作品メモ
先月WOWOWで放映されたのを久々に録画鑑賞。
大手製薬会社の社長が山で滑落死。
莫大な株式を相続したヒロインをめぐって、一族のドロドロが繰り広げられます。
原作はシドニー・シェルダンの『血族』。
「超訳」で知られたシドニー・シェルダンものですが、今となっては某社版の安っぽい装幀と英語教材の広告だけが記憶に残ってしまい、肝心の内容は忘却の彼方……という人も多いかもしれません。
映画の方も出演者がゴージャスなわりには人間描写に広がりや奥行きがなく、ちょっともったいないかなあという内容。
ロケ地のリストをみても世界を股にかけた壮大なお話のはずですし、社長の死の謎や猟奇連続殺人、セレブな人たちの愛憎など娯楽映画の要素てんこもりのはずなのですが、シナリオが練り切れていないのか素材がうまく料理されずに出てきたような気がします。
そのゴージャスな出演者を、人間関係を整理しながらご紹介しますと……
ロフ製薬社長サム・ロフの娘、エリザベス・ロフにオードリー・ヘプバーン。
ロフ一族で英国貴族のアレック・ニコルズにジェームズ・メイソン。
その妻ヴィヴィアン・ニコルズにミシェル・フィリップス。
ロフ一族シモネッタ・パラッツィにイレーネ・パパス。
その夫イーボ・パラッツィにオマー・シャリフ。
イーボの愛人ドナテラにクラウディア・モーリ。
ロフ製薬重役リース・ウィリアムズにベン・ギャザラ。
ロフ製薬フランス支社長シャルル・マルタンにモーリス・ロネ。
その妻エレーヌ・ロフ=マルタンにロミー・シュナイダー。
お腹がたっぷり出ているスイス警察警部マックス・ホルヌングに「ゴールド・フィンガー」ゲルト・フレーベ。
頼りになる秘書ケイトにベアトリス・ストレイト。
ウケてしまったのはオマー・シャリフのキャラで、正妻との間に女子3人、愛人との間に男子3人それぞれもうけ、名前も同じ、女性2人はあっちの方もお盛んという、もうこのシチュエーションでイタリア映画風コメディを作ればいいのにと思ってしまいます。
お話の興味としては、リースが果たして本当にヒロインの味方なのか、それに尽きるわけですが、まあ結末は……わかりますよね?
監督テレンス・ヤング。
ヘプバーンとは『暗くなるまで待って』以来12年ぶり。
個人的にはやはり007シリーズと『アマゾネス』♪
音楽エンニオ・モリコーネ。
ヘプバーン出演作で唯一のR指定作品。
シェルダン原作
Wikipediaにシェルダン原作本はそれほど映画化されていない、と「へー」的な文章がありました。
とっさに思い浮かぶのは『真夜中の向こう側』ですが(本は『真夜中の別の顔』)他には……うーん何だろう??と資料をあたってみると……
http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=2986
なるほど大半がテレビドラマ。「それほど映画化されていない」とはそういう意味ですね。
警察のコンピューター
端末は懐かしいDEC(デジタル・イクイップメント)のVT-100 W
0:52頃に印字が見えますが、これはBASIC。当時は行番号がついているのが当たり前でした。
やってることは入力データをまとめてパターンを抽出することらしいですが、普通に捜査資料を人間が読んだ方が電気代がかからなくて良いような気がします。
曲がった絵
クルマ
登場するクルマについては、例によってIMCDbをどうぞ。
IMCDb “Bloodline, Movie, 1979”
ロケ地
IMDbでは、
Cinecittà Studios, Cinecittà, Rome, Lazio, Italy (studio)
Copenhagen, Denmark
London, England, UK
Munich, Bavaria, Germany
New York City, New York, USA
Paris, France
Sardinia, Italy
Sicily, Italy
と、あまり具体的ではありません。
エンドクレジットでは、
The production company would like to thank all the people who cooperated in the making of this film on location in New York, London, Paris, Rome, Costa Smeralda – Sardinia; and in West Germany, Munich, Burghausen, Garmisch Partenkirchen, and particularly the management and employees of Boehringer Mannheim GmbH.
資料はこのくらいですので、あとはひたすら映像を見てチェックしていきました。
パラッツィ家のおうち
精力家パラッツィ氏の本宅。
豪邸ですが、台所は火の車の様子。
場所はさすがにヒントがないとわかりません。ギブアップ。
博物館
エリザベスのもとにリースがやってくるところ。
場所は調査中。
15分過ぎて、ようやくヒロイン登場です。
エリザベスとリースが歩く橋と水辺
チューリッヒ空港
ホンモノとは思いますが、今とは管制塔など形が違います。
エリザベスたちが降りてきたのは、別のところでしょう。
ロフ製薬本社ビル
円筒を4つ組み合わせたような洒落たビル。
これはもう、ミュンヘンにあるBMWWの本社ビルですよね。
工場
ホンモノの製薬会社が撮影協力しているようですが、エンドクレジットにある Boehringer Mannheim GmbH ではないかと思います。
現在のベーリンガー・インゲルハイム Boehringer IngelheimW
クラクフ(ポーランド)
両親の故郷をたずねる場面。
この時代のポーランドロケはありえないので西欧のどこかだと思いますが、エンドクレジットにある地名をチェックしてみたところ、ドイツ南部オーストリア国境近くにあるこちらのようです。
エリザベスたちが入っていく門のようなところはブルクハウゼン城 (Burghausen Castle)W で、門は右の画像の右端に写っています。
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背景に見える青い塔は、
Pfarrkirche_St.Jakob(Burghausen)W
licensed under a Creative Commons Attribution 2.0 Generic License .
