『嘆きのテレーズ』 Thérèse Raquin (1953)

嘆きのテレーズ [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『エヴァの匂い』から悪女つながり。
……といっても、どちらもいわゆる悪女の範疇からは外れてしまっているかもしれませんが。

エヴァの方は男を手玉にとる計算尽くしの悪女……というよりは、目先のお金には執着があるようですが他には何を考えているのかよくわからないキャラ。
本人は何かたくらむわけでもなくゴーイングマイウェイ、周りの男が勝手に自滅していく感がありました。

テレーズも不倫&夫殺しなんて書くと、第一級殺人的稀代の毒婦(死語?)のように思えますが、夫殺しは事前に綿密な計画を練った謀殺ではなく、手を下したのも自身ではありません。
起きてしまったことをうまく取り取り繕うとして、結局は破滅への道を歩んでしまうわけですが、それまでに延々うんざりするような境遇が描かれ、別の世界に身を置きたいという切なる気持ちがひしひしと伝わってきているだけに、ラストに至るまでの流れはむしろひたすら哀れ。いったんボタンを掛け違えてしまった人生のどうしようもない運命の綾といったものを感じてしまいます。

エヴァのジャンヌ・モローは1928年生まれで、テレーズのシモーヌ・シニョレは1921年生まれ。
どちらもお人形さんのような美人女優というのとは違った、コクと滋味たっぷりの女優さんですが、タイプはちょっと違う感じ。
そういえば2人は共演作はあるのでしょうか?
とっさには思いつきませんが……

映画の方も10年ぐらいしか離れていない両作品ですが、ヌーベル・バーグのビフォーアフターという感じでだいぶスタイルが異なりますね。
『嘆きのテレーズ』は比べてしまえばクラシックなたたずまいですが、さすがマルセル・カルネ監督、それぞれの登場人物を的確なタッチで描き分け、見応えのあるクライムサスペンスに仕上げています。
撮影ロジェ・ユベール、音楽モーリス・ティリエ。
原作は文豪ゾラの『テレーズ・ラカン』。映画の原題もそのままとられていますが、内容は現代風にアレンジされています。

そのテレーズ・ラカン(Thérèse Raquin)にシモーヌ・シニョレ。
終始不機嫌なように口を一文字に結んでいますが、窓から恋人たちの様子を見る時の穏やかな表情が印象に残ります。
体が弱く、マザコン……と言われても仕方ない夫カミーユ(Camille)にジャック・デュビー。
息子を溺愛する母親にシルヴィー。
テレーズに接近した運転手ローランにラフ・ヴァローネ。イタリア系という設定でしょうか。IMDbのトリビアによると、吹替えではなく地声のようです。
事件の目撃者となる水兵にローラン・ルザッフル。中古自転車屋をやりたかっただけというささやかさな夢が、泣かせます。

ロケ地

IMDbでは記載がありません。
設定ではリヨン。撮影地もリヨンのようです。
リヨンを舞台にした映画は、当サイトで取り上げるのは初めて。

OPの広場

最初に短く写る広場。

ベルクール広場(Place Bellecour)W

Place Bellecour

映画でもこの画像のように背景の山にお城のような聖堂W電波塔Wが見えていますね。

※13/3/6 追記

©1994 milou アルバム『リヨン』から

milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)

映画とほとんど同じ角度。
ローヌ川の対岸、Piscine du Rhoneからの眺め。
撮影は1994年とのことです。

噴水のある広場

テロー広場(La place des Terreaux)W

La place des Terreaux

川縁

人々がペタンクに興じているところ。

まず最初のカットで背景に見えている橋をチェックしてみました。
画像検索から、ローヌ川に架かるPont GallieniWという橋の建て替えられる前の姿だとわかり、周囲の建物などから北側から写されていることがわかりました。
よってカメラ位置はこのあたりで、南向き。

