『蘇州夜曲 (”支那の夜”より)』 (1940)

決定盤 李香蘭(山口淑子)大全集

作品メモ

日本映画専門チャンネルと時代劇専門チャンネルで、今月(2015年1月)「李香蘭、そして山口淑子」として、昨年亡くなった山口淑子(李香蘭)さんの特集が組まれています。

http://www.nihon-eiga.com/osusume/sengo70/rikouran.html

日本映画専門チャンネルでのラインナップは、

(※15/2/7 その後記事をアップしたものは、記事へのリンクを付けておきました)

時代劇専門チャンネルでは、

  • 『霧笛』(1952) 監督:谷口千吉 出演:三船敏郎、志村喬
  • 『白夫人の妖恋』(1956) 監督:豊田四郎 特技監督:円谷英二 出演:池部良、八千草薫

上映や放送も限られ、ソフトも出ていないか入手困難なものが多く、貴重な鑑賞機会となっています。

まずはタイトルが……といいますか、曲が超有名なこちらの作品から。
『白蘭の歌』に続く「大陸三部作」の2作目。
上海を舞台に、日本人船員長谷川(長谷川一夫)と中国人の娘桂蘭(李香蘭)とのロマンスを描きます。

タイトル通り、服部良一作曲、西条八十作詞による「蘇州夜曲」が演奏や歌で繰り返し流れます。
レコーディングは渡辺はま子さんと霧島昇さんが行って大ヒット。
以前とりあげた『愛染かつら』のテーマ曲「旅の夜風」もやはり西条八十作詞のヒット曲でしたね。

元々は渡辺はま子さんのヒット曲「支那の夜」Wを受けての映画で(劇中歌も流れます)、映画のタイトルもそちらが使われていたようです。
「蘇州夜曲」の方はそれとは別に映画のために作られた歌。
戦後は内容やタイトルの問題があったのでしょうか、編集した形となりタイトルも「蘇州夜曲」となったようです。
こういった資料的なことは詳しいサイトがいろいろあるかと思いますので、ぜひそちらをご参照ください。

この時代の映画は物語や描き方などいろいろ微妙な面があるやもしれませんが、他のエントリー同様あくまで撮影地を確認しようという試みですので、その点ご了承の上以下ご覧いただければ幸いです。

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
ロケ地に関する資料や詳しく解説したサイトなどがあるかもしれませんが、答え合わせはしていませんので、もし間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

※大陸のウェブマップ

執筆現在なぜか大陸ではGoogleマップの地図と実写画像が東西方向にずれています。
これを含め大陸ではGoogleマップの衛星画像や地図情報があまり役に立たないため、今回は、百度(Baidu、バイドゥ)と騰訊(Tencent、テンセント)のウェブマップを併記しています(基本ご利用は自己責任でお願い致します)。

  • 百度地図・衛星 ……バイドゥの衛星画像。簡体字では「百度地图」「卫星」
  • 百度地図・全景 ……バイドゥのストリートビュー。簡体字でも「全景」
  • 百度地図・3D ……Sim CityライクなクォータービューのCG画像。マップの簡体字では「三维(三維 = 三次元)」ですが、わかりづらいので3Dと表記することにします
  • 騰訊地図・衛星 ……テンセントの衛星画像。簡体字では「腾讯地图」「卫星」
  • 騰訊地図・街景 ……テンセントのストリートビュー。簡体字でも「街景」

上海

最初は暗くてなんだかよくわかりませんが、翌朝外灘(バンド)のあたりがはっきり写ります。
今も見られる有名物件が当時も軒を連ねていたことに(当たり前かもしれませんが)ちょっと感動。

0:15頃
1ショット目、斜め右からのアングルで写るのは……

By David Berkowitz via flickr
(CC BY 2.0)

奥で尖っているのは、和平飯店W
その右隣の四角いビルは、旧中国銀行上海ビルW、さらにその右側のビルは、旧横浜正金銀行上海支店ビル(現中国工商銀行上海支店)W
……と並んでいます。

