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『パピヨン』 Papillon (1973)

パピヨン スティーヴ・マックィーン没後30年特別愛蔵版 [DVD]

てふてふが一匹……

作品メモ

これもNHK BS のスティーブ・マックィーン特集で録画。
ハイビジョンで見るのは初めてでしたが画質は良好で、昔からよく指摘されているgoof――マックィーンの下で頑張って立ち泳ぎしているダイバーもよく見えました。

改めて全編を高画質で見て、作品の持つ重みといいますか力強さに圧倒されました。
映画というメディアの持つありったけの力がこめられている傑作だと再認識。
マックイーンもダスティン・ホフマンという絶妙な共演者を得て、最高の演技を魅せてくれます。

監督フランクリン・J・シャフナー、製作総指揮テッド・リッチモンド、製作ロベール・ドルフマン、フランクリン・J・シャフナー。
脚本ダルトン・トランボとロレンツォ・センプル・ジュニア。
全編にみなぎる反骨精神は、ダルトン・トランボそのものでしょうか。IMDbを見る限り脚本家としては『ダラスの熱い日』と並んでこれが最後の仕事。脚本だけでなく、冒頭のギアナ行きを宣告するエラい人役で出演もしています(クレジットなし)。
原作アンリ・シャリエール。
撮影フレッド・J・キーネカンプ。 音楽ジェリー・ゴールドスミス。

ジェリー・ゴールドスミス・コンサート in Japan

有名なテーマ曲無しには考えられない『パピヨン』。
残念ながらジェリー・ゴールドスミスは2004年に亡くなっていますが、そのわずか数年前に2度来日、神奈川フィルハーモニー管弦楽団を率いてコンサートを行っています。
私が行ったのは2000年の横浜公演。
初めて見る生ジェリー・ゴールドスミスは思ったよりずっと背が高く、長い白髪を後ろで束ねて巨匠の風格をたっぷり漂わせていました。
メドレーから始まりましたが、すべておなじみの曲ばかり。
この『パピヨン』と次のエントリー『砲艦サンパブロ』もちゃんと入っていました。
メドレーが終わったあたりでお客さんがひとり遅れて入ってきたのですが、次の曲に入らずにタクトを休め、指揮者の台の手すりのようなところに寄りかかり、お客さんが席に着くのをおだやかな表情で待っていました。
(とこのエピソードを書けば、「あー私もその場にいたよ~」という方もいらっしゃるでしょうね ^^)
クラッシックの気むずかしい演奏家ならへそを曲げて帰ってしまいそうなところですが、本当に穏やかで落ち着いた紳士といった感じで、好感度が一気にアップしたものです。

休憩を挟んで2時間ほど。
終わってみれば万雷の拍手はなりやまず、アンコールとしてたしか東京公演向けの『スーパーガール』などが演奏されたように記憶しています。
コンサートは2003年も予定されていましたが、体調を崩して来日ならず。
結局この横浜公演が最後となってしまいました。

ロケ地

IMDbでは、

Jamaica
Maui, Hawaii, USA
Spain
St Laurent du Maroni, Guyane, Départements d’Outre-Mer, France
(Camp de la Transportation, closing sequence)

あとは映像とにらめっこですが、今回はかなり難易度が高いので、わかったところだけメモ書き。
大半はジャマイカでの撮影のようです。

冒頭の刑務所

肩書きはわかりませんが、ダルトン・トランボ演じるエラい人が囚人たちに向かってギアナ行きを宣告するところ。
英語をしゃべっているので一瞬とまどいますが、そこはフランスという設定。
撮影場所は調査中。

※19/8/7追記
コメント欄(2019年8月6日 23:14)でBill McCrearyさんから、IMDbの撮影地リストが追加されていてそちらではないかと情報を寄せていただきました。

IES San Fernando, Madrid, Comunidad de Madrid, Spain (Opening Scene)

