記事内の商品画像には広告リンクが含まれています

『暗殺者のメロディ』 The Assassination of Trotsky (1972)

暗殺者のメロディ [DVD]

作品メモ

ちょっと寄り道しましたが、またロミー・シュナイダー出演作のチェックに戻りまして、今回取り上げるのは『暗殺者のメロディ』。
邦題はフランス映画のノワールものっぽいですが、原題は「トロツキーの暗殺」で、1940年のトロツキー暗殺という実話を描いたシリアスなドラマです。

トロツキーの名前って、人によって様々な受け止め方があるような。
ある世代にとっては青春の甘酸っぱくも苦い想い出であったりするかもしれませんし、今の若い世代には何の感慨ももたらさない、ただの歴史上の人物名であったりするかもしれません。
……といいますか、それ以前に名前すら聞いたことがないかもしれませんが 😕

映画では最初にトロツキーの経歴がざっくり紹介されますので、まったく予備知識がない方でも完全に置いてけぼりをくらう恐れはありません。
とはいえそれなりのことは理解しておいた方が良いことは確か。

トロツキーを演じたのはリチャード・バートン。すっかりなりきり渾身の名演技を見せています。この役最初はダーク・ボガードにオファーがあったそうな。
暗殺者フランク・ジャクソンにアラン・ドロン。DVDのジャケットは嘉門達夫さんみたいですが、これがアラン・ドロン演ずる暗殺者。こちらもリチャード・バートンに負けじと、緻密な演技で暗殺者の複雑な心理を浮き彫りにしようとしています。
その恋人ギタにロミー・シュナイダー。トロツキーの熱心な支持者で家に出入りすることもできる彼女。フランツは彼女を利用してトロツキーに近づくことができ、とうとう目的を達成してしまいます。

トロツキーは実名ですが、暗殺者や恋人は架空の名前になっています。
実際の暗殺者はこちら。 → ラモン・メルカデルW
映画の冒頭、「できるだけ事実に即して描いている」旨テロップが出ますが、このあたりはいろいろ配慮しているようです。

ロミー・シュナイダーとアラン・ドロンの共演はこれが最後。
もう一度まとめますと(リンクは当サイト内エントリー)、

ロミー・シュナイダーのフィルモグラフィー的には、『すぎ去りし日の』や『はめる/狙われた獲物』でクロード・ソーテ監督と良いお仕事をした直後であり、このあと『ルートヴィヒ』や『夕なぎ』(1972)の撮影が控えているという、女優としてのりにのってきた時期となります。
『暗殺者のメロディ』でも、敬愛する人物をよりによって恋人が殺めてしまうという悲劇にみまわれた女性をしっかり演じ切っていて,見応えがありました。

監督ジョセフ・ロージー。リチャード・バートンとは『夕なぎ』(1968)で組んでいます。
原作・脚本ニコラス・モスレー、音楽エジスト・マッキ。

ロケ地

IMDbでは、

Italy
Mexico
Rome, Lazio, Italy

とこれだけ。
実際にメキシコでロケされているようですが具体的な情報はなく、後はひたすら画面とにらめっこでチェックしていきました。

トロツキーの住まい

厳重に警護されたトロツキー夫妻の住まい。
撮影場所が気になりますが、映画後半、入口のところにエピタフのようなものがはめこまれ、その後も何度か写ります。

IN MEMORY
   OF
ROBERT SHELDON HARTE
  1915-1940
MURDERED BY STALIN

つまり映画の中頃、いささかショッキングなことになるシェルダンのこと。

WikipediaでRobert Sheldon HarteWを見ると、映画に登場したのと同じものの画像が。  

Photo from Wikipedia (public domain).

