至高の音楽
目次
作品メモ
少し前、元が映画音楽だとは知られていない曲と映画について何本か書いていましたが(→ タグ「音楽だけ有名」)、その流れでもう1本。
日本未公開映画”La Califfa”です。便宜上カタカナのタイトルをつけました。
音楽の方は傑作揃いのエンニオ・モリコーネ作品の中でもひときわ輝く名曲で、”La Califfa”というタイトルを知らなくてもどこかで耳にしたことはあるはず。
動画サイトでも様々なアレンジで大量の曲がアップされています。
ストリングスで始まる2分40秒ほどのインストの曲がオリジナル。
ヨーヨー・マが弾くは、サラ・ブライトマンが歌うは、スウィートボックスがR&Bしてしまうはで、アレンジされまくってます。
下の方にかんたんなリンク集をつくってみましたのでご参考までにどうぞ。
多作のモリコーネ、埋もれてしまっている作品も多いですが、この映画はサントラもちゃんと出ています。
私が持っているのはこれ。
確かいっときサントラが入手できなかった時期があり、渋谷のタワレコで見つけて飛びつきました。
この盤では8曲目に収録されています。
つまり”La Califfa”という映画の”La Califfa”というタイトル曲。
これは日本盤も出ているバージョン。
ボーナストラックがたっぷり入っていて、今から買うならこちらかも。
というぐあいに曲の方はかなりメジャーかと思われます。
でも映画の方はどうでしょう?
以前『ミッション』のエントリーで、「ガブリエルのオーボエ」に比肩し得るのは「ラ・カリファ」だけ、と書いてしまいましたが、『ミッション』ならそこそこ知られているでしょうけど、映画『ラ・カリファ』はいったいどれだけの人がご覧になったことやら。
少なくとも日本では未公開。おそらくビデオ化や放送もなかったと思います。
ヨーロッパではDVDが何種類か出ていますので、今から見るとなるとそちらが頼り。
私はフランス盤DVDにて鑑賞。
フランス語吹替えで字幕無し。ストーリーは雰囲気だけで把握(汗)。
なので内容は正確には理解していないかも、という前提ですが、ざっくりご紹介しますと……
イタリアのとある町での労働争議の話です。
ヒロインは争議の混乱の中で夫を亡くした女性。”La Califfa”は彼女を指すようです。
この「カリファ」、イタリア語はよくわかりませんが、英題は”The Lady Caliph”。
つまり女性版「カリフ」→「女帝」という感じでしょうか。夫を労働争議の最中に殺された誇り高き未亡人という設定ですね。
その彼女、夫に代わり運動の先頭に立つわけですが、本来敵であるはずの工場経営者と何度か対立するうちに、彼が他の資本家たちとは違った考えの持ち主であることがわかります。
やがて男と女として惹かれあっていく2人。
男はより労働者寄りの立場を強めていくのですが、それをこころよく思わない他の経営者グループはとある手段に出て……
といった社会派ドラマ+メロという内容です。
ヒロイン、イレーネ・コルシーニ(Irene Corsini)にロミー・シュナイダー(Romy Schneider)。
お相手の工場経営者アニバーレ・ドベルド(Annibale Doberdò)にウーゴ・トニャッツィ(Ugo Tognazzi)。
その妻クレメンティーネ(Clementine)にマリナ・ベルティ(Marina Berti)。
その息子ジャンピエロ(Giampiero)にマッシモ・ファリネリ(Massimo Farinelli)。
原作はアルベルト・ベヴィラックァ(Alberto Bevilaqua)で、こちらが原作本。
サントラと同じスチル使ってますね。
で、原作者自身が脚色しメガホンまでとって映画化。
これが初監督作品で、この後も10本ほど撮っているようです。
製作マリオ・チェッキ・ゴーリ(Mario Cecchi Gori)、撮影ロベルト・ジェラルディ(Roberto Gerardi)。
上記のようにセリフや物語を完全に理解したわけではありませんので内容について偉そうなコメントは控えた方が良いのでしょうけど、少しだけ書きますと、やはり日本未公開というのはそれなりに理由があったのかなあと思うところが少し見受けられました。
このサイトでは、良い映画なのになぜかDVDが出ていない映画は「DVD化希望」というタグを付けていますが、この映画は付けて良いものかどうかためらっている次第。音楽だけならサントラで十分なわけですし……。
ただ主役のロミー・シュナイダーは、こういう役柄が似合っているかどうかは別として、本当に凛として美しく、それだけでも見た甲斐はありました。(小声で付け加えると)大胆なシーンもしっかりこなしているという、そういう意味でもわざわざ輸入盤を買って良かったと思える今日この頃。
ロミー・シュナイダーを1本挙げろと言われたら個人的には『離愁』でしょうか。
以前出たDVDがプレミア価格になっています。
こちらは文句なしに再DVD化希望映画。
※『離愁』次のエントリーで書きましたのでよろしかったらどうぞ。 → 『離愁』
“La Califfa” カバー
いろいろなバージョンがあるので、簡単なリンク集を作ってみました。
もちろん全部を網羅しているわけではありませんが、目安にどうぞ(リンク先はYouTube)。
- ヨーヨー・マ(チェロ)
- デヴィッド・ギャレット(バイオリン)
- ブラスバンド
- 室内楽
- 弦楽三重奏
- サラ・ブライトマン(歌)
- キャサリン・ジェンキンス(歌)
- ヘイリー・ウェステンラ(歌)
- ミルバ(歌)
- スウィートボックス “For The Lonely” (歌)
名だたるアーティストたちはもちろんですが、アマチュアの方たちが一生懸命演奏する姿もとても良いものですね 🙂
※2013/01/22追記
メールで情報寄せていただきました(どうもありがとうございます♪)。
ドラマ『氷壁』でおなじみリベラも吹き込んでいました。
これも素敵ですね~。
言うまでもありませんが、お気に召したらぜひこれらの曲をちゃんとお買い求めになってくださいね。
『ルーブル美術館』サントラ
1985~86年にNHKで放送された『ルーブル美術館』では、エンニオ・モリコーネの未公開映画のサントラが多用されていましたが、『ラ・カリファ』からもいろいろ使われていました。
『ルーブル美術館』のサントラでチェックしますと、
- [1] 永遠のモナ・リザ LA CALIFFA (GENERIQUE DE LA SERIE)
→ 毎回流れたいわばテーマ曲ですが、『ラ・カリファ』サントラの[14]”Prima e dopo l’amore”です。 - [7] 魂の画家レンブラント L’EXIL INTERIEUR DE REMBRANDT LE TEMPS DE RUBENS ET DE REMBRANDT
→ 『ラ・カリファ』サントラの[11]”La pace intteriore” - [12] 古代エジプト幻想 LA CALIFFA (LES PEREGRINATIONS DE CAMILLE COROT –GENERIQUE DE LA FIN)
→ 『ラ・カリファ』サントラの[1]”Sangue sull’asfalto”
“La Califfa”も流れたような記憶もあるのですが、『ルーブル美術館』のサントラには収録されていません。これは単なる記憶違いかもしれませんが。
初公開!
▼24/4/4 項目追加
なんとよもやよもやの日本初公開です。
<エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening x2> と銘打って『死刑台のメロディ』とのカップリング。
この(2024年)4月19日(金)から新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーとなっています。
これは「居ながら」な自分もさすがに見に行きたいですね。
『死刑台のメロディ』も久々にジョーン・バエズと一緒に歌ってみたいかも。
当時agonyという英単語をこの歌で覚えたのでした。
こちら↓はオフィシャルな予告編でしょうか?
こちら↓はひろいもの。ネタバレとかはありません。
音楽もロミー・シュナイダーもすべてが美しく、何度でも見入ってしまいますね 🙂
ロケ地
IMDbでは記載がありません。
イタリア語版Wikipediaでは、
Filmed in Parma (Emilia-Romagna), Spoleto (Perugia, Umbria), Terni (Umbria), Colleferro and Cesano di Roma (Rome).
これらの町の画像やウェブマップなどをチェックしながら、手探りで見つけていきました。
OP
いきなりの流血場面。
設定ではパルマのようですが、撮影場所はスポレート SpoletoW 。
具体的には、こちらの前の広場のようです。
スポレートのドゥオーモ Duomo di Spoleto(サンタ・マリア・アッスンタ聖堂 La Cattedrale di Santa Maria Assunta)
Duomo di Spoleto (La Cattedrale di Santa Maria Assunta)W
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救急車が走り去るショットで、背景に写る特徴的な柱はこの教会のもの。
また呆然と歩いてくるロミー・シュナイダーの背後に見える階段は、こちらの画像の手前に写っている階段、つまり教会の向かい側にあることになります。
階段はこちらからのアングルの方がわかりやすいかもしれません。
- http://www.flickr.com/photos/zakmc/4372608838/
- http://www.flickr.com/photos/pek/4378801704/
大きな橋
ラスト近く、背景に大きく写る昔の橋。
冒頭の広場同様、スポレートにあるこちら。
Ponte delle Torri
(The Ponte delle Torri of Spoleto 塔の橋)
カメラ位置は橋の南側。
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資料
関連記事
ロミー・シュナイダー出演作
- 『すぎ去りし日の…』 Les choses de la vie (1970)
- 『サン・スーシの女』 La passante du Sans-Souci (1982)
- 『スカンポロ』 Scampolo (1958)
- 『ラ・カリファ』 La califfa (1970)
- 『何かいいことないか子猫チャン』 What’s New Pussycat (1965)
- 『夕なぎ』 César et Rosalie (1972)
- 『太陽がいっぱい』 Plein Soleil (1960)
- 『太陽が知っている』 La piscine (1969)
- 『恋ひとすじに』 Christine (1958)
- 『暗殺者のメロディ』 The Assassination of Trotsky (1972)
- 『華麗なる相続人』 Bloodline (1979)
- 『追想』 Le vieux fusil (1975)
- 『離愁』 Le train (1973)
更新履歴
- 2024/04/04 「初公開!」項目追加
- 2012/04/09 新規アップ
コメント
この曲をsweet boxから知りました。
最初に聞いたときはなんとなくいい曲だなぁー的な印象でした。
どんな映画なのかなぁと思いテキトーな映画サイトであらすじを知り、
改めていい曲だと思いました。
強く勇ましく、そして美しく権力に立ち向かう女性の姿をこれほどまでに表現できて、
女性らしさというか女性であることのハンデの表現もありつつ、
ホントに名曲ですね。
映画も見たいですが、フランス語字幕はきついっすね。
英語字幕でNetflixキボンヌ
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりで、ただ旋律が美しいだけでなく、気品とか凛とした姿とか見事に表現していて、何度も聴きたくなる名曲ですよね。
DVDも今ざっとチェックしたら各国盤が出てきているようですが、英語字幕付きというのはなかなか見つかりませんでした。ここはひとつ日本盤DVDとまでは言いませんが、配信もので日本語字幕付きで見てみたいものですね。
モリコーネファンです。100枚くらい聴いていると、本人なのか、監督関係者からなのか、気持ちが入ると、メインテーマが増えますね。レオーネは別格として、「エクソシスト2」や「椿姫」などは、お腹が一杯になるくらい堪能できます。「ルーブル美術館」もオムニバス的とはいえ、素晴らしいですね。
ネット上のニックネームは、モリコーネ、さん、コメントありがとうございます。
いただいたコメントがスパム扱いとなってしまっていて、週末のメンテナンスで初めて気づきました。
表示までに何日もいただいてしまい、大変失礼いたしました。
テレビ見ていると、「子供の頃の思い出」的再現もののノスタルジックな場面ですかさず『ニュー・シネマ・パラダイス』が流れたり、ヨーロッパの歴史的建造物を映し出す時『ルーブル美術館』が流れたりして、毎日どこかしらでモリコーネを耳にするような気がしてしまいますよね。
『エクソシスト2』もクライマックスシーンでリーガンが二の腕ぶるんぶるんさせながら振り回す場面など、あまりに音楽が素敵で、ホラーでもなんでもなくなりすっかりロマンチックな?気分にさせてくれますから、モリコーネ偉大すぎです。
それにしても100枚はすごいですね。
モリコーネなら、未公開作品も含めると、すぐにそのくらい集まってしまうのでしょうね。