目次
作品メモ
野球かサッカーのチームみたいですが、ここではもちろん共産主義者のこと。
ひとつ前のエントリー『ドクトル・ジバゴ』がロシア革命当時のロシアの人々を描いた映画なら、こちらは同じ時に外国から乗り込んできて革命を目撃、帰国後『世界をゆるがした十日間』(“Ten Days that Shook the World”)を著わし社会主義者として活動、数年後に彼の地で客死したアメリカ人ジャーナリスト、ジョン・リードのお話です。
『暗殺者のメロディ』でもちらりと書きましたが、このあたりの時代と人物はもはや歴史の彼方といった感もありましょうか。ましてジョン・リードとなると今の世代には誰それ的人物かもしれません。かくいう自分も『世界を~』以外は著作を読んだことがありませんし……。
映画はドラマ部分の合間に当時を知る生き証人たちのインタビュー映像を次々挿入して、人間ジョン・リードを丁寧に描こうとしています。
丁寧すぎてテンポもだいぶゆったり。『ドクトル・ジバゴ』に匹敵する上映時間となり、やはり劇場公開時には休憩が入ったような記憶があります。
当時いちばん印象に残ったのが休憩前のクライマックスシーン。
インターナショナルがたっぷり流れ、かなりびっくり&盛り上がってしまいました。
ラブシーンを挿入しているあたり、「革命」なるものの高揚感やロマンは男女のそれとシンクロしているとでも言いたげなよう……。
一方で『ドクトル・ジバゴ』では描かれた革命と内乱がもたらす悲惨な状況が(それでも現実に比べればかなり控えめな描写でしょうが)、『レッズ』ではほとんどスルーされています。それはこの映画の任ではないということでしょう。
キャスト&スタッフ
主役ジョン・リードに、ウォーレン・ベイティ。出演だけでなく製作、監督、脚本も担当していて、かなり力が入っています。各部門でアカデミー賞の候補となり、見事監督賞を受賞。
まだ「ビーティー」だった頃ですが、確かにこの頃とても勢いがありましたね~。
人物の多くは実名で登場しています。
ジョン・リードのパートナーでともにロシア革命を目撃したルイーズ・ブライアントにダイアン・キートン。『世界をゆるがした十日間』ほど知られていないかもしれませんが、’Six Red Months in Russia’は一緒に目を通しておくと参考になるかもしれません。
友人の劇作家ユージン・オニールにジャック・ニコルソン。
アメリカの「レッズ」のひとりでリードと対立するルイス・フライナにポール・ソルヴィノ。
活動家エマ・ゴールドマンにモーリン・ステープルトン。これでアカデミー賞助演女優賞受賞。
……とここまで全部実在の人物。
ジーン・ハックマンが演じたPete Van Wherryなる人物は実在したかどうかは知りません。
異色のキャストは、ボルシェビキの指導者グリゴリー・ジノビエフを演じた作家のイェジー(イエールジ、ジャージ)・コジンスキー(Jerzy Kosiński)。
この名前ももはや歴史の彼方かもしれませんが(汗)、70年代に結構評判をとっていて、『異端の鳥』、『異境』、『預言者』と当時角川から出ていた3冊をあっというまに読んでしまった記憶があります。今となっては映画『チャンス』(1979)の原作者(『預言者』)として名前が残っているかもしれませんね。
最初の『異端の鳥』は今も『ペインティッド・バード』という邦題で入手できるみたいです。
撮影ヴィットリオ・ストラーロ(アカデミー賞撮影賞受賞)、音楽スティーヴン・ソンドハイム。
アカデミー賞の男女主演賞と男女助演賞の俳優4部門すべてにノミネートされるという珍しい記録を持っています。
次に同じことが起きるのは30年以上後の『世界にひとつのプレイブック』(2012)。
ロケ地
IMDbでは、
Twickenham Film Studios, St Margarets, Twickenham, Middlesex, England, UK (studio)
1 Great George Street, Westminster, London, England, UK
Cherry Lane Theatre – 38 Commerce Street, Greenwich Village, Manhattan, New York City, New York, USA (Provincetown Playhouse)
Frensham Ponds, Farnham, Surrey, England, UK (House in Provincetown, Mass.)
Greenwich Village, Manhattan, New York City, New York, USA
Gällivare, Norrbottens län, Sweden
Helsinki, Finland
Lancaster House, The Mall, St. James’s, London, England, UK (interiors of the Winter Palace, St. Petersburg)
Manhattan, New York City, New York, USA
Methodist Central Hall, Storey’s Gate, Westminster, London, England, UK
Paramount Ranch – 2813 Cornell Road, Agoura, California, USA
Senate Square, Helsinki, Finland
Spain
Suomenlinna, Helsinki, Finland
Zion Institute, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Chicago hall where Reed speaks against American involvement in WWI)
ソ連での撮影はなく、ヘルシンキの街並みをペトログラード(当時)に見たてています。
ニューヨーク
ルイーズがバスから降りたところ。
5番街、マディソン・スクエア・パークの西側。カメラ南向き。
背景のビルはフラットアイアン・ビルディングW。
通り抜ける公園
ワシントンスクエアパーク。
当サイト的には『ディープ・インパクト』、『パリの恋人』。
上記バスを降りたところから南へ1.5km。
荷物かかえて移動するにはちょっと遠いでしょうか?
