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『ミクロの決死圏』 Fantastic Voyage (1966)

ミクロの決死圏 [DVD]

作品メモ

『大脱走』『袋小路』ときて、ドナルド・プレザンス出演作をもう1本。
ちょうど数日前の昼間のNHKBSで『ミクロの決死圏』が放送されたので、こちらをチェックしてみます。
脳出血で倒れた亡命科学者を助けるため、医師たちを乗せた特殊潜航艇をミクロに縮小。体内に送り込んで患部を直接治療しようというSF映画。
人体内部のビジュアルもさることながら、縮んでいられる時間はわずか60分、しかも乗組員にスパイがいるらしいというサスペンスもあって、目が離せない展開。娯楽映画として良く出来ています。
60年代のSF映画を代表する1本でしょう。
同じ頃のSF映画としては、当サイトでも取り上げ済みの『華氏451』、SFと言っていいかどうかわかりませんがゴダールの『アルファヴィル』などありますが、それらヨーロッパ勢と比べれば『ミクロの決死圏』はいかにもアメリカ製の雰囲気。
ツッコミどころは満載ですが、原題もファンタスティックと言っているぐらいですから、うるさいこと言いっこなしで楽しみたい一本です。

クールなタイトルバックに続いて、冒頭ちょっとだけ外の世界が写った他は、ずっと地下の軍事秘密施設の中。
ここらへんは5年後の『アンドロメダ…』に雰囲気や構成が似ています。
「『アンドロメダ…』と一緒にするなよ~」と怒られそうですが、『アンドロメダ…』だって施設が生物汚染に脆すぎですし、厳しい審査があったはずの科学者が実は××だったとか、けっこう科学考証は底抜け。ハードSFっぽい雰囲気は強いものの、個人的にはどっちもどっちのような気がします。

ただ監督の違いは如実に出ていて、あちらが名匠ロバート・ワイズならこちらは職人リチャード・フライシャー。一般大衆が求めるような娯楽映画のツボをはずしていません。
この映画の白眉とも言える場面は、潜航艇が小さくなるところでも、人体内部の摩訶不思議な景色でもなく、ラクエル・ウェルチが抗体に襲われる場面でありまして(笑)、美女がモンスタちゃんに襲われるというB級SFホラー映画の基本形をしっかり守った心意気は、さすがと言うべきものがあると思います。

ミクロの決死圏 (ハヤカワ文庫 SF 23) ノベライゼーションは、アイザック・アシモフ。
昔はカバーに映画のスチールを使っていましたが、今はこんな感じです。

Fantastic Voyage 音楽レナード・ローゼンマン。
知らなかったのですが、サントラ出ていたようです。でももう入手困難。
ちょっとネタばれ気味になりますが、最初の30分ほどは音楽がありません。
いよいよ人体内部に突入し驚異のビジュアルが展開した瞬間、現代音楽風の音楽が神秘的に響き渡って雰囲気をさらに盛り上げるという、心憎いばかりの音の入れ方となっています。

出演は、潜航艇プロテウス号の乗員に、スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ、ドナルド・プレザンス。
外で見守る将校に、エドモンド・オブライエン、アーサー・オコンネル。

決死圏な映画

「決死圏」と言う言葉は広辞苑や大辞林にはありません。いちばん近くて「決死隊」。
映画会社の造語でしょうか? だとしたらなかなかお見事。

「決死圏」がタイトルに入る映画は、覚えている限り3本でしたが、allcinemaで検索かけたらやはりそうでした。

  • 『ミクロの決死圏』 Fantastic Voyage (1966)
  • 『決死圏SOS宇宙船』 Doppelgänger (1969)
  • 『ゼロの決死圏』 The Chairman (1969)

ロケ地

IMDbでは、

Los Angeles Sports Arena – 3939 S. Figueroa Street, Exposition Park, Los Angeles, California, USA
(exteriors: CMDF – Combined Miniature Deterrent Forces Headquarters)
Stage 16, 20th Century Fox Studios – 10201 Pico Blvd., Century City, Los Angeles, California, USA (studio)
Stage 5, 20th Century Fox Studios – 10201 Pico Blvd., Century City, Los Angeles, California, USA

CMDF本部

Combined Miniature Deterrent Forces の略。
某所の地下、電気カートがかわいらしく動き回り大勢がいそがしく働く極秘の軍事施設。

撮影はIMDbのリストにあるこちら。

Los Angeles Memorial Sports ArenaW
3939 S. Figueroa Street, Exposition Park, Los Angeles, California, USA

なるほど確かに施設の廊下の部分が湾曲していますし、観客席に通じていそうな階段もちらりと見えます。
結構気になっていたので、今回撮影場所がわかってスッキリ。

ロケ地としては、すぐ北側にドラマ『BONES』の「ジェファソニアン研究所」として登場している建物があり、さらにその北側は南カリフォルニア大学のキャンパスで、当サイトでチェック済みだけでも、『卒業』やドナルド・プレザンスも出演した『パラダイム』が撮影されています。

資料

コメント

  1. たかマックィーン より:

    この映画に、ロケ現場が存在したとは!
    当たり前のようですが、
    なんだかすべてセット撮影なんだろうな~などと
    観ておりましたので、
    驚きました。
    そして、サントラです、
    ローゼンマンといえば、
    突撃隊 コンバットもそうでしたが、まさかこの映画の音楽が、
    特撮に目が行って、というよりもラクエル・ウェルチに目が行って(笑)気がつきませんでした。
    勉強になりました。

  2. 居ながらシネマ より:

    たかマックィーンさん、意外なロケ地が見つかると嬉しいですよね。
    昔の映画は特撮は駆使していてもこういう手作り感があってなんとも愛おしい気がします。

  3. たかマックィーン より:

    昨夜、急に ミクロの決死圏 を観てみました。
    居ながら様のロケルポを意識しながら観ましたら、またひと味違う観点から観ることができました、ありがとうございました。音楽も、あー!ここから! 地下施設も、
    スポーツアリーナなんだあ、と感心しきりです。
    とりわけ、前段で、車ごと地下に降りていくシーンは、もう007でも観ているようで、警備員から何からテレビのタイムトンネル と共用ではないかと思うくらいですが、
    案外そうなのではないでしょうか。
    スポーツアリーナの螺旋通路は、やはりテレビの
    逃亡者 で使われていたように思います。
    このサイトは、記憶を呼び起こす、きっかけを与えてくださっています。
    誠にありがたいことです。

  4. 居ながらシネマ より:

    (たかマックィーンさん、コメント二重になっていたのでひとつ削除しました。最近データベースが重いのでそのためだったかと思います)
    『タイム・トンネル』なつかしいですね。
    スペクタクルシーンなど他の映画からよく拝借していましたから、こちらの映画も共通項があるかもしれません。
    アリーナは一度アリーナだと思ってみると秘密基地ではなくアリーナの通路にしか見えなくなるのが不思議ですね。
    らせん通路が『逃亡者』にも登場していたというのも十分ありそうです。
    『逃亡者』は数年前にケーブルテレビで放送していてなつかしく見ていましたが、『タイムトンネル』もどこかで流してくれないものでしょうか。

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