作品メモ
ひとつ前のエントリー『海潮音』に続いて、海が印象的なATG映画。
最初に観たのは昔の名画座でしょうか。
ウルトラシリーズの実相寺昭雄監督だし、岸田森さんや桜井浩子さんも出ているし……でのこのこ見にいって見事に返り討ちに遭いました。 😛
でもそういやウルトラシリーズも変わった映像にあふれていたなあと妙に得心。
『無常』、『曼陀羅』、『哥』、『あさき夢みし』のATGの実相寺監督ものをせっせと名画座で見ているうちに、斜めった構図や、大きく横移動するカメラ、極端な遠近感、逆光でアップになった横顔の後ろがぽっかり空いている、などスタイリッシュかもしれないけど何だか良くわからないカメラワークにすっかり耐性がつき、『帝都物語』や『姑獲鳥の夏』ぐらいは別にどうということはなくなっていたのでした。
今見返すと、映像表現のみならずお話の方も難解に感じるかもしれませんが、その時代の空気を体験した方なら、案外スッと入っていけるかもしれません。
映画の公開は1971年9月11日とのこと。
三島由紀夫の死は1970年11月25日、連合赤軍事件は72年2月。
その挟間の映画です。
脚本石堂淑朗、撮影稲垣涌三、音楽冬木透。
ロケ地
例によって特に資料は用意せず、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしていきました。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
細かくチェックするために身を乗り出して見ていましたが、超広角でぐいぐい撮っている場面ではあやうく酔いそうになりました。
モーテル
「LO BARROCCO モテルバロッコ」とど~んと看板が出ますが不明。土日しか営業しない怪しいところです。
キネマ旬報データベースの解説では「敦賀の海岸沿いに建つ一軒の小さなモーテル」。
名前は架空のものとして、建物そのものは実在するかと思いますが、当時でかなり年季が入っていて今もあるとは思えませんし、モーテル調べても仕方ないので、ロケ地チェックはパス。
話が見えづらい映画である上に、冒頭のベッドシーンは思いっきりハイキーで撮られていて、しかも女性はどちらもストレートのロン毛。もう誰が誰だかわかりません。
説明するのも野暮ですが、自分用のメモとして。
相手を交換して楽しんでいる2組のカップル。
本来は、信一(清水紘治)と由紀子(森秋子)、それから裕(田村亮)と康子(桜井浩子)の組み合わせ。
その様子をカメラで監視している謎の男真木に岸田森さん。
その部下のひとりに草野大悟さん。お二人とも残念なことにだいぶ前に鬼籍に入られています。
もう一人の部下に富川徹夫さん。
シャーマンでもある真木の妻に若林美宏さん。
砂浜
いちばん知りたかったのが、この砂浜。おそらくモーテルのすぐ外という設定。
こちらも敦賀の海岸なのかもしれませんが、特定できず。調査中。
浜に出ていったのは信一と由紀子。
※18/4/22
コメント欄でテルキさんから情報を寄せていただきました(ありがとうございます♪)。
「鳴き砂で有名な丹後の琴引浜」とのことです。
画像やSVでも同じ地形を確認できました。
石庭
0:25頃
瑞峰院(ずいほういん)Wの独坐庭(どくざてい)
庭
0:30頃
何ヶ所か写りますが、おそらくすべて上記瑞峰院のすぐ近くにあるこちら。
こちらは、東滴壺(とうてきこ)。
約4坪の小さな石庭。
意外にも作られたのは昭和35年とのこと。
このサイズなら我が家でもDIYで作れるかも??
石の上
大きな石が積み上がった上で議論する裕と信一。
これ、石舞台古墳Wではないれすか 😯
場所は、奈良県明日香村。
岸田森さんが正座していたのはここ
う~む、変な映画
喫茶店
1:31
裕と左時枝さん演じるジュンが話したところ。
入口に«茶屋「小径」»。
哲学の道のそばのこちらと思われます。
- Google Maps
- Google Maps(SV) ……入り口 ▼21/4/18 追記
- Google Maps(SV) ……反対側が入口
- Bing Maps(概観図・西向き)
- WikiMapia
この店の北側2本目の橋が、『OSS117/東京の切り札』で、「の魅力」と書かれたなんちゃってトラックが渡ったところ。
▼21/4/18 追記
Bill McCrearyさんから画像を提供していただきました。
今年(2021年)3月に京都を訪問された時のものとのことです。
Bill McCrearyさんはこれらの画像を含む旅行記をご自身のブログにアップされていますので、ぜひご訪問ください。
ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
京都の桜(2021年3月)(哲学の道-5)(6)
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/302e6f3158f0fc99e62225a2b7764e17
街中
浜に向う一行が練り歩くところ。
『無常』の街にも似て見えますが、不明。
砂丘
浜の俯瞰ショットの直前。
これだけ広いのはやはり鳥取砂丘ではないかと単純に思ってしまいますが、不明。
浜
船で乗り出していったところ。
探しかけましたが、手掛かりがほとんどないまま乗り出すのは、彼らが船で出ていくのと同じくらい無謀であると気づき、すぐに止めました(軟弱)。
ただ、一行が画面奥の水際へ進んでいくのを後ろから捉えたショットで、日差しが右側からで影が長くないという、つまり、ほぼ東向きの入江であることがわかるわけで、そこらへんから粘れるかもしれませんね。
刀剣商
原保美さんのお店。
やはり京都でしょうか?
※18/8/13追記
コメント欄でBill McCrearyさんから情報を寄せていただきました(2018年8月9日 23:16)。
こちら↓のブログによれば、東大路通の鈴木古道具店とのことです。
なのにオイラは京都へゆくの? > 曼陀羅(1971年公開、R18+作品) https://blog.goo.ne.jp/ikandesu_2009/e/dce8b4f0735378bd8116181d47031a81
▼24/5/24 追記
再び現地を訪問されたBill McCrearyさんから画像を提供していただきました(コメント欄2024年5月6日 12:12参照)。
撮影は2024年4月1日とのことです。
ソースのブログ記事はこちら↓となります。
ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
あまり桜を楽しめなかった関西紀行(2024年3月~4月)(Day-3-6)(12)
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/95767e8e7d19d87654e8c1406dcf0ea6
ロケ地マップ
実相寺昭雄監督作
資料
更新履歴
- 2024/05/24 「刀剣商」にBill McCrearyさんの画像を追記
- 2021/04/18 「喫茶店」にBill McCrearyさんの画像を追記 SV追記
- 2018/08/13 「刀剣商」追記
- 2018/04/22 「砂浜」追記。画像のリンク先をPicasaウェブアルバムからGoogleアルバムアーカイブへ変更。ロケ地マップ更新。
- 2014/12/17 新規アップ
コメント
この映画に出てくるビーチは鳴き砂で有名な丹後の琴