こちら、学校でしょうか? 場所としては、マドリードの北。

冒頭3人は、(今で言えば)楕円形のトラックの北端あたりから南へ向かって進み、3棟並んだ建物の前へ到着します。
トランボが居たのは、右端と真ん中の建物の間。

  • Google Maps
  • 40.528556, -3.687774  ……トランボの立ち位置

港に出る通り

撮影はスペインのオンダリビア Hondarribia W  

鐘楼を見上げるカットはこの位置からのもの。(※19/8/6 以下マップ更新)

囚人たちは、 Iparraldeko kalea (Calle Iparraldeko )とある通りを北へ向かって行きます。

この場面、ドガを見送る妻役を演じていたのは、ダスティン・ホフマンの当時の奥さん Anne Byrne Hoffman (クレジットなし)。
1969年に結婚、80年に離婚しています。
妻がクルマを停めていたのは、マップ中央の広場。

Plaza de Armas

港が見えるところ。

悪魔島

船から3つの島を眺める場面。
セリフで「左がジョセフ島、中央がロイヤル島で、右が悪魔島」と言っています。
確かにこの名前で実在するようですが……

映画に登場したのは 本物ではなさそうです。
参考までに、本物はマップではフランス領ギニアのこちら。

囚人たちが送り込まれた本物のサン・ローラン刑務所(後述)はこの島から西へ150kmほどのところで、島ではなく大陸。

船が到着したところ

地形から見て、ジャマイカの首都キングストン Kingston W の南側、ポート・ロイヤル Port Royal W のあたりではないかと思われますが、確証はありません。

刑務所に向かう道

ジャマイカのFalmouth W
具体的には、このあたり。

白い十字架の形をしたメモリアルの前を通るカットで、左奥に見える4本の柱が特徴的な建物はこちら。

google mapsでは”Trelawny Parish Council‎”となっています。
十字架のメモリアルはその南東側。
カメラはその南側から北向きに撮っています。

また、どっしりした時計台が見えるカットはWater Squareのあたりで、カメラは南西向き。
囚人たちはHarbour Ln.を広場に向かって北向きにやってきます。

サンローラン刑務所 

入口の上にPenitencier de St Laurentの表示。
上記Falmouth Wに作られたセット。
本物はエンドクレジットで登場します。

トカゲのアップから入るところ、『戦場のメリークリスマス』を連想します。

沼地

ジャマイカ島西部のFerris Crossの近く。
二人が格闘するワニの口がしっかり縛られているは、これまた有名なgoof。

独房のある島

最初の脱走に失敗して島送りになり、2年間独房に入れられるところ。
施設の表示は”RECLUSION”。
この島はジョセフ島という設定でしょうか?

桟橋が印象的ですが、撮影場所は調査中。

幻想シーン

砂漠の裁判は、場所不明。

2人が凱旋する場面は、おそらく冒頭と同じくスペインのオンダリビア。
葉の落ちた並木道が特徴的ですが、San Pedro Kaleaという通りのこのあたりかと思われます。

画像は例えばこちら。

  • http://www.flickr.com/photos/marsupilami92/4522320945/

貯水池

ジャマイカ、キングストンのこれでしょうか? (確証なし)

Mona Reservoir

インディオの村

ジャマイカ島北西部のOcho Rios W

飛び込む断崖絶壁

ジャマイカ最西端のXtabi W
具体的な場所は調査中。

※2012/08/16追記
コメント欄でハワイ島であるという情報を寄せていただきました。
まだマップでは特定できていませんが、何かわかりましたらここに追記していくことにします。
ご指摘どうもありがとうございました。

※2014/01/27追記
これだけ有名な映画の有名な場面ですから、きっとどこかにあっさり正解が書かれているかとは思いましたが、できるだけ自力でという思いでひたすら地形から探してみました。
手掛かりは、マックイーンがテストで袋を投げ込むショットやその後考え込むショットで写る、数十メートルの断崖、尖った岩(一箇所指のように突き出ている部分有り)、同じぐらいの距離を置いて途中が凹んでいる岩山の3点セット。

ハワイ島の周囲をぐるりとチェックしましたが結局空振り。
でもIMDbのリストにマウイと書かれてあるのでとなりのマウイ島もチェックしたところ、それらしきところを見つけることができました。
こちらではないでしょうか?
(上記3点セットのショットのカメラ位置とアングルも、Google Mapsの方に示してみました)

