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『パレルモ』 Dimenticare Palermo (1990)

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作品メモ

ひとつ前のエントリー『シシリーの黒い霧』と同じくフランチェスコ・ロージ監督作。
麻薬撲滅を訴えるニューヨーク市長候補が、新婚旅行先のパレルモで謎めいた出来事に巻き込まれるという、監督お得意の社会派ドラマとなっています。

VHSタイトル『パレルモ/血と掟』。日本ではDVDソフト化はされていないと思われます。

キャストは
父親がシチリア出身のニューヨークの政治家カーマインにジェームズ・ベルーシ。
婚約者キャリーにミミ・ロジャース。
シチリア出身のジャーナリスト、ジャンナにカロリーナ・ロージ。監督の娘です。
一目でその筋とわかる顔役にジョス・アクランド。
ホテルの支配人にフィリップ・ノワレ。

アメリカ版予告編↓

監督フランチェスコ・ロージ、撮影パスクァリーノ・デ・サンティス。

音楽エンニオ・モリコーネ↓
いかにも彼の社会派サスペンス系の曲想ですね♪

原作

原作は« Oublier Palerme »(1966)W 『忘却のパレルモ』の邦題で翻訳本も出ています(1967 新潮社)。

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著者エドモンド・シャルル=ルーは、日本ではどちらかと言えば映画『ココ・アヴァン・シャネル』の原作者として知られているかもしれません。

外交官の家に生まれ、第二次世界大戦中は外人部隊やレジスタンスの看護師として活動、戦後は『エル』を経て『ヴォーグ』の編集長、その後は作家として活躍というキャリア。[1]私生活では、夫はミッテラン政権下で内務大臣も務めたマルセイユ市長ガストン・ドフェール
『忘却のパレルモ』は、1966年に『ヴォーグ』を去った後の作家として最初の作品となり、これで見事ゴンクール賞を受賞しています。

内容は、シチリア出身でニューヨーク在住の雑誌編集者が語り手となり、彼女の目を通して、アメリカとシチリアという歴史も文化も異なる世界を相照らしてみせる趣向。
プーヅォの『ザ・シシリアン』のような読みやすさはなく、知性と感性が濃厚にブレンドされてしかも文体が凝っているという、いかにも文学の味わい……(たぶん褒めてる)。

映画化に際しては、ニューヨークの政治家が新婚旅行でルーツであるシチリアへ出かけるという筋書きですっきりまとめられています。
これは原作の後半1/5ぐらいに相当する内容でしかなく、だいぶ中身が割愛されています。
結果、映画では理想に燃える若き政治家と闇の勢力との対決、みたいな図式となり、ありがちなマフィアものといいますか麻薬ものになってしまったような。
英題も”The Palermo Connection”ですし……。

原作では語り手であり大きな役割を担っていたジャンナが、映画では存在感がぐーっと後退、緻密に描かれていた彼女の目線での文明批評的部分がほぼ消滅しているのがちと残念。
一方の政治家カーマインについても肉付けが薄くなり、何よりオチが全然違うので、もう原作と映画は別物と思った方が良いかもしれません……。

ロケ地

IMDbでは、

Via Simone di Bologna, Palermo, Sicily, Italy (hotel exteriors)
Palermo, Sicily, Italy (street scenes)
Tonnara Bordonaro, Vergine Maria, Palermo, Sicily, Italy (sightseeing: castle)
Monreale, Palermo, Sicily, Italy (sightseeing)
Giardino Garibaldi, Via Lungarini, Palermo, Sicily, Italy (jasmine vendor bothering Bonavia)
Via Francesco Riso, Palermo, Sicily, Italy (shootout while touring in carriage)
96 Madison Street, Manhattan, New York City, New York, USA (Bonavia’s campaign headquarters)
Madison Street & Catherine Street, Manhattan, New York City, New York, USA (drug dealers by the schoolyard)
Pike Street, Manhattan, New York City, New York, USA (Bonavia and journalist in the car talking about rehab centers)
139 Duane Street, Tribeca, Manhattan, New York City, New York, USA (pizzeria La Trappola)
St. Bartholomew’s Episcopal Church “St. Bart’s”- 325 Park Avenue, Park Avenue at 51st Street, Midtown, Manhattan, New York City, New York, USA (wedding)
Old St Patrick’s Cathedral – 264 Mulberry Street, Little Italy, Manhattan, New York City, New York, USA (Bonavia and journalist reviving childhood memories of religious school)
East River Bank, Queens, New York City, New York, USA (assassination)

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

このエントリーも、シチリア中心にチェックしています。

ホテル

0:26

こちら↓は、シチリア到着後ホテルに到着するまでの抜粋。

到着前、車から身を乗り出したのはこの通り。

Via Simone di Bologna, Palermo, Sicily, Italy (hotel exteriors)

