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『フューリー』 The Fury (1978)

フューリー [DVD]

作品メモ

エイミー・アーヴィング主演の映画をもう1本。
ブライアン・デ・パルマ監督がヒット作『キャリー』に続けて手がけたサイキック・ホラーです。

諜報部員ピーターは中東で突然襲撃を受け、最愛の息子と引き離されてしまいます。
息子は超能力を持っていて、組織に利用されようとしていた矢先でした。
すべては同僚チルドレスの謀略だと知った彼は、同じく超能力を持つ女子高生ギリアンの協力を得て息子を取り戻そうとしますが……
といったお話。

主演ピーターはカーク・ダグラス。
かたき役チルドレスはジョン・カサヴェテス。
ギリアンはエイミー・アーヴィング。
ピーターの恋人ヘスターにキャリー・スノッドグレス。

エイミー・アーヴィングは『キャリー』で脇役としておいしいところをさらったばかりですが、今度は堂々ヒロインの座を射止めています。
翌年の『ふたりだけの微笑』、翌々年の『コンペティション』と佳作での主演が続き、この時期若手女優としてひとつのピークを迎えていたと言えます。
その後、私生活ではスピルバーグ監督との結婚生活と解消という大きな出来事があり、『トラフィック』で久々に印象に残る役 [1]マイケル・ダグラスの妻役として登場したのが2000年のこと。

キャスティング面では、意外なところでギリアンの同級生役として、ダリル・ハンナと『ER』でおなじみのローラ・イネスが出ています。
2人はこれが映画デビュー作。
特にローラ・イネスの初々しさはハンパではありません。

さて『フューリー』ですが、良くも悪くも『キャリー』の成功を受けた内容となっていて、多彩な映像表現に血のりがたっぷりのったデ・パルマ節もそのまま。
アクションシーンや血管が浮き出る特殊メイクなど、映像の仕掛けはパワーアップしていますが、今の水準からするとやはり懐かしい範疇にとどまっているかと思います。

むしろ映像がパワーアップした分、物語の至らない部分や内容の稚拙な部分も目立ってしまったかもしれません。
当時の海外の雑誌の映画評が、”Windy waste of time, money and good talent.”と書いていたのを今でも覚えていますが、むべなるかな。

いくらでも面白くなりそうなこの素材、とにかくシナリオがもう少し出来が良ければ傑作になり得たかも、といううらみはありますが、「さすがデ・パルマ!」というべき冴えた演出も確かに見られますので、「やっちゃったねデ・パルマ……」という部分とあわせてまるごと楽しむのがいちばんかと思います。

ロケ地

IMDbでは

Astor Street, Near North Side, Chicago, Illinois, USA
Caesarea, Israel
Herziiya Studios, Israel
Lake Forest, Illinois, USA
Navy Bridge, Near North Side, Chicago, Illinois, USA
North Avenue Beach, Lincoln Park, Chicago, Illinois, USA
Old Chicago Amusement Park – 555 S. Bolingbrook Drive, Bolingbrook, Illinois, USA

撮影地は冒頭を除いてほとんどシカゴです。

冒頭の海岸

422px_Caesarea.JPG

“MID EAST 1977″とテロップが出ます。
撮影場所は実際にイスラエルのカイサリア。

Caesarea, Israel

画像はWikimedia Commonsから(パブリックドメイン)。

浜辺

”CHICAGO 1978″とテロップが出ます。
撮影場所は海のように見えますがシカゴのミシガン湖畔。

North Avenue Beach, Lincoln Park, Chicago, Illinois, USA

ホテルから逃げ出すところ

ホテルから飛び降り、線路を横切って向こう側の建物のMOTOROLAの看板に飛び移るというなかなか見せるアクションシーン。

ホテルはセリフにもありますし看板も映っているように、こちらです。

Plymouth Hotel
16 S Van Buren, Chicago IL

ホテルは線路の北側にありました。
1912年の物件のようですが、2002年に取り壊されたとのこと。 [2]http://findarticles.com/p/articles/mi_kmpre/is_200301/ai_n6889716/
南側の建物も今はHarold Washington Libraryという施設に建て替えられています。

すぐ西側に駅がありますが、Wikipediaによると、1973年に一度閉鎖され1997年に再び使われ始めたとのことで、撮影当時は使われていなかったことになります。

