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『それは外宇宙からやって来た(イット・ケイム・フロム・アウター・スペース)』 It Came from Outerspace (1953)

それは外宇宙からやって来た [DVD]

It wasn’t the right time for us to meet.

作品メモ

ひとつ前のエントリー『宇宙からの侵入者』 They Came from Beyond Space (1967)から、似てるタイトルつながり。

こちらも隕石が落下してくるところから始まります。
アメリカ映画なので、落ちた先はイギリスではなくアリゾナの砂漠。
接触した地球人はやはり何者かに操られてしまったりします。
なんだかありがち?

でもここから先、いわゆるファーストコンタクトものとして、展開は秀逸なものに。
異星人には悪意はなく、ただ宇宙船の修理が終わるまで地球人の体を借りたかっただけでした。
その異星人は、地球人から見るととんでもない異形のもの。グロテスクなモンスタちゃんです。
人類以上に高い知性と理性を持っているはずですが、その外観はとうてい平常心で受け入れられるものではありません。

異星人もおそらくそれを察知して、人類とは距離を置こうとします。
侵略するわけでも簡単に友人になるわけでもない関係。
その微妙な間合いは、ファーストコンタクトとして結構あり得そうで、ラストでは主人公ともども「人類まだまだかなあ……」とあれこれ感嘆と感慨にひたることとなります。

日本では長らく幻の作品扱いでした。
WOWOWで初めて放送された際に、原題のまま「イット・ケイム・フロム・アウター・スペース」とタイトルが付けられましたが、昨年(2015年)のDVD化で、昔から伝えられてきた「それは外宇宙からやってきた」となっています。

監督ジャック・アーノルド(Jack Arnold)、製作ウィリアム・アランド(William Alland)、脚本ハリー・エセックス(Harry Essex)、原案(Story)レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)、特殊撮影デヴィッド・S・ホースリー(David S. Horsley)、撮影クリフォード・スタイン(Clifford Stine)。
他に、クレジットされていませんが、音楽はアーヴィング・ガーツ、ヘンリー・マンシーニ、ハーマン・スタインとのこと。

出演は……
隕石の落下現場で宇宙船を見てしまったアマチュア天文学者ジョン・パットナムにリチャード・カールソン。
その恋人エレンにバーバラ・ラッシュ。
シェリフのマットにチャールズ・ドレイク。
電線工事のフランクにジョー・ソーヤー。
同じくジョージにラッセル・ジョンソン。
ジョージの恋人ジェーン[1]IMDbではJuneとなっていますが、クレジットではJaneにキャスリーン・ヒューズ。

……以上がエンドクレジットで顔つきでクレジットされます。

 
 
 

ウィリアム・アランド

製作のウィリアム・アランドは『ニューヨークの怪人』でメモ済み。

ジャック・アーノルド

監督作は、

  • 『ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス』 The Mouse That Roared (1959)
  • 『縮みゆく人間』 The Incredible Shrinking Man (1957)
  • 『世紀の怪物 タランチュラの襲撃』 Tarantula (1955)
  • 『半魚人の逆襲』 Revenge of the Creature (1955)
  • 『大アマゾンの半魚人』 Creature from the Black Lagoon (1954)
  • 『それは外宇宙からやって来た(イット・ケイム・フロム・アウター・スペース)』 It Came from Outer Space (1953)

……と個人的に秘孔を突かれるラインナップ。
『ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス』あたり、もう一度見たいですね。

レイ・ブラッドベリ

原案(Story)としてクレジットされていて、これが巨匠の劇場用映画初仕事。
脚本はハリー・エセックスの名前になっていますが、実際には映画にほぼ近い形までブラッドベリがお仕事しているようです。

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)

原案だけではなく、原作と呼べる短編小説も存在し、これはSF映画の原作を集めた日本オリジナルアンソロジー『地球の静止する日』(創元SF文庫 2006年)で初めて読むことができました。
巻末の解説(添野知生氏)によると、『それは~』に関する多数の資料が収められた本が2005年に出版され、そこに原作として収録されていた未発表作品であるとのこと。

タイトルは「趣味の問題」”A Matter of Taste”。
こちらでは映画とは逆に、異星にやってきた地球人の探検隊を異星人の目線で描いています。
知性も徳も高い文明的な異星人は、地球人に対し友好的な態度で接しようとしますが、問題は地球人から見て彼らが2メートル以上ある8本足のクモのような外観であること。
いくら理性ではわかっていても、相手はしょせん巨大なクモ。地球人はどうしても恐怖や嫌悪感を克服できません。
やがて地球人たちはある決断を下すのでした……

