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『猫と庄造と二人のをんな』(1956)

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ぼくは今恋愛中や
ずっと前から
このリリーとな

作品メモ

このところシチリアを舞台にした映画を続けてきましたが、今週(26/7/8)日本映画専門チャンネルで『猫と庄造と二人のをんな』を放映するようですので、先駆けで割り込み。
いちおうひとつ前のエントリー『イタリア式離婚狂想曲』からは、ダメ男の離婚にまつわるお話という点ではつながりがあるかもしれませんが。
といいますか、妻が居ながら若い娘(しかも従姉妹)に鼻の下を伸ばすあたりはそっくりですね 🙄

原作は谷崎潤一郎。
「猫」は主人公の愛猫、「庄造」は主人公、「二人のをんな」は主人公の先妻と後妻。それら1匹と3人が織りなすにゃん間模様が描かれます。
見どころならぬ読みどころは、熱烈な愛猫家でもある文豪が活写する猫の生態。
身をくねらせて男を翻弄するリリーの姿は、『痴人の愛』のナオミとぴったり重なります。

今から読むなら、書籍で何種類か出ている他、青空文庫でもアップされていますので、気軽に接することができます。

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豊田四郎監督による映画版は、原作とは時代が異なりますが、その味わいをそこなうことなく、高度成長の入口に差し掛かったあたりの世相を写し込みながら、おもしろうてやがて悲しき男女のドラマをうまく脚色して魅せています。

キャスト&スタッフ

家族をそっちのけで猫をひたすら溺愛する庄造に森繁久彌さん。
仕事も中途半端で、肝心なことは瓢箪鯰でのらりくらり。そんなダメダメが板についているのは、森繁さんさすが。
猫に対するでれでれぶりは、まじヤバいレベルに達していますが、我が家の猫様に対しては自分も客観視すればきっとこんな感じでしょうから、なんも言えません。

「二人のをんな」の方は……
姑とそりが合わず出ていった前妻品子[1]執筆現在Wikipediaでは「晶子」となっていますが、「品子」の誤りに山田五十鈴さん。別れたものの未練たらたらで、猫を利用して復縁のきっかけをつくろうと虎視眈々。
庄造の従姉妹で後釜となる福子に香川京子さん。品子とは対象的に若さはつらつ自由奔放な今どきの娘。持参金を持ってきたので[2]実際には借金の帳消し、態度がさらにデカいです。
……という銀幕の大女優ふたりが文字通りキャットファイトを繰り広げることとなります。

他に、品子とそりが合わず、ねちねちと追い出した庄造の母おりんに浪花千栄子さん。
庄造と品子の仲人でありなにかと気にかけてくれる畳屋の木下に芦乃家雁玉さん、叔父で福子の父中島に林田十郎さんと、人気漫才コンビが重要な役どころで出演している他、木下の妻まつとして都家かつ江さんが登場して都々逸を披露、さらに品子の妹初子の夫添山にあきれたボーイズの山茶花究さん、古物商国粋堂に横山エンタツさんなど、人気芸能人が次々登場して楽しませてくれます。

かんじんの猫、リリーは出演場面が多く大熱演。
目を凝らしてチェックしてみましたが、違いがわからず、もしかすると全部ひとり(?)で演じたのかもしれません。
ドキッとするような危険なアクションシーンもありますが、リリーちゃん大丈夫だったでしょうか??
“No animals were harmed.”であることを信じませう。

監督豊田四郎、脚本八住利雄、撮影三浦光雄、音楽芥川也寸志。

「ネコと庄造と」

……とこちらは手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』の一編。
ストーリーは全然異なりますが、タイトルはどー見ても谷崎潤一郎からとられています。
なので、ついでのご紹介。

傑作ぞろいの『ブラック・ジャック』の中でも、起承転結のメリハリや、感動のラストに至るまで、完成度はトップクラスの逸品。
なにより猫好きなら萌え萌え必至の傑作ネコ漫画となっています。

ちなみにここに出てくるネコは「洋子」という名前。
映画のリリーは次第に女性にしか見えなくなりますが、手塚さんが描く「洋子」は喜怒哀楽も仕草も生身の人間そのもので、たまらなく愛おしくなります。
ペンで描いた線画でしかないのに、アニメや実写のようにその場で生き生きと動いているようで、漫画の神様ならではの技巧に感嘆するほかありません。

ちょっとネタばれメモになりますが、申し分のないラスト1コマは、『モダンタイムズ』からでしょうか。
読み終えるたびに、自動的に「スマイル」が脳裏に流れます。

「ネコと庄造と」は、例えば秋田書店少年チャンピオン・コミックス版では第8巻、講談社手塚治虫漫画全集では「157 ブラック・ジャック 7」に収録。

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ロケ地

IMDbでは記載はありません。
ざっと見る限り、原作通り芦屋周辺で撮影されていると思われます。
以下例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

↓【参考動画】

OP、木下畳店のオート三輪が走る港。

これは昔の空撮から特定できました。

西宮市前浜町交差点のあたり。

尾山商店

0:02

オート三輪がやってきた庄造の店。
雑貨店でしょうか。
ほったらかしで本人はいません。
いよいよ家を出ることを決めた品子。
仲人でもある木下は、彼女の荷物を引き取りにきたようです。
品子は2階でごろごろしていたおりんに挨拶にいきますが、嫁姑の火花がばちばち飛び散ります。

その後も何度も映るこのお店。
撮影場所が気になりますが、眼の前が妙に幅広い道路となっているところから、おそらく国道43号線が整備される前の状態ではないかと思われます。中途半端にだだっ広いのは、用地取得が進められている途中だからかもしれません。
その後43号線によってどーんと上書きされて沿道の建物もすべて失われ、さらに阪神高速3号神戸線が上に架かったため、現在では全く面影はありません。

