『若草の萌えるころ』 Tante Zita (1968)

若草の萌えるころ HDニューマスター版 [DVD]

作品メモ

『ラ・カリファ』『離愁』と続けたので、このあとロミー・シュナイダー主演作を何本かチェックするつもりでしたが、『冒険者たち』を大幅追記のために久々に見てジョアンナ・シムカスがやっぱり良かったので、ちょっと寄り道。

まずは『冒険者たち』の直後、やはりロベール・アンリコ監督がメガホンをとったこの作品。
同監督とジョアンナ・シムカスとは他にジャン・ポール・ベルモンドと共演した『オー!』がありますが、公開日が密集していますので整理してみますと(フランスの公開日はIMDb、日本はallcinemaに拠る)、

  • 『冒険者たち』  1967/4/12(仏) 同年5/18(日)
  • 『若草の萌えるころ』 1968/1/12(仏)  同年3月(日)
  • 『オー!』 1968/11/4(仏) 1969年5月(日)

何かまるで藤田敏八監督が秋吉久美子さんで続けざまに何本も撮ったのを彷彿させます。
撮影ジャン・ボフェティ、音楽フランソワ・ド・ルーベとこれも『冒険者たち』と同じ。で、実は次の『オー!』も同じです。

『若草の~』は『冒険者たち』に比べると見る機会は限られていましたが、今ではHDニューマスター盤DVDが出ていますし、直近では2010年8月にWOWOWの「特集・欧州映画の名花たち」という枠で放送されています。
この時放送されたのは、『あの胸にもう一度』(マリアンヌ・フェイスフル)、『若草の萌えるころ』(ジョアンナ・シムカス)、『獲物の分け前』(ジェーン・フォンダ)、『アデル恋の物語』(イザベル・アジャーニ)で、全部ありがたくBlu-rayに焼かせていただいたのは言うまでもありません。

原題の”Tante Zita”は「Zitaおばさん」の意。親しかったジタおばさんが突然倒れ、動揺する姪のアニー。容態は思わしくなく、あたかも現実逃避するかのように彼女は夜のパリを彷徨うのでした……
といったお話で、恋愛モノの要素もあるにはあるのですが、むしろ身近な人の死に直面した娘の繊細な心理を描いたドラマです。
微笑んでいてもどこか幸薄い印象のあるジョアンナ・シムカスにぴったりの映画。
彼女のために作られ、彼女のために見る映画でありまして、萌えるのは若草ではなく男性客なのでございます。

その意味で現在のDVDのジャケットは狙いすました一撃。ストライクゾーンど真ん中の球筋に、思わず手を出してしまった方も多そうです。
思えば昔の「ロードショー」や「スクリーン」のグラビアに登場した彼女もまた、いつも憂いを秘めた表情で悩ませてくれたものでした。

出演は、ジタ伯母さんにカティーナ・パクシー、母イヴェットにシュザンヌ・フロン。
他に、お医者さん役に『冒険者たち』でマヌーをだました飛行クラブのメンバーだったポール・クローシェ(Paul Crauchet)、レストランのマスター役にレティシアの養父だった人(Jean Darie)と、微妙に『冒険者たち』とかぶっています。

ロケ地

IMDbには記載がありません。
ひたすら映像とにらめっこです。

マニュエルと渡るところ。

ポンデザール(Pont des Arts)Wを南から北へ。

※2012/07/03追記

milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)

こちらは1986年撮影。

こちらは1981年。

こちらは1977年ですが、改修工事で通行禁止だったそうです。

少女と話すところ

カーブを描く鉄の柵が特徴的な街角。


大きな地図で見る

アニーたちは、Rue Saint-Honoré を西からやってきます。
鉄の柵はおそらくそばの教会(Temple protestant de l’Oratoire du LouvreW)のものと思われますが、もう見当たりません。
背景の”LOUVRE AUTO-ÉCOLE”という黄色い看板のお店は、今は美容室になっているようです。

アニーのアパルトマン

上記街角のすぐそば、ルーヴル間近の、地理的には非常に良さげな物件。
周囲の建物からも場所はわかりますが、実はあとの方で自ら住所を言っていて、そこに実在します。
昔の映画って、実在の住所をけっこう平気で言ってますね。
すぐに見つかると思いますので、マップでの特定は避けることにします。

尾行されるところ

ポンデザールの南側。
フランス学士院(Institut de France)W

Photo from Wikimedia Commons (public domain).

