目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『草の上の月』は作家ロバート・E・ハワードを描いた実話ものでしたが、こちらはその代表作「コナン」シリーズの映画化。
ハワード自身が残したコナンの冒険譚は、大半が短編でその数わずか20編あまり。
各エピソードごとにコナンはいろいろな年齢や職業、状況で登場し、一話完結で語られるのが特徴ですが、映画化の方はそれを原作にはない親の敵討ちという話にまとめています。このあたり人によっては評価が分かれるかもしれません。
個人的には、それまで文字やイラストだけでイメージを膨らましていた世界がお金をかけたセットとともに実写で見られたことで、結構満足してしまった記憶があります。
シュワルツネッガーの名前を覚えたのは、2年後の『ターミネーター』からでした。
監督ジョン・ミリアス、脚本ジョン・ミリアス、オリヴァー・ストーン、撮影デューク・キャラハン。
音楽ベイジル・ポールドゥリス。
この後も、『ロボコップ』や『スターシップ・トゥルーパーズ』などウレしいラインナップが続きます。
ジョン・ミリアスとは『ビッグ・ウェンズデー』『若き勇者たち』。
勇壮なコーラスはラテン語だとか(IMDbのTrivia)。
こちら↓は2006年7月のコンサート。自らタクトを熱く振っていますが、残念ながらこの年の11月に亡くなっています。
翻訳
キャラクターの前に、翻訳本をご紹介。
日本では70年代に早川書房のハヤカワSF文庫でまず登場。底本はノーム・プレス版。
すぐその後に東京創元社の創元推理文庫が刊行開始(以下「旧版」)。底本は年代順に並べ間を補完したランサー・ブックス版。
2006年には創元推理文庫で新訂版コナン全集が登場。原典に忠実なミレニアム版を底本に独自の編集を加えたもので、貴重な資料もあります。
各シリーズの収録内容は、東京創元社のこちら↓のページにまとめられています。
http://www.tsogen.co.jp/conan/
新訂版が決定版かと思いますが、個人的にはハヤカワ文庫版の武部本一郎さんや旧版の柳柊二さんのイラストが印象的で、ビジュアル的にはこちらに思い入れがあります。
コナンのイラストといったら(ランサー・ブックス版の表紙を描いた)フランク・フラゼッタとなるのかもしれませんが、日本人には日本の画伯たちがフィットするのかもしれません。
キャラクター
ストーリー同様ほとんど映画オリジナルといって良いかも……
コナン
アーノルド・シュワルツネッガーの俳優としての出世作。
英語版Wikipediaによれば、ギャラは2万5千ドル。
少年コナンを演じたのは、ホルヘ・サンス。
大人になった姿は、『ベルエポック』(90)などで拝めます。
ヴァレリア
Valeriaという名前は、“Red Nails”Wに登場するヒロインから。
原作と映画とではキャラがあまりかぶりませんが、原作では1,2を争う印象的なヒロインでしたので、きっと作り手もこの名前に思い入れがあったことと思います。
- ハヤカワ文庫版『不死鳥コナン』「紅い封土」(団精二氏訳)。表紙が武部本一郎さんによるヴァレリア。
- 創元推理文庫旧版第7巻『コナンと古代王国の秘宝』「血の爪」(宇野利泰氏訳)。表紙が柳柊二さんによるヴァレリア。
- 創元推理文庫新訂版第4巻『黒河を越えて』「赤い釘」(宇野利泰氏・中村融氏訳)。
英語版Wikipediaによると、名前こそヴァレリアですが、その運命については女海賊ベリ(ベーリト Bêlit)をベースにしているとあります。
なるほど~
こちらはQueen of the Black_CoastWに登場するキャラ。
- ハヤカワ文庫版第3巻『冒険王コナン』「黒海湾の女王」(団精二氏訳)
- 創元推理文庫旧版第2巻『コナンと石碑の呪い』「黒い海岸の女王」(宇野利泰氏訳)
- 創元推理文庫新訂版第1巻『黒い海岸の女王』「黒い海岸の女王」(宇野利泰氏・中村融氏訳)
演じたサンダール・バーグマンはその後『レッドソニア』にも出演。
サボタイ
Subotaiという人物は原作では登場しません。
演じたのは『ビッグ・ウェンズデー』の本人出、ジェリー・ロペス(声は吹き替え)。
RPGならシーフやストライダーみたいな感じでしょうか。
当時も思いましたが、コナンと二人で荒野を駆けていく場面(0:37頃)は、ラルフ・バクシ監督によるアニメ版『指輪物語』(78)を連想しました。お役に立っていませんかね??