一夜を明かした屋上

そのまま日中へオーバーラップするという印象に残るカット。

エスカレータと素通しエレベータ

パラゴン研究所&ギリアンが脱出する道路

ギリアンが滞在して検査を受けていたところ。

撮影場所はIMDbにあるこちら。
Astor Street, Near North Side, Chicago, Illinois, USA

その後のギリアンが脱出する場面で、監視1号と2号が会話するカットに番地表示がはっきり映っています。
場所はこれで特定できます。

ギリアンが飛び出してきたのはこのあたり。

そのままN Astor St.を北に向かって走っていき、E North AvenueとぶつかるT字路で事故に気づきふり返ります。
そのカットで背後に見える銅像がこれ。

この場面はスローモーションを巧みに積み重ねて見事に緊迫感を伝えていました。
劇中デ・パルマ監督の技がもっとも冴えた場面でしょう。

PSI

ロビンが事実上軟禁されていた豪邸のような研究施設。
場所は調査中です。

遊園地

Old Chicago Amusement Park
555 S. Bolingbrook Drive, Bolingbrook, Illinois, USA

1975年に「世界初の屋内遊園地」として開かれた遊園地。
経営難で1980年に閉鎖され、1986年に解体。

マップとしてはこのあたりですが、今はショッピングセンターになっています。

資料

References

References
1 マイケル・ダグラスの妻役
2 http://findarticles.com/p/articles/mi_kmpre/is_200301/ai_n6889716/

コメント

  1. たかマックィーン より:

    居ながら様、サイトを見させていただいていて、フューリー を発見。とても懐かしく思いだしました。と、言うのも、公開当時、1977年夏でしたが、主演のカーク・ダグラスがキャンペーンで来日していて、偶然、彼が滞在中のホテルオータニで見かけ、話しかけ、握手をしてもらいました。
    怖いもの知らずの学生時代です。ダグラス氏62歳でした。あのドクホリディと握手できたー!と興奮したのが昨日のことのようです。
    私事ばかりですみません。
    居ながら様のルポのおかげで、楽しい思い出も甦ります。
    ありがとうございます。

  2. 居ながらシネマ より:

    たかマックィーンさん、それうらやましすぎです。
    カーク・ダグラスに会えたことも、無鉄砲?に話しかけたことも、両方。
    いい大人になってしまった今でしたら、チャンスがあっても突撃するのは難しいですね(笑) もう少し年取ったら逆に図々しくなれそうな気もしますが。

    当時来日していたのですね。知りませんでした。
    スターの雰囲気たっぷりの俳優さんですよね。
    この映画は確か珍しく試写会に当たって喜んで見た記憶があります(ここで当たらないと、次は名画座に降りてくるまで金銭的に見られないという……)

  3. たかマックィーン より:

    居ながら様、
    カーク・ダグラスについて、もう少しだけ。
    来日中、確か、明日なき追撃 という西部劇を
    撮っている最中であったかと思います。
    マキシムというインスタントコーヒーのCMを、
    映画の扮装でやっていました。
    居ながら様の、チャンスがあっても突撃、とのフレーズで思いだしました(笑)のは、カーク・ダグラス制作兼主演の突撃 です。キューブリック作品です。
    私は、スパルタカスよりこちらがダグラスのベストアクトだと思います。探偵物語、チャンピオン、炎の人ゴッホも良かったですが。
    突撃 のロケ地はフランスなのでしょうか?
    似た背景を持つ、ジョン・ギラーミンのブルー・マックスなどもあの大陸的広大な西部戦線はどこでされたものか、いつかご教示くださいませ

  4. 居ながらシネマ より:

    たかマックィーンさん、カーク・ダグラスで私にとってリアルタイムだと、この『フューリー』とか『スペース・サタン』とか『ファイナル・カウントダウン』などになり、挙げてくださった作品群とはだいぶ趣が違いますね(汗)
    キューブリックはまだほんの数本しかとりあげていないので、できればコンプリートしたいですね。ただキューブリックですと熱心なファンサイトや資料本などがいろいろありそうで、そうなると逆に解明し尽くされていて、面白くなくなっている状態かもしれません。

    特に資料がなく画面だけで判定となると、『突撃』よりは『ブルー・マックス』の方がまだ空中戦の場面などが手掛かりありそうですね。

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