……といったお話。

映画の方は設定が真逆なのでこの短編とのつながりが見えづらいですが、1:01頃のシェリフとの会話あたりは、原作と通じるものがあります。

キャスリーン・ヒューズ

この女優さん、ごめんなさい、名前を知りませんでした。
出番は1シーンだけですが、田舎町にこれはどうよという妙にコケティッシュな感じで印象に残ります。
そのためか(汗)エンドクレジットで画像入りで堂々と登場。

IMDbで使われているこちら↓のびっくりまなこの画像は、衣装からしてこの映画のものです。

いかにも彼女がモンスタちゃんに遭遇したような様子ですが、でもこんな場面はありません。
宣伝用に撮られたものでしょうか。あるいは撮影はされたものの、カットされたのかもしれませんが、詳細不明。

3D

ユニバーサルスタジオの最初の3D映画とのこと(→ IMDbのTrivia)。

英語版Wikipediaの3D filmWで「黄金時代」とされた1952-54のど真ん中に位置します。 モノクロ映画とはいえ、さすがに赤青のアナグリフ方式ではなく、偏光フィルター方式であったと思われます。

冒頭こちらに迫ってくる隕石のショットなどはいかにも3Dを意識している感じ。
吊っている糸がはっきり見えているのはご愛敬。
ゆらゆら揺れる宇宙人目線は3Dで見たらちょっと酔いそうですね。

異星人

モデルを2つ作成、ボツになった方は『宇宙水爆戦』のメタルーナ星人のミュータントとして使われたとのこと(→ IMDbのTrivia

ブロマイド写真★『宇宙水爆戦』メタルーナ・ミュータントにつかまるルース(フェイス・ドマーグ) メタルーナ星人ではなく、メタルーナ星人が作ったミュータントくんの方です。
メタルーナ星人はやたらおでこがひろい人たち。

ロケ地

IMDbでは、

Dead Man’s Point, Lucerne Valley, California, USA
Mojave Desert, California, USA
Santa Clarita, California, USA
Courthouse Square, Backlot, Universal Studios – 100 Universal City Plaza, Universal City, California, USA
Stage 12, Universal Studios – 100 Universal City Plaza, Universal City, California, USA (studio)
Victorville, California, USA

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

設定ではアリゾナ州サンドロック(Sand Rock)。
冒頭俯瞰ショットがありますが、場所不明。

町としては、IMDbではSanta ClaritaとVictorville、英語版WikipediaではPalmdaleとVictorvilleの名前が挙げられています。そのどれかかもしれませんが、不明(おそらく地形的にVictorville)。
いずれにせよ、撮影はカリフォルニア州です。

街角はユニバーサルのオープンスタジオでしょうか。

砂漠

英語版Wikipediaによると、モハーヴェ砂漠(Mojave Desert)W

さすがに砂漠をピンポイントで特定するのは難しいですが、道路に関しては周囲に特徴的なものがあり、以下の項目のようにかなり場所を特定できます。

道路

多くはIMDbのリストにあるこちらの周辺で撮影されています。

Dead Man’s Point, Lucerne Valley, California, USA

特徴的な岩の集まりで、マップではこちら↓

たとえば1:08頃、フランクのトラックを阻止しようと道路封鎖していたのは、このすぐ北側。
街の人たちがクルマを停めたショットは、右手に見える岩場でピンポイントで特定できます。

 
 
 

フランクのトラックは画面向かって右手へハンドルを切り、Dead Man’s Pointへ突っ込んでいくことになります。

また、0:33頃、フランクたちのもとへ戻ろうとカーブのところでUターンする場面は、Dead Man’s Pointから1kmほど北西へ進んだこちら↓

こちらも今でも映画とまったく同じ景色を確認できます。

0:52頃、フランクがエレンのクルマを停めさせたのも同じカーブのところ(カメラ向きは逆)。

0:30頃の電線工事の現場は、厳密には特定できませんが、2人が走り去るとき、エレンの背景に見えていた山はやはりDead Man’s Pointのあたりから南を見た景色。

同じジャック・アーノルド監督の『世紀の怪物 タランチュラの襲撃』Tarantula (1955)は、冒頭まさにこの山のシルエットから始まり、そのままゆっくり左へパンすると、Dead Man’s Pointがフレームに入ってくるという描き方をしています。
またラスト近く、巨大タランチュラを爆薬で吹っ飛ばそうとする場面は、西側からDead Man’s Pointをとらえています。

IMDbで同地を撮影に使った映画のリスト↓を見ると、しっかりこの2本だけがリスト入り。

Most Popular Titles With Location Matching “Dead Man’s Point, Lucerne Valley, California, USA”

資料

更新履歴

  • 2016/11/10 新規アップ

References

References
1 IMDbではJuneとなっていますが、クレジットではJane

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