長回しの妙技
作品メモ
何気なくケーブルテレビをつけたら実にオモシロイものを見てしまったのでメモしておきます。
アメリカのテレビシリーズ『サード・ウォッチ』シーズン5・エピソード11(通算エピソード99 [1]100回記念のようですが、日本公式サイトではエピソード99となっています。)「誰かが泣いている」
見たのはSuper! drama TVのキャッチアップ放送です。
ドラマはあまり見ない方なので存在すら知らなかったシリーズです(ファンの方ごめんなさい)。
設定やレギュラーメンバーの人間関係などは全然わかりません。
エントリーたてたのはただ1点。
長回し ……これです。
見始めたのは、警官2人がパトカーを走らせている場面。
どうやら通報があったらしく現場へ駆けつけるところのよう。
その周囲を手持ちのカメラがゆったりと回りながら撮り続けています。
こっち側に回ってゆ~らゆ~ら、あっち側に回ってゆ~らゆ~ら。
ああ、撮影用のトレーラーにパトカーと一緒に乗ってステディカム担いで動きまくっているんだな~、カメラマンも大変だな~とぼんやり思って見ていましたが、それが延々と続くのです。
普通だったら出動する警官の会話は細かい切り返しで緊迫感を盛り上げたりするものでしょう。
このあたりでただならぬ雰囲気に気づいてそのまま見続けてしまいました。
現場近くには1人の男がいましたが、警官が声をかけても通報したのは自分ではないと言います。
おかしな態度に警官は職務質問を始めます。
するとそれまでパトカーを写していたカメラは今度はす~っと男の側に寄っていきます。
……そんな感じで、以後延々1台のカメラがノーカットで写し続けていくのです。
切れ目はCMだけ。
ワンシーンワンカットどころか複数シーンワンカットですね。
容疑者の取り調べを撮っていたかと思うと、応援に来た警官とともに現場周辺の調査に回ったりして、移動量も相当なものです。
狙ったものだと思いますが、何を考えているのか表に出さない容疑者、人っ子一人みあたらない街並みなど、非現実的な雰囲気が長回しのカメラとうまくシンクロして、デビッド・リンチ的ともいうべき不条理で不気味な世界を作り上げていました。
アメリカのドラマ恐るべし。
もう番組は終了していて、DVDは日本ではシーズン2までしか出ていていないようです。
アメリカでも米Amazon見る限りこのエピソードの商品はありません。
となるとまた放送を待つしかないのかもしれませんが、まあもし機会がありましたらご覧になってみてください。 [2]もしかするとYouなんとかでなんとかなるかもしれません。→ YouTube検索結果
脱線メモ-長回し映画
思いつくまま、長回しが印象に残る映画のメモ書き。
- 『ロープ』 これはすぐに思いつきますね。ヒッチコックのトリッキーな作品。
- 『黒い罠』 これもすぐに思いつきます。オーソン・ウェルズ才気煥発。冒頭以外にもいろいろやってます。
- 『ブレイキング・ニュース』 公開されるとは思わなかったので、香港盤DVDで楽しみました。ジョニー・トー(杜琪峰)にハズレなし(たまにあるけど……)。冒頭長回しだけ印象に残ってます。
- 『スネーク・アイズ』 これも冒頭。ブライアン・デパルマはカメラワークだけはいつも印象に残ります。策士策に溺れるタイプ?
- 『トゥモロー・ワールド』 これどうやって撮ったの?とあきれてしまった長回しがありますが、メイキングを見るとVFXだけでなく結構アナログなこともしていました。
- 『エルミタージュ幻想』 ハイビジョン撮影により、フィルム1巻という制限がなくなりました。長回し映画の到達点か一里塚か?
以下、監督↓
- 相米慎二 この間(2008年暮れ)日本映画専門チャンネルで特集やってました。『ションベン・ライダー』『光る女』をHD録画できたのはうれしいかも。
- タルコフスキー 思わず眠ってしまうようなリズム。
- アンゲロプロス 長回しかつロングショット。VHSの解像度では誰が誰だかほとんどわからず。
個人的にもっともハラハラした長回しはこれ。
- 『シベリア超特急2』
10分に及ぶ長回しの最後に水野御大が登場してセリフを喋るときの緊張感ときたら。
いや~映画って本当にいいものですね 😉
ロケ地
まったくわかりません。
長回しという撮影条件や無人の街角という点から、大きなスタジオのオープンセットかもしれません。
資料
- Super!drama TV
- IMDb
- http://www.niinet.com/garoto/thirdwatch-episode5.htm
References
↑1 | 100回記念のようですが、日本公式サイトではエピソード99となっています。 |
---|---|
↑2 | もしかするとYouなんとかでなんとかなるかもしれません。→ YouTube検索結果 |
コメント