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『二つの世界の男』 The Man Between (1953)

二つの世界の男 [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『評決』でポール・ニューマンの前に立ちはだかった老獪な弁護士役のジェームズ・メイソンが、30年前に主演した映画。
ベルリンを訪れた女性が謎めいた男性と知りあったことから諜報戦に巻き込まれるという、サスペンス&メロです。

ポール・ニューマンも『引き裂かれたカーテン』で東独へ行っていますが、こちらの方が10数年先駆け。
どちらも撮影ポイントは西側に限られていると思いますが、『二つの世界の男』は正真正銘50年代前半のベルリンで撮影。まだ壁ができる前、戦争の爪痕が深く刻まれている市内が、臨場感たっぷりに捉えられています。

医師をしている兄を訪ねてベルリンへやってきたヒロイン、スザンヌ・マリソンにクレア・ブルーム。
空港まで迎えに来た兄の妻ベッティーナにヒルデガルト・ネフ。   
兄マーティンにジェフリー・トゥーン。
ベッティーナの知り合いだが謎の多い男イーヴォ・カーンにジェームズ・メイソン。
ジェームズ・メイソンは1909年5月15日生まれ、クレア・ブルームは1931年2月15日生まれですから、大きなお世話ですがリアルでは20歳以上離れている2人です。

自転車で追いかける少年はとても印象に残りますが不明。

キャロル・リード監督の『邪魔者は殺せ』(47)、『落ちた偶像』(48)、『第三の男』(49)、『文化果つるところ』(51)に続く作品。
タイトルと言い内容と言い、『第三の男』に近いものが感じられるのは仕方ないことかもしれませんね。

IMDbの公開日を見ると、一番若い日付で1953年10月19日(ストックホルム)となっています。
映画では町の至る所にスターリンのポスターが(小道具で)貼ってありますが、すでに1953年3月5日に死去。
ソ連ではフルシチョフが実権を握ったものの、まだ政治的な混乱は続いていた頃と思います。
ベルリンの壁ができるのは1961年8月13日。

 
 

ロケ地

IMDbでは、

Berlin, Germany
Brandenburger Tor, Mitte, Berlin, Germany
Charlottenburg, Berlin, Germany
Funk Tower Sports Arena, Berlin, Germany
Kaiser Wilhelm Memorial Church, Berlin, Germany (Opening motrage)
Kreuzberg, Berlin, Germany
Kurfürstendamm, Charlottenburg, Berlin, Germany
Mitte, Berlin, Germany
Moritzplatz, Kreuzberg, Berlin, Germany
Resi Restaurant, Berlin, Germany
Schillertheater, Charlottenburg, Berlin, Germany
Shepperton Studios, Shepperton, Surrey, England, UK (studio)
Tempelhof Airport, Tempelhof, Berlin, Germany
Tempelhof, Berlin, Germany

昔のヨーロッパ映画をとりあげるといつもロングライフぶりに感嘆しますが、ベルリンは少し事情が別。
激しい空爆と市街戦によって、建物の多くは失われています。

タイトルバック俯瞰

このあたりからスタート(東向き)。

カメラ位置を逆算すると、おそらくベルリン放送塔 (Berliner Funkturm)Wからの撮影。

放送塔から撮られた同じアングルの写真↓

いろいろな映画に登場するボールが刺さったような細長いテレビ塔は、旧東ベルリン地区にある旧東独製。
参考までに、放送塔の背後にあるトイフェルスベルク(Teufelsberg, 悪魔の山)から2つの塔を見ると……

空港

ベルリン・テンペルホーフ国際空港W

クルマに乗ったのは西側のこちら。

教会が見える街角

自転車に乗った少年が懸命にクルマを追いかける通り。
大きな教会が突き当りに見え、手前左側の建物にはメルセデスベンツの広告が見えます。

教会はIMDbのリストにあるこちらで、カメラ位置はその西側。

カイザー・ヴィルヘルム教会 (Kaiser Wilhelm Memorial Church)W

ベンツの広告が出ていた建物はホテルのようです。
このホテルの裏側のビルは、『ボーン・スプレマシー』の冒頭でCIAの作戦が展開したところ。

ブランデンブルク門

0:04。

ブランデンブルク門(Brandenburger Tor)W

右の画像は1945年7月とのことですが、門の上に像(クアドリガ)の残骸が見られます。
映画では完全に撤去されていましたが、この後1958年に設置されたようです。

住まいからの眺め

「東って近いのね」というセリフとともに写るショット。
右側にブランデンブルク門、左側の大きな建物は国会議事堂。
あえてマップで示すなら、こういった感じでしょうか。

