ひと夏の思い出ものの基本形
目次
作品メモ
前のエントリー『君がいた夏』から<ひと夏の経験もの>つながり。
そんなジャンルがあるかどうかは知りませんが、この『おもいでの夏』が基本形といいますか、原点をなしているような印象があります。
夏の海辺、あこがれの年上の女性、ノスタルジー、悪友たちとのやんちゃ、初体験……
これら定番アイテムが、ソフトフォーカスの淡い映像とミシェル・ルグランの甘美な音楽によって情感たっぷりに綴られていきます。
3人組のキャスティングはぴったりでしたが、残念ながらその後はこれほどの役はなかったような。
彼らだけでなく、一番メジャーなジェニファー・オニールにとってもこの映画は出世作にして代表作のひとつとなっています。
続編の『続・おもいでの夏』 (1973)では、原題”Class of ’44″通り2年後の彼らを描いています。
観たことはあるはずですが、蛇足指数が高かったのかほとんど記憶に残っていません。
少しネタばれ的メモ
買うに買えないドラッグストアのくだりはなかなかの名場面で、その後他の映画で何度か再利用されているような気がします。
アイデアとしては、『卒業』のダスティン・ホフマンとホテルのフロントとのやりとりに近いものがあるかもしれませんね。
それ以前にもさかのぼることができそうなネタです。
ロケ地
IMDbでは
Fort Bragg, California, USA
Fort Briggs, California, USA
Mendocino, California, USA
Montecito, California, USA
Toronto, Ontario, Canada
島
舞台となる島はニューイングランドの沖合いにあるという設定ですが、実際の撮影は島ではなくカリフォルニアのMendocinoというところ。
英語版Wikipediaに木製の給水塔の写真がありますが(パブリックドメイン)、同じものが映画でも映っていました。
彼女の家
いまいち場所が特定できていません。
建物自体は撮影用のセットのように思えますので、あとは地形や背景などから判断するしかありません。
Mendocinoの海岸線は少し切り立っていますし砂浜ではないので違うようです。
“THE WORLDWIDEGUIDE TO MOVIE LOCATIONS”(書籍版)には他に”Ten Mile Beach”の名前があります。
IMDbにある”Fort Briggs”のすこし北。
地形としてはこちらのほうが可能性がありそうです。
※追加資料 California Coastal Records Project
こちら↓のサイトの空撮写真はアングルが良く解像度も高いので資料として使えそうです。
ざっと見て彼女の家はこのあたりだったのではないかと思うのですが、いかがでしょう?
Google Mapsではこのあたり。
Google Earthで海面近くまで降りていって見回してみましたが、周囲の地形は映画ととても似通っていました。
ただ、上の写真では道路は左側(北側)で途切れています。
映画では延々海岸線に沿って伸びていますからここではないようですが、このサイト実は過去の写真もあって比較することができるという、かなりの優れものなのです。
これを見る限り、すくなくとも1979年までは道路は延びていたことがわかります。
いちばん古いのは映画公開の翌年1972年のもの。
この写真の左側(北寄り)のあたりではないかと推測しています。
解像度がもう少しあれば、岩の形などから特定できるのですが。
街角
買いもの袋をきっかけに知りあったふたりが歩いていくのは、街のMain St。
この写真の真ん中(クリーム色の建物の前)あたりです。
※15/2/25追記
ストリートビューではこちら。
- Google Maps(SV) ……買い物袋を落とした店先
- Google Maps(SV) ……その後の斜め渡り
- Google Maps(SV) ……顔を隠した通り
- Google Maps(SV) ……友だちとすれ違った十字路
海に出る道↓
このMendocinoの町は、テレビドラマ『ジェシカおばさんの事件簿』の舞台キャボット・コーヴ(Cabot Cove)の撮影に使われていたところで、メインストリートをはじめ町のあちこちが登場していました。
→ 『ジェシカおばさんの事件簿/悪党は岬に眠れ』 Murder, She Wrote: Joshua Peabody Died Here… Possibly (1989)
資料
更新履歴
- 2015/02/25 「街角」ストリートビュー追加
コメント
観てしまいました。今までそんなことを考えたこともなかったのですが、公開時は、特に米国では、ベトナム戦争での戦死者とその遺族のことも重なっていたのでしょうね。
余談ですが、ドラッグストアのシーンは、性と酒では重大さが違いますが(苦笑)、『アメリカン・グラフィティ』の酒を買うシーンなども、多少は重なるものがありそうです。
>続編の『続・おもいでの夏』 (1973)では、原題”Class of ’44″通り2年後の彼らを描いています。
観たことはあるはずですが、蛇足指数が高かったのかほとんど記憶に残っていません。
ですよねえ(苦笑)。こういう青春ものは、続編はダメダメダメですね。けっきょくロバート・マリガンもジョージ・ルーカスも、この映画でも『アメリカン・グラフィティ』でも、続編の監督はしていないわけですし。
なお
>Wikipedia英語 Mendocino
によると、
>Mendocino was depicted as turn-of-the-20th-century Monterey in the James Dean classic East of Eden, and it served as a New England resort town in Summer of ’42 (the latter film featuring numerous local Mendocino High School students as extras).
とありますので、彼(女)らにとっても、とてもよい「おもいでの夏」になったかもしれません。
それにしても、トロントのロケって、なんかよくわからないんですが、あるいはカットされましたかね?
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
(すみません、モバイルから返信したつもりがずっと未承認になってしまっていました……)
確かにこの映画、一見して「年上の女性もの」「初体験もの」「ノスタルジー」「夏の海辺」といった因子はすぐに抽出できますが、他にも仰る通りベトナム戦争の影も見てとれそうですね。現代から振り返って見ているから初めて気づくことなのかもしれませんが。
さらに公開から半世紀経った今の目線で見ると、戦争未亡人が未成年者と関係を持つという、全然別の問題をはらんでいるような気もしますが(汗)、これも今だからそう思うだけのことなのでしょうね
(英語版Wikipediaによれば、お話は原作者自身の体験に基づいているとはいえ、一線を越えたあたりはフィクションの模様。まあこのくらい映画的に「盛る」のは仕方ないでしょうか)
あまり関係ありませんが、映画は1942年という設定で、阪妻の『無法松の一生』は43年(設定はさらに数十年前)、軍人の未亡人に想いを抱くあたりは、ちょっと近いかも(違)。
トロントはちょっとわかりませんね。
IMDbのリストの中でもこれだけ浮いていますよね。