目次
作品メモ
公開当時、時間つぶしで映画館で見て大いにハマった1本。
速攻で香港盤DVDを注文しました。
その後アンドリュー・ラウ監督の『インファナル・アフェア』シリーズでぐっと注目度が上がった香港映画ですが、個人的には「香港映画、やるときはやるじゃん」と思わせたのはこの『暗戦』で、しばらくはジョニー・トゥ監督がマイブームになっていました。
末期ガンで余命数週間と宣告された男と敏腕刑事が織りなす72時間のゲーム。
果たして男の真意は?
……といった内容で、コンゲーム+クライムサスペンスといったところでしょうか。
前作の『ヒーロー・ネバー・ダイ』も男同士の対決と友情をたっぷり描いていましたが、『暗戦』の方がより洗練された内容。
ハリウッドのライターが参加するなどシナリオに手間をかけただけのことはあって、物語はよく練られています。
特にラストのまとめ方は実に鮮やかなお手並みで、見終わった後に至福の余韻をもたらしてくれます。
物語がぎゅっと締まっている分、香港映画が得意とする映像面での魅力もアップ。
監督独特の映像表現や編集もこれまで以上に冴えわたっています。
まさにシナリオ良し、カメラ良しの快作にして傑作。
これは金像獎間違いなしと思っていたら、実際に受賞したのは『ザ・ミッション 非情の掟』(鎗火)の方だったようです。作家性がより強く出た方が評価されたと言うことでしょうか。
いずれにせよ、このあたりから監督のお仕事ぶりは絶好調に。
『Needing You』、『ダイエット・ラブ』、『ターンレフト・ターンライト』、『PTU』、『マッスルモンク』……と快作から微妙作、傑作から珍作までを休むことなく連打。清濁併せ呑む怒濤の快進撃が今なお続き、香港映画界をしょってたつ大御所ぶりを発揮しています。
英題”Running Out of Time”
キャスト
謎の男チャン役にアンディ・ラウ(劉德華)。この作品で念願の香港電影金像獎主演男優賞受賞。
対するホー刑事にラウ・チンワン(劉青雲)。
ヒロイン、リュウ役にヨーヨー・モン(蒙嘉慧)。
脇役は、ダメだけど憎めない警察の上司役として、ホイ・シウホン(許紹雄)。 この役で金像獎の助演男優賞にノミネートされています。
敵方のダメな手下がラム・シュウ(林雪)。
このふたりがコメディ・リリーフとして大いに楽しませてくれました。
他に、アンディの人質になる会社員役が、ホン・ワイリョン(洪偉良)。『ザ・ミッション』で撃ち合いの最中台車をギコギコ押していた男ですね。
さらに特別出演として、インターポール所属でホー刑事とはわけあり風の女性役がルビー・ウォン(黄卓玲)。
といった風にジョニー・トゥ作品でおなじみの面々が登場しています。
音楽
バグパイプで始まるクールなテーマ曲から美しいラブテーマまで、音楽もとても良くできていたように思います。
香港映画でサントラを探したのはこの映画が初めてのこと。
そのくらい気に入りましたが、残念ながらCDは出ていなかったようで入手できませんでした。
今なら百度あたりで拾うことができるでしょうけど……
曲を書いたのはレイモンド・ウォン(Raymond Wong、黃英華)。
『上海グランド』、『少林サッカー』、『カンフー・ハッスル』と作品を並べると、なるほどという観があります。
続編
『デッドエンド 暗戦リターンズ』はいちおう続編。
劉德華の代わりに鄭伊健が出演。
劉青雲や許紹雄のキャラはそのままですが、意外な人が意外な役で登場していてウケました。
作品メモ(ネタばれ)
ベタホメしたい作品ですが、気になるところも少し。
なにより画質や音質が悪いのが惜しまれます。
劇場で観たときもあまり良い印象がありませんでしたが、DVDも香港盤、日本盤ともにかんばしくない状態。
さらに、なぜかキネマ旬報データベースにはデータがないとか(ちゃんと劇場公開されているのに……)、プログラムの写真に裏焼きが多いとか、なんだか扱いはあまりよくありませんね……
内容的には、誰もが突っ込みたくなるアンディのあの扮装が最大の難関でしょうか。
個人的にはサービス精神のあらわれと受け止めたいですが、本人的にも相当気持ち悪かったようです。
物語上それほど必然性も感じられないので止せばよかったのに……と思ってしまいますが、よく見ると、最初の方の部屋のカットで衣装が映っていますから、シナリオの時点でしっかり物語に組み込まれていたのでしょうね。
もうひとつ、最上級のダイヤモンドがアップになると安物にしか見えないのがちょっと残念。
すり傷も付いてるし……
ロケ地
IMDbでは
Hong Kong, China
だけでほとんど役に立ちません。
冒頭のビル
アンディが屋上で香港の街並みを見下ろす場面。
前半の舞台となるビルですが、ここは下見に来たという設定でしょうか。
Google Earthでうろうろしたあげく、周囲の地形などから場所がわかりました。
具体的にはこちら↓
寶光商業中心
新蒲崗太子道東 698號
アンディが立つのは建物の西側。
真下にあるのは学校。
銀行
冒頭で銀行強盗が立てこもるところ。