地名としては、Pauwalu Pointと言うようです。
画像はこういったところ。

全体が北東に向ってYの字に突きだした岬で、Yの先端を結んだ中点にあるのが、先の尖った岩。
Yの字の西側の先にあるのが映画では中央が凹んで見えた岩山で、実際にはかなり長めの岩だったことがわかります。
意外なことに、パピヨンが立っていたのは、Yの字の西側の方の(そそり立っている)先端ではなく、東側の岬の中程のあたりです。
絶妙なカメラアングルによって、まるで先端にいるように見せかけていたことになりますね。

もしこれで正解だとすると、Wikimapiaにもこの場所に何も書かれておらず、画像もとても少ないのが少し不思議です。
もしかすると現在保護区になっているのが関係しているのかもしれません。
マックイーンになりきって飛び込むア○が出てこないとも限りませんし、書かない方が良いことなのかも……と少し不安になっているところです。

エンドクレジット

ここで映されるのはフランス領ギニアのSt Laurent du Maroni Wにある本物のサン・ローラン刑務所 W
映画の時点では廃墟と化していますが、今では修復され観光資源となっているようです。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2019/08/07 「冒頭の刑務所」追記 「港に出る通り」マップ更新
  • 2014/01/27 ラストの断崖絶壁を追記

コメント

  1. 深澤 より:

    最後の別れ、飛び込むシーンの岸壁は、ハワイ島と聞いてますが、違うのでしようか?

  2. inagara より:

    深澤さん、いらっしゃいませ。
    コメントありがとうございます。
    最後はハワイ島でしたか。
    本文は1年以上前に書いたものなので、自分でも何を根拠にしていたのか完全に忘れてしまっています(汗)。
    時間があるときに調べ直してみますね。
    ご指摘ありがとうございました。

  3. inagara より:

    マウイ島でここではないかという場所を見つけましたので、追記しました。

  4. Bill McCreary より:

    こんばんは。

    この映画のIMDbを確認しましたら、ロケ地の記述が追加されていまして

    >IES San Fernando, Madrid, Comunidad de Madrid, Spain
    (Opening Scene)

    とあります。画像検索しましたら、こちらの写真

    https://relojesdesol.info/gallery2/gallery/v/espana/mad/mad/ES_MAD_MAD_Madrid-049-01_IES-San-Fernando_P1120695.JPG.html

    などは、ドルトン・トランボが演説するところの背景の建物と酷似しているので、たぶんここでよいのではないかと思います。同じ建物が続いているようです。スペイン語に暗いので、どういう趣旨の施設かはわかりませんが(もともとはともかく、現在は教育施設?)。でもこのシーン、全裸のエキストラたちには同情します(苦笑)。あと

    >砂漠の裁判は、場所不明。

    は、たぶんですが、この映画は基本的にジャマイカとスペインでロケーションされているので、おそらくスペインの砂漠なんでしょうね。

    以下余談です。

    リメイク版「パピヨン」では、セルビアとモンテネグロ、あとマルタでロケされていて、例の飛び込むシーンはマルタで撮影されたそうです。仏領ギアナをジャマイカで撮影するというのはわかりますが、マルタでの撮影というのもなかなか大胆だと思います。「ミュンヘン」は、欧州のシーンはだいたいブダペストで、地中海沿岸のシーンはだいたいマルタで撮影されたそうですが、このあたりほんと映画のマジックです。

    https://www.mirumiruworld.com/papillon-filming-location-1052

    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55829?page=2

  5. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
    OPの場所、追加させていただきました。
    もともと何の施設かはわかりませんが、とにかく建物の形や配置など、マップ上でもはっきり確認できました。
    確かに全裸エキストラは可哀相ですね(2,300人はいますかね?)。せっかく『パピヨン』に出たのに、これでは顔も確認できませんね……
    その後の行進の場面でのエキストラさんたちとはえらい違いです。

    『ミュンヘン』はまだ取上げていませんでしたが、「見立て」がそれほど多いとは知りませんでした。ぜひチェックしたいと思います。

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