魔法使い
演じたのは、おなじみマコさん。
ナレーターも兼ねています。
タルサ・ドゥーム
名前は、コナンではなくキング・カルWを主役とするシリーズに登場する魔道士。……って訳されていないので、読んだことありませんが(権利が切れていないようで、原文もフリーでは読めません)。
英語版Wikipediaによれば、キャラクター描写的には、コナンシリーズの輝け第1作「不死鳥の剣」”The Phoenix on the Sword”Wに登場する、トート・アモン(Thoth-Amon)Wということです。
う~ん、そうだったの??
- ハヤカワ文庫第6巻『大帝王コナン』「不死鳥の剣」
- 創元推理文庫旧版では収録無し
- 創元推理文庫新訂版第5巻『深紅の城砦』「不死鳥の剣」(中村融氏訳)
演じたのは、ジェイムズ・R・ジョーンズ。
“My son.” ってまるで『帝国の逆襲』(1980)。
タルサ・ドゥームの配下
仁王像といいますか風神雷神のような二人は、トンカチ持っていた方がボディー・ビルダーのスヴェン=オーレ・トールセン(Sven-Ole Thorsen)。
もうひとりが、フットボール選手のベン・デイビッドソン(Ben Davidson)。
オスリック王
教団に好きなようにされて憤懣やるかたないザモラの王。
マックス・フォン・シドーは『フラッシュ・ゴードン』の皇帝役など、当時そんな役が続いたような……
殺害される場面も撮影されていますが、カットされています。
ヤシミナ姫
演じたヴァレリー・クイネッセンはフランスの女優さん。
1989年に31歳でなくなっているようです。
エピソード
全体のストーリーはほぼオリジナルですが、原作から引用されているエピソードも見られます。
木
鳥さんが登場するイタい場面は、原作でも特に記憶に焼き付けられる名場面。
「魔女の誕生」 A Witch Shall Be BornW
- ハヤカワ文庫版『狂戦士コナン』「魔女の誕生」(鏡明氏訳)
- 創元推理文庫旧版第3巻『コナンと荒鷲の道』「魔女誕生」(宇野利泰氏訳)
- 創元推理文庫新訂版第2巻『魔女誕生』「魔女誕生」(宇野利泰氏・中村融氏訳)
ただし「悲哀の木」(The Tree of Woe)という表現は映画オリジナルです。
塔
塔に潜入するエピソードはこちら↓から。SF的な設定が記憶に残る短編です。
- ハヤカワ文庫版第3巻『冒険者コナン』「巨象の塔」(団精二氏訳)
- 創元推理文庫旧版第1巻『コナンと髑髏の都』「象の塔」(宇野利泰氏訳)
- 創元推理文庫新訂版第1巻『黒い海岸の女王』「象の塔」(宇野利泰氏・中村融氏訳)
ロケ地
IMDbでは、
Almería, Andalucía, Spain
British Columbia, Canada
Segovia, Castilla y León, Spain
Sierra Nevada, Granada, Andalucía, Spain
Tabernas, Almería, Andalucía, Spain
La Ciudad Encantada, Cuenca, Castilla-La Mancha, Spain
La Hija de Dios, Ávila, Castilla y León, Spain
Texas Canyon, Arizona, USA
Yuma, Arizona, USA
Coal Mine Canyon, Tuba City, Arizona, USA
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
ロケ地に関しては英語版Wikipediaが詳しく、参考になりました。
ユーゴスラヴィアでの撮影を予定していましたが、チトー大統領の逝去で情勢が不安定となり、スペインに変更。
1981年1月7日に撮影開始。
それから、YouTubeのこちらの動画が、映画と撮影地と照合していて、ほぼ完璧な内容。
なので、以下の拙文は、英語版Wikipediaやこの動画の内容を再確認する作業となります。
故郷の村
生まれ故郷キンメリアの村。
英語版Wikipediaによると、セゴヴィアの南のバルサイン(Valsaín)スキーリゾートで撮影されたとのこと。
車輪回し
英語版Wikipediaによると、アビラ県(province of Ávila)で撮影されたとのこと。
上掲動画で完全に解明されていますが、地形から見るとこのあたり↓
この装置?は何かを挽いているのでしょうか?
