『ファイブ・イージー・ピーセス』　Five Easy Pieces (1970)

作品メモ

ひとつ前のエントリー『フィラデルフィア・エクスペリメント』で、『ファイナル・カウントダウン』とDVDが隣同士と書いてしまいましたが、正しく並べると『ファイブ・イージー・ピーセス』が間に挟まっていました。というわけでこちらをチェック。

1970年公開ということでアメリカン・ニューシネマど真ん中の映画。
昔から地上波テレビで何度か見ていてなじみがあるせいか、ニューシネマの中ではそれほど苦手ではない……どころか結構好きな作品です。

石油採掘現場で肉体労働に従事する若者、実はリッチな音楽一家の出でピアノをさらりと弾けたりするロバート（ボビー）にジャック・ニコルソン。
その恋人レイティ(Rayette Dipesto)にカレン・ブラック。この2人は前年の『イージー・ライダー』にも出ています。
友人エルトンにビリー・グリーン・ブッシュ。
ロバートの姉でピアニストのパルティータ・デュピー(Partita Dupea)にロイス・スミス。演奏に熱中するとグレン・グルドなみに鼻歌がまじってしまいます。
ロバートの兄でむち打ち症になってしまったバイオリニスト、カールにラルフ・ウェイト。最近ではドラマ『NCIS』でギブスのパパとして活躍中。
その弟子で恋人キャサリン・ヴァン・オスト(Catherine Van Oost)にスーザン・アンスパック。DVD字幕では「ホスト」となっていましたが、つづりは”Oost”。

実家への途中同乗したエコおたく、ロン毛でしゃべりまくりのパームにヘレナ・カリアニオテス。
もうひとりのテリーにトニー・バジル。「ミッキー」の10年以上前でまだ二十代。

監督・製作・原作ボブ・ラフェルソン。
ロバートが録音スタジオを訪れたとき、エレベータに乗っていたひょろっとした男がボブ・ラフェルソン本人。
撮影ラズロ・コヴァックス。

５つのやさしい曲

原題は直訳すれば「５つのやさしい曲」。
映画の半ば、キャサリンに請われてショパンの前奏曲を弾いた後に言うセリフ。

I picked the easiest piece that I could think of.
I first played it when I was eight, and I played it better then.
（一番簡単な曲を選んだんだ。８歳の時に弾いた方がうまかった。）

おそらくこのあたりがタイトルに結びついているのでしょう。

劇中に流れるピアノ曲はオープニングでクレジットされていますが、この曲を含めてちょうど５曲。
少なくとも初級者には無理ですから、Five NOT SO Easy Pieces といったところ。

演奏者のクレジットはパール・カウフマン(Pearl Kaufman)。

タミー・ウィネット

クラシックのピアノ曲とは別にタミー・ウィネットのカントリーがいいところで流れます。
これもオープニングクレジットでリストが掲載されています。

と場面を書くと、ベタベタなまでにその時の心理を表現しているのがわかります。

ラフェルソンとニコルソン

こうしてみると、やはり2人の組み合わせは『ファイブ・イージー・ピーセス』あたりが一番良かったような。

ロケ地

IMDbでは、

19th & L Street, Bakersfield, California, USA
(where Robert walks down sidewalk on his way home.)
Bakersfield, California, USA
British Columbia, Canada
California, USA
Eugene, Oregon, USA
Florence, Oregon, USA
Franklin Park, Illinois, USA
Illinois, USA
Interstate 5, Bakersfield, California, USA (freeway scene)
Kern County, California, USA
Oregon, USA
Portland, Oregon, USA
San Juan Islands, Washington, USA
Seattle, Washington, USA
Taft, California, USA
Vancouver Island, British Columbia, Canada
Vancouver, British Columbia, Canada
Washington, USA

住まいや職場はカリフォルニア州ベーカーズフィールドやその近辺、実家はカナダのバンクーバーでの撮影。

渋滞

渋滞にはまり、近くのトラックの上でピアノを弾き始めるところ。
“SHAFTER WASCO 43　→”という道路標識があるので場所がわかりました。

ベーカーズフィールドの南西、West Side FwyがEnos Lnの下をくぐるところ（南側）。

• WikiMapia

IMDbのトリビアによると、ここは当時できたばかりで開通前だったとのこと。

家路

IMDbのリストにあるベーカーズフィールドの交差点周辺で撮影されています。

19th & L Street, Bakersfield, California, USA

この場面、ピアノを運ぶトラックから降りていますから前の場面からの続きだとわかりますが、渋滞はたしか朝だったはず。
1日中乗っていたのでしょうか？？

ADULT THEATRE

スタート地点。 ロバートは19th St.を東に向かって歩き出します。

• Google Maps
• Bing Maps（概観図・南向き）
• WikiMapia

ADULTなお店

背景に”LOANS”の看板が見えるところ。
スタート地点からやや東、向かい側の歩道を西向きに歩いています。

• Google Maps(SV)
• WikiMapia

1214

床屋

交差点の東側。

交差点

最後、仲間と声を交わすところ。
19th St.とM St.の交差点。

• Google Maps(SV)

油田

おそらくTaft。
ベーカーズフィールドの南西約50km。

今でもこんなふうに掘削機械が並んでいます。

• Google Maps(SV)

屋根付き橋

『マディソン郡の橋』みたいな屋根のついた白い橋。
調査中。

橋

エコおたくのパームが人間の不潔さについて弁舌を振う時に渡っている橋。
リアウィンドウ越しでしか見られませんが、特徴的な形なので場所がわかりました。
オレゴン州フローレンスのSiuslaw River Bridge^W。

• Google Maps(SV)
• Bing Maps（概観図）
• WikiMapia

車は北向き。

フェリー

実家とその周辺はIMDbのリストにあるカナダのバンクーバー島での撮影と思われます（設定では国内）。
おそらくフェリーの型はこれ。

• http://www.bcferries.com/News/mill_bay.html
• http://www.panoramio.com/photo/51677657

で、おそらく島の側のフェリー乗り場は、こちら（Mill Bay）。
キャサリンとすれ違う場面の背景の山並みがぴったり同じです。

• WikiMapia

……と時間をかけて自力で突き止めたのにWikimapiaですでに登録されていると、非常にがっくりするのでした……
それはともかく、これから推測すると１カットだけ写る本土側のフェリー乗り場はこちらになるはず。

Brentwood Bay Ferry Terminal

• Google Maps(SV)
• Bing Maps（概観図）
• WikiMapia

夜を明かす桟橋

設定では本土側のフェリー乗り場ということでしょうか？
おそらく撮影もそうではないかと思われますが未確認。

ガソリンスタンド

ラストのお店。
おそらくIMDbのリストにあるオレゴン州のどこか（Eugene, Florence, Portland）。
はっきり見える看板は、RED ROOSTER CAFEとGulf。
山沿い、比較的まっすぐな片側1車線で、行く手に緑色の鉄橋。

……と思って調べていたらWikimapiaに登録されていてうっかり見てしまいました。自力で突き止めたかったのに……
でも完全に的外れだったので、良かったのかも。
場所は、オレゴンではなくカナダ。
フェリー乗り場や実家の撮影場所よりさらに北へ30kmほど行ったこのあたり。

• Google Maps(SV)
• WikiMapia

カフェもガソリンスタンドの建物ももう無くなっていて、別のお店が建っているようです。
道路も片側2車線でした。

ラスト（ちょっとネタばれ）

IMDbのトリビアによると、ラストは最初のシナリオではロバートが橋からクルマをダイブさせ、ロバートは死にレイティは助かるというものだったとか。
うん、これは実際の映画の方がずっと良いですね。

資料

• IMDb
• allcinema Movie & DVD Database
• キネマ旬報データベース
• Wikipedia（英語）