※12年7月追記
こちらはアメリカ映画『夕なぎ』(1968)についての記事です。フランス映画『夕なぎ』(1972)については別に記事がありますのでそちらをどうぞ。 → 『夕なぎ』 César et Rosalie (1972)
作品メモ
ジョアンナ・シムカス出演作をもう1本。
これで彼女の出演作のチェックはいったんおしまいで、今までとりあげた作品をまとめると(掲載逆順)、
- 『夕なぎ』 Boom (1968) (本エントリー)
- 『失われた男』 The Lost Man (1969)
- 『オー!』 Ho! (1968)
- 『若草の萌えるころ』 Tante Zita (1968)
- 『冒険者たち』 Les Aventuriers (1967)
やっぱり『冒険者たち』が突出してますかね~
『夕なぎ』ですが、主役はエリザベス・テイラーとリチャード・バートンの世紀のカップル。
地中海に浮かぶ島の豪邸に住み、死期が近づいている女主人がエリザベス・テイラーで、リチャード・バートンは島に(文字通り)流れ着いた謎の男という設定。
2人の共演作で日本で公開されたのはこれが最後みたいです(カメオを除く。後述)。
3番目にクレジットされているのはノエル・カワードで、役は「カプリの魔術師」(The Witch of Capri)。
ジョアンナ・シムカスは女主人の我が儘につきあいながら自叙伝の口述筆記を担当する秘書の役です。
主役でもない映画をなぜ取り上げるかと言えば、このあとロミー・シュナイダーが出ていたフランス映画『夕なぎ』につなげるための苦しい布石だったりして。
『夕なぎ』というタイトルの映画はこの2本。
年代は違うのにallcinemaのコードも「23990」と「23991」でなぜかとなり同士なのでした。
フランス映画の『夕なぎ』は大人の女性を軸に中年紳士とかつての恋人があれこれという、いかにもおフランスなラブストーリーでしたが、こちらの『夕なぎ』は主演がこの2人で邦題も『いそしぎ』っぽいしで、きっと絶海の孤島を舞台に濃密なメロドラマが繰り広げられるのだろう……なんて期待すると見事に肩すかし。
アートに傾いた結構ヘンてこりんな映画で、正しい鑑賞態度は人それぞれでしょうけど、個人的には刀を差した着流し姿?のリチャード・バートンや、やる気があるんだかないんだかわからないノエル・カワードと、名だたる俳優たちのコスプレを楽しむことができたので十分OKかと。
テネシー・ウィリアムズの戯曲”The Milk Train Doesn’t Stop Here Anymore” を自身が脚色(変な言い方?)。
T・ウィリアムズ原作ものは、エリザベス・テイラーは『熱いトタン屋根の猫』と『予期せぬ出来事』、リチャード・バートンは『イグアナの夜』で経験済み。
製作ジョン・ヘイマン、監督ジョセフ・ロージー、撮影ダグラス・スローカム、音楽ジョン・バリー。
トリビア
IMDbのトリビアによると、”sh**!”というののしり言葉が使われた最初の映画だとか。
エリザベス・テーラーがこの言葉を使うのをご覧になりたい方は本編開始20分目くらいをどうぞ。
リズとリチャード
IMDbのトリビアに、「2人の共演作11本のうちの8本目」とありました。
11本を並べてみますと(公開順)、『予期せぬ出来事』(’63)、『クレオパトラ』(’63)、『いそしぎ』(’65)、『バージニア・ウルフなんかこわくない』(’66)、『じゃじゃ馬ならし』(’67)、『危険な航路』(’67)、『ファウスト悪のたのしみ』(’67)、『夕なぎ』(’68)、”Under Milk Wood” (’72 未)、”Hammersmith Is Out” (’72 未)、『離婚・男の場合 離婚・女の場合』(’73 TV)。
ただ、リチャード・バートンが出演した『1000日のアン』(’69)にもエリザベス・テイラーがカメオで出ているようです(クレジットなし)。これを含めるなら12本。
テネシー・ウィリアムズを加えてリストを作ってみると、
タイトル | T・ウィリアムズ | E・テイラー | R・バートン |
---|---|---|---|
離婚・男の場合 離婚・女の場合 Divorce His – Divorce Hers (1973・TV 日本ではビデオスルー) |
○ | ○ | |
Hammersmith Is Out (1972・未) | ○ | ○ | |
Under Milk Wood (1972・未) | ○ | ○ | |
1000日のアン Anne of the Thousand Days (1969) | カメオ | ○ | |
夕なぎ Boom (1968) | 原作・脚本 | ○ | ○ |
ファウスト悪のたのしみ Doctor Faustus (1967) | ○ | ○ 監督も | |
危険な航路 The Comedians (1967) | ○ | ○ | |
じゃじゃ馬ならし The Taming of the Shrew (1967) | ○ | ○ | |
バージニア・ウルフなんかこわくない Who’s Afraid of Virginia Woolf? (1966) | ○ | ○ | |
いそしぎ The Sandpiper (1965) | ○ | ○ | |
イグアナの夜 The Night of the Iguana (1964年) | 原作 | ○ | |
クレオパトラ Cleopatra (1963) | ○ | ○ | |
予期せぬ出来事 The V.I.P.s (1963) | ○ | ○ | |
去年の夏 突然に Suddenly, Last Summer(1959) | 原作・脚本 | ○ | |
熱いトタン屋根の猫 Cat on a Hot Tin Roof (1958) | 原作 | ○ |
参考までに、2人の結婚は、64年3月~74年6月と75年10月~76年8月。
『離婚』を撮ったあとに離婚してるって(しかも2回)、やっぱりすごいカップル。
生のリズ
エリザベス・テイラーが亡くなったのは昨年3月23日のこと。日本はまだ大震災後の混乱の中にあり、知らせは震災や原発報道に埋もれてしまったかと思います。私自身も当時映画どころではない状況で、そのことを知ったのはだいぶ後になってからでした。
あの頃はもう二度と映画なんか見る気起きないよ的気分でしたが、それが1年ちょっとでこんな文章を呑気に書いているのですから人間なんて勝手なモノ。
それはさておき、訃報に接してまっさきに思い浮かべたのは、自分のこの目で見た生の彼女の姿でした。
おそらく90年代だったと思いますが、たまたま東京の秋葉原電気街に出向いていた時のこと。
とある大型店の前が賑わっていて、なんだろうと近づいてみたら、立派なクルマが到着したところで、そこから降りてきたのがなんとエリザベス・テイラーその人だったのです。
意外な人を意外なところで見てあまりの現実味のなさにしばしポカン。屈強なボディーガードを従えてお店に入っていく様子をぼんやり見送りながら、なぜ彼女がここにいるの?? とクエスチョンマークがひらひら脳内を舞っていました。
後で知ったのですが、その時期とあるイベントのために来日していたのは確かなようで、見間違えではなさそう。でも時とともに記憶も薄れ、今となってはあれは夢か幻だったかと思うこともあります。
とはいえ秋葉原電気街と世界的大女優という取り合わせは後からジワジワくる面白さがあり、今でもこうして文章書きながらニヤニヤと楽しんでしまったのでした。
ロケ地
IMDbでは、
Capo Caccia, Sardinia, Italy
Cartoe beach, Sardinia, Italy
Rome, Lazio, Italy
Sardinia, Italy
と、主にイタリアのサルジニア島です。
崖の上の家
この映画に関しては興味はただ一点、「あの家はどこよ?」ですが、どうもセットっぽいですね。
まず日差しからおそらく西向きであることがわかり、さらに正面に見える小島と両脇の崖の形を手懸かりにGoogle Earthで場所を詰めていったところ、サルジニア島北西部のちょっと突き出たこのあたりであることがわかりました。
この場所で撮られた画像が、バルコニーからの眺めとどんぴしゃ一致します。
- http://www.panoramio.com/photo/12059208
- http://www.panoramio.com/photo/62302078
- http://www.panoramio.com/photo/64642465
なのでここであることは間違いなさそうなのですが、空撮画像では建物や付帯する噴水など跡形もありません。
ちなみにこの小島は”Isola Piana”という名前。
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