Google Earthの時間スライダーを使うと、ちょうど1953年の空撮画像を見ることができます。

レストランの外

0:10。
カーチェイスが繰り広げられていたところ。
背後に見えるモダンな建物はIMDbのリストにあるこちら。

Schillertheater (Schiller Theater)W

Photo from Wikimedia Commons
(public domain)

建物もそうですが、街灯まで今でも同じ形で残っていますね。

検問所通過

0:13。
ここから東ベルリンという設定。
撮影場所はIMDbのリストにあるこちらの広場。

MoritzplatzW, Kreuzberg, Berlin, Germany

2人がやってきたのは、Oranienstraßeを西から。

背後に見える建物は今でも建っています。

検問所はこの位置。

ゲート背後に枠組みだけとなってしまった大きな建物が見えますが、Google Earthの時間スライダーで1953/12を見ると広場の南東側に確認できます。
これはデパートだったようですね(Wertheim)。

この建物を背景に2人が話しながら歩くショットはこういったアングル。

階段は、地下鉄Moritzplatz駅。

驚いたことにマップを確認すると、この広場から1ブロック北側に、実際に境界線が走っていたようです(Heinrich-Heine-Straßeを東西に横切る形)。
おそらく1961年にはそこに壁が築かれたことと思いますが、SVでもその跡を確認できます。

足下を二重の破線のように延びているのが壁の跡。
正確には西ベルリン側の壁の跡で、実際には無人地帯を間に挟んで東ベルリン側(この地域では北側)にももう1枚壁がそびえ立っていたはずです。

ベルリンの壁のウェブマップデータは、”berlin wall kmz”などで検索するといろいろレイヤーが見つかると思います。
権利上そうしたレイヤーを使って良いのかわかりませんでしたので、このエントリーの最後に用意したロケ地マップでは自作の境界線レイヤーを用意しました。

イーヴォと出会った店

お店周辺は上記検問所とは別の場所です。
2人の女性が検問所を通過した後斜め渡りするショットと、2人を追う自転車の少年が鋭角の角をぐるりと回るショットで背景に教会が写りますが、こちらの教会の以前の姿と思われます。

Jerusalemkirche (Jerusalem Church)W

Wikipediaによると、この教会は空襲で半壊状態となり、1961年に完全に解体、68年に現在の建物となっているようです。
こちら↓に当時の画像と解体の瞬間の画像があります。

http://www.besondere-orte.com/eventlocations/en/jerusalemkirche/historie

現在のマップではこちら。上記検問所から西へ1kmほどのところです。

電話ボックス

少年がおそらくイーヴォに連絡するところ。
背景の傷んだ大きなビルが特徴的ですが、場所は調査中。

その後イーヴォがお店にやってくる道は、前述お店の前の道とは違うようです。
こちらも調査中。

店を出て

場所は上述の教会があるY字路ですが、イーヴォが帰って行くのは教会の東側を走るLindenstraßeを北へ。

ところがその直後、2人が帰りの検問所に向うショット(0:18頃、上記YouTube画像の38秒目)でもゲートの奥の左側に同教会が見えています。
イーヴォが帰って行くショットではなかった検問所を置き、周囲のポスターなども替えて撮影したことになります。

帰りの検問所があったのはこの位置。

この撮影場所自体は西ベルリンですが、Y字路の左側(西側)、2人が斜め渡りしたMarkgrafenstraßeを500mほど北へ行くと東ベルリンとの境となります。
このあたりは最初の検問所の近く同様境界線が東西に引かれていたところで、線に沿って西へ2ブロック行くと、いわゆるチェックポイントチャーリーがあります。

