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目次
作品メモ
今週NHK BS2の深夜枠で、ちょっとなつかしいフランス製サスペンス映画がまとめて放映されました。
7/12(月)深夜から順に、
タイトル (IMDb) |
年 | 製作 | 監督 | 脚本 | 音楽 | 出演 |
---|---|---|---|---|---|---|
さらば友よ | 1968 | S・シルベルマン | ジャン・エルマン | S・ジャブリゾ ジャン・エルマン |
フランソワ・ド・ルーベ | アラン・ドロン チャールズ・ブロンソン ブリジット・フォッセー |
雨の訪問者 | 1970 | S・シルベルマン | ルネ・クレマン | S・ジャブリゾ | フランシス・レイ | チャールズ・ブロンソン マルレーヌ・ジョベール ジル・アイアランド |
狼は天使の匂い | 1972 | S・シルベルマン | ルネ・クレマン | S・ジャブリゾ | フランシス・レイ | ロバート・ライアン ジャン=ルイ・トランティニャン |
パリは霧にぬれて | 1971 | ジョルジュ・カサティ他 | ルネ・クレマン | ルネ・クレマン ダニエル・ブーランジェ |
ジルベール・ベコー | フェイ・ダナウェイ フランク・ランジェ |
スタッフ、キャストが微妙に重なるこの4本。
それぞれ多数決をとると(?)、製作セルジュ・シルベルマン、監督ルネ・クレマン、脚本セバスチャン・ジャブリゾ、音楽フランシス・レイ、主演チャールズ・ブロンソンとなり、ずばり該当するのがこの『雨の訪問者』。
静かな海辺の町にパイロットの夫と住むメリー。
ある日彼女は町にやってきた不気味な男に襲われ、ショットガンで撃ち殺してしまいます。
死体を捨て証拠を消し去ったつもりの彼女ですが、今度はドブスと名乗るアメリカ人が現れ、執拗に彼女につきまといます。
「なぜ殺したんだ」
どうやら死んだ男が持っていた赤いバッグに事件の鍵があるようなのですが、メリーには覚えがありません。
やがて夫が関わっていることを示す証拠が出てきて混乱するメリー。
果たして真相は?
……といったサスペンス映画。
出演は……
ヒロインのメリー(メランコリー)にマルレーヌ・ジョベール。
赤毛にそばかす、ヒロインにしては華が……とつい思ってしまいますが、お話が進むにつれどんどん魅力が増幅。若妻の複雑な心理を繊細に演じて、実はとても適役なのだと気づかされます。
私生活では娘がエヴァ・グリーン、姪がエルザ・ランギーニ。
謎の男ハリー・ドブスにチャールズ・ブロンソン。
この映画ではアクション控えめですが、その分渋い大人の男の魅力をたっぷり見せています。この年、マンダムのCMと『狼の挽歌』で日本でも人気爆発。
メリーの母親にコリンヌ・マルシャン。
夫トニーにガブリエレ・ティンティ。
友人ニコルに、ブロンソン映画お約束の愛妻ジル・アイアランド。 → 参考リスト
映画はほとんどが主役2人の対話で成り立っています。
かといって同じブロンソンの『扉の影に誰かいる』のような密室心理サスペンスとも違い、ミスリードをちりばめ、ミステリーとしても楽しめるようになっています(オリジナル脚本はセバスチャン・ジャプリゾ)。
カメラワークや台詞、小道具など雰囲気作りがとてもうまく、ラストの余韻も味わい十分。
主演2人の好演もあいまって、ムードたっぷりの大人の映画に仕上がっています。
英題”Rider on the Rain”。
似たような邦題の『夜の訪問者』は日本では翌年公開されていますが、製作は『雨の訪問者』より前でまったくの別物。
音楽
フランシス・レイは当時絶頂期だったでしょうか。
テーマ曲とワルツはベスト盤によく収録される名曲。
その昔映画を見るより前にサントラに親しんでしまい、このワルツに乗って主役の2人が踊る場面まで勝手に想像していましたが、初めてテレビで見た時そういう使い方ではなかったのでがっかりしたものです。
エンド・クレジットに流れる歌は、フランシス・レイのテーマ曲に、セバスチャン・ジャプリゾが歌詞をつけたもの。
バッグ
カギとなるバッグは今はなきTWA(トランス・ワールド航空)のもの。
ロケ地
IMDbでは
France Hyères, Var, France Orly Airport, Orly, Val-de-Marne, France Paris Studios Cinéma, Billancourt, Hauts-de-Seine, France