これはメキシコシティのこちら↓にあるとのこと。

レオン・トロツキー博物館(Museo Casa de León Trotsky )W
Río Churubusco 410, Coyoacán, Mexico City, 04000

この博物館は、実際にトロツキー夫妻が住んでいたところにあるようです。

ん???
つまり『暗殺者のメロディ』はこの家で撮影されたと言うことでしょうか??
そういった前提で映画を見返すと、確かにいろいろなショットが博物館に付随する建物の画像と一致します。

これは南側のSV。
現在の博物館の入口は北側ですが、映画の中で建物の全景として登場するのはこのアングル。


大きな地図で見る

というわけでこの家で撮影されたのはほぼ間違いなさそう。
これは有名なネタなのかもしれませんが、少なくとも私は今回初めて知りました。

階段と壁画

フランクと黒幕が会話しながら登るところ。

場所はメキシコシティの国立宮殿W
壁画の作者はディエゴ・リベラ(Diego Rivera)W

Photo from Wikipedia (public domain).

運河

フランクとギタが可愛らしい船の上で気持ちよさそうに寝ているところ。

おそらく ソチミルコWの運河。
可愛らしい装飾の船はトラヒネラ(Trajinera)Wと言うそうです。

最初に運河が写りカメラが左にぐるりと回るショットは、おそらくこの画像の位置。

資料

関連記事

ロミー・シュナイダー出演作

コメント

  1. Bill McCreary より:

    すみません。今日は情報でなく単なる感想です(笑)。単なる感想でもいろいろコメントさせてください。

    >といいますか、それ以前に名前すら聞いたことがないかもしれませんが

    私も、もちろん「トロツキスト」なんて言葉が飛び交った時代を現役では知らないのですが、今の時代でトロツキーなんて、世界史の教科書で学ぶか、共産主義運動や左翼運動にそれなりの知識のある人に知名度は限られるかもですね。

    >ダーク・ボガードにオファー

    ダーク・ボガードのトロツキーなんて、まさに世界映画史に残るすごさかもですね(笑)。

    >映画の冒頭、「できるだけ事実に即して描いている」旨テロップが出ますが、このあたりはいろいろ配慮しているようです。

    制作当時メディカルはまだ存命でしたからそのあたり実名ははばかったんでしょうね。

    >この博物館は、実際にトロツキー夫妻が住んでいたところにあるようです。

    これは面白そうですね。メキシコに行ったらぜひ見学したいものです。

    ところでこの映画ですが、Amazonで確認するとかなり高額です。ネットオークションでは安いのですが、やはりもっと気楽に観られるようになってほしいですね。「サン・スーシの女」も、観るのがなかなか大変です。CSとかで放送されることあるんですかね?

  2. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、こちらでもどうもです。
    リチャード・バートンのトロツキーはなかなかの名演だったと思いますが、『フリーダ』でジェフリー・ラッシュが演じていたトロツキーも良かったです。といいますか、ひげ付けて眼鏡かけると、ふたりとも誰が誰だか判りませんね。
    他に拙サイトでとりあげた映画では『レッズ』にもトロツキーが出てきますが、これはよく知らない俳優さんでした。

    『暗殺者のメロディ』は確かレンタルDVDで見て記事をアップした記憶があります。いつでもレンタルできると思うと安心感?ありますよね。
    『サン・スーシの女』はVHSでチェックしましたが、これは今でもDVDが出ていなさそうですね。CSでの放送はここ数年では記憶ないです……(TV番組表みたいなアプリ使って常時チェックしているのですが……)

  3. 菅沼実千代 より:

    初めまして。
    50年以上も前にふらりと内容も知らずに見た映画ですが鮮明かつ強烈な思い出として脳裏に刻まれております。トロツキー、スターリン、レーニンは名前は知っている年齢です。そして「刺客」は司馬遷の「刺客列伝」で知っておりますが、生々しい場面とあの美男のドロンが演じたことでも私には一層衝撃的でした。史実に基づいていることも調べて分かりました。若い人にぜひ見て貰いたい作品です。解説有難うございました。

  4. 居ながらシネマ より:

    菅沼実千代さん、コメントありがとうございます。
    今となっては歴史上のこと、みたいなことを記事で書いてしまいましたが、粛清とか暗殺とか、今でも当たり前のように行われているわけで、十分生々しいお話ですよね。
    内容をご存知ないままご覧になったとのことで、さぞインパクトがおありだったことと思います。
    大した内容ではありませんが、拙記事がご鑑賞のお手伝いに少しでもなったのであれば、幸いです。
    ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました