ルノワール邸
作品メモ
ひとつ前のエントリー『ボルサリーノ』のヒロイン、カトリーヌ・ルーヴェル(Catherine Rouvel)の出演作。
派手目なお顔を他でも見たことあると思ったら、この映画でした。
ジャン・ルノワール監督のコメディで、カトリーヌ・ルーヴェルはそれまで”uncredited”や”scene deleted”だけだったところを、いきなりヒロイン役に抜擢。実質デビュー作ですね。
一方ルノワール監督のフィルモグラフィーでは最後の方、劇場用映画としてはこのあと『捕えられた伍長』(62)があるだけです。
日本語版Wikipediaでは「晩年の喜劇映画」と書かれちゃってますが、この後20年近くご存命でしたから(1979年没)、「晩年」はいくらなんでも……
邦題はフランス語原題そのままで、つまりマネの絵。
優れた社会を築くために男女のことにも科学を導入すべきと主張、人工受精を強く推奨する生物学者の先生が、南仏の郊外で婚約披露も兼ね草の上の昼食会を催そうとしますが、そこで健康美あふれる村の娘と出会ったために……というお話。
娘ネネットを演じたカトリーヌ・ルーヴェルは、DVDのジャケットのような「春の調べ」的場面も披露、教授と男性観客をドキドキさせてくれます。
アレクシイ教授を演じたのはポール・ムーリッスで、これを我慢するのは無~理っす、とばかりに彼女に接近、ふたりは草むらへと消えていき自然の成り行きとあいなります。
婚約者の件やらなにやらその先お話らしきものもありますが、筋書きはとてもシンプルでオチも見え見え。
結局見終わった後記憶に残るのは、あくまで南仏の景色と陽光。
たとえば、ドンドコドコドコという太鼓とともに、みんな妙にハイになり、フリーダムな光景が展開する場面がありますが、そうした人々の営みをまるっとおおらかに包んでくれるような南仏の気風が、なんとも心地よく伝わってきます。
ゴーギャンの『ノア・ノア』で、「すべては美、すべては善、すべては光」という一節がありますが、ゴーギャンもゴッホさえいなければそのまま南仏に居続けて、タヒチまで行かずとも同じ気分を味わえたかもしれませんね 🙄
そのくらいこの映画で描かれたかの地は魅力的で、もしかすると文明批評的な視点など難しいことも含まれていたのかもしれませんが、おかまいなく単純に「南仏良いとこ一度はおいで」的PR映画として楽しんでしまっても良いように思えました。
監督・脚本ジャン・ルノワール、撮影ジョルジュ・ルクレール、音楽ジョゼフ・コスマ。
この組み合わせは、『捕えられた伍長』(62)も同じ。
ロケ地
IMDbでは、
Auvergne, France
Cagnes-sur-Mer, Alpes-Maritimes, France
Côte d’Azur, France
La Gaude, Alpes-Maritimes, France
Studios Pathé-Cinéma – 6 rue Francoeur, Paris 18, Paris, France (studio)
Villa les Collettes, Chemin des Collettes, Cagnes-sur-Mer, Alpes-Maritimes, France (Nino’s house)
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
タイトルバックの施設
後ほど教授たちが合流する若者たちの勤務先。
これは資料がないと難しそう。
ネネットの住まい
IMDbのリストではこちら↓
Villa les Collettes, Chemin des Collettes, Cagnes-sur-Mer, Alpes-Maritimes, France (Nino’s house)
……ということで、監督の実家でした。
「ルノワール」というと映画監督より印象派の巨匠の方(ピエール=オーギュスト・ルノワール)を思い浮かべる方が多いかと思いますが、こちらはその自宅兼アトリエだったところ。
日本語版Wikipediaによれば、1907年にこちらに家を構えたとのことで、次男であるジャン・ルノワール監督も一緒に住んでいたと思われます。
現在ルノワール美術館として一般に公開。
ウェブマップや画像であたってみたところ、敷地内に映画で登場した建物が現存していることがわかりました。
Musée Renoir de Cagnes-sur-MerW
19 Chemin des Collettes, 06800 Cagnes-sur-Mer
- Google Maps(SV) ……門(美術館入り口)
- Bing Maps(概観図)
- WikiMapia ……門(美術館入り口)
- WikiMapia ……映画に登場した建物
- WikiMapia ……本館
画像はたとえば
こちらが映画に登場した建物。
ほぼ映画と同じアングルで、家の前の石段も見えます。
映画に出てきたのが監督の実家だったとは、今回初めて知りました。
何事も調べてみるものですね。
教授宅
0:16
不明
草の上の昼食
場所不明。
ガスパールと山羊のガブリがいた遺跡が手がかりになるかもしれませんが、こういったものはゴロゴロしていそうで……
バイク
0:56
「ローマの休日」よろしくネネットを後ろに乗せてバイクでルンルンの教授と若者たち。 少なくとも前半は実際に運転しているようです。
日光がさんさんと降り注ぐ左カーブのショットは、撮影用のクルマに載せての撮影かと思いますが、このショットは背景の山並みが特徴的なので、見つかるかと思い粘ってみました。
このあたり↓でどうでしょう?? おそらく正解かと。
神父様と
1:09
背景の山は、バイクの場面で見えていたものに似た眺めです。
Google Earthなどでできるだけ近い景色を探してみましたが、たとえば神父様が教授に話しかけたときの背景は、こういった感じ↓
そのままSVで左を向くと、神父様のバストショットの背景となるので、だいたいこのあたりではないでしょうか?
バス停
1:22
バス停の場面は、IMDbのリストのこちら↓でした。
La GaudeW, Alpes-Maritimes, France
途中、教会のそばだと教えてもらうところは、
バスが停まっていたのはこの噴水のそばで、教会はその向こう側。
ロケ地マップ
南フランスが舞台の映画(この映画のエリアにズームアップしています)
資料
更新履歴
- 2017/01/28 新規アップ
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