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『善き人のためのソナタ』 Das Leben der Anderen (2006)

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

他人の生活、別の人生

作品メモ

2007年アカデミー賞外国語映画賞を受賞。
それだけのことはある良くできた映画ですが、監督はこれが第1作ということで驚きです。
2時間を越える長めの映画で淡々と進んでいきますが、最後まで心地よい緊張感をもって見続けることができました。

1984年の東ベルリン。
国家保安局シュタージ Stasi のヴィースラー大尉は、反体制分子を摘発することにおいて辣腕ぶりを発揮する冷徹な男。
劇作家ゲオルク・ドライマンの監視を命じられた彼は、家に盗聴器を仕掛けドライマンと恋人の女優クリスタの生活を徹底的にマークします。
連日2人を監視し、逐一レポートをタイプで仕上げていくヴィースラー。
しかしその心の中には次第にある変化が芽生えていき……
……といったお話です。

ヴィースラー大尉の無表情ぶりと無機質な生活空間が目を引きます。
アーティスト2人の世界とはあまりにも対照的。
かつての東独の体制の非情さや、人の心の持つ闇の部分をひんやりと伝えています。

その彼に起きる変化は抑えた描写の中でわかりづらいかもしれませんが、緻密な演出と確かな演技によって十分説得力があるように思えました。
特に後半物語が大きく動いてからはぐいぐい惹きつけられ、ラストでは深い感銘をもたらしてくれます。

ヴィースラーを演じていたのはウルリッヒ・ミューエという俳優さんですが、残念なことにアカデミー賞の年の7月に亡くなったそうです。

少しネタバレ的メモ

タイトル

原題は”Das Leben der Anderen”で英題は”The Lives of Others”。
単数形と複数形ですが、ニュアンスの違いとかないのでしょうか?

邦題は劇中に出てくるピアノ曲と本のタイトル”SONATE VOM GUTEN MENSCHEN”からとられていますが、fürではなくvonなので単に『善き人のソナタ』では?
“Das ist für mich.” のつながりでは「ための」の方が良いのかもしれませんが……

……とドイツ語はよくわかりませんけどメモってみました。

ブレヒト

ヴィースラー大尉がちょっと拝借した本。
読んでいる詩は”Erinnerung an die Marie A.” (マリーAの思い出)

小道具

IMDbのtriviaによると、映画に登場する盗聴器はすべて実際にシュタージで使われていたものだそうです。
ちょっとざわざわっとしてしまいました。

ロケ地

こんな立派な作品も、ついロケ地を探してしまう哀しい性…… 😥

IMDbによると、

Altes Stadthaus, Klosterstraße, Berlin, Germany
Berlin, Germany
Hufelandstraße, Prenzlauer Berg, Berlin, Germany
Karl-Marx-Allee, Berlin, Germany
Normannenstraße, Lichtenberg, Berlin, Germany
Wedekindstraße, Friedrichshain, Berlin, Germany

劇作家の住まい

全編にわたり重要な舞台となります。
IMDbで「Wedekindstraße, Friedrichshain, Berlin, Germany」とあるのがここ。

公園

劇作家仲間が3人で密談しながら歩くところ(1:10頃)
筆談で「Ehrenmal Pankow」、字幕で「パンコウ公園」

記念館

IMDbで「Normannenstraße, Lichtenberg, Berlin, Germany」とあるのがここ。

Stasi Museum
Forschungs- und Gedenkstätte Normannenstraße
Ruschestraße 103, Haus 1
10365 Berlin
http://www.stasimuseum.de/

書店

画面で「KARL MARX BUCHHANDLUNG」という店名が出ています。
IMDbの「Karl-Marx-Allee, Berlin, Germany」というのがこれ。

Karl-Marx-Allee 78, 10243 Berlin
http://www.kmbuch.de/

ずいぶん皮肉な店名ですが、2008年2月に無くなったようです。 [1]http://www.taz.de/regional/berlin/aktuell/artikel/1/goodbye-karl-marx-buchhandlung/

  • Google Maps(SV) ↓ 2011年9月追記

ちなみに 『グッバイ、レーニン!』の主人公たちの住まいは、ここからカール・マルクス通りを西へ行ったところです。  『グッバイ、レーニン!』のロケ地についてはこちらをどうぞ。 → 『グッバイ、レーニン!』

ロケ地マップ

※15/12/28追加
ベルリンを舞台にした映画のロケ地マップ

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2015/12/28 「ロケ地マップ」追加

コメント

  1. ほりやん より:

    (SONATE VOM GUTEN MENSCHEN)

    「邦題は、fürではなくvonなので『善き人のソナタ』では?」そら、そうよ。

    「“Das ist für mich.”のつながりでは「ための」の方が良いのかも」これは鋭いご指摘!

    それに、定冠詞付きのvomを使っている以上、善き人は「特定」の人を表しているはずで、映画の内容から言えば、善き人は「あの人」ですね。そして、あの人の「ための」ソナタだったので、vonが使われてはいても、「ための」の方が映画の内容をちょっと予想できるので、ソうナっタのだと思いますね。

    原題“Das Leben der Anderen”から受けるイメージは、監視する側も監視される側も同じ人生やん、という感じがします。英題“The Lives of Others”だと、監視する側と監視される側の人生は別物という感じがします。「あの人」の人生を見ていたら、原題の方が良いと思えます。

  2. 居ながらシネマ より:

    ほりやんさん、コメントありがとうございます。
    なるほどそれでタイトルはソうナっタのか、と。
    いやこれ、見れば見るほど邦題は秀逸ですね。原題のニュアンスはわかりづらいので、別のところから引っ張ってきたのも正解だと思いますし、ひとひねり加えているのがまた心憎いです(曲名や書名の字幕は直訳でも良いような気もしますが)。

    こういう盗聴ものといいますか監視ものはたいてい重苦しさが充満していて見ていてどよよんとしてきますが、考えてみたら、盗聴している連中の様子を我々観客はずっと盗み見ているわけで、きっとその様子をさらに上から見ている神様は苦笑いしてるかも、と思ったりしました。

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