『スローターハウス5』 Slaughterhouse-Five (1972)

スローターハウス5 [DVD]

こんにちは
さようなら

作品メモ

ひとつ前のエントリー『ドイツ零年』は、戦争の爪痕も生々しいベルリンが舞台でしたが、こちらはベルリン以上に凄まじい空襲を受け焦土と化したドレスデンがお話の要となる映画です。

原作はカート・ヴォネガット・ジュニアの同題小説。
捕虜として現地で体験したドレスデンの爆撃Wをテーマに、『タイタンの妖女』や『猫のゆりかご』と同様、大人の寓話的な物語を紡いでいます。

屠殺場5号 (1973年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

翻訳は映画化の翌年(73年)にハヤカワノヴェルズとして出版。
『屠殺場5号』という、今となってはIMEが漢字変換してくれない邦題で、映画のスチルが表紙になっていました。

スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302) 日本での映画公開は75年で、邦題は『スローターハウス5』。
そのさらに数年後に映画と同じタイトルで文庫化。
表紙はやはりスチルを使用していましたが、後で和田誠さんのおなじみの装幀に変わっています。

映画の方は原作通り「時間のなかに解き放たれた」男を主人公にして、時空間を細かく行ったり来たりする構成をとっています。
いわば編集が命の作品。
うまくノレなかった人には、ただのカットバックが忙しく繰り返される映画にしか見えないかもしれませんね(汗)。

監督ジョージ・ロイ・ヒル。『明日に向って撃て!』(69)『スティング』(73)の間。
さすが絶好調時の作品とあって、映画化が難しいと思われる原作の世界を巧みに脚色。静かなタッチにユーモアと哀しみをしのばせ、原作が持つ浮遊感覚ともいうべき不思議なテイストをきちんと表現できていたように思います。

脚本スティーブン・ゲラー、撮影ミロスラフ・オンドリツェク、編集デデ・アレン 。
出演は主人公ビリー・ピルグリムにマイケル・サックス。他ロン・リーブマン、ユージン・ロッシュ、ヴァレリー・ペリン。

 
 

テーマ曲

 
上掲動画↑の1分頃から聞えるのが、タイトルバック等で流れるいわばテーマ曲。

バッハ「ピアノ(チェンバロ)協奏曲第5番ヘ短調 BWV1056 第2楽章」W

Glenn Gould Jubilee Edition: Music From Slaughterhouse-Five クレジットにもあるように、演奏はグレン・グールド。
サントラも出ているようですが、普通にグレン・グールドのCDを買っても良いかもしれません。

 

 
 
 
この曲、これまでのエントリーで言えば、『ブラインドネス』でも、がらんとした街角で聞えていました。
映画では『恋するガリア』(65)が先輩。

「カンタータ第156番 «わが片足すでに墓穴に入りぬ (Ich steh mit einem Fuss im Grabe)» BWV156」も同じメロディーです。
通称バッハのアリオーソ。

今日では実に様々な楽器で演奏されています。

 

バッハ使用曲

テーマ曲を含めて随所にバッハが流れます。
曲別にリストアップしますと……

  • 「ピアノ(チェンバロ)協奏曲第5番ヘ短調 BWV1056 第2楽章」 (タイトルバック、中盤の円盤出現×2箇所)
  • 「ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第18変奏」 (OPのタイプライター、後半の人形)
  • 「ピアノ(チェンバロ)協奏曲第3番ニ長調 BWV1054 第3楽章」 (駅に到着)
  • 「ブランデンブルク協奏曲第4番 ト長調 BWV1049 第3楽章」 (収容所までの道)
  • 「ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第25変奏」(空襲の後少年兵が飛び出していく場面)
  • 「トッカータとフーガ ヘ長調 BWV540」(エンドタイトル)

エンドタイトルのオルガンは、グレン・グールドとは思えませんが未調査。

So it goes

原作では死に関わる描写で必ず繰り返されるこのフレーズ、映画では登場しません。
翻訳では「そういうものだ」。

どうでも良いこととは思いますが、いったい何回登場するのか気になるのが人情。
電子書籍版を全文検索してみたところ、107件ヒットしました。
もしかするとこれまでに紙の書籍版で一生懸命数えた人がいたかもしれませんが、今ではほんの数秒で答えを得られてしまいます。
良いことか悪いことかわかりませんが……そういうものだと思うほかありません。

同様にモンタナが下げていた印象的なペンダントも、映画では文字までは見えません。

ニーバーの祈り(Serenity Prayer)W

小説ではこういった↓文言。

God grant me the serenity
to accept the things I
cannot change, courage
to change the things
I can, and wisdom
always to tell the
difference

ロケ地

IMDbでは、

Prague, Czech Republic
Lake Minnetonka, Minnesota, USA
Barrandov Studios, Prague, Czech Republic
Czech Republic
USA
Downtown Airport – 2700 Airport Road, St. Paul, Minnesota, USA
Excelsior, Minnesota, USA
Minneapolis, Minnesota, USA