利登中心
タクシーに乗るところ
臨樂街の商業廣場の前。
タクシー急停車(14/1/26追記)
コメント欄でmiluoさんから情報寄せていただきました。
(いつもありがとうございます♪)
タクシーが乱射の後急停車したのはこちら(「洋一」の看板が写っているところ)。
ミニバス(最初)
バスから降りたアンディが歩くカットで、背景に”WING LUNG BANK SHA TIN BRANCH” (永隆銀行沙田支店)という表示が。
おそらくバスが止まったエクソン・モービルのガソリンスタンドは、ここだと思います。
WING LUNG BANK(永隆銀行)は向かい側の西の端。
そこから東に向かって歩くアンディをヨーヨー・モンが追いかけていきます。
彼女が入っていく建物にビル名が書かれてありますが、そのまま実在します。
この場面、彼女は本当に入っていきますので、とっさの嘘ではなくホントに自宅(という設定)ですね。
※SV (2011年9月追記)
このあたり、いつの間にかSVが利用できるようになっていましたので、追記。
病院(14/1/26追記)
1:03頃の短い外観ショット。
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
威爾斯親王醫院(Prince of Wales Hospital)W
ミニバス(2度目)
再会したふたりを乗せて夜の香港を行くミニバス。
香港名物、ど派手な看板がムードを盛り上げます。
会話はなくても十分うっとりさせてくれる夢のような場面でした。
旺角行きのバスとなっているので設定では旺角のあたりを走っていることになっているのでしょうけど、バスが通り過ぎるガソリンスタンドは最初の時に登場したのと同じに見えます。
さらにバスが停まるところは、そのすぐ近くのこちら↓のように見えます。
(セブン・イレブンの前でフロントガラスに永隆銀行のネオンが映る)
ただし、このpanoramioの位置は間違っていまして、もう一つ西側の通り(大圍道)です。
厳密にはこの↓位置。
この赤い屋根のミニバス、香港に行ったらぜひ乗ってみたいものです。
たとえ隣にアンディ・ラウやヨーヨー・モンがいなくても楽しめそう。
ただ、広東語が話せないと乗りこなすのは難しそうですね。
※14/1/17追記
milouさんからミニバスの画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
©milouさん アルバム「香港一般」から |
ズバリ旺角行きの赤いミニバス。
撮影は2011年2月とのことです。
©milouさん アルバム「香港一般」から |
こちらは緑のミニバス車内。
画像をクリックするとPicasaウェブアルバムへ飛びmilouさんの解説を読むことができますので、ぜひどうぞ。
ボーリング場(14/1/16追記)
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
(いつもありがとうございます♪)
こちらではないかとのことです。
荃灣迪高保齡球館(Dragon Bowling / U.S. Dacos Tsuen WanUS Dacos Bowling Centre)
http://www.dragonbowling.com/Boleras/BolerasDAC.htm
BMWが止まったところ
調査中。
ミニバス(最後)
ラウ・チンワンが乗った場所は調査中。
ヨーヨー・モンが降りた場所は、例のガソリンスタンドの前です。
余談ですがこの場面、後ろの方でスタンドの従業員らしき女性たちが去っていくバスを指さしています。
「あれ、あれ、ラウ・チンワンじゃない?!」
「そうよそうよ」
とか言ってるように見えるのですが、どうでしょう 😉
ロケ地マップ
より大きな地図で 暗戦 を表示
資料
更新履歴
- 2014/01/26 「タクシー急停車」追加。「ロケ地マップ」追加。
- 2014/01/17 「ミニバス(2度目)」にmilouさんの画像を追加。
- 2014/01/16 「ボーリング場」追加
コメント
香港は12回行っているので結構詳しいのですが、確かにDVDの画質が悪いうえ夜景が多いので確実にここだと新たに付け加えることはないのだが、ボーリング場の場面で制服(?)の背中にDACOS という文字が見える。調べてみるとUS Dacos Bowling Centre というのが見つかりDragon Bowl として4ヶ所ある。確定はできないが柱の形から荃灣迪高保齡球館ではないかと思われる。
ちなみにボーリングも好きで世界各地で行った。アジアでは台北、マカオ、ホーチミンでやったが香港では映画優先でまだ行ってない。
ミニバスには屋根が赤と緑の2種類あり緑は経路やバス停が決まっているが赤は停車場所はおろか経路すら不定なので観光客には確かに利用しにくい(映画のように、降りると言えば近くで止まってくれる)。僕は両方乗ったことがあるが言葉は通じなくても行先は書いてあるので適当に乗れば問題ない。