Pont de l’Université

テレーズがぼーっと見ていたのは、すぐ北側に架かる Pont de l’UniversitéWの方角。

※13/3/6 追記

©1994 milou アルバム『リヨン』から

こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
Pont Gallieni 上から北北東向きでPont de l’Universite を見た構図。
撮影は1986年とのことです。

※13/3/9追記

©1994 milou アルバム『リヨン』から

milouさんから画像を追加提供していただきました。

撮影は1994年とのことです。

©1994 milou アルバム『リヨン』から

カミーユの勤務先

貨物列車が出入りする集荷場。
おそらくこういった場所かと。

ラカン家の住まい

1階が家業の生地店で、2階が住まい。
お店の前が幾度かいろいろなアングルで写ります。
この路地、最初はセットかと思いましたが、少なくとも水兵がバイクでやってくるショット(1:08頃)はリヨンの街の画像で確認できました(後述)。
それ以外のお店やその周辺はセットなのではないかと思われます(確証はありません)。

ローランの部屋

“HOTEL DE LA TERRASSE”とあります。
1階がカフェ。
坂道の上にあり、右側にはさらに急な上り階段。

地形や日差しから見ておそらくこのあたりかと思うのですが、大きく変わっていて確かめようがありません。

※13/3/19追記

©1994 milou アルバム『リヨン』から

参考画像となりますが、似たような雰囲気のお店の画像をmilouさんから送っていただきました。
(いつもありがとうございます♪)

トラムでやってきたところ

0:26頃。
地形的に市の北側、ローヌ川沿いのこのあたりではないかと思われますが、どうでしょう??
船着き場もありますし。

ダンスホール

トラムから降りて、テレーズがやってきたところ。
“RESTAURANT-DANCING du MOULIN BRULE”とありますが、設定上のものでしょうか。
その前にテレーズが歩いて行く池のある森は、上記トラム乗り場の近くの公園、Parc de la Tête d’OrWかもしれませんが、確証はありません。

パリの親戚のところに行くために列車に乗るところ。
駅舎の外観が写らないので、特定は難しそう。

参考までに、現在リヨンにある駅で目に付くのは、リヨン・パールデュー駅(Gare de Lyon-Part-Dieu)や、リヨン・ペラーシュ駅Gare de Lyon-PerracheW

このうちリヨン・パールデュー駅は1978年開業で、それまではすぐ北側にブロットー駅(Gare des Brotteaux)Wという駅があり、1982年に廃駅となっているとのこと。
……ということで、映画に登場したとしたらこちらの方。

構内アナウンスからは、列車は、マルセイユ方面からやってきて、この先マコン、シャロン・スュル・ソーヌ、ディジョン、パリへと向かうようです。

※13/3/9追記
こちらもmilouさんから画像を提供していただきました。
参考画像となりますが、撮影は1994年とのことです。

©1994 milou アルバム『リヨン』から

Lyon-Part-Dieu駅。

©1994 milou アルバム『リヨン』から

Lyon Perrache駅。

※13/3/18追記
milouさんからコメント欄で情報寄せていただきました。
アナウンスからLyon Perracheだとわかるそうです。
これでスッキリ。ありがとうございました♪

事故現場

0:55頃。
小さい鉄橋の脇。
さすがに場所を突き止めるのは難しいでしょうか。

裁判所

1:07頃。
テレーズが出てきて石段を降りるところ。

Palais de justice historique de LyonW

交差点

(※2013/3/6 この項目間違えていたので全部書き直しました。milouさんご指摘ありがとうございます。)

水兵がバイクでやってきて警官に道を尋ねたところ。
ソーヌ川に架かるPont de la Feuilléeの東側。

バイクがやってくる路地

水兵がバイクでやってくる路地。
こちらのように見えます。

場所はソーヌ川の西岸。裁判所(後述)の裏手を南北に延びるrue Saint Jean。
水兵は南からやってきて、このあたりに停まります。

上の画像はカメラ南向き。
背景、曲がりくねった路地の奥、左手に見える教会↓

Cathédrale Saint Jean-BaptisteW

背景、右側の曲がって並んでいるビル↓

水兵はバイクを停めると(本人から見て)右側を見ますので、そちらにラカン家のお店があるという設定でしょうか。
ただ、ゴーグルをはずすアップのカットでは、足下の路地の形や照明が違ってきますので、そこから先はセットのような気がします(確証無し)。