マップではこのあたり↓

2ショット目はカメラ北向きで、右へのパンで主だったビルが捉えられます。

By Legolas1024 via Wikimedia Commons
(puglic domain)

旧香港上海銀行上海支店ビルW江海関(江海关)W、その向こうに上述先の尖った和平飯店以下のビルが並びます。

マップで示すならこういった感じ。

このあたりを写す際の、定番のアングルですね。

Photo from Wikimedia Commons
(puglic domain)

こちらは1928年。

©2006 milou アルバム「中国(大陸)」から

こちらは以前milouさんから提供していただいた近年の様子。
2006年6月とのことです。

※15/2/7追記
『上海の女』 (1952)で、これらの外観ショットがそのまま再利用されていました。
この部分が『蘇州夜曲』のオリジナルなのか他の映像からの使い回しなのかまでは不明ですが、おそらく後者。

屋敷

0:33
回想シーン。場所不明。

繁華街

0:42
2階建てバスが走る賑やかな通りは、南京路のこのあたり。

背景にそびえたつのは、国際飯店(上海パークホテル)W

By Jakob Montrasio
via Flickr
(CC BY 2.0)

Wikipediaによると「上海では1983年まで最も高いビルのまま」とのことですが、今では他の高層ビルに埋もれてしまっていますね。

人力車で走る街路は、具体的には不明。
日差しを見る限り東西に延びる通りのように見えますので、もしかするとここも南京路であるかもしれません。

蘇州旅行

開映1時間ほど経ってようやく蘇州が登場。
「蘇州夜曲」がまずはインストで流れます。
馬車でやってくる道は不明。

蘇州(苏州、Suzhou)W

川縁と橋

川縁にやってきた2人。長谷川がタバコをとりだし、桂蘭が火を付けます。
ラスト近くにも桂蘭が訪れるところ。
小舟や橋が、いかにもご当地的雰囲気を醸し出しています。

蘇州ではあちこちに似たような橋があるでしょうから、今となっては突き止めるのは難しいでしょうか。
でも、ヴェネツィアの橋同様少しずつ形が違っているので、残ってさえいればもしかすると解明できるかもしれません。

Flickrでいろいろ画像を見てみましたが、映画に登場したものはこちら↓の画像くらいの大きさと意匠に見えます。
虎丘(後述)南側の水路で、虎丘に向う橋の西側に架かる橋です。
日差しの向きを考えると映画とは違うかと思いますが、イメージ画像ということで。

By kanegen via Flickr (CC BY 2.0)

虎丘

ここから先、数シーンは虎丘での撮影。

虎丘(Tiger Hill, Suzhou)W

By Gwydion M Williams via flickr
(CC BY 2.0)

虎丘塔

東洋のヴェネツィアとうたわれる蘇州で、中国版ピサの斜塔とうたわれる石塔。
正しくは雲岩寺塔(云岩寺塔、Yunyan Pagoda)Wと言うそうです。

映画ではまず塔が行く手に見える道を2人が進んでいきますが、おそらくこのあたり。

By foxmachia via Flickr
(CC BY-SA 2.0)
By Philip Lai via Flickr
(CC BY-ND 2.0)2015

ご参考までに塔のアップ。
こういう風に撮ると、かな~り傾いているように見えてしまいます。
上には登れないようですね。

マップ位置はこちら。

気になったのでピサの斜塔と比べてみました。
データはWikipediaに拠っています。

着工 完成 高さ 傾き 重量 資材
虎丘塔W 907年 961年
17世紀に上部を増築
47m
7層
約3° 7,000t 煉瓦
ピサの斜塔W 1173年 1372年 55.86m
7+1層
現在3.99°
最大5.5°
14,453t 大理石
By 螺钉 via Wikimedia Commons
(CC BY-SA 3.0)

