作品メモ
ひとつ前のエントリー『それは外宇宙からやって来た(イット・ケイム・フロム・アウター・スペース)』(1953)同様、50年代の未公開モノクロSF映画。
こちらは、増殖するサヤから生まれた異星生物が、実在する人間そっくりに変身し次々入れ替わっていくと言う、典型的な侵略物となっています。
テレビドラマの『インベーダー』は小指が曲がらないという見極めができますが、こちらはつい最近ついた傷まで完全コピーしてしまうという徹底ぶりで、見た目はまったく区別がつきません。
最後に本人が寝ている間に心と記憶を吸い取ってしまい、コピー作業完了。するとコピー元は消えてしまうという設定のようです。
外観こそ人間そっくりですが、彼らに個人的な感情も個性もありません。無表情で行動し、大量のサヤを街の外に次々輸送して、どんどん増えていこうとします。
「悩みのない世界を創るのだ」と自画自賛しますが、もちろん主人公たちにとってはとうてい受け入れられない世界観。
このあたり、全体主義に対する恐怖と嫌悪が漂い、冷戦ど真ん中という時代を感じさせます。
この設定ならバッドエンドも十分ありかと思われますが、さすがにこの時代のアメリカ映画で、それは難しかっのでしょうか。
最初と最後の場面が追加撮影され、現在の形となったようです。
サスペンスの組み立てや全体に漂う不気味さなど、良くできたSF映画ですが、『それは外宇宙~』同様日本では劇場未公開。
原作は早くから翻訳されていたので(後述)、昔は「ドン・シーゲルが撮った『盗まれた街』(未公開)」みたいに紹介されていました。
その後ビデオ化され、今ではDVDでいつでも鑑賞可能。
つい最近もNHK BSでとてもきれいな画質で見ることができました。
街の診療所で働く医師マイルズ・ベネルにケヴィン・マッカーシー。
街へ戻ってきたばかりのベッキー・ドリスコルにダナ・ウィンター。
バツイチ同士のふたりは、たちまち良い雰囲気となったりします。
キャストで興味深いのは、ガス・メーターを調べに来た男チャーリー役のサム・ペキンパー。
これは指摘されなければとうてい判りません。登場は一瞬だけ。
IMDbのTriviaによると、セリフ指導(dialogue coach)としても参加しているとのことです。日本の映画サイトによっては脚本に名前を連ねていますが、IMDb上ではあくまでチャーリー役のみ。
他に、冒頭パトカーで駆けつけたドクター・ヒルは、ホイット・ビッセル(Whit Bissell)。
傑作SFドラマ『タイムトンネル』の所長さんですね。
病院側の医師ともどもクレジットがありませんが、追加撮影されたためかと思われます。
監督ドン・シーゲル、撮影エルスワース・フレデリックス、音楽カーメン・ドラゴン。
原作
原作はジャック・フィニーの『盗まれた街』(The Body Snatchers 1954)W。
日本では福島正実さんの翻訳で早くから紹介されています。
最初は銀背のハヤカワファンタジー(ハヤカワSFシリーズの前身)。輝けシリーズ第1回配本作品です(No.3001 1957年)。
リメイクの『SF/ボディ・スナッチャー』公開時(日本では1979年)、映画のスチルを表紙に使った文庫版が登場。
現在のハワカワ文庫版はこういった表紙
映像化作品
『盗まれた街』を原作とする映画は、サヤ人間のように増殖を重ねて(笑)、今のところ全4本。
タイトル | 年 | 監督 | 出演 |
---|---|---|---|
インベージョンW The Invasion IMDb allcinema |
2007 | オリヴァー・ヒルシュビーゲル | ニコール・キッドマン ダニエル・クレイグ |
ボディ・スナッチャーズW Body Snacthers IMDb allcinema |
1993 | アベル・フェラーラ | ガブリエル・アンウォー メグ・ティリー フォレスト・ウィテカー |
SF/ボディ・スナッチャーW Invasion of the Body Snacthers IMDb allcinema |
1978 | フィリップ・カウフマン | ドナルド・サザーランド ブルック・アダムス レナード・ニモイ ジェフ・ゴールドブラム |
ボディ・スナッチャー/恐怖の街W Invasion of the Body Snatchers IMDb allcinema |
1956 | ドン・シーゲル | ダナ・ウィンター ベッキー・ドリスコル |
スナッチャーな映画
スナッチャーな映画はallcinemaで検索すると12本(1本は重複)出てきます。
以下年代逆順に整理。
- スナッチャーズ・フィーバー 喰われた町 (2014)
- セクシー・ボディ・スナッチャーズ (2005 未)
- ボーン・スナッチャー (2003 未)
- エイリアン・スナッチャーズ (1996 未)
- アウタースペース/砂漠の人体スナッチャー (1995 TV)
- ブレイン・スナッチャー/恐怖の寄生生命体 (1994 未)
- ブレイン・スナッチャー/恐怖の洗脳生物 (1994 未)
- ボディ・スナッチャーズ (1993 未)
- SF/ボディ・スナッチャー (1978)
- ガール・スナッチャーの侵略 (1973 未)
- クリストファー・ウォーケンのマインド・スナッチャー/狂気の人体実験 (1972 未)
- ボディ・スナッチャー/恐怖の街 (1956 未)
こちら↓は番外編。
ロバート・ワイズ監督の『死体を売る男』(1945)
原題が”The Body Snatcher”
ロケ地
IMDbでは、
と詳しいです。
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
病院
冒頭。
不明。
駅
設定では街はサンタ・ミラ(Santa Mira)。駅名も同じ。
撮影は、こちら↓ 現在は無くなっています。
Railroad Station, Chatsworth, Los Angeles, California, USA
映画やドラマに登場したこの駅についてはたとえばこちら↓
- http://www.movielocationsplus.com/chatrain.htm
- http://a-drifting-cowboy.blogspot.jp/2012/07/chatsworth-filming-location-railroad.html
交差点
マイルズの診療所が面しているところ。
真ん中に三角地帯があり、後半恐ろしいサヤの配送センターとなります。
Town Square, Sierra Madre, California, USA
診療所の建物の位置はこのあたり↓ですが、外観がちょっと違うかも。大幅リノベートか、もしかすると建て替えられているかもしれません。
これまでのエントリーで言えば、『ザ・フォッグ』の教会はこの交差点から北へ400mほどのところ。
階段
0:51頃、追われながら懸命に駆け上がる狭い階段。
階段・下
Steps between 2744 & 2748 Westshire Drive, Los Angeles, California, USA
階段・上
Steps between 2823 & 2831 Hollyridge Drive, Pelham, Los Angeles, California, USA
階段へ群衆が押し寄せてくる俯瞰場面は、階段の上から西向きに見下ろしています。
この場面『第三の男』を連想します。
廃坑
Bronson Caves, Bronson CanyonW, Griffith Park – 4730 Crystal Springs Drive, Los Angeles, California, USA
Wikipediaにはここで撮影された映画のリスト(一部)があり、この映画もリストアップされています。
またIMDbのリストはこちら↓
当サイトで取り上げた映画で言えば『スリーパー』。
ロケ地マップ
※17/2/26項目追加
資料
更新履歴
- 2017/02/26 「ロケ地マップ」項目追加
- 2016/11/23 新規アップ
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