具体的な場所ですが、50年代の空撮が見当たらないため、映画撮影時の状態は確認できず、厳密にたどるの難しそう。
ただ、遠方の山並みの見え方からすると、芦屋川の西側、神戸市東灘区のあたりではないかと推定されます。
たとえばこのあたり↓

なお、0:45頃届く郵便物には「芦屋市松浜町……」と住所が記されていますが、これは現在も芦屋川河口付近東側一帯の町名となっています。

リリーと戯れる砂浜

0:06

そんな家の騒ぎもどこ吹く風と、円筒形の建材が散らばる中、「みゃ~ぉ、みゃ~おぅ~~」などど猫なで声を出しながらリリーと戯れる庄造。
でれでれダメダメを絵に描くとこうなるという良い見本です。
自分も気をつけねば……

撮影場所ですが、0:40頃の場面にも似たような建材が積まれていますので、同じあたりかと思われます。
そちらの場面は周囲が映っていますので、芦屋川の河口付近だと特定できました。
現在では東側が大きく埋め立てられていますので、面影はほとんどありません。

引越ひと休み

0:06

前項目に続いて、引越移動中の品子や木下がひと休みするところ。
背景に団地と山並みが見えます。

川は住吉川で、右岸のこのあたり↓

遠くの方の鉄橋で右から左へ列車が走っていきますが、これは阪急神戸線。

この映画、背景に線路があるシーンでは、必ずといっていいほど列車が通過しています。
偶然ではなく、1カットずつていねいに撮影のタイミングが図られているように思えます。

アーケード

0:10

女性2人(背後のお店「あしや」の女給)に呼び止められるところ。
背後に見えるのは、阪神電鉄打出駅W南側の商店街アーケード。
アーケードは現存しますが、「あしや」のあたりは国道43号線(あるいは阪神高速3号神戸線)で上書きされたと思われます。

添山家

0:11

引越のオート三輪がやってきたところ。
品子の妹初子が、夫添山と住んでいます。
なかなか立派な構えですが、いきなりやってきた品子に、初子は戸惑いを隠せません。

場所は六甲の山腹と思われますが、調査中。
0:29あたりの背景の山が手がかりになるかもしれません。

なお0:45頃福子が受け取った封書には「神戸市東灘区元山町」と裏書きがありますが、まあこれは設定上のことだと思われます。

中島製菓

0:14

福子の実家。
事業はそれなりに成功しているようです。

場所は不明にて調査中。
角を曲がる前の長い塀が手がかりになるかも。

海水浴場

0:21

庄造と福子がいちゃつくところ。

今ではなかなか想像できませんが、芦屋の海水浴場。

↓こちらによれば、1964年に閉鎖とあります。

その後全体が埋立てられて、今では原型を全くとどめていません。
臨港線が走っているあたりが、砂浜であったと思われます。

0:25のダンスホール”Nagisa Center”は、マップでは確認できませんでした。

ガスタンクが見える道

0:39

「あしや」の角を曲がって品子の後を付いていきます。
カメラ位置は「アーケード」同様国道43号線で上書きされていますが、その先は現在も西国街道として残っています。
ガスタンクはすでにありません。

防波堤

0:40

「こゝはキケン」とある防波堤の上で、庄造と品子が会話します。

撮影場所は、0:06 の「リリーと戯れる砂浜」と同じく芦屋川の河口と思われます。

この場面の山田五十鈴さんの演技はなかなか凄まじいものがありました。
飛び降りるのはさすがにスタントかと思いますが。

木下畳店

1:21

芦乃家雁玉さんが、都家かつ江さんのしゃべくりに追い立てられるように、自転車で出かけていきます。
このあたり、セリフはアドリブではなくきっちりシナリオに書かれているのでしょうか?

店内からのカメラなので、周囲があまり映らず、場所の特定は難しいかも。

木下を呼び止めた土手道

1:21

自転車でやってきた庄造が、木下を呼び止めてリリーに頬ずりするところ。

川幅が広いので、おそらく尼崎市の武庫川。
具体的にはこちら↓

背後にガス管らしきものが川に架かっていたので、それも手がかりになりました。

国粋堂

1:37

横山エンタツ師匠の店。

踏切

1:40

リリーが見つからず、品子が呆然と渡る踏切。
こちら↓の動画の14秒目からで、サムネイルにもなっています。

大女優山田五十鈴さんもあわやという結構ぎりぎりのタイミングですね。

2:11に庄造が自転車でやってくるのも同じ場所。

車両から阪急神戸本線Wとわかり、あとは踏切をひとつずつたどって見つけました↓

こちら↓の南側で、カメラ東向き。

背景の家は、現在でも同じものを確認できます。

路面電車

1:44

福子と多美子が歩いてくる夜の道。

路面電車が走っているので、阪神国道線Wが通っていた国道2号線とわかります。
具体的には、長い下り坂であることや、道の曲がり具合などから、芦屋川に架かる業平橋の西側のあたりではないかと思われます。

となると、福子が駆けていく角は、前田町の交差点と考えられますが、なにせ薄暗い場面でよく見えませんので未確認。

角の明かりがついている建物はなんでしょうね??
交番のようにも見えますが。

それにしても「踏切」同様かなり危険な撮影で、見ていてハラハラします。

資料

ロケ地マップ

更新履歴

  • 2026/07/06 新規アップ

References

References
1 執筆現在Wikipediaでは「晶子」となっていますが、「品子」の誤り
2 実際には借金の帳消し

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