記事内の商品画像には広告リンクが含まれています

『億万長者』 (1954)

億万長者 [DVD]

作品メモ

ひとつ前のエントリー『ジャン・ルノワールのトニ』同様、なぜか下書きのまま長いこと放っておいたエントリー。
もしかすると『太陽を盗んだ男』のエントリーと一緒に書き始めたのかもしれませんが、今となっては忘却の彼方です。

気弱な税務署員を中心に、傾いた家に住むボンビーな一家、その2階に下宿して原爆を作っている活動家、出所したばかりの悪徳代議士、したたかな赤坂の芸者さんなど多彩な登場人物が繰り広げるドタバタ劇。
コメディには違いないのでしょうけど、なかなかブラックで、例えばラストなど地上波で放送するにはかなりの勇気がいりそうですね。

今の目線で見ると凄い面々が何気に次々登場。
クレジット順に列記しますと、木村功、高原駿雄、春日俊二、岡田英次、久我美子、左幸子、山田五十鈴、伊藤雄之助、多々良純、加藤嘉、信欣三、北林谷栄、原泉、薄田つま子、関京子、高橋豊子、織本順吉、西村晃、清村耕次(クレジットでは耕二)、野本昌司、織田政雄、嵯峨善兵。

個人的なツボは、あんなにきれいなのにあんなことしている久我美子さんでしょうか。
彼女がせっせと手作りで原爆を作るところといい、国会議事堂への突撃といい、伊藤雄之助さんといい、どうしても『太陽を盗んだ男』を連想してしまいます。
あとは、ラストのお二人ですよね~ これなぜか胸キュンとなりました 🙂

監督脚本市川崑。脚本協力に安部公房、横山泰三といった名前があります。
撮影伊藤武夫[1]Wikipediaでは別人にリンクが付いていますので注意、音楽団伊玖磨。

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

当時の街角が次々登場し、タイムカプセルとしての昔の映画の機能をいかんなく発揮♪
特にあの傾いた家がどう見ても国会議事堂のすぐ間近、都内一等地にあるはずなので、そのあたりを中心に、いくつか気になった撮影ポイントをチェックしてみました。

OP

久我美子さんが熱弁を振るっていたのは、数寄屋橋のたもと。
もちろん堀が埋め立てられて外堀通りになる前、まだ橋として存在していた頃です。

行列のできた電話ボックス

0:15

これどこなのかとても気になるのですが、いまだ調査中。
銀座周辺のどこかだと思いますが、わかりそうでわからないのがいちばんモヤモヤっとします。

傾いた家

0:20他
セットと思いますが、見事に傾いてますね(笑)。

場所としては、国会議事堂のすぐ北側、現在の国立国会図書館の北側の端で、このあたり↓

建物のすぐ向こう側に、カマボコ型の建物がずらりと並んでいますが、三宅坂にあった米軍のパレスハイツ。
現在は最高裁判所と国立劇場になっています。

背景に時折映る高い鉄塔は、紀尾井町にあった千代田送信所の電波塔。
現在は千代田放送会館Wが建っています。

ダッシュ

0:26
原爆製造中と聞いて外へ飛び出し、100km圏外へ見事なダッシュを見せる木村功さん♪

家の外

隼町の交差点を赤坂見附方面へ駆け抜けています。
現在はこの上を首都高速4号新宿線が走っていますが、『惑星ソラリス』の首都高速の場面の3カット目が、ここを東向きに通過しています。

品川

『幕末太陽傳』や『ゴジラ』でおなじみの、八ツ山橋。

横浜

山下橋

今はトラス部分がなくなり上に首都高速が走っているため、まったく面影がありません。

小田原

十国峠の標示が出ていますが、どこでしょうか??

沼津

到着した橋はこちら↓

帰りは沼津駅。

銭湯

0:33
長寿湯とありますが、どこでしょう?

国会議事堂

0:37
議事堂の裏側(西側)。『太陽を盗んだ男』のゲリラ撮影とは反対側。

振り返ると議員会館で、はす向かいが首相官邸(の裏手)です。

伊藤雄之助さんが歩いて行くのは、

堂々と撮っていますので、撮影許可は得ている感じですね。

下り坂

0:39
木村功さんが左幸子さんと一緒に徴税に向かう坂道。

おそらく現在で言えば国会図書館の西側のこちら↓ もはや当時の面影はまったくありません。

線路際

0:48
大きなビルの上に立つ煙突から、黒煙がもくもくと吐き出されています。
この建物は、新橋駅の側にあったこちら。

新橋第一ホテルW

次のエントリー予定『暁の追跡』でも登場しています(0:11頃)。

上り坂

0:49
日雇い労働中の久我美子さんと話すところ。
右手奥に国会議事堂が頭を覗かせています。

おそらくこちら↓

養成所屋上

0:56

交通事故

1:12
伊藤雄之助さんが退場するところ。
背景右手に昔の銀座松坂屋が見えますので、銀座通りのこちら↓  今で言えば、GINZA SIXの角。

『太陽を盗んだ男』のラストと、ほぼ同じ位置ですね(汗)。

資料

更新履歴

  • 2018/11/11 新規アップ

References

References
1 Wikipediaでは別人にリンクが付いていますので注意

コメント

  1. 赤松 幸吉 より:

    冒頭の「日本新名所」紹介から始まって、木村が東京から沼津へと走って逃げる道々の光景は、さすが65年も経つとすべてすっかり様変わりしていますね。

    一カ所でも映画と同じ風景があれば、感動ものでしたが。

    この映画は当時のさまざまな世相を戯画的に反映しています。

    中でも、主人公が原爆(放射能)の恐怖から逃げ出すために、東京脱出を敢行するというのは、今の人から見れば「噴飯のもの」でしょうが、当時の人々は真顔で原爆や水爆への脅威や不安を日常的に感じていたものでした。

    映画でも「生きものの記録」「ゴジラ」「第五福竜丸」などで、このテーマはしばしば取り上げられました。

    このサイトのサポーターは洋画ファンがほとんどでしょうけれど、これは市川崑監督の新東宝時代の傑作です。

    この映画は某インターネット動画配信サービスで廉価で見ることが出来ますので、是非ご覧ください。

  2. 居ながらシネマ より:

    赤松幸吉さん、コメントありがとうございます。
    あまり日本映画をとりあげずにすみません。
    予告ですが、以前ご紹介いただいた『宮本武蔵一乗寺の決斗』、決闘場面の撮影場所が特定できたので、近いうちアップしますね。

    ロケ地チェックとなるとこの映画は仰る通りあまりにも様変わりで、とっかかりすらないですね。
    でもなにより国会議事堂の間近にポンコツの家があるというのが凄いインパクトで、しかも今の目線で見れば名優たちがテンション高く怪演を繰り広げるという、おそらく当時より60年以上経て、時間差によってさらに驚愕度合いが増している素敵な映画に思えます。

タイトルとURLをコピーしました