というわけで、フランス南部、地中海に面したイエールが舞台。
以下順に見ていきますが、特にジアン半島の東側の海岸線をロケ地に使っているようです。
バス停
オープニングで謎の男が降り立つところ。
一瞬波止場のようなところが見えるのが手がかり。
Google EarthやSVで海岸線のそれらしい場所を探してみました。
おそらくこちらだと思います。
メリーはやってくるバスを白い建物から見ていますが、 おそらく上のSVをくるりと180度回転させると見られる現在ピザ屋さんの建物だと思います。
設定上は母親の勤めるボーリング場ですが、ボーリング場そのものはエンドクレジットに、
Les scènes du bowling et de la noce ont été tournées à l’Hôtel Riviera Résidence Presqu’île de Giens (Var)
とありますので、別の場所でしょうか。
調査中。
自宅に向かう道
ニコルのブティックを出た後、木々の中の道を進んでとあるホテルの前を通り過ぎるところ。
道路標識とホテルの名前が見えたので場所がわかりました。
左側に見えるホテルはこちら↓
Hôtel Restaurant La Mayoux
20 Avenue de l’Arrogante, 83400 Hyères, France
メリーのワゴンはこちら↓
http://www.imcdb.org/vehicle_116567-Chevrolet-Impala-1965.html
自宅はおそらく個人宅を撮影に使ったのでしょうから、特に調べませんでした。
設定では「パン岬18番」という住所のようですが、少なくともロケ地周辺にはそういった地名はありません。
参考までに、「パン岬」のつづりは”LE CAP DES PINS”。
これは劇中、ドブスが夫婦の車から降りたところの道路標識と、夫の写真の裏に書かれた宛先で確認できます。
結婚式
会場は、上記のようにエンドクレジットにあるこちらだと思われます。
Les scènes du bowling et de la noce ont été tournées à l’Hôtel Riviera Résidence Presqu’île de Giens (Var)
このホテルについては調査中。
海岸
広い通りの果てにある海岸。
銀行から出てきたメリーをドブスが車から降りて待っていたところ。
駅
ロケ地にいちばん近い駅を探してSVで見てみたら、映画に登場した駅舎と同じでした。 おそらくこちらでしょう。
イエール駅 Gare d’Hyères
ホテル
ドブスが滞在したところ。
設定では「パーム・ホテル」 PALM HOTEL。
調査中。
空港
オルリー空港。
Orly Airport, Orly, Val-de-Marne, France
パリ
エッフェル塔、凱旋門、シャイヨ宮など有名どころが映ります。
メリーが郵便を投函するためタクシーを降りたのは、凱旋門東側のこのあたり。
ラスト
背景の山の形や家屋などから、同じ海岸線のこのあたりだと思います。
ドブスを車が追い抜く場面
この場所でこのアングル。
ガラスを割られる建物は今はなくなっているようです。
ラスト
カメラはやや北に移動。北向き。
ドブスの車はこちら↓
http://www.imcdb.org/vehicle_13030-Ford-Capri-1969.html
コメント
VHS時代からお気に入りの作品でしたが、デッキの故障後は、なかなかDVD化されないので輸入盤のサントラを聴いて我慢していましたが、今はブルーレイがあるので、ジョベールのチャームポイントもはっきり確認できます。
昔むかし、学習塾で講師のバイトをしていた時に、目のパッチリした、そばかす顔の中2生がいて、その生徒は私のダサい服装を冷やかしたり、先生である私を「ホリー」と呼び捨てするような子でした。私も悪ノリして「おまえをメランコリーと呼ぶぞ」と言ったら「何で?」と聞くので、いくら何でもジョベールに似ているからとは言えなかったので、「いつも憂鬱そうな顔してるからや」と誤魔化しました。そんな生徒も今ではもう50代です。どこの空の下で過ごしていることでしょうか。
エンドクレジットのHôtel Riviera Résidence Presqu’île de GiensをGoogle検索すると、
Belambra Clubs “Riviera Beach Club”に誘導されてしまいます。経営者が変わったのでしょうか。同クラブの写真を見ると、木々のむこうに赤い屋根で白い壁の建物が写っていて、似ているような気はします。映画のなかでは建物全体が見えませんが、ボーリング場の看板がうつるとき、背後にチラッと赤い屋根が見えるので、やはりこのクラブなのでしょうか。
ご存じかとは思いますが、最後ドブスがクルミを投げてガラスが割れますが、画面を止めてじっと見ていたらドブスが投げたクルミはあさっての方向へ行ってしまって、ガラスを割った物体は画面の右方向から飛んで来てますね。
この映画はストーリーが複雑すぎ、(公開時には)よくわからず、好きになれなかったが、最近配信サービスで見直してこの作品の凄さに打ちのめされた。
「伏線」「伏線」「伏線」が至る所に張り巡らされ、クレマン監督の知性が爆発的にほとばしる空前のミステリーの大傑作でした。
初めて見たとき、主演女優・マルレーヌ・ジョベールについても「居ながら」さんと同じこと、「赤毛にそばかす、ヒロインにしては華が・・・」と思っていましたが、今回、それが素晴らしく魅力のある印象的な女優だと再認識しました。
小生がもっと、ずっと、グーンと、数段と、はるかに若ければ、今からでも「居ながら」さんの情報を頼りにロケ地に飛んでいくのに。
特に、冒頭の男がバスから降り立つシーンはポスターにしてしまいたくなるようなカットの連続で、是非ロケ地をこの目で見たかったです.
変質者を演じた「マルク・マッツァ」という俳優の存在感もずば抜けていました。
ほりやんさんの記述のクルミの件は全く気が付きませんでした。
「あさっての方向」という表現を初めて知りました。
ミステリー最高峰「雨の訪問者」はネット配信で低価格で鑑賞できますので、是非皆様もご視聴ください
赤松幸吉様
「クレマン監督の知性が爆発的にほとばしる空前のミステリーの大傑作」、目の肥えた赤松様がそのように絶賛されているので、もう一度じっくり観たくなってきました。
たしかにロケ地探訪は体力いりますね。私も若い頃は、比較的物価の安いポルトガルに住んで、ヨーロッパ各地のロケ地を訪ねたいという願望を持っていました。
「冒頭の男がバスから降り立つシーンはポスターにしてしまいたくなる」、すごいセンスですね。実際ポスターになっています。昔そのポスターをデパートの古書市で買いました。今でも部屋に飾ってあります。
ほりやんさん、コメントありがとうございます。
Blu-ray盤が出ていたんですね。Amazon見てみたら4Kレストアということで、VHSと比べるまでもなくさぞクリアな画質と思います。自分も欲しくなってきたかも……
最近我が家でようやく4Kテレビになったので、UHDでもどんと来いみたいな体勢となっていますが、いざ4Kの映画を見ると、クリアすぎて明らかに劇場で見るのとは別の印象となってしまいますね。俳優さんのお肌のお手入れが見えすぎちゃって困るの~……といったレベルどころではなく、なにからなにまでクリアすぎて違和感が出てしまっているような。
おそらく慣れの問題かと思いますが、今のところは映画についてはレストア版のBlu-rayぐらいがちょうど良いのかも、と思ったりしました。
ホテルは画面上の手がかりが少ないので、昔の画像とかない限り今から探索するのは難しいかもしれませんね……
ドブスのバックシュート?は、今だったらVFXで処理していたと思いますが、いかにもアナログといいますか手作り感がただよう撮影になっていますね。
『エイリアン4』のシガニー・ウィーバーはトリックなしで決めていましたが、同じようなことをどこかで書いたと思ったら、『狼は天使の匂い』でした。
監督、こういうの好きなのかも 🙂
赤松幸吉さん、コメントありがとうございます。
この映画、ヒロインを翻弄するかのように謎が幾重にもちりばめられていて、謎解きの面白さと心理描写をどちらも堪能でき、見応えありますよね。
自分的には、それにフランシス・レイの曲がぴったりはまっていて、好みの映画となっています。
あまり関係ありませんが、昨年CS放送で久々に武田鉄矢主演の『ヨーロッパ特急』を見たところ、なぜかルネ・クレマンが乗客役で登場していました。どういうツテで出演したのかわかりませんが……
それからお二人に関連してというわけではありませんが、NHK BSで、1月26日に『太陽がいっぱい』、2月2日『チップス先生さようなら』が放送されます。こういうのはお皿では持っていても、ついつい録画して見てしまうんですよね。