ハレンダーと出会ったダンスホール

0:23。
ダンスと食事が楽しめるお洒落なホール。
IMDbのリストにあるこちら。

Resi Restaurant, Berlin, Germany

ダンスホールの外

0:25。
冒頭に登場したカイザー・ヴィルヘルム教会 (Kaiser Wilhelm Memorial Church)W
北西側から。

こちらは1890~1905年頃の本来の姿。

現在は同じアングルでこういった姿。
(1997年6月撮影)
映画撮影時点では、他の部分ももう少し残っていたことがわかります。

カフェ

イーヴォに呼ばれてきたところ。
不明。

スケート場

不明。IMDbのリストにあるこちらかもしれません。

Funk Tower Sports Arena, Berlin, Germany

迫るクルマ

0:46
不明

高架

0:49
ハレンダーが何者かと話しているところ。
東ベルリン側という設定でしょうけど、場所不明。

劇場

0:55。 おそらくこちら。

Theater des WestensW

カーブした高架鉄道

0:56
上記劇場の前の高架鉄道も大きく曲がっていますが、映画で登場したのはこちらの駅の下ではないでしょうか?

シュレッジッシェス・トール駅(Schlesisches Tor)W

『ラン・ローラ・ラン』でローラが駆け抜けた高架下は東側すぐそば。
そのあとローラは橋を渡っていましたが、その川が東西の境界線となっていました。
従ってこのショットの撮影も、境界線ギリギリに行われていたことになります。

別の検問所

1:01
高架鉄道駅の近く。
調査中。

運転手にからまれる夜の街

1:04。
ここはおそらく義姉と通った検問所の広場。
スザンヌが怖々進むのは、広場の東側。

あの場面であった背後のビルの横断幕が1枚なくなっていますし、スターリンの大きなポスターもはずされています。

駅への階段

1:05

建設中のビル

1:06頃から登場。
1:09頃には、PHOENIX REIFENと書かれた高架鉄道のガード下から全体が写されます。
おそらくこちら。

Amerika-Gedenkbibliothek ( American Memorial Library)W

開館は1954年9月とのこと。

関係ありませんが、こちらは前述カイザー・ヴィルヘルム教会近くで見つけた高架線のダンロップの広告。

彼の国では、タイヤの広告をこういうところに出すのが定番なのでしょうか??

ラストの検問所

調査中。 地下鉄の階段が見えますので、手掛かりになるかもしれません。

ロケ地マップ


より大きな地図で ベルリンが舞台の映画 ロケ地マップ を表示

他に東ベルリンが舞台となっている映画も一緒に表示してみました。
(※15/12/28 『イーオン・フラックス』以下追加)

境界線は目安として描いたもので、正確ではありません。ご注意ください。

資料

更新履歴

  • 2015/12/28 「ロケ地マップ」更新
  • 2014/10/15 新規アップ

コメント

  1. 赤松 幸吉 より:

    これで「冒険者たち」から始まり、501本目の作品となるのですね。世界的に見てもこれほど膨大なロケ地資料はまずないと思います。これから1000本、2000本と続いていくことを切願します。

    さて、この作品は、『邪魔者は殺せ』『落ちた偶像』『第三の男』ほど有名ではないので、初めて知りました。

    Sample映像を見る限り、行き詰まる冷戦下のベルリンの様子が不気味に描かれています。面白いのは、女性を連れ去ろうとする雪を覆った自動車が巨大な人間の顔にそっくりだということです。

    なお、自転車に乗った少年が不明ということですが、調べてみるとDieter Krause(ディーター・クラウゼ)で、この作品のために子役として抜擢されたとあります。

    Turner classic movies でこの映画のオープニングのタイトルにも出てきます。

  2. 居ながらシネマ より:

    赤松さん、こんばんは。
    501作品ですか。全然意識していなかったです。
    これからもぼちぼちやっていきますので、時折ご覧になっていただけければ幸いです。
    次は『邪魔者は殺せ』の予定ですが、『第三の男』となるときっとロケ地も解明しつくされているでしょうから、どうしたものかと思案中です。

    少年役のご紹介ありがとうございます。これだけ出番があるのに、資料が少ないのは残念です。リハーサル含めて、どれだけ自転車をこいだことでしょうね。

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