目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『アルタード・ステーツ』同様、科学者が研究の果てに見た強烈なビジョンを扱っています。
この映画で登場するのは、人の体験を丸ごと記録できる装置。
記録テープを再生すると、別の人間がそれを自分の感覚として直接体験することができるのです。
エヴァンズ研究所の開発チームは、この夢のような技術を10年がかりで実用までこぎつけましたが、彼らの知らないところで、軍事転用を目指す秘密の 「ブレインストーム計画」が進められていたのでした。
……といったお話。
キャストは、開発チームの若き科学者マイケル・ブレイス Michael Brace にクリストファー・ウォーケン。
妻カレン Karen にナタリー・ウッド。
この映画の撮影中に事故で帰らぬ人となり、映画は”TO NATALIE”と彼女に捧げられています。
開発チームのリーダー、リリアン・レイノルズ Lillian Reynolds にルイーズ・フレッチャー。
会社オーナー、アレックス・テルソン Alex Terson にクリフ・ロバートソン。
監督は、『2001年宇宙の旅』や『ブレード・ランナー』の特撮監督として知られる、ダグラス・トランブル。
劇場用長編映画としては『サイレント・ランニング』以来の2作目ですが、3作目はまだありません……
見どころはやはり他人の体験を再現し、観客自身に体験してもらおうというヴァーチャルな映像の数々。
その部分は60fpsのスーパー・パナビジョン70で撮影され、監督自身はショウスキャンでの上映を目論んでいたようですが、実際には(少なくとも日本では)通常の場面では左右に黒みが入り、ヴァーチャルな場面ではフルワイドになる仕様で上映されました。
DVDに至っては(少なくとも日本盤では)レターボックス収録。
ヴァーチャルな場面がシネスコ、その他の場面がビスタとなっていて、より大きく広がらなくてはならないヴァーチャルの方が面積が小さいという、なんだかわけがわからない仕様になっています。
ただ不思議なもので、ヴァーチャルな場面になると超広角レンズによる絵作りのせいか、あるいは「これは臨場感たっぷりのすんごい迫力の映像なのだ」と脳内補正して見るせいか、それなりに立派な体験をしているような気がしてしまったりします。
特にラスト近くに登場するとある体験の再現は、幻想的かつ神秘的で、監督としてももっとも力を入れたところだと思います。
この場面、ジェームズ・ホーナーの音楽も見事な表現力を持っていました。
なお、2009年4月発売のDVDではスクイーズ収録となっているようで、劇場公開時の雰囲気に近づいているのではないかと思います。
(まだ実物で確かめたわけではありませんが)
もうひとつ、技術的なツボとしては、PCやコンピューターネットワークの描写が見逃せません。
PCが誕生してわずか数年の時代ですが、移動できる端末で電話回線を使ってハッキングを行うなど、この手の描写の先駆的な内容となっています。
つまりは、ヴァーチャルとネットワークという当時としてはかなり目新しいネタをとてもわかりやすい形で見せようとしていたわけで、それだけでも十分記憶にとどめる価値のあるSF映画だと思います。
自転車
マイケルが乗っているリカンベント(寝そべって乗るタイプの自転車)は、こちら↓の記事によると Avatar 2000というモデルらしいです。
デザインしたのはMITの教授のDavid Gordon Wilson。
作品メモ(ネタばれ)
ラスト、クリストファー・ウォーケンが公衆電話にもたれながら、転送されてきた壮大なビジョンをうっとりと体験する場面は、音響カプラーで大量のヴァーチャルなデータを送れるのかというツッコミはさておき、インターネットにぶら下がって多くの情報や娯楽を得ている我々を予見した、きわめて今日的な(未来的ではなく)「絵」であり、SF映画史上に残る名場面である……と言ったら褒めすぎでしょうか??
もうひとつ、前のエントリー『アルタード・ステーツ』ですが、不仲だった夫婦がヨリを戻す、実験装置が壮大なビジョンをもたらす、実験装置によって遠くへ行ってしまいそうになる夫を妻が呼び戻す、等々シンクロするところがあります。
ロケ地
IMDbでは、
Duke University, Durham, North Carolina, USA
North Carolina, USA
Outer Banks, North Carolina, USA
Pinehurst, North Carolina, USA
Raleigh, North Carolina, USA (some exteriors)
Research Triangle Park, North Carolina, USA
(Burroughs Wellcome Pharmaceutical Corporation HQ)
Wright Brothers National Monument – Route 158, Kill Devil Hills, North Carolina, USA
と、ノースカロライナ州で撮影されています。
エヴァンズ電子研究所
IMDbにあるこちら。
Burroughs Wellcome Pharmaceutical Corporation HQ
5 Moore Drive, PO Box 13398 Research Triangle Park NC 27709
http://www.gsk.com/research/about/about_locationsus.html
製薬会社ですが、現在はグラスコ・スミスクライン GlaxoSmithKlineに吸収されています。
建物の設計はポール・ルドルフ Paul Rudolph 。
- Paul Rudolph & his Architecture
- http://www.flickr.com/photos/73172555@N00/2522284756/
- http://www.durham-nc.com/film/location_photos/sciencetech.php
- Wikipedia(英語) Paul Rudolph (architect)
マップ↓
JOHN L. TAYLORの標識
KILL DEVIL HILLの標識
ライト兄弟メモリアル
- Wikipedia(日本語) ライト兄弟メモリアル
- Wikipedia(英語) Wright Brothers National Memorial
- Google Maps
- Live Search Maps(概観図)
「彼女と結婚する」と耳打ちしたのは、向かって左側のOrville Wright。
マイケルとカレンが訪れたレストラン
夫婦ゲンカを擬装した場所。
画面に名前が出ていますし、エンドクレジットでも明記されています。
Pinehurst Resort
(クレジットでは” Pinehurst Hotel and Country CLub”)
80 Carolina Vista Drive
Village of Pinehurst, NC 28374
http://www.pinehurst.com/
ハルの家
ハル・エイブラムソン Hal Abramson の引っ越し先で、カレンが実家と偽って訪れた場所。
おそらくエンド・クレジットにあるこちら
Sandy Lane Farm
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