雪山のレストラン
父親の死の真相を知るべく出かけたところ。
Braustuberlとありますので、ビアホールでしょうか。
場所はエンドクレジットにあるGarmisch Partenkirchen (ガルミッシュ=パルテンキルヒェン)Wのようです。
お店は今もありました。
Bräustüberl Garmisch
Fürstenstraße 23, Garmisch-Partenkirchen, Germany
http://www.braeustueberl-garmisch.de/
licensed under a Creative Commons Attribution 2.0 Generic License .
いかがわしい通り
禿頭の男が女性を物色するところ。
このあたりから突然R指定っぽくなるわけですが……
場所は調査中。
エンドクレジットの地名を見る限り、いかにもコペンハーゲンな雰囲気がしてしまうのですが、どうでしょう??
OLBIA SARDINIA
別荘という設定でしょうか。
いかにも地中海な景色の家。
エンドクレジットにあるこのあたりなのでしょう。
Costa Smeralda – Sardinia (サルディーニャ島Wのコスタ・スメラルダW)
アレック・ニコルズの館
いかにも英国な渋い貴族の館。
パラッツィ邸同様、見つけるのは難しそう。
庭園
本妻と愛人がニアミスしかけてあせりまくるパラッツィ氏。
噴水がふんだんに取り入れられた庭園は、イタリアはティボリにあるこちら。
Villa d’Este(ティヴォリのエステ家別荘)
http://www.villadestetivoli.info/storiae.htm
フランス支社
エレーヌの住まい
エレーヌが凱旋門の方からスポーツカーでやってくるところ。
自宅という設定でしょうか。
この建物は、1992年6月から2011年3月まで三越エトワール(Mitsukoshi Étoile)でした。
クルマは白かったので一瞬ロータス・エスプリかと思ってしまいましたが、脇に跳ね馬がついていました。
IMCDbによれば、フェラーリのDino308 GT4W。
http://imcdb.org/vehicle_451454-Dino-308-GT4-1974.html
レストラン
エリザベスが怒って出て行ってしまうところ。
セリフにもあるようにマキシム・ド・パリ。
Maxim’s
http://www.maxims-de-paris.com/
回廊
言い合いしながら歩く2人が、気がついたらキスになだれ込んでしまったところ。
盛り上がった2人の目に映ったのは、ラブホテルではなく五つ星ホテル。
HOTEL DE CRILLON
実際にマキシムからコンコルド広場に向かい角を曲がればここに出ます。
マキシムといいクリヨンといい、2時間ドラマの看板がはっきり映るお店や旅館みたい。タイアップなんでしょうか??
サルディーニャ
空港は、オルビア・コスタ・スメラルダ空港。
ロケ地マップ
ヘプバーン出演作ロケ地マップから、『華麗なる相続人』関連。
といいましてもロケ地の範囲がとても広いので、他の作品も含まれてしまっています。
(12/7/17追記)
より大きな地図で オードリー・ヘプバーン出演作 を表示
資料
関連記事
ヘプバーン出演作
- 『いつも2人で』 Two for the Road (1967)
- 『おしゃれ泥棒』 How to Steal a Million (1966)
- 『シャレード』 Charade (1963)
- 『ティファニーで朝食を』 Breakfast at Tiffany’s (1961)
- 『パリで一緒に』 Paris – When It Sizzles (1964)
- 『パリの恋人』 Funny Face (1957)
- 『噂の二人』 The Children’s Hour (1961)
- 『尼僧物語』 The Nun’s Story (1959)
- 『昼下りの情事』 Love in the Afternoon (1957)
- 『暗くなるまで待って』 Wait Until Dark (1967)
- 『華麗なる相続人』 Bloodline (1979)
- 『麗しのサブリナ』 Sabrina (1954)
ロミー・シュナイダー出演作
- 『すぎ去りし日の…』 Les choses de la vie (1970)
- 『サン・スーシの女』 La passante du Sans-Souci (1982)
- 『スカンポロ』 Scampolo (1958)
- 『ラ・カリファ』 La califfa (1970)
- 『何かいいことないか子猫チャン』 What’s New Pussycat (1965)
- 『夕なぎ』 César et Rosalie (1972)
- 『太陽がいっぱい』 Plein Soleil (1960)
- 『太陽が知っている』 La piscine (1969)
- 『恋ひとすじに』 Christine (1958)
- 『暗殺者のメロディ』 The Assassination of Trotsky (1972)
- 『華麗なる相続人』 Bloodline (1979)
- 『追想』 Le vieux fusil (1975)
- 『離愁』 Le train (1973)
更新履歴
- 2021/05/25 マップのリンクを更新
コメント
映画では、サイトとしては、実に見事なサイトと思いました。また、お邪魔させて頂くことでしょう。
華麗なる相続人は、見ていないのですが、映画としては、興行的にも失敗作だったとか。
カワダ ツネヒロさん、コメントありがとうございます。
こんな感じで続けているサイトですので、また機会がありましたら、お立ち寄りください。