お店の前

1:08頃。
水兵が見つめる中、テレーズが帰宅するショット。
トラック事故の際にも何度か写りますが、そんなアクションシーンの撮影も考えれば、お店とその周辺はセットなのではないかと思います。

時計台(13/3/18追記)

時刻を非情に告げる鐘楼。
こちらもmilouさんからコメント欄で情報寄せていただきました。
場所はこちら。

Hôtel-Dieu de LyonW

Chapelle de l’Hôtel Dieu ※13/3/19追記
miluoさんにコメント欄で補足していただきましたが、Chapelle de l’Hôtel Dieu ということで、病院のChapelleのようです。

ポストのある坂道

ホテルのメイドが手紙を持ってくるところ。

残念ながらポストは見当たりません。

パンすると、ラストのこの眺め。
最初のタイトルバックにもなっています。
リヨンに行ったら、ここはぜひ押さえたいですね。

 
 
 

リヨンの映画館(13/3/19追記)

参考画像となりますが、milouさんから提供していただきました。
いつもありがとうございます♪

©1994 milou アルバム『リヨン』から
©1994 milou アルバム『リヨン』から
©1994 milou アルバム『リヨン』から

 

あ、『羊たちの沈没』だ 😀

©1994 milou アルバム『リヨン』から
©1994 milou アルバム『リヨン』から

ロケ地マップ


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資料

更新履歴

  • 2015/09/10 SV更新

『嘆きのテレーズ』 Thérèse Raquin (1953)” への11件のコメント

  1. まずテレーズの家はRue de Saint Jean で正解ですが
    SVがないので確認はできないものの台詞で番地も言っています。

    次に水兵が道を尋ねる場所は、もう少し北の
    Pont de la Feuilee です。橋の欄干(?)も変わっていないし
    対岸に見える白っぽいビルもそのままです。

  2. milouさん、コメントと画像ありがとうございました。
    橋の方は確かにSVで簡単に確認できましたね orz…
    元の文章を残すと混乱するので、全部置き換えてしまいました。ご了承ください。
    お店の方は、SVさえ使えれば……というところですね……

  3. 1:45 分過ぎ、水兵が死んだあと時計台のある教会のような建物が見え5時の鐘が鳴ります。
    場所は Rue Louis Paufique の Rue de la Republique との交差点から南南東を見たもの。
    映画の流れではポストの近くに思えますが全然違う場所ですが…

    ちなみに、この建物は教会ではなくHôtel Dieu(施療院)で住所(前の広場)も
    Place l’Hopital となっています。
    百科事典によると6世紀中ごろにリヨンにオテル・デューがつくられた、
    とあるが同一のものかは分かりません。

  4. 駅は Lyon Perrache でした。44:20ぐらいの2回目めの
    アナウンスで言っています。

    ちなみに僕が持っているBS2放送分の字幕では
    “マルセーユ アビニョン ヴァランス経由
    マコン シャロン・シュール・ソーヌ
    ディジョン パリ”
    とすごい遠回りをするようです。
    もちろん正解は en provenance でマルセーユ発
    マコン以降はpour le destination で行き先。
    通ってきたから経由でも間違いではない??

