作品メモ
ケーブルテレビのアカデミー賞特集枠にて久々に鑑賞。
3時間以上の長尺ものですが、長さをまったく感じさせない傑作。
有名な国際軍事裁判を忠実に再現したもの……ではなく、架空の人物と物語によって裁判を再構成し、人間の内面や裁判の意味を改めて問いかける内容となっています。
ここで裁かれるのは、かつて非人道的な判決を下した裁判官たち。
その責任を厳しく追及するアメリカ側検事に対し、ドイツ側の弁護士が雄弁に反論し、緊迫した法廷ドラマが繰り広げられます。
アメリカ人の裁判長ダン・ヘイウッドにスペンサー・トレイシー。
被告のアーネスト・ヤニングにバート・ランカスター。
ドイツ側の弁護人ハンス・ロルフェにマクシミリアン・シェル。
アメリカ人の検事、テッド・ローソン大佐にリチャード・ウィドマーク。
ベルトホルト夫人にマルレーネ・ディートリッヒ。
証人ランドルフ・ペーターソンにモンゴメリー・クリフト(最高の演技!)。
証人イレーネ・ホフマンにジュディ・ガーランド。
ヘイウッドの世話をするバイヤーズ大尉にウィリアム・シャトナー( 『宇宙大作戦』が始まる5年前)。
マクシミリアン・シェルがアカデミー賞の主演男優賞に輝いたのを始め、スペンサー・トレイシーが主演男優賞、モンゴメリー・クラフトが助演男優賞、ジュディ・ガーランドが助演女優賞にそれぞれノミネート。
出てくる人物、皆神がかり的な名演技を見せますが、個人的に胸に迫るのが、執事と家政婦の夫婦。
出番は短くとも、市井の人々の複雑な心理がくっきりと浮き彫りにされていました。
言語
弁護士はドイツ語。証人のドイツ人とはドイツ語で話し、英語のやりとりは通訳のヘッドフォンで聞くという設定ですが、次第に誰もが英語で話すようになります。
その切り替わりの処理は巧みで、違和感が残りません。
最後までリアルに通訳を介していたら、映画としてはかえってもたついてしまったことでしょう。
ロケ地
IMDbでは
Nuremberg, Bavaria, Germany
former Reichsparteitag area, Nuremberg, Bavaria, Germany
実際にニュルンベルクで撮影されています。
映画の内容からして、決して楽しくロケ地巡りというわけにはいきませんが、以下資料としてメモ書きを少々。
爆破される鉤十字
アニメーション↓
http://en.wikipedia.org/wiki/File:98-animate.gif
冒頭、爆破されるハーケンクロイツは、IMDbのこちらにあったもの
former Reichsparteitag area, Nuremberg, Bavaria, Germany (旧帝国党大会エリア)
最初の方でヘイウッドがやってきたのがここ。
並んだ柱はなくなっていますが、広場は今でも残っています。
- Wikipedia(日本語) ナチ党党大会
- Wikipedia(英語) Nuremberg Rally
- Wikipedia(英語) Nazi party rally grounds
- Wikipedia(ドイツ語) Reichsparteitagsgelände
マップ↓
裁判所
外観
- Wikipedia(ドイツ語) Landgericht Nürnberg-Fürth
- Wikipedia(ドイツ語) Oberlandesgericht_Nürnberg
- Google Maps
- Bing Maps(概観図)
- WikiMapia
ヘイウッド裁判長が出てくるところ
Nürnberg Schwurgerichtssaal 600 (International Military Tribunal, Courtroom 600) 600号陪審法廷
http://museums.nuremberg.de/courtroom600/index.html
http://www.arukikata.co.jp/news/staff_note/c188.html
http://www.panoramio.com/photo/8361368
教会
からくり時計の教会
フラウエン教会 Frauenkirche
http://www.frauenkirche-dresden.de/
市場での会話もこの教会の前。
今も市場のようです。
コメント
マクシミリアン・シェルの演技は舞台劇を観ているようで素晴らしかったと思います。
「トプカピ」の泥棒役は彼に合ってないように思えるし、「オデッサ・ファイル」は作品自体は好きなのですが彼の出番が少ないので、私のイチオシはテレビの洋画劇場で観た「誇り高き戦場」でのドイツ人将軍役でした。主演のチャールトン・ヘストンとがっぷり四つに組んだ堂々たる演技で、西沢利明の吹き替えも知的なシェルによく合っていました。その後DVDが出た時はもちろん買いました。
そこでこの映画です。彼がオスカーを取った作品ということで完全版の放送を待ち望んでいたところ、シネフィルで放送された時は大喜びしました。放送前の解説では、元々テレビドラマだったこの作品を映画化するにあたり、弁護士役をマーロン・ブランドにやらせる考えだったそうですが、テレビ版で好評だったシェルをそのまま起用したと言ってました。
「個人的に胸に迫るのが、執事と家政婦の夫婦」と書かれていますが、たしかによかったですね。ところでこの執事、どこかで見たと思ったら、「サウンド・オブ・ミュージック」に出てくるナチ信奉者で、トラップ一家がそーっと車で脱出しようとしたときに憎々しく阻止したあの男ですね。あのときの傲慢な演技からは想像できない今回のおどおどした演技でした。
ほりやんさん、コメントありがとうございます。
最近ケーブルTVでザッピングしていたら『戦争のはらわた』をやっていていてつい見続けてしまいました。これ確か公開当時に映画館へのこのこ見に行ったとき、全員英語をしゃべることもあって冒頭しばらくはアメリカ軍の話だと思い込んでいたのを思い出しました(アホですね)。
何年経っても何度見てもあまりドイツ軍の話という感じがしませんが(特にジェームズ・コバーン)、マクシミリアン・シェルはひとくせある将校役が説得力あり、彼がドイツ軍人というのは納得です。
(ついでに、ジェイムズ・メイソンがなぜかロシア軍人に見えてしまうのですが、これはもうだいぶ認知がヤバいでしょうか??)
