作品メモ
ひとつ前のエントリー『二つの世界の男』と同じく、キャロル・リード監督、ジェームズ・メイソン主演のシリアスドラマ。
「殺せ」と書いて「けせ」と読ませるようです。
組織の活動資金を得るために強盗をはたらいた北アイルランドの活動家が、傷を負い捜査網の中にひとり取り残されて窮地に陥いっていく姿が描かれます。
彼がさまよう夜の街は光と影が交錯し、長く伸びる影が独特のアングルでモノクロフィルムに捉えられていきます。
あの『第三の男』が突然出来たのではなく、それまでの作品の積み重ねがあったのだとよくわかる一本。
主人公ジョニーにジェームズ・メイソン。
彼を慕うキャスリーンにキャスリーン・ライアン。これが映画デビュー作。
一緒に強盗をはたらいた仲間ノーランにダン・オハーリー(オハーリヒー)。
同じくその時の運転手パットにシリル・キューザック。
ジョニーの身を案じる部下デニスにロバート・ビーティ。
変わった絵を描く画家ルーキーにロバート・ニュートン。
後半登場の鳥を飼っている小柄な老人シェルが印象に残りますが、F・J・マコーミック(F.J. McCormick)という人で、ダブリンのアベイ座に出演していた舞台俳優とのこと。映画出演はわずか4本。47年に死去していてこれが遺作。
未確認ですが、ジョニーの仲間やキャサリンなど主だった出演者はみなアベイ座出身とのこと(養成所のことでしょうか?)。
特にトム神父を演じたW・G・フェイ(W.G.Fay)Wは、その創始者のひとりとのことで、やはり47年に亡くなっています。
音楽ウィリアム・オルウィン、撮影ロバート・クラスカー。
監督・製作キャロル・リード。
英国アカデミー賞最優秀イギリス映画賞受賞。
このあとキャロル・リード監督作品は、『落ちた偶像』『第三の男』と3年連続で同賞を受賞しています。
以前エントリーを立てたアメリカ映画『失われた男』(The Lost Man 1969)は舞台をアメリカに移したリメイク。
ロケ地
IMDbでは、
Belfast, County Antrim, Northern Ireland, UK
Broadway Market, Hackney, London, England, UK
D&P Studios, Denham Studios, Denham, Buckinghamshire, England, UK (studio)
ロケに使われたのは、北アイルランドのベルファスト。
設定上の名前は明示されませんし、途中で写る町の地図も似て非なるものとなっていますが、そのわりにセリフで「クイーン橋、シャフツベリー広場」と実在する場所を言っていたりします。
冒頭空撮
カメラがぐ~っと寄っていくのは、ベルファストの中心部を東側から。
塔はこちらの時計塔。
Albert Memorial Clock, BelfastW
空撮カメラが寄った後は、セットでしょうか??
この時計が4時を告げたところから物語は始まります。
仲間が車に乗り込むところ
ノーラン(ダン・オハーリー)が待っていた橋はこちら。
2人目が乗り込んだのは、市庁舎の東側のこのあたり。
- Google Maps(SV)
- Google Maps(SV) ……背景に見える建物
- Bing Maps(概観図)
- WikiMapia
犯行現場
調査中。
入口の前にある、十字架が描かれた四角いものはなんでしょう??
現場周辺はロケかと思いますが、その後夜になってからは多くがスタジオ撮影のように見えます(未確認)。
パブ
※15/8/11項目追加
後半登場するパブ。
コメント欄で永原建夫さんから情報提供していただきました(2015年8月11日付)。
Wikipedia等によれば、実際にはスタジオで実物そっくりのセットを作って撮影されたようですが、入口まわりや店内など、かなりのこだわりで作り込まれています。
資料
更新履歴
- 2015/08/12 「パブ」項目追加
- 2014/10/15 新規アップ
コメント
キャロル・リード監督は、『落ちた偶像』『第三の男』とこの作品で世界の巨匠と呼ばれるようになりましたが、それ以降は晩年作「フォロー・ミー」まで余り目立つ作品はありませんでした。
「邪魔者は殺(け)せ」、これも日本語のタイトルは名訳ですね。
なお、「邪魔者は消せ」(日活映画 赤木圭一郎)という映画があったのはご存じですか。
ヨーロッパの町には何百年来の古い時計台がいつまでも残っているのですね。
この映画はyoutubeで見られるのですね。
そこで犯行現場「入口の前にある、十字架が描かれた四角いもの」を確かめようと思って、見てみると確かに四角い建物に十字架が書かれています。まるで道路の真ん中にあるような感じです。何故このようなものがあるのでしょうか。
それこそ犯行現場のロケ地が特定できたら、この謎の建物も何か分かるのでは。
赤松さん、たしかに道路の真ん中にあるようですよね。手持ちはWOWOW放送版でそれなりに解像度はあるのですが、いくら見てもよくわかりません。おっしゃる通りロケ地解明が先ですね。
もう少し粘ってみます。
「邪魔者は消せ」は見たことはありませんが、日活のアクションものはチャンネルnecoで時々見ていて、昔の日本を楽しんだりしています。そのうちまた日本映画を取上げますね。
この映画の終わりのあたりで、ジョニーが逃げ込むパブは「The Crown Riquor Saloon」と思います。6月に行ってきました。建物はナショナルトラストの管理下にある非常に雰囲気のいいパブ&レストラン(2階)です。
永原建夫さん、コメントありがとうございます。
パブは実在したのですね。映画はモノクロでしたが、いろいろなカラー画像を見ると装飾が独特で雰囲気ありますね。現地にいらっしゃったとのことで、とてもうらやましいです。
真偽のほどはわかりませんが、Wikipedia等の記事に拠れば、撮影そのものはスタジオに作った複製のセットとあります。仮にそうだとしても、違いがわからないほど良く作られていますね。かろうじてお店の外は実際の道路構成と違うのでセットかもしれないとわかる程度でしょうか。
いずれにせよこのお店が舞台ということは確かで、情報ありがとうございました。
雰囲気たっぷりのこのお店ならお酒もさぞおいしく、きっととても楽しまれたことでしょうね。