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『メッセージ』 Arrival (2016)

メッセージ (オリジナルカード付) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

If you could see your whole life from the start to finish…

作品メモ

ひとつ前のエントリー『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は地球侵略ものとループものを融合させたアクションSFでしたが、こちらもやはりエイリアンが登場し(ややネタばれですが)時間を巡るアイデアが織り込まれているSF映画。とはいえ派手なドンパチは抜きで、テイストは真逆となっています。

この『メッセージ』のエイリアンは、立ち上がったナマコみたいな形の宇宙船で、ある日突然世界各国12の地域に降臨します(原題は”Arrival”)。
7本脚の大きなタコみたいなルックスを持ち、つけられた名前がヘプタポッド。『宇宙戦争』の宇宙人は3本脚でトライポッドと呼ばれていましたから、そのもじりでしょうか。

彼らは『オール・ユー~』のギタイのように敵対的やら戦闘的ということはありませんが、何を考えているかわからない系。
まるで常識が通じない新入社員が来てしまったような、どう扱っていいかわからないヤバい緊張が世界中に走ります。
それはそれで困ったことなので、各国で言語学者が招集され、ヘプタポッドとのコミュニケーションが図られます。
ヒロインはそのひとり。アメリカはモンタナ州に降臨したヘプタポッドを担当します。

ヘプタポッドは、脚の一本を前に振りかざすと先っぽがヒトデのように開き、中心から黒い煙がもくもく吹き出てきて、円をベースにした模様を描き出します。
筆でさらりと描いた墨絵の世界……あるいは白黒逆にすれば、タバコの煙で輪っか作って喜んでいるおっちゃんですが、どうやらこれが彼らの言語のよう。
これを解読し、ヘプタポッドの意図や認識を解きほぐしていくうちに、ヒロイン自身もまた変容を遂げていく……そういったお話です。

原作は、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語 Story of Your Life」。
翻訳は、同題の短編集に収録されています(ハヤカワ文庫SF)[1]短編集の原題は”Story of Your Life and Others”

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF) 初版の装幀は別でしたが、映画化の際にスチルを使うようになりました。

原作では異星人の言語を解読しようとするプロセスが丁寧に描かれ、それだけでも十分興味深いですが、さらにもうひとつの(真の)アイデアが巧みに織り込まれていて、『バベル17』や『神狩り』といった「言語ものSF」に新たな1ページが加わった感がありました。
とても印象深い短編でしたが、構成が(やや)難解で、展開も淡々かつ地味。まさかこれが映画になるとは思いも寄りませんでした。
いざ見てみると、不安一掃。
ヘプタポッドの造形や、彼らの言語、そして何より秘められた真のアイデアも、納得のいくレベルできちんと映像化されていたように思います。
地味すぎる部分は映画独自に劇的要素を投入して盛り上げようとしていますし、原作にはなかったヘプタポッドがやってきた理由にも触れていますが、このくらいのアレンジは致し方ないでしょう。
それでももしかすると原作をお読みでない方にとっては、映画だけを見ても置いてけぼりとなっただけかもしれませんが……。

主人公の言語学者ルイーズ・バンクスにエイミー・アダムス。
彼女とペアを組む理論物理学者イアン・ドネリーにジェレミー・レナー。
現場で指揮を執るG・T・ウェバー大佐にフォレスト・ウィテカー。
中国人民解放軍のシャン上将にツィ・マー(馬志)。

監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ、撮影ブラッドフォード・ヤング、音楽ヨハン・ヨハンソン。

 
 
 

ばかうけ

個人的には最初に宇宙船のデザインを見たとき、ナマコを連想しましたが、世間ではもっぱら「ばかうけ」でばかうけしていました。

監督自身もこう↓言ってます 😆

 
 
 
 

中国語の電話の内容

ヒロインが中国語で話す非常に重要かつ緊迫した場面。
ソフトやNetflix、ケーブルTVでの放送など、少なくとも私が見た範囲で、字幕は付いていませんでした。
自分の中国語のレベルでは、最初の「将軍」しか聞き取れません。

とても気になったのでネットで調べましたが、もしどこかであっさり書いてあったらぜひ教えてください。
とりあえず見つけたのがこちら↓

もちろん内容は、シャン上将でしか知り得ない夫人の臨終の言葉。


“将军,我在美国营地。将军,你夫人给我托梦了,他说你应凭志勇,凭借勇气来帮助拯救世界。战争不成就英雄,只会留下孤儿寡母。”

引用元:
www.reddit.com/r/learnmandarin/comments/5puow0/mandarin_dialogue_at_the_end_of_arrival_2016_降临/

(拙訳)将軍、私はアメリカの基地にいます。将軍、私はあなたの奥様の夢を見ました。彼女は、あなたは世界を救うために勇気をふるうべきだと言いました。戦争は英雄を生み出さない、孤児と寡婦を残すだけだと。

この電話一本で事が収まるなど夢想かもしれませんが、せめて映画ぐらいそんな夢を見てもいいのではないかと思ってみたり。
ちなみに、このあたりのくだりは全部映画のオリジナル。

私は電話番号覚えるのが苦手なので、未来でチラ見した番号にかけることなど、到底できません。まして一度耳打ちされただけのいまわの際の言葉など……

ロケ地

IMDbでは、

Montréal, Québec, Canada
Université de Montréal, Montréal, Québec, Canada
Bas-Saint-Laurent, Quebec, Canada (Saint-Fabien)
Place des Arts, Montréal, Québec, Canada (interiors)

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

ルイーズの自宅

眺望の良い水辺の邸宅。
一流の言語学者となると、こうした素敵なお家に住めるのでしょうか??
撮影場所は、さすがに不明。

大学

Université de Montréal, Montréal, Québec, Canada

0:06頃、学生たちがぞろぞろ出てくる俯瞰は、こちら↓

草原

“ばかうけ”が降臨したところ。
アメリカでは、モンタナにやってきたという設定です。

撮影地はIMDbのリストのこちら↓

Bas-Saint-Laurent, Quebec, Canada (Saint-Fabien)

基地が置かれていたのはこのあたり↓で、VFX上では西の方に宇宙船が降り立っています。

こちら↓のメイキング映像で、VFXを重ねる前の空撮が見られたので(0:10、0:52、2:14など)、マップと照合して判明しました。

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2019/08/02 新規アップ

References

References
1 短編集の原題は”Story of Your Life and Others”

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