『誇り高き戦場』私も最初に見たのは洋画劇場組かもしれません。クラシック音楽ものが好きなので、これも好物です。
原題のCounterpointって英語だとなじみなくて一瞬意味がわかりませんが、コントラプンクト(対位法)のことですね。
これではタイトルとしては弱いので、邦題が全然関係ない勇ましいものになるのは仕方ないでしょうね。
> ところでこの執事、どこかで見たと思ったら、「サウンド・オブ・ミュージック」に出てくる
> ナチ信奉者で、トラップ一家がそーっと車で脱出しようとしたときに憎々しく阻止したあの男ですね。
あー、これ気づいていませんでした。
確かにそうですね。イギリスの俳優さんのようですが、こういう役がつきやすいルックスということでしょうか
私はクラシック音楽ファンになる前に、「誇り高き戦場」をテレビの映画劇場で観ていたので、初めてブラームスの交響曲第一番第四楽章を聴いたときは、この映画を思い出して感動しました。それ以来ブラームスファンとなり、「さよならをもう一度」(交響曲第三番第三楽章)や「恋人たち」(弦楽六重奏曲第一番第二楽章)は映画としてはそれほど好きではないですが、ブラームスワールドに浸れるのでけっこう気に入っています。
あと、ブラームスではないですが、VHSから復活させた「ラプソディー」(エリザベス・テイラーとヴィットリオ・ガスマン共演)は、劇中ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番やチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が流れます。ラフマニノフは「逢びき」で使用されて有名ですが、チャイコンは「ラプソディー」を観ていい曲だなぁと思い、四大Vn.協奏曲の中ではブラコンの次に好きな曲です。
ほりやんさん、ブラームスがお好きでしたか。
映画の方はなぜ原題も邦題も『さよならをもう一度』なんでしょうね。
冒頭すぐにあのテーマを流したり「BRAHMS」のポスターを映したりで、そこまでするなら最初から「ブラームスはお好き」でいいじゃないのと思ったりもします。
まあ「さよなら~」はこれはこれで良いタイトルですけど……。
映画で先に親しんでいたクラシック音楽の本物をあとから聞いて「これだったのか」と不意&秘孔を突かれて感動することってありますよね。
クラシックじゃないですけど、『戦場にかける橋』のテーマ曲を聴いたとき、「これだったのか」と幼少の記憶が蘇り、おもわず「サル、ゴリラ、チンパンジ~~♪」と身も心も躍動しました。
大阪では、「さる、えてこ、チンパンジー」でした。
映画ではないですが、中学生の頃ラジオで聴いたシルヴィ・ヴァルタンの「哀しみのシンフォニー」、ええ歌やなぁと思っていまして、その後モーツァルトの交響曲第40番を初めて聴いたときは、ズッコケました。えっ、これシルヴィ・バルタンやないの?モーツァルトってポップスかいなと思ったものでした。
ほりやんさん、
ゴリラの立場はとか、サルとエテコは異なる生物種なのか、など少し考え込んでしまいました。(そういえば猿の惑星もピエール・ブールの原作だったような……)
オール・バイ・マイセルフ聴いた時ラフマニノフのパクリやんと思ったら、ちゃんとクレジットされていました。恋のノータッチはメロディがシンプルすぎて最初はいただきものだと気づかなかったかも。
モーツアルトは著作権切れていたと思いますが、ラフマニノフはまだ保護期間内でしょうから、きっと世界中からちゃりんちゃりんと著作権継承者にお金が入ってきたことでしょうね……