カメラが降りてきて塔と周辺を捉えるショットは、まさにこちらの画像のアングル。
塔の南東側から撮られたもので、左下の平らな岩盤の向こう側に2つ下の項目「写真撮影」の場所が見えます。
その左端から登場した2人は、木の陰で立ち止まります。

幸福な2人

その直後のショット、桂蘭が神様にこの幸福がいつまでも続くようにお祈りするところ。
場所は2人が立ち止まった位置で、背景に見える尖った屋根の四阿は、上の画像で右端に写っています。
つまりカメラは上の画像の左端から右端向き。
腰の高さに写っている屋根は、上の画像の中央にある祠のもの。

By Gwydion M Williams
via flickr
(CC BY 2.0)

こちらは上の画像を反対側から見たアングル。
次の項目「写真撮影」で2人がいたアーチを逆方向から捉えています。
右端の上の方、短い階段の上のあたりで2人は演技していたと思われます。

写真撮影

By kanegen via Flickr
(CC BY 2.0)

写真を撮った……といいますか、撮られたところ。
2つ上の画像で左下のあたり。
アーチをくぐった向こう側が、上の項目の画像で下半分に写っている剣池(劔池)。

ここで再び「蘇州夜曲」のメロディ。
今度はそのまま歌に入ります。

こちら↓の動画を再生すると、ちょうど上の画像の場面から再生されます。

 

 
 
 

水辺の四阿

水辺に建つ四阿。中国語なら「亭」でしょうか。
ちょうど「き~~み~が~みむ~ねに~~」と歌が始まり、雰囲気をもりあげます。
蘇州は似たような庭園がいくつもありそうで判別は難しいかと思いましたが、二重の屋根で六角形の窓という特徴的な意匠でしたので、なんとか場所がわかりました(かなり苦労しました……)。

西園戒幢律寺(西园戒幢律寺、Jiechuanglu Temple)W

By Haier7917 via Wikimedia Commons
(CC BY-SA 3.0)

映画ではわかりづらいですが、湖中亭ですね。

Wikipediaによると、有名な留園(留园)Wを作った徐泰時がやはり手がけたもので、留園が東園、こちらが西園と呼ばれていたとのこと(今ではお寺の一部)。
たしかにマップを見ると、留園は道路を挟んですぐ東側にあります。距離わずか数百メートル。

川縁

外に出て2人で散策するところ。
手掛かり少なく、さすがにどこだかわかりません。

七重の塔

散策していた2人が足を止めて眺める(と言う風に解釈できるカット割りの)七重の塔。
歌は最後の「鐘が鳴ります 寒山寺~♪」のところですが、写っているのは寒山寺ではなく、報恩寺塔(报恩寺塔 )W、通称北寺塔(Beisi Pagoda)。

By Jakob Montrasio
via Wikimedia Commons
(CC BY 2.0)

小橋

穏やかな日差しの中、長谷川が寝そべり、小ぶりの太鼓橋が架かった向こう岸では桂蘭が花を摘んでいます。
ラストでも登場するこの場所、背景に上述の虎丘塔が見えるので、虎丘の周囲を巡る水路ですね。
日差しの向きや水路の構成を考えると、おそらく南東の角ではないかと思われます。

衛星画像では橋が架かっているように見えますので、その画像さえ確認できれば正解かどうかがわかりそうです。

旧満映スタジオ(参考)

李香蘭が所属していた満州映画協会、いわゆる満映のスタジオは、当時の満州国首都である新京、つまり長春市にありました。
戦後はそのまま長春電影製片廠として使われ、協会の建物は現在では博物館となっているようです。

长影旧址博物馆(長影旧址博物館)
吉林省长春市朝阳区红旗街1118号

Photo from Wikimedia Commons (public domain)

Wikimedia Commonsにあった画像ですが、おそらく満映時代のもの。
撮影年不明。

資料

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山口淑子(李香蘭)関連作

更新履歴

  • 2015/03/21 「関連記事」項目追加
  • 2015/02/07 「上海」追記
  • 2015/01/12 新規アップ

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