で餃子を食べる

宇都宮駅西口向かい側の南側の角。
映画ではクルマがやってきたカットで背景に写っていたビルで、その時は1・2階がそば・うどんの店でした。
現在はいかにも宇都宮な餃子の店となっています。

©2010 Bill McCreary

ロケ地マップ

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2019/04/29 「宇都宮駅」SVのリンク修正 Bill McCrearyさんの画像をアップ
  • 2019/04/20 新規アップ

『遠雷』 (1981)” への4件のコメント

  1. 「キネマ旬報ベストテン」に権威も重みもあった時代での堂々たる第2位である。

    この映画では80年代の栃木の町の様子がよく分かります。
    映画のシーンを思い出しながら、居ながら様のGoogle Mapsをひとつひとつ開いて楽しんでいたところ、「宇都宮駅」のGoogle Maps だけ映りません。

    よく見ると(SV)の横に「↑」のような標章がこれだけにはありませんでした。

    関西人には栃木は首都圏(関東地方)の一部だと思っているので、80年代でもまだ若者が「~だべぇ」「~だわぁ」という方言で喋っていたのに驚く。

    それはそうと、関東地方の各県の県庁所在地は極めて覚えにくく、関西人ですべてを正しく答えられる人は地理の教師を除いてはまずいないのではないか。

    社会の試験で(全国の)小学生をいつも悩ます地域だ。

    石田えりよりも横山リエ(日本人には珍しい二重まぶた)の方が小生には魅力的。
    スナックの女の子を演じさせれば、リエさんにとどめを刺す、というより、この役なら彼女の等身大、ありのままの姿で演技の必要もないぐらいです。

    ビニールハウス前の蟹江敬三には、本当にゾクゾクとしましたね。
    思わず「巧いな~」と唸ってしまいました。

    紹介に「アナタハン」の根岸明美と、いきなりこのマニアックな映画(「アナタハン」)が出てきたのにびっくり。

    この映画を知っている人は少ないでしょうね。

  2. 赤松幸吉さん、コメントありがとうございます。
    宇都宮駅前のストリートビューが開かずにすみません、リンク修正しました。
    手前にペデストリアンデッキができていますが、駅舎そのものは今でも同じようですね

    宇都宮が首都圏の一部かどうかはともかく(汗)、確かに近隣でないと県庁所在地は難問となることがありますね。
    群馬県の県庁所在地は、関東の人間でもけっこう間違えたりします。
    私は新幹線が走る前の宇都宮は全然知りませんので、空撮画像を並べて眺めるだけで結構楽しめました。その発展ぶりは凄いものがありますが、おそらく現在ではいわゆる空洞化が進んでいるのでしょうね。

    赤松さんは『旅の重さ』でも横山リエさんを推していらっしゃいましたね。確かに目がぱっちりで、こんな人がカウンタの向こうに居れば、通ってしまいそうです。

  3. >群馬県の県庁所在地は、関東の人間でもけっこう間違えたりします。

    高碕でしたっけ?(笑)ていうか、埼玉県も、現在は合併しましたが、以前は「大宮」と思っている人もいたんじゃないんですかね。基本関東は、県名と県庁所在地が完全一致するのって、千葉しかないですからね。特に北関東は、日本でも地味な県ということになっていますから、ますますわかりにくいのでしょう。

    なお拙ブログに宇都宮駅から写した写真がありました。よろしければお使いください。2010年の写真です。

    https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/9e2fad3db5e8f193bc1cc71e79135b7f

    この映画って、ATG青春映画路線の代表作ですよね。ATGは1992年に活動を停止してしまいますが、たぶんこの青春映画路線がなければもっとはやく行き詰っていたのではないかという気もします。前にも書きましたが、ATGはセットよりロケ撮影中心ですから、貴サイトの趣旨にはいいですよね。

    ところで鹿沼えりについて、こんな記事がありましたね。

    https://www.news-postseven.com/archives/20190428_1359885.html

    RPって何? と一瞬思っちゃいましたが(すみまえん、世代でないもので)、病気、DV、借金、破産とあらゆる苦労をされたと思いますが、ぜひ頑張ってほしいものです。

  4. Bill McCrearyさん、画像さっそく頂戴しました。ありがとうございます。
    私も宇都宮へ行ったときは餃子をいただきました。
    『遠雷』は餃子で町おこしより前の時代ですね 🙂

    > ATGはセットよりロケ撮影中心ですから、貴サイトの趣旨にはいいですよね

    仰る通りで、しかも自分が名画座でせっせと見ていた作品ばかりなので、愛着もあり、それで好んでとりあげている面もあるかもしれません。

    「RP」は当時そんな表現無かったと思います。たぶん記事のタイトルに文字数を収めるためか、あるいはロマンポルノという語がタイトルに含まれるのを避けたかでしょうか。
    それにしても、鹿沼さん懐かしいですね。いろいろご苦労されたとは思いますが……

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