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『華氏451』 Fahrenheit 451 (1966)

華氏451【ユニバーサル・セレクション1,500円キャンペーン2009WAVE.1】 [DVD]

気になるモノレールの正体

作品メモ

NHK BS2 衛星映画劇場にて録画鑑賞(2009年4月15日(水) 午後1:00~)
最初に見たのははるか昔の地上波でだと思います。
2004年にアメリカ盤DVDが出たときにきれいな画像で欲しくなりゲット。
その後すぐに日本盤が出たのでがっくり。
今回やっと日本語字幕付きでいつでも観られるようになりました。

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) アメリカのレイ・ブラッドベリの原作をもとに、フランスのトリュフォー監督がイギリスで撮ったSF映画。

映画の中でも説明されていますが、タイトルの「華氏451」は紙が自然発火する温度。
確か華氏→摂氏は32引いて9分の5ですから、233℃ですね。
この華氏というのは摂氏な人間には理解しづらい単位だなぁ、といつも思ってしまうのですが、それはともかくこの映画で描かれる未来社会は、いわゆるディストピアの一種。
映像メディアに情報を一元化された管理社会で、書物は御法度。
見つかり次第「ファイアーマン」が駆けつけてきて、古典的名作だろうがなんだろうが、衆人環視の中みんな燃やされてしまいます。
それでタイトルが「華氏451」。

主人公はそのファイアーマン。
ファイアーマン(消防士)が昔は火を消していたといっても誰も信じてはくれません。
本を見つけては焼き尽くす、それが彼らの仕事です。
家に帰れば一日中テレビを見ていた妻と一緒にテレビを見て、フキダシのないイラストだけの新聞を読み、間近にせまっているらしい昇進を待ちわびる、そんな日々を送る彼ですが、ある日帰宅途中で1人の女性に話しかけられたことから、人生が大きく変わることになるのでした……
……といったお話。

この社会、認められているのはせいぜい数字ぐらいのようです。
あとは本当に文字らしい文字は無く、アイコンや色が記号として使われています。
映画そのものもそのノリで、冒頭クレジットの文字が一切出てきません。
かわりにナレータが「おすかうぇるなー じゅりくりすてぃ いんふぁれんはいとふぉーふぁいぶわん」「だいれくてっどばいふらんそわとりゅふぉ」などどいそがしく読み上げるのです。
IMDbのcrazy creditsはクレジットに関する面白いネタを集めていますが、この映画はクレジットネタでは横綱クラスではないでしょうか。

さて映画の評価ですが、正直SF映画として面白いかというと微妙なところもありますし、トリュフォーがこの手の映画に向いていたかというとこれまた微妙な気がします。
ただ今見返してみると、建築デザインや未来社会の描写など、CG全盛の昨今のSF映画とはひと肌もふた肌も違うタッチとセンスがあって、やはり印象に残る作品となっています。
『ガタカ』などはこの映画の優れた子孫なのかもしれませんね。 → 『ガタカ』

定本 映画術―ヒッチコック・トリュフォー またトリュフォーの中でも、ヒッチコックの影響がはっきり見て取れる作品のひとつであるように思えます。
冒頭電話をとった男に対してぐっ、ぐっ、ぐっ、と『鳥』のようにジャンプ・クローズアップしたり、『めまい』を思わせるゆらゆら・くらくら場面があったり……。
音楽がバーナード・ハーマンなので、なおさらヒッチコックっぽく感じてしまうのかもしれません。
(撮影はニコラス・ローグ)

ネタばれ的メモ

密告する手紙は文字を使っているのでしょうか??
それから、ジュリー・クリスティの2役の意味が何度観てもよくわかりません……
(DVDの音声解説で彼女が何かしゃべっているようですがよく聴き取れませんがな)

ロケ地

IMDbでは

Black Park, Iver Heath, Buckinghamshire, England, UK
Châteauneuf-sur-Loire, Loiret, France (Monorail)
Crowthorne, Berkshire, England, UK (Montagu’s bungalow)
Danebury Avenue, Roehampton, London, England, UK
(opening sequence, block of flats)
Fortismere Secondary School, Maidenhead, Berkshire, England, UK
Loiret, France
London, England, UK
Maidenhead, Berkshire, England, UK
Pinewood Studios, Iver Heath, Buckinghamshire, England, UK (studio)
Roehampton, London, England, UK

というわけで、大半がイギリスで、一部フランスで撮影されています。
例によってお話の順にみていきましょう。

消防署

おそらくスタジオだと思います。
IMDbにはイギリスを代表するスタジオの名前があります。

Pinewood Studios
Iver Heath, Buckinghamshire, England, UK (studio)

団地

冒頭消防隊が駆けつけたところ。

3695972078_0e0b126c0e.jpg Alton Estate
Danebury Avenue, Roehampton, London, England, UK

モノレール

なんといっても気になるのはあの乗り物。
この映画を初めて見たときから、あれは何で、どうやって撮ったのかず~っと気になっていました。
模型かと思ったらちゃんと人が乗っていますし、時代的にVFXのわけありませんし、普通のモノレールにしては妙にかわいらしく底がぱかっと開いたりして……