  5. milouさん、毎度どうもです。
    鐘の場所ありがとうございます。よくわかりましたね。確か調べようとしてすぐに諦めたような記憶が……。
    教会ではないというのも意外ですね。
    それから駅も解明ありがとうございます。アナウンスで言っていましたか orz..
    フランス語はとんとわからないので、助かります。
    記事本文の追記は週末にでもやりますので、もう少しお待ちください。

  6. milouさん、遅くなりましたが、本文に追記しました。
    アナウンスの字幕ですが、VHSでは、
    「1番線に到着の列車は、マルセイユ発パリ行きの…
    停車駅はマコン、シャロン、ディジョン……」

    先日のNHKBSプレミアムシネマでは、
    「ただ今1番ホームに マルセイユ アビニョン バランス方面からの
    列車が到着しました
    この列車の行き先はマコン シャロン・シュル・ソーヌ ディジョン パリ」

    といった感じで、駅名がずらずら並ぶため限られたスペースで訳すのに苦労しているようですね。

    関係ありませんが、このエントリー、以前VHSでチェックして長いこと下書きのままほったらかしにしていたのですが、HD放送を録画できてからは一気にロケ地チェックがはかどり、アップすることができました。ロケ地探索は昔の映画の方がずっと面白いので、そういう意味からも、どんどんHD放送して欲しいですね~

  7. Hôtel Dieu について補足訂正しますが敷地全体は
    Hôpital de l’Hôtel-Dieu et Musée des Hospices Civils でGoogle Map などではHôtel Dieu としか表示されないが Wikimapia の Open Street Map を見ると時計台のある建物にはChapelle de l’Hôtel Dieu その奥(東)の建物は Hôpital de l’Hôtel Dieu と表示されている。
    Chapelle とはクラウン仏和によると礼拝堂, (聖堂の資格を持たない)教会、とあるので正確には
    やはり教会と言えますね。

    まったく関係ないが、地図を見ると現Starbucks のあるレピュブリック通りを100メートルほど南に行くと Cinema Pathe というシネコンがある。僕の記録を調べると、ここではジャン=ポール・サロメ監督の 「Les Braqueuses」(未)という映画を見ている。IMDB を見ると初劇場映画らしいが内容は覚えていない。ほかにも何本か見たはずだが記録にはない。

  8. milouさん、送っていただいた画像アップさせていただきました。
    補足もありがとうございます。
    だんだん思い出してきましたが、この時計台、最初”lyon eglise”で画像検索かけてすぐには出てこなかったので画像から見つけていくのは早々にあきらめたのでした(最近目が疲れやすいので、画像検索は最初の1ページであきらめるようにしています……)
    もっとも今”lyon chapelle”で画像検索かけても出てこないので、同じことでしたが。
    ヨーロッパは教会が手掛かりとなることが多いのでよく検索かけますが、逆に結果が出すぎて目的のものにたどりつけないことが多かったりもします。

  9. 『羊たちの沈没』なんて変な映画を見たんですね。確かにポスターが映ってますね。
    実は僕の記録で、この映画は日時不明で場所は外国となっている。
    ということは時期的に見て恐らくこの劇場で見たのでしょう。
    何となくイタリアで見たように思っていたが公開の94年にイタリアには
    行ってない。リヨンでは4,5本見たはずだが記録漏れで…

    見る気になった理由はポスターと英語題の見事さ「The Silence Of The Hams」
    (日本語題名も見事)、ラムとハムの語呂合わせに感心したのだが
    実はイタリア語原題が「Il silenzio dei prosciutti」でハムの沈黙なので
    単に英語に直したに過ぎず偶然の産物(?)
    映画の方は…見事なパロディ・ポスターで内容も想像できたが
    『氷の微笑』のパロディぐらいしか覚えていない。

    それにしても、まったく関係のない写真まで載せて貰って恐縮です。

  10. milouさん、こちらこそいつも貴重な画像、ありがとうございます。
    このポスターは一回みたら忘れられません。
    (本編はビデオで一回見ただけできれいに忘れましたけど 😀 )

    それはともかく、ロケ地のピンポイント画像だけでなく、こうした画像も体験記とあわせていつも楽しませていただいています。
    こんな感じで参考画像として掲載させていただきますので、これからもご遠慮なくお寄せください。

  11. モローとシニョーレの新旧美人・・・なかなかでしたね。
    「テレーズ・ラカン」・・フランス映画の雰囲気にひたれましたね。

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