この作品でも何台もの赤バスが並んで停車している場面があるが停留所ではなく休憩中。というのも、やはり劉青雲主演の『忘れえぬ想い』によると個人経営だから好き勝手な時間に休憩できる。
そうそう劉德華の女装と言えば「我知女人心(11)」 (『ハート・オブ・ウーマン』のリメイク] でも見せますが、これよりは綺麗でした
milouさん、コメントありがとうございます。
留守していたもので、返信遅れてすみません。
ボーリング場検索してURLとマップも付記しましたが、間違えていたらご指摘ください。
内装や柱など、確かにこちらのように見えますね。
今までの書き込みやメールを拝見してボーリングもかなりお好きとお見受けしていましたが、この映画のボーリング場まで特定していただけるとは思っていませんでした 🙂
赤い方のミニバスは外国人が使いこなすのはかなり難易度高いと聞いていましたが、さすがすでに乗っていらっしゃいましたね。『忘れえぬ想い』もそうですが、いずれ香港映画まとめて取上げようと思っていますので、その時はぜひまたよろしくお願い致します。
敢えて訂正することでもないが香港でボーリングはやってないと思ったら
2008年2月に奧海城(Olympian City) の奧海繽紛保齡(Super Fun Bowl) でやっていた。
しかし閉店したらしく商場のHPにも載っていない。
日本では今でも都心にいくつもあるが世界的に見ると郊外型が多く観光客は行きにくい。
映画もそうだが短い旅行期間で映画を見たりボーリングに行くなんて、もったいない、
と思うのが普通かも…
ブエノスアイレスの観光案内所で訊いた時も、昔は沢山あったんだけど、としばし考えたあと
バスで20分ぐらいの郊外の大型ショッピング・モールを教えてくれ行ってきた。
> 映画もそうだが短い旅行期間で映画を見たりボーリングに行くなんて、もったいない、
と思うのが普通かも…
普通そうですよ~ 😉
でもあわただしく海外旅行に行って有名どころをぐるぐる回って食事してばちばち写真撮って戻ってくると結構記憶には残っていないものでして、それなら現地で映画を楽しむのもありかも……。
まあ次に行くなら中長期でのんびり行きたいなと思っているところです。
30分過ぎ、タクシーからの乱射後急停車した場所。道の両側に8台ぐらいの赤ミニバスが休憩しているところ。
左側には日本語で洋一(拉麺・和食・ラーメン)と書かれた青い看板が目立つ。
現在は洋一居食屋として九龍城南角道5號で営業し、ほとんど同じ看板が外に張り出している。
画面で洋一の手前は金蘭花辰泰国菜館だが張り出し看板はないが今も1つ東の龍崗道10-12號で営業中。
さて撮影場所は龍崗道のほうで衙前圍道との交差点少し北から南を見ている(つまり洋一ラーメンは移転した)。
画面で最初は向こうは突き当たりのT字路だと思ったが、そうではなくい高速道路の緩やかな傾斜だった。
交差点東南角の円形のひさし下の白いもので確定できるだろう。
ちなみに香港では昔から張り出した看板の派手なネオンが有名だが啓徳空港があった頃は点滅するネオンは禁止だった。
金蘭花辰泰国菜館 ではなくタイ料理の金蘭花泰国菜館 です。念のため訂正
病院判明。
最後の3文字が*王医院と見え、病院のリストを探すと簡単に見つかり
威爾何斯親王醫院(以下のSV)と分かった
http://goo.gl/maps/5X5Jo
milouさん、情報ありがとうございます。記事に反映させていただきました。
どちらもよくおわかりになりましたね。
特にタクシー急停車の場所はお見事でした。こちらは少し調べかけて諦めた記憶があります。
すぐ近くに冒頭のビルがありますが、アンディの真下に見えた高速が、「洋一」の突き当りに見えるものですね。
ピンがたまってきたので、マップも作ってみました。
このままふくらませて香港映画のロケ地マップに育ててみようかと思っています。
全然関係ない話だが、今日『毒戦』を見てきた。(多分)頭のクレジットに林雪はなかったので舞台は中国だし出ないのかな、と思ったら例によって台詞は2,3個だが無意味で(?)ありえない“意外な役”で顔を出しました。ヒチコックのカメオ出演じゃないが、やはり探してしまうので出さないとファンも落ち着かないんでしょう。パゾリーニにおけるニネット・ダヴォリほど重要ではないとしても…
milouさん、『毒戦』ご覧になったのですね。私もジョニー・トーははずせないので(でも「居ながら」なので)ビデオになったら必ず見ます。
林雪やっぱり出ていましたか。どんな登場の仕方なのか、楽しみにしています。
林雪に限らずいろいろな監督の常連組の登場カットをずらり並べたら楽しいだろうなあといつも思っているのですが、いろいろな権利を尊重している建前でやっているので実行できずにいます。
カットのキャプチャーなど記事に載せられたら説明文がとても楽でわかりやすくなるのですが、本来は勝手にやってはいけないことなのでしょうし。
文章なら適切な《引用》であれば認められているのに映像作品はなぜダメなのでしょうね。