シモンがクルマから降りたところ

楽器のケースを担いでクルマから降りたところ。
上記フランス学士院の裏手のこのあたり。

キネ旬DBではチェロとありますが、大きさ的にはコントラバスのように見えます。

野良ネコ

ネコ好きなら卒倒しかねない場面。
よ~く見ると標識が”RUE DE LA CLEF”と読めるようです。
階段こそ確認できませんが、地形としてはこのあたり。

映画ではいかにも再開発を待つエリアとなっていましたが、今ではきれいなマンションが建っています。

「ピラデス」

ボニーが飛び出してきたところ

「ピラデス」を追いかけてボニーが飛び出してきた角。
下記教会の北側のT字路です。

階段と噴水

「ピラデス」が上ってしまった階段は、サン・シュルピス教会(Église Saint-Sulpice)W の正面(西側)。
モデルを使った撮影が行われていたのは教会の前の噴水。

 

※2012/06/29追記

milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影はすべて1979年1月とのことです。

「噴水も凍るほど寒い年でした」とのこと。

「噴水の北側突き当たり74 Rue Bonaparte に今はない映画館ボナパルトが見えます。
上映作品は『木靴の樹』ですね…」とのこと。

『木靴の樹』ですか。岩波ホールだったかも。私はまだ学生でした……

レストラン

明け方シモンと入った郊外のお店。
場所はわかりませんが、お店のマスターは『冒険者たち』の養父? それが気になりました。

シモンが演奏するところ

川を見下ろす高台。
背景に2本の大きな煙突が見えたので場所がわかりました。
最近『突然炎のごとく』の追記でチェックしたばかりところ。
『突然~』のラスト近くで背景にちらりと登場します。

パリから西に4,50kmのこのあたり。
おそらくこの見晴らし台のような待避線のような出っ張りのところではないかと思われます。

ロケ地マップ

『若草の萌えるころ』&『冒険者たち』パリ近郊マップ


より大きな地図で ジョアンナ・シムカス出演作 を表示

資料

コメント

  1. milou より:

    気づいた面白いこといくつか

    確かに自宅の住所を言うのだが自宅ではなく隣の番地を言っている。
    何か意味があるのだろうか…

    Rue de la Clef だとしたら『シャレード』でHotel St.Jacques を出て
    メトロに乗るため右折した通り。

    それにしても左岸には入ったが家から歩くにしては遠すぎる。
    と言っても狭いパリ、4キロ足らずではあるが。

    アニーが吸うタバコはGitanes Filtre デザインは踊るジプシー女性(Gitane)で
    しばしばフランス映画で異邦人はGitanes を吸っている。
    部屋にはゲルニカのポスターがありTante Zita の夫はスペイン人、
    猫獲りの男とはスペイン語とスペインに縁が深い。
    もう1つの代表的なタバコがGauloise(ゴール人)で生粋のフランス。

    面白いのはアニーが警察に身分証を見せようとポケットの物を出すと
    Gauloise が1つか2つあるように見える。

    頼まれたタバコを買いに行くが閉店で買えず火を借りる。
    この時は“ゴロワーズとマッチ”を呉れと言っている。
    アニーはマッチを持ってなく頼んだ彼女は“フィルター嫌い”のフランス人だから
    それは設定に合うのだが。
    どこかで買えて渡すような設定もあったのか
    シムカス自身のタバコなのか…

  2. milou より:

    少し追記(雑談)

    少なくとも現在では現実にある住所を映画で使うのは何かと問題が多いだろう。
    特にパリの場合は一戸建てはほとんどなくアパルトマンという集合住宅なので
    1つの番地でも影響を受ける人が多くなる。
    しかし例えば日本でも数十年前の歌舞伎俳優名鑑を見ると自宅の住所や
    電話番号まで記載されている。やはり時代が違うんですね…

    それは別としてアニーの住居の建物外部と内部(部屋ではなく)は
    場所が違うのではないかと推測する。
    理由は映画では壁がはげ落ち、かなり老朽化している。
    しかし外部の呼び鈴がある右の壁に黒い銘板が何枚か見える。

    このような銘板の多くは医者や弁護士の表札(?)、つまり比較的裕福な人が
    住んでいる確率が高いから。それこそ老朽化したからか現在は銘板がなくなっている。

    もう1つ、久しぶりに思い出したが医者が公衆電話を掛けるとき
    下部のボタンを押す。昔の公衆電話は相手が応答したらボタンを
    押さないと相手にこちらの声は聞こえない。
    ちなみに昔の公衆電話は硬貨ではなくジュトンという溝の入った専用コインを使った。
    それをカフェなどで買うが公衆電話とトイレの多くは地下にあり、
    古い映画でカウンターでジュトンを買い下に降りる場面がたまにある。

  3. inagara より:

    milouさん、いつもありがとうございます。
    「ここは実はあの映画で登場したところ」って面白いですよね。同じ場所でも撮り方や映画の内容によって全然雰囲気が違っていたりして。
    マップデータはGoogle Earthでピンを立ててまとめて管理しているのですが、パリはもうピンだらけです。

    アニーが住所を教えてくれたのでシモンが有頂天になりギコギコ弾き始めるところは結構ツボです。
    この映画、出てくる男たちが皆あまり感情移入できるタイプではなかったのですが、この場面だけは可愛く見えました。

    昔は普通の俳優さんもプロフィールに自宅の住所が書かれたりしていたことがありました。今ではありえませんけど。
    簡単にウェブで情報が手に入れられる時代ですので、逆に記事を書くときは最低限プライバシーには配慮したいと思っています。といいつつ、アニーのアパルトマン、老朽化したとはいえとても良い場所にあるので、どういう人が住んでいるのか気になったりしるのでした。

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