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『ディープ・ブルー・ナイト』 깊고 푸른 밤 (1985)

作品メモ

先日エントリー書くために『ハリーとトント』を見返していたところ、ラストで既視感が。
もしやと思って古いVHSをチェックしたらやはりこの映画に登場していた場所でした。
とても印象的に撮られている場面で、むか~し見たときにそれがどこなのかずいぶん気になったものでした。
ようやく場所が特定できてすっきり。

この件はロケ地の項目で後述するとして、『ディープ・ブルー・ナイト』は韓国映画です。
韓流なるものが押し寄せるずっと前、ソウル・オリンピックよりも前の、韓国映画など年にわずかしか紹介されなかった頃のもの。
舞台はアメリカで、不法就労している韓国人の青年が永住権を取るために偽装結婚しようとする話です。
となるとアメリカ映画の『グリーン・カード』(1990)をすぐに連想しますが、コミカルな要素はほとんどなく、ロマンスで酔わせるというタイプの映画でもありません。
比べてしまうと素朴で無骨、どうしてもひと昔かふた昔前のアジア映画のテイストが感じられてしまう作品ですが、むしろそれ故に、ギラつくような主演俳優の演技とともに記憶に残る映画となっています。
本国での評価は高く、第24回大鐘賞では優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、照明賞を総なめ。
その他の映画祭でも多数受賞の80年代韓国映画を代表する作品です。

個人的には以前教育テレビのアジア映画枠で放映されたのを見た記憶があります。
あとは近所のレンタルショップが珍しく韓国ものをあつかっていてそこでも見る機会に恵まれました。
本国ではDVDが出ていますが、日本ではVHSのみ。
韓流の売れ筋からはズレてしまっている作品ですから、DVD化はちょっと難しそう。
これから見るとなると、CS等で放映されるのを待つ他なさそうです。

監督はペ・チャンホ(裵昶浩 배창호)。
原題の「깊고 푸른 밤(キプコ・プルン・バン」は「暗く青い夜」。
チェ・イノ (崔仁浩 최인호) W同題小説 W と、「물위의 사막 (水上の砂漠)」をもとに、チェ・イノ自身が脚色(本編のクレジットから)。
撮影チョン・グアンソク 정광석 。
音楽チョン・ソンジョ 정성조。

主演ペク・ホビンにアン・ソンギ 안성기 。
80年代から今日に至るまで、韓国映画の顔と言って良い名優。
『グリーンカード』のドパルデューもフランス映画の顔的にあらゆる作品に出まくっていますが、アン・ソンギも比重と言いますか貢献度ではひけをとりません。
ペ・チャンホ監督作では前年の『鯨とり コレサニャン』も良い映画でした。

偽装結婚の相手ジェーンにチャン・ミヒ 장미희 。
ペクに金を取られる女にチェ・ミニ 최민희 。
他に特別出演としてチン・ユヨン 진유영、友情出演として チャン・ソヒョン 장소현。

ロケ地

IMDbには記載はありませんので、映像をじーっと見つめて探すしかありません。
今回はロケ地をチェックしつつストーリーも詳しくメモっていきます。
ネタばれにはご注意を。

冒頭

見渡す限りの荒野。
道路際に小屋と白いベンツのオープンカーが1台。
クルマで待つ男がいらいらしてクラクションを鳴らすと、草むらで自然現象を解消していた女性があわてて戻ってきます。
男はもちろんアン・ソンギ 。
ちょうどアップになったとき、「안성기」とハングルで俳優名が出ます。
女性のところでも「장미희」と俳優名が出ますが、この女性ではなくヒロインを演じた女優さんの名前。

疾走するベンツ。
音楽は「ディープ・ブルー」ならぬディープ・パープルの”Highway Star” ってベタベタです。

“DEATH VALLEY”

デスヴァレー国立公園  W の入口標識。
入口の標識は何ヶ所かありますが、これは東側のもの。
場所はこちら↓

映画に登場したのは、1994年に国立公園になる前の、National Monumentのサイン。
以下はそれぞれ1979年、1992年、1994年、現在の撮影。

デスバレーの奥まったところで女の金を奪う男。
すがる女を振り払うと、女はあえなく坂を転がり落ちていきます。
スタントなしの熱演……といいますか、危険すぎるアクションに思わずひやり。

バー

ジェーンが働くお店。
場所は調査中。

仲介役の女性がジェーンに話をもちかけます。
偽装結婚1回で1万ドル。
6度目となるジェーンはさすがにためらいますが、結局承諾。
写真が気に入ったのか、同胞というのが気になったのか……

ペクとジェーンが会うところ

椰子の木が並ぶ海岸沿いの散歩道。 おそらく後で出てくるベニスビーチのあたりかと思います。

ジェーンに金を渡すペク。
冒頭の女性から奪ったお金でしょう。
まずは半額、残りはグリーンカード取得後、結婚費用は男持ち、式はラスベガスでという条件。
やはりお手軽結婚式はベガスが良いようで。

ラスヴェガス

ペクが歩いてくる通りはここ(カメラははじめ南西向き)。

左に曲がったペクの行く手に、プラザホテル&カジノのネオンが見えます。
『ハリーとトント』でハリーがやってきたところ。
今はフレモント・ストリート・エクスペリエンス W のアーケードがかかっていますが、『ハリーとトント』同様撮影時点ではまだありません。

部屋に戻ってきたペク。
新婚初夜を楽しもうとしますが、ジェーンにピストルを突きつけられて撃沈。

廃車工場

廃車工場(パーツ屋)で働くペク。
手入れでたちまち職を失います。
ジェーンのバーにやってきて窮状を訴えると、思いがけずうちに住めば?との提案。
ただし月500ドル也。

ペクのアパート

部屋を引き払うペク。
管理のおばさんに郵便物を預かってくれるように依頼。

妻からのテープを聴くところ

背景からして、このあたり(カメラは西向き)。

テープから、ペクが本国に身重の妻を置いてきていること、一日も早く呼び寄せようとしていることがわかります。

マーケット

深夜のマーケットで働くペク。
同僚は同国人。
国に恋人がいるとのこと。

去年韓国で知り合った大学出の女さ。
在米僑胞実業家と言ったら、国民学校出の俺に飛びついてきたのさ。

その晩ハメをはずして店のものを飲み食いしてしまう2人。
翌朝オーナーに見つかってこっぴどく叱られますが、クビにはならなかった模様。

通り

ロスの下町を行く2人。
背後の映画館の形で場所がわかりました。

Tower Theater W
802 S. Broadway, Los Angeles, CA 90014
http://www.towertheaterla.com/

なので、2人が渡った横断歩道はこちら。

S.Broadway St.沿いに、W 8th Av.を北向きに渡っています。
ちなみにただ今上映中の映画は『悪魔のいけにえ』 Texas Chainsaw Massacre 。

新聞を読んだのは、S.Broadway側にちょっと移動したこのあたり。

読んでる新聞は韓国語。
人捜しの広告で、ペクの年齢が29歳だとわかります。
情報提供者に후사(厚謝)するとのこと。
この広告を出したのは、冒頭でお金を奪われた女性でしょうね。

マーケットは危険だ。黒人に撃たれたくないからな

ロスの暴動は1992年のこと。

ジェーンの家

ペクが車で戻ってきたのは、高台のプール付き物件。
最初の夫マイケルが娘ローラを4日間だけ預けに来ていました。

海辺

ベニスビーチ W

パンしたときに映る丸い屋根付きベンチ。
これが『ハリーとトント』のラストで、ハリーが猫を連れた女性と話すところ。

ローラを肩車したペクの背景。

この海辺の場面は、カメラが冴え音楽も雰囲気たっぷりで、いつまでも記憶に残る名場面となっています。

その晩、娘の親権が裁判の結果マイケルに奪われてしまったことが語られます。

あの子を何度かぶったことがあるわ
韓国じゃそうでしょう

と、そのマイケルが深夜に訪問。
ローラを連れて帰ってしまいます。
引き留めようとするジェーンをなだめるペク。
2人はそのまま……

マーケットで仕事ぶりを認められてレジ係に昇格したペク。
そんな彼を監視する男たち。

移民局の調査

トイレで永住権申請の練習をするペク。
アメリカ式の名前が良いとあれこれ考えたあげく決まったのが、

グレゴリー・ペック!