正解はフランスのロワレ県に作られたモノレールの実験線。
場所はIMDbに書かれているこちら↓なのでしょうけど、レールはもうなくなっています。
なのでマップは参考資料ということで。

Châteauneuf-sur-Loire, Loiret, France (Monorail)

この町はオルレアンの東20数kmのあたりです。
実験線はBaudin Chateauneufの土地に、長さ1,370mに渡って作られたとか。
車内の場面で窓の外の映像はおそらくブルーバック合成ですが、よく見ると実際のモノレールからの映像を使っているようです。長さが足りなかったのか映像的に良い絵でなかったのか、会話の途中で画面左から右に男性が横切る時に、映像が途中に戻り繰り返し使われていますが。
この映像を手がかりに場所を特定することができるかもしれませんね。

このモノレールはサフェージュ SAFEGE という型らしいです。

webで探しても画像はあまり多く見つかりませんでし、資料もいくつかのサイトに限られていました。
その意味でこの映画、鉄ちゃん、特にモノレールファンにとっては貴重な記録映像となっているかもしれません 。

底から乗り降りするのが特徴的ですが、もちろん車体側面に扉はちゃんとついていますから、実験線ならではの仕様なのでしょう(あるいは非常口?)。
それがかえって未来的と言いますか、独特の映像表現になっていて面白いですね。

この車体、ふたりが降りるカットをよく見ると、その後画面奥に向かって走り去って行くようですが、実は線路際の建物の陰に止まって隠れています。
で、会話が進むうちに戻るように現れて今度は画面左へ消えてますが、会話が終わる頃にまた現れて右手へ走っていきます。
実際には1台なのに行ったり来たりしているわけですね。大熱演です。

※2012年3月追記
このあたりSVが利用できるようになっていました。
モノレールを降りて歩いていたのはここかもしれません。

例によって間違っていたらごめんなさい。

モンターグの自宅

IMDbによるとこちら。

Crowthorne, Berkshire, England, UK

似たような家がいっぱいあってとても特定できませんし、個人宅でしょうからあくまで参考位置ということで。

モノレールの撮影はフランスで、こちらはイギリス。
一瞬でドーバー海峡をワープしたことになります。
背後の板塀でうまく連続性を出していますね。

自転車の2人乗りの男女、フランスとイギリスで同じ人でしょうか 😉

学校

IMDbに書かれてあるこちらなのでしょうけど、確かめようがありません。

Fortismere Secondary School, Maidenhead, Berkshire, England, UK

この場面、ポイントは2番目に登場する少年。
クレジットされていませんが、マーク・レスターです。 → 『小さな恋のメロディ』

警戒を呼びかける車

2707690522_c44c25eb47.jpg犯人が逃げたことを知らせる赤い車。
平屋陸屋根のかわいらしい家が並んでいる通りを進んできますが、場所は映画冒頭の団地です。

森と湖

Black Park, Iver Heath, Buckinghamshire, England, UK

資料

コメント

  1. Bill McCreary より:

    >この場面、ポイントは2番目に登場する少年。
    クレジットされていませんが、マーク・レスターです。

    昨日ご当人と話をする機会がありまして、この映画とフランソワ・トリュフォーの印象について聞いてみたのですが、やはりというか、まだほんと幼かったのでよく覚えていないという回答でした。1日で撮影も終わったでしょうし、また当然ながら当時の彼は、トリュフォーが何者かもご存じなかったでしょうから、印象が薄いのもしかたないですかね。IMDbによると、映画の撮影は

    >13 January 1966 – 15 April 1966

    とのことで、1958年7月11日生まれとのことですから、まだ8歳の誕生日の前の撮影です。ただそれでも端役ではありますが、こういう映画に起用されたのも、やはり当時から注目されるものがあったのかもですね。

    ところで、モンターグの自宅ですが、IMDbの情報が詳しくなっていました。

    >14 Linkway, Edgcombe Park, Crowthorne, Berkshire, England, UK

    貴サイトの方針で、このような細かい情報は記載されないかもしれませんが、ご参考までに。

    それにしても、マーク・レスターにこんなことを直接聞ける日があるとは、当然ながら予想していませんでした(笑)。

  2. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
    おお、横浜のイベントに参加されたのですね。
    ご本人に確認できるなんて、いやホント凄すぎです 😆
    訊かれた方もびっくりしたかもしれませんね。
    この映画に起用されたいきさつはわかりませんが、まあ短いショットでもとても印象的ですし、キャスティングされたのも当然だったかもしれませんね。
    最初に出てくる少年と違って、途中で表情を変えて演技しているので、見た目だけでなく演技力も買われたのかと思います。

    モンターグの自宅もありがとうございます。
    やはり古い映画でもIMDbは更新されているのですね。
    自分では全然記憶がなかったのですが、Google Earthを見るとピンが立っていましたので、きっとわざと曖昧にしておいたのかもしれません。
    Google Mapsでその場所を探すと、正解から少しずれたところにピンが立ちますが、14-19という範囲にはなっているのかと。建物は今でもSVで確認できます。
    こういう木々に囲まれた平屋いいですね。住みたいです。

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