『肉弾』 (1968)

肉弾 [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『無常』で寺田農さんのことを書いた際にこちらの映画に触れたので、勢いでアップ。
戦争末期特攻隊員となったひとりの若者の姿を、岡本喜八監督独特のコミカルでシュール、しかし切ないタッチで描きます。
こちらもATGですが、アート指数がいたずらに高い映画ではなく、それこそテレビの前で寝っ転がってでも見ることができそう。でも見終わる頃にはきっと体を起こしているはずです。
最初に見たのはたしか高校生の頃。非常にインパクトがあり、以来岡本喜八監督作を求めて名画座を巡る日々が続いたのでした。

魚雷とくっついたドラム缶の中で縮こまり沖合を漂っている主人公「あいつ」に寺田農さん。「あいつ」そのものになりきった入魂の演技は素晴らしく、寺田農さんといえばこの映画を今でもすぐに思い出します。
「あいつ」が出会った少女に大谷直子さん。これが映画デビュー作。別名「うさぎ」
やたらビンタを張る区隊長に田中邦衛さん。
「あいつ」が立ち寄った古本屋の爺さんに笠智衆さん。
その妻に北林谷栄さん。「観音さま」
途中道を訊いた憲兵に中川一郎さん。
少女のお店の従業員、前掛のおばさんに春川ますみさん。
傘をさした「あいつ」を咎めた軍曹に小沢昭一さん。

特攻か、特攻ってのは神様だろ。神様なら神様らしくちゃんとして、傘なんか差すな。
神様は明日からです。今日は人間です。

その妻に菅井きんさん。
海岸で知りあった少年に雷門ケン坊さん。
回想シーンで登場する「厳格な父」に天本英世さん。
「色っぽい母」に三橋規子さん。
砂丘のモンペのおばさんに三戸部スエさん。
海辺でひとり酒を飲んでいた連絡係の下士官に高橋悦史さん。
オワイ船の船長に伊藤雄之助さん。

ナレーションは仲代達矢さん。
前半繰り返される「大したことはない」が絶妙でした。
まるで小説版『スローターハウス5』の”So it goes.”(そういうものだ)のよう(『肉弾』が先)。
でもそのぼやきはこの叫びによって断ち切られます。

俺は死ねる、これで死ねる、君を守るために死ねるぞ

シニカルなユーモアでくるんでいても、中身は戦中派の熱い思いがたっぷり。
8月15日は毎年この映画を放送すれば良いのにと思います。

監督・脚本岡本喜八。『斬る』(68)と『赤毛』(69)の間。
撮影村井博、音楽佐藤勝。

 
 

ロケ地

前半はおそらくどこかの階段やセットや廃屋での撮影、後半に至っては砂と海しかありません。
資料なしにロケ地を映像だけで探るのはほぼ不可能なこの映画、ロケ地と無関係のメモ書きで許してください。

再会

因数分解をしながらの再会。ドンとぶつかるなんて、まるでラブコメです。
空襲にやられたどこかの駅という設定でしょうか。
駅名標示が「洲浜(すはま)」とありますが、まあこれは小道具でしょう。

砂丘

日差しを見ると、どちらかと言えば太平洋を向いているような気がします。
たとえば遠州大砂丘(中田島砂丘W等)なんてどうでしょう??
現在海浜公園となっている部分も砂浜だったようで、昔はさらに広く感じられたと思います。

※18/3/25追記
コメント欄でBill McCrearyさんから情報を寄せていただきました(2018年3月24日 23:13)。
静岡県の浜岡砂丘とのことです。
上記で推測した中田島砂丘より、3,40km東。

海水浴場

芋を洗うような海水浴場。
若者たちが横一列で海へ飛び込んでいきますが、真ん中の白いビキニの女性は大谷直子さんでしょうか?

資料

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岡本喜八監督作

更新履歴

  • 2018/03/25 「砂丘」追記
  • 2014/11/24 新規アップ

『肉弾』 (1968)” への4件のコメント

  1. これはロケ地の特定は難しいでしょう。海と砂浜ばかりですからね。

    大谷直子が実に初々しいですね。少し秋吉久美子に似ています。

    「明治百年記念芸術参加作品」と冒頭にありますが、本当にこんな芸術祭があったのですか。
    本当にあったなら、岡本監督作品参加とはジョークですね。

    この作品は『斬る』(68)と『赤毛』(69)の間とありますが、一瞬ミズかと思いました。雷蔵の『斬る』と同名の映画を喜八監督は撮っていたのですね。

  2. 赤松さん、ロケ地の特定はまずムリな映画ですが、砂丘は粘ればわかるかもしれませんし、高橋悦史さんがいた水際の廃墟のようなところも実在のものだったかもしれませんね。
    ただそこまで追究するなら、映画製作の資料にあたってしまった方が早そうです。

    「明治百年記念芸術祭参加作品」って日活の『あゝひめゆりの塔』などもそうだったようですが、これに限らず芸術祭って「参加作品」というタイトルが大事のような……

  3. こんばんは。本日都内某映画館で下の本を読んだところ、ロケ地は静岡県の浜岡砂丘だそうです。

    https://www.amazon.co.jp/dp/4480428933/

    岡本監督の著書もいろいろあるし研究書もありますので、参照すればわかることもありそうです。

    それでなぜ某映画館に岡本監督の著書があったかというと、その映画館で岡本監督の特集があるからです。

    http://www.laputa-jp.com/laputa/program/okamotokihachi04/

    これはめちゃくちゃ楽しみです。うれしくて仕方ありません(喜)。

    それですみません。以下余談です。ロケ地に関することということでご了解ください。私がその映画館に行ったのは、内藤洋子主演の「伊豆の踊子」を観るためでしたが、映画館に当時の資料(プレスシートなど)のコピーがありまして、読んだところ、伊豆で実際にロケーションを行い、それが1967年の1月で期間が12日間、映画の舞台の時代とそぐわないところだらけだったので、道路に泥を撒いたり屋根を古臭くしたり、カメラアングルに気を付けたり、というような趣旨のことが書かれていました。

    Wikipediaによると、映画の公開が同年2月25日ということで、ほぼロケから1か月かそこらで公開までいったわけで、当時で言う和製英語「プログラムピクチャー」(この映画はそうではなかったのかもですが)はだいたいそうだったのかもですが、そのわずかな間にアフレコ、編集、宣伝などさぞ忙しかったろうなと思いました。なお私が観たところ、ロケはそんなに違和感はなかったかと思います。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E8%B1%86%E3%81%AE%E8%B8%8A%E5%AD%90_(1967%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

  4. Bill McCrearyさん、ロケ地情報ありがとうございました。本文に追記させていただきました。
    当たるとも遠からずといったところでしたか。
    確かここは「南を向いている大きな砂浜」ということで、当てずっぽうで書いた記憶があります。緯度が低い地域では使えませんが、日本やヨーロッパのロケ地チェックでは、日差しの向きはコンパスに匹敵する生命線だったりします(笑)。

    岡本監督でしたら、いろいろ資料本が出ていることでしょうね。
    今のところのマイルールでは、よくよく気になるところだけ資料本を漁ってみるという感じですが、もちろんいったんアップした記事については、情報寄せてくださったり、間違いをツッコンでいただくのは大歓迎です。また何かありましたらよろしくお願い致します。

    内藤洋子さんの『伊豆の踊子』は見たことがありませんが(百恵さんのはリアルタイムで見ました 🙂 →『エスパイ』参照)、スタッフの苦労が目に浮かぶようですね。

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