その後やってきたジョン・リードの住まいは設定通りグリニッチ・ヴィレッジにありましたが(ストリートビューで確認)、おそらく一般の住宅と思われますのでマップで示すのは避けることにします。
ペトログラード駅
マックスが迎えに来ていたところ。後の方でリードが戻ってきた場面でも登場します。
撮影場所は調査中。
広場
馬車で横切るところ。
その後何度も登場しますが、ペトログラードの宮殿広場Wという設定でしょうか。
撮影場所はヘルシンキの元老院(上院)広場。
どのショットも北側にあるランドマーク、ヘルシンキ大聖堂は写らないようにしてありますね。
※2014/11/23追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
©2009 milou アルバム「ヨーロッパ各地」から |
ヘルシンキ大聖堂の大階段から見た広場。
撮影は2009年7月とのことです(以下同様)。
©2009 milou アルバム「ヨーロッパ各地」から |
広場の中心にあるアレクサンドル2世の像。
『レッズ』でも写っています。
©2009 milou アルバム「ヨーロッパ各地」から |
広場を見下ろすヘルシンキ大聖堂。
こちらは映画では(もちろん)登場しません。
冬宮(内部)
IMDbのリストにあるこちら。
Lancaster HouseW
The Mall, St. James’s, London, England, UK (interiors of the Winter Palace, St. Petersburg)
バッキンガム宮殿の真ん前ですね。
英語版WikipediaのIn popular cultureでは触れられていませんが、いろいろな画像を見る限り『レッズ』の撮影で使われたのは間違いなさそうです。
群衆とトラム
上掲動画「インターナショナル」の場面で、道路を覆い尽くす群衆の前にトラムが停まるところ。
撮影はヘルシンキの前述広場のすぐ東側、下記Government Palaceの南側の通り。
数ショットの後、群衆が画面右から左に行進するのは、広場東側にあるGovernment PalaceWの前。
証言を終えたルイーズが出てくるところ
合衆国議会議事堂東南側の階段。
シカゴでの集会
Zion Institute, Manchester, Greater Manchester, England, UK (Chicago hall where Reed speaks against American involvement in WWI)
フィンランドの牢獄
越境したリードが拘置されていたところ。
IMDbのリストにあるこちらと思われます。
SuomenlinnaW, Helsinki, Finland
後でルイーズもやってくる出入口はここでしょうか?
再会した駅
ルイーズが列車の到着を待っていた駅。
構内が部分的にしか写らないので確証はありませんが、ここは『ドクトル・ジバゴ』でトーニャの列車が到着した駅という設定で使われたスペインのこちらのように見えます。
窓の位置や形、屋根の構造などそっくりです。
もしそうだとすると、撮影条件が限られているためたまたま一致したのかもしれませんが、それ以外にも少しオマージュのようなものも感じてしまいました。
ロケ地マップ
※17/2/12項目追加
スペインで撮影された映画のロケ地マップ
資料
更新履歴
- 2017/02/15 画像のリンクをPicasaからGoogleアルバムアーカイブへ切替
- 2017/02/12 「ロケ地マップ」項目追加
- 2014/11/23 「広場」にmilouさんの画像を3点追加
コメント
中学生の時に観て、又、四十年振りにインターナショナルのシーン見せていただき、感激です。まさか何十年後に観ることができるとは夢にも思いませんでした。ありがとうございました。
高橋ヒルツさん、コメントありがとうございます。
おお、ご覧になったのは中学生の時でしたか。私は社会人になってからでしょうか。中学の時は『恐竜時代』とか『猿の惑星』のお猿さんが現在の地球にやってくる映画とか、そんなんばっかり見てました……。
そんなことより、この映画でコメントいただけて嬉しいです 🙂
インターナショナル、盛り上がりますよね。ほとんどの場面は忘れていても、この場面はくっきり記憶に焼き付けられています。
確かその後にINTERMISSIONが入ったかと思いますが、そこでイケイケの雰囲気が切り替わり、次第に雲行きがあやしくなっていくというドラマの構成も良く、長い映画でしたが結構面白く見たのを覚えています。
あまり関係ありませんが、俳優として出演していたイェジー・コジンスキー原作の『異端の鳥』が来月公開になるようです。そのタイミングでこのエントリーに初めてコメントいただいたのも偶然以上の何かでしょうか。
私は原作読んだときにほぼトラウマと化したのでこの映画を見ることはないと思いますが、そのまんま映像化されたとしたら、結構キツいと思いますので、行かれる方はご用心を。