行く手に見えているのは、

Cattedrale di Palermo(パレルモ大聖堂)W

その右手がホテルという設定。
実際にはこちら↓で、ホテルではありません。

Liceo Vittorio Emanuele PalermoW

内部は、シチリアではなくローマのこちら↓

Grand Hotel Plaza
Via del Corso, 126, 00186 Roma RM

こちら↓は1920年の写真とのことですが、映画の時点でまったく変わっていないですね。おそらく今でも同じかと。

ホテルは設定では « Grande Albergo delle Palme »W
出迎えた支配人はフィリップ・ノワレ。

市内めぐり1

大通り

0:29
交通量の多い大通り、突き当たりに教会が見えます。
これはパレルモのお隣バゲリーア。
その中央を東西に伸びるCorso Umberto Iという通り

これまでのエントリーで言えば、『シチリア!シチリア!』 Baarìa (2009)でセットや実写の形で何度も登場しています。

2人が歩いて行くカットは、教会前の広場から通りに向かって。

海辺の要塞

0:30

Tonnara BordonaroW, Vergine Maria, Palermo, Sicily, Italy (sightseeing: castle)

祭り

0:35

「ホテル」で掲載した動画の最後の部分がこの場面。

The Santa Rosalia Festival

場所は、パレルモのヴィットリオ・エマヌエーレ通り。
最初のショットはこのあたり↓ カメラ西向き。

前を横切ったのは、

最後のショットは、この柱のあたり

花売りの広場

0:37

ジャスミンの花売りが近づいてきたところ。1:02頃再登場。

Giardino Garibaldi(ガリバルディ庭園)W, Via Lungarini, Palermo, Sicily, Italy (jasmine vendor bothering Bonavia)

背景でウニョウニョ生えているのはゴムの木でしょうか?

そばでNYでも見かけたジョス・アクランドが様子をうかがっています。
見るからにその筋の雰囲気がたっぷり。
『シシリアン』(87)でもドン・クローチェを演じていましたが、ルックスと言い声と言い、この俳優さんはどうしても強面役が多くなりますね。

市内めぐり2

広場と路地

0:41

人々の写真を撮るところ。
路地に入ると大量の注射器が落ちているディープなエリアという設定。

撮影場所は、パレルモ市内のこちら↓

広場に面した建物は、映画ではだいぶ傷んでいましたが、SVを見る限りリノベされた模様で何より。
突き当たり左手に見えるのが、次の場面の教会。

バロック様式の教会

上掲動画の最後に登場するバロック様式の教会。

Santa Maria di Valverde, PalermoW

最初にアップで写る天使はこちら↓の中央

お墓

0:45

場所は、パレルモ大聖堂。

案内人の説明では、神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世Wの柩のようですが……
画像を見る限り、ハインリヒ6世Wのもののようにも見えます……

教会の中庭

0:46
特徴的な柱の前で記念撮影をする中庭。
こちら↓の回廊(南西の角)。

モンレアーレ大聖堂(Duomo di Monreale)W

この教会は、『シシリアン』(87)で枢機卿のいるところとして登場しています(聖堂内)。

キャリーをタクシーに乗せたのは、その北側の広場。

馬車

通過する交差点

0:56

交差点の仰角ショットは、『シシリアン』の冒頭で写されたところ。
馬車は西へ向かって進みます。

Quattro CantiW

赤い天蓋の教会

赤い天蓋が3つ並んだ教会。

Chiesa di San Cataldo (Palermo)W

痛んだ建物

痛んだ建物を嘆く広場。

Piazza BologniW

最初にこちら↓の前を通過。

広場の奥へ行って、突き当たりの建物の扉の上を捉えます。

引き返して銅像の背後へ。

この広場は、『シシリーの黒い霧』で、冒頭1945年のデモが行われていたところ。

舞踏室

0:58
御者に指示してやってきたところ。

Palazzo Valguarnera GangiW

これはルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』で出てきたホール。
メインの舞踏室ではなく、それに隣接していた部屋で、デビューした娘たちがキャピキャピしているのをバート・ランカスターが「近頃の若い者は」とブツブツ言うところ。
IMDbのPhoto

曲はヴェルディの「ワルツ ヘ長調」。
オリジナルはピアノ曲で、『山猫』ではニーノ・ロータがオーケストラにアレンジしたものが大舞踏会で延々流れていました。

銃撃

0:59
とある広場に出たところで、銃撃戦と遭遇します。

Via Francesco Riso, Palermo, Sicily, Italy (shootout while touring in carriage)

ビーチ

1:02

花売りの若者がいたBAR CORALLO↓

ジョス・アクランドがいたバルコニー↓

Antico Stabilimento Balneare of MondelloW

車を盗んだところ

1:20
パレルモ大聖堂の東側。

今ではこちらは道幅が狭められ、車を停められないですね。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2022/09/03 新規アップ

References

References
1 私生活では、夫はミッテラン政権下で内務大臣も務めたマルセイユ市長ガストン・ドフェール

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