もう少し中心から遠い位置を持てば楽なのにと見るたびに思うのですが、これはやはり罰ゲーム??
荒野の女
0:30
荒野に独り住む美女、実は……の場面。
マットペインティング……と思いたいぐらい奇怪な景色ですが、カメラの移動の仕方からみて当時の技術では合成は無理。
リアルのようです。
英語版Wikipediaによると、こちら↓
町への道
※17/3/15項目追加
背景の特徴的な岩山はこちら↓
- Google Maps(SV) ……東側(反対側)からの眺め
- WikiMapia
カメラ位置はこのあたりで、カメラ東向き。
次に挙げた町のセットの場所から南へ2kmほどのあたりです。
この場所も『エル・コンドル』で登場していました(タイトルバック)。
町その1
0:37
サボタイとやってきたところ。
はじめに高く長い城壁で囲まれた町の外観が写りますが、『エル・コンドル』(1970)の撮影地で、大がかりな砦のセットが撮影後も残されていたところです。
場所はこちら↓の西。
Tabernas, Almería, Andalucía, Spain
ストリートビューが使えないのでウェブマップで示すのが難しいですが、トライしてみるとこういった↓感じ。
- Google Maps
- WikiMapia ……カメラ位置
カメラはほぼ南向き。
『エル・コンドル』が残した砦のセット外観をうまく利用し、カメラの近くにミニチュアを置く手法で、左手に塔、右手に城壁や町並みを追加して、西部劇のセットを剣と魔法の世界に変身させています。
たとえばこういったページ↓がわかりやすいでしょうか。
http://www.western-locations-spain.com/wildcard/emilio_ruiz/index.htm
製作はEmilio Ruiz del RíoW。
マットペイントではどうしても「絵に描いたような」景色になってしまいますが、ミニチュアなら実物感がありますし、出来映えもとても良いと思いました。
続く市場の場面は、『エル・コンドル』のセットの中に入った状態。
たとえば象が立ち上がるショットの背景などで、『エル・コンドル』と同じものを確認できます。
市場の場面でジョン・ミリアス監督が屋台のオヤジ役でカメオ出演しようとしましたが、結局登場シーンは削除。
ぶらぶら歩くコナンがいつのまにか串焼き?を手にしていますが、その店で買った場面がカットされているわけです。
『エル・コンドル』のセットはもはや現在では残骸放置状態ですが、こういうのは片付けなくて良いのでしょうかね??
町その2
0:38
いくつもの高い塔が城壁でつながって山の上に延びているショットは、こちら↓
カメラ位置は、この画像の左下のあたり。
山の上の部分は、やはりカメラの目の前にミニチュアを置いて撮影しています。
この町でいろいろ情報をくれた髭のオヤジは、プロダクション・デザインのロビン・コッブ(『エイリアン』)のカメオ。
魔法使いの庵
1:02
マコさん演じる魔法使いがいた海岸近くの砂地。
耳なし芳一的悪魔払いの場面もここ。
近くのストーンヘンジのようなところは、決戦の舞台となります。
Almería, Andalucía, Spain
ナレーションとともにコナンがやってくるショットは、背景の山並みからみて、カメラ位置はおそらくこのあたり↓
ストーンヘンジのように並んだ石柱はすべてセット。
悲哀の木
鳥さんが登場するイタい場面。
英語版Wikipediaによると、Almeríaの東南の海岸の砂丘とのこと。
木は作り物。
背景の山並みは、こういったストリートビューとだいたい一致します。
教団の寺院
英語版Wikipediaによると、Almeríaの西12kmの山だとか。
でも上掲ロケ地動画にGoogle Earthのズームイン画像があり、あっさり判明しました。
長さ50m、高さ22m、階段は120段。
製作費35万ドルとありますが、80年頃でもこのお値段は安いような……。
ロケ地マップ
資料
更新履歴
- 2017/03/15 「町への道」項目追加
- 2017/03/02 新規アップ
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