まだ若いのに、この場面だけはオヤジに見えるアン・ソンギ。
その時突然やってくる移民局の男たち。
『グリーンカード』でおなじみの現地抜き打ち調査です。

それぞれ別の部屋で質問を受ける2人。
妻の年齢をちょっと間違えたのは、満と数えの問題として切り抜けたものの、妻の韓国名がわからずに窮地に。
万事休すと思われたときに飛び出した奥の手といいますか窮余の一策が、見事に奏効。
ネタばれが過ぎると面白くないのでペクがどんな手を使ったのかは伏せますが、その前の海辺の場面に引き続き、映画半ばにして非常に盛り上がるところとなりました。

ジェーンも思わず拍手&うっとり。
突然ソフトフォーカスがかかったりします。

海岸

波打ち際を海パン姿で駆けるペク。
ジェーンのもとに駆け寄り熱いキス。
ぐるぐる回るカメラ。
そのまま赤いクーペの上でコトに及ぶ大胆さ。

この場所がどこなのか苦労しましたが、背景に目を凝らしてなんとか判明。
Point Mugu W の東側。

Point Mugu State Park‎
9000 Pacific Coast Highway
Malibu, CA 90265, United States
http://www.parks.ca.gov/default.asp?page_id=630

移民局

念願のグリーンカードが降りた「グレゴリー・ペック」さん。
うれしそうに飛び出してきたのはこちらのビル(カメラ北向き)。

Wells Fargo Tower (Wells Fargo Center)
http://en.wikipedia.org/wiki/Wells_Fargo_Center_(Los_Angeles)

このビルは『ブルーサンダー』にも登場。
その時にはまだ完成していませんでした。

別れの街灯

目的をはたしたペク。
契約結婚はここで終わりのはず。
でもジェーンには未練が。
夜の街灯の下でいったんは別れたものの、

クリスマスにローラと会う約束をしたでしょう

と引き留めてしまいます。

この場所はこちら↓

現在は Los Angeles Center Studiosの敷地内か敷地ぎりぎりのところ。
ペクが去りかけたとき、行く手に見えている歩道橋は『ナンバーズ』『コールドケース』等で本部の建物に通じる歩道橋として登場しているもの。
この建物は撮影当時はユノカル (資料)のものでした。

クリスマス

ローラに会いに行く2人。
新しい妻を迎えるというマイケルに、ジェーンは子供ができたと宣言。
驚くペク。
本国の妻からは迎えを催促するテープが届き、悶々とします。

中華街

怪しげな薬を調達するペク。
ジェーンの食事に混ぜて食べさせようとしますが、あやういところで思いとどまります。
ペクの意図をさとったものの、離婚を拒むジェーン。

この場面かなり良いところなのに、クロスフィルターのありえない大きさがかえって雰囲気を壊しているような……

マーケット。
金が必要な同僚はオーナーに借金を断られ、先だっての尋ね人の広告を思い出します。

ジェーンが家に戻ると、冒頭の女が待ち構えていました。
密入国のペクを店で働かせてあげていた彼女。
夫を捨てて一緒にロスにやってきたのに、2万ドル奪われたあげく夫は自殺。
ペクさんかなりまずいことしています。

マーケットにやってくるジェーン。
なぜか店内でふたたび濡れ場。これはどうみてもいらない場面。

その直後強盗に殺されてしまう同僚。
混乱する店に元愛人がやってくるのを見てこっそり逃げるペク。 ジェーンのもとに戻ると、なぜか故郷の妻が出産で死んでしまったとウソをつきます。

このあたり、出来事はいろいろ起きるのですが、展開はかなりぐだぐだ。

塔のある庭園

高台から遠くを見る2人。
場所はレストランのYamashiro (山城)だと思います。

Yamashiro
http://www.yamashirorestaurant.com/

アングル的にちょうどこちらの写真と同じ。

  • http://www.panoramio.com/photo/34156260

IMDbによるここでロケされた映画の一覧。『ディープ・ブルー・ナイト』も仲間に入れてください。

君だけを愛する。
サンフランシスコへ行こう。

といいながら、実はペクはジェーンを亡き者にしようと妄想していたりするのです。
さらにまだいろいろ起きるのですが、ロケ地的観点からはこれで一通り見たことになります。

その後2人を乗せた車はデス・ヴァレーへと向かいます。
果たして2人の運命は……

資料

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