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『陸軍』 (1944)

木下惠介生誕100年 「陸軍」 [DVD]

作品メモ

『花咲く港』『歓呼の町』と続けてきましたが、もう一本huluで見られる木下惠介監督作品。

『歓呼の町』に続く第4作で、1944年12月7日公開。
九州のとある家族の幕末以来3代にわたる物語で、家族と陸軍との関わりあいや、日本人としての心情が描かれます。

「陸軍省後援 情報局国民映画」とのことで、タイトルがとてもストレート。
当然ながら時代の薫りが濃厚に漂う内容で、幕末、日清・日露戦争、日中戦争だけでなく、(話のなかで)元寇までも登場。さらに、いよいよ厳しくなっている時局を考えればそんな余力がどこにあったのかと驚くような力の入った一大群衆場面もあります。

戦意高揚を目的とした国策映画には違いありませんが、ラストの田中絹代さん演じる母親の姿が、見る者の心をゆさぶります。
木下監督はこれで「女々しい」と当局ににらまれたそうで、このあたりはやはりhuluで見られる伝記映画『はじまりのみち』でも描かれています。

どうしても田中絹代さんにスポットを当てやすくなる映画ですが、1本の映画として見れば、夫役の笠智衆さんも説得力ある役作りが素晴らしく、また幾度も仲違いしながら親交を深めていく櫻木を演じた東野英治郎さんにも惹きつけられます。

未来の目線でみれば、終戦まであと8ヶ月。
その後『陸軍』の福岡・博多も『歓呼の町』の東京も、激しい空襲によって灰燼に帰することとなります。
最後の出征の場面で行進していた兵士たちも、再び故国に戻ることができたのはどれほどだったでしょうか。

ロケ地

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

城下町

0:01
設定では小倉かと思いますが、撮影場所不明。

山笠

0:30頃商売をたたんで福岡に舞台が移りますが、以後は実際に現地で撮影されているように見えます。

飛び込んだ橋

0:38
伸太郎がなかなか飛び込めずにいたところ。
映画で見られる周囲の道路構成や建物と昔の空撮画像を照合すると、中州の先の西側にかかる橋(弁天橋)のように思えます。

友彦がやってきたのは、中州の側(東側)から。

確認すべく昔の弁天橋についてあれこれ探したところ、「水月」という博多水たきのお店の沿革でこの映画が取上げられていました。

背後に当時橋のたもとにあったお店が写っているとのことで、よく見たら友彦の右側背景にお店の名前が読めました。
残念ながら福岡の空襲で全焼しているとのことです。

自転車で行く大通り

0:44
伸太郎が呼び止められるところ。
路面電車の駅で背景に石垣が見えますが、櫓が見当たらない部分なので、おそらくこのあたり。

友助の引率

0:51

筥崎宮W

インサートされたのは「敵國降伏」の額。

東公園W

写っていたのは、亀山上皇像と日蓮上人像。

家の前

1:15
これはさすがにわかりませんでした。

出征

1:20頃

大通り

カメラが右へパンして、大通りの向こうからやってくる兵士たちをとらえるショット。
大通りは天神交差点から伸びてくる明治通り。
カメラ位置はおそらく旧福岡県庁(現アクロス福岡)前、あるいはその東側の橋(天神橋)のあたり。
パンの前半で旧県庁の建物の一部が見えているようです。

こちら↓は米軍による1948年4月7日撮影のもの(地図・空中写真閲覧サービス)。

 
 

左手奥に見える角が丸いビルは岩田屋百貨店。一度建て替えられた後撤退して、現在は福岡パルコ。

母親が駈けてくる川沿い

直後、母わか(田中絹代)が川沿いの道を走ってくるショット。
橋のたもとに「日本生命」の煉瓦造りのビルが見えますが、現在も残るこちら。

福岡市文学館(赤煉瓦文化館)W

カメラ位置は昭和通りの西中島橋。
動きに合わせて左にパンして、最後に西大橋(明治通り)を真横から捉えます。左手が中州。

ここで振り返れば、飛び込んだ橋(弁天橋)が見えるはず。

大通り(俯瞰)

1:22
いかにも昔の銀行や保険会社といった風の円柱が並んだ建物が軒を連ねています。
同じく明治通りで、呉服町交差点近く。

右折(俯瞰)

1:28
右折を俯瞰で捉えているのは、おそらく上記呉服町交差点。

ロケ地マップ

 
 
 

資料

更新履歴

  • 2015/01/13 新規アップ

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