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

ドレスデンという設定で市街地の撮影が行われたのはプラハ。
『レマゲン鉄橋』(69)のエントリーでソ連のチェコ侵攻によりチェコスロヴァキア国内での撮影を切り上げたエピソードを書きましたが、その数年後となります。
また『暁の7人』(75)から見れば、3年先駆けのプラハ・ロケです。

遠景

0:45
貨車からの眺め。
「美しい」「オズの国だ」のセリフの遠景は、プラハではなく実際のドレスデンでした。
エルベ川の北側(右岸)のこのあたりからカメラ南向き。

こちらの絵↓と同じアングルです。

ベルナルド・ベッロット(Bernardo Bellotto)W
「アウグスト橋下流のエルベ川右岸から見たドレスデン」(Dresden vom rechten Elbufer unterhalb der Augustusbrücke)W

By Bernardo Bellotto
via Wikimedia
Commons (public domain)

この構図はカナレットビュー(Canaletto view)と呼ばれ、ドレスデンの代表的な景観となっているようです(知らなかった……) 。
「カナレット」はベッロットの非公式の呼称とのこと。

Photo from Wikimedia Commons
(CC BY-SA-3.0)

1952年5月3日撮影。
左半分に脳内ズームアップしてご覧下さい。
橋の背後に見えていた円蓋が消えています。

聖母教会 (ドレスデン)W

By Suttewal
via Wikimedia Commons
(CC BY-SA-3.0)

今日の画像。
聖母教会の外観の復元は2005年とのこと。

写生されたとおぼしき場所に、カンバスに見たてたこんなフレームが置いてありました。
(スマホでは表示できないかもしれません)

今回初めてこの映画に実際のドレスデンの映像が含まれていることを知りました。
それだけでもチェックして良かったと思います。

原作のネタばれかもしれないので折りたたんでいます。クリックで開閉します。
ちなみに、「オズの国だ」と言ったのは、原作ではカート・ヴォネガット・ジュニア自身。

到着した駅

カマボコが連なる駅舎は設定では”DRESDEN”。
実際の撮影はプラハ本駅W

Photo from Wikimedia Commons
(public domain)

今までのエントリーで言えば、『暁の7人』でも登場。

収容所までの道

ドイツ軍指揮官を先頭に街の中を進んでいく場面もプラハ市内での撮影。

川縁の道1

指揮官を斜め前から捉えたショットは西側(左岸)のこちら。 

ピルグリムたちを横から捉えたショットも同じ場所(カメラ東向き)。

川縁の道2

馬車とすれ違ったのは、少しバックしてこのあたりの川縁の道(カメラ南向き)。

円蓋が見える通り

円蓋を写したカメラが下がってきて、カメラに向ってやってくる一行を捉えたショットはこちら(カメラ南向き)。

時計塔

時計塔を含む俯瞰ショットは、東側(右岸)へワープして、こちらの通り(カメラ西向き)。

時計塔はこちら。

Jewish Town Hall (Prague)W

By Buchhändler
via Wikimedia Commons
(public domain)
小橋

※16/2/1項目追加

西側(左岸)。
こちら↓の広場を東から西へ横切って……

こちら↓の橋を渡ります。

By elPadawan
via flickr
(CC BY-SA-2.0)
橋の下

※16/2/1項目追加

背後に一部見えているのは、カレル橋。

この場所を移動中に、建物の上に2つの塔が頭を覗かせているショットがインサートされますが、東側(右岸)にワープして旧市街広場のこちら。

Church of Our Lady before TýnW

By Wisniowy
via Wikimedia Commons
(public domain)

この広場は『暁の7人』などで登場。

収容所

※16/2/1項目追加

脇に動物の像が見えますが、それを手掛かりに場所をだどったところ、実際にプラハ市内にあったスローターハウスであることがわかりました。
現在はこういった施設↓

Pražská tržniceW

1983年まで現役だったとのことで、映画撮影時にはリアルな施設だったことになります。

By ŠJů, Wikimedia Commons
(CC BY-4.0)

一行はこの建物の前で曲がって施設に入っていきます。
Schlachthof(シュラフトホフ)と掲げられていたゲート部分も残っているようです。

By ŠJů, Wikimedia Commons
(CC BY-4.0)

映画で入口向って右側に見えていた像。

By Petr Janda
via Wikimedia Commons
(CC BY-SA-4.0)

映画では後ろを向いていましたが、実は向かい合わせとなっているペア。

1945年2月13日午後3時、薄暗い中を人々が渡っていた橋はヴルタヴァ川に架かるこちら(カメラ南東向き)。

カメラ位置の中州の島は、Střelecký ostrov(ストジェレツキー島)W

暴走

0:55
パニックになった妻が暴走するところ。
アメリカのパートはミネソタ州での撮影のようなので、そのあたりを調査中。

ロケ地マップ

チェコ(スロヴァキア)で撮影された映画のロケ地

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2016/02/01 「小橋」「橋の下」「収容所」追加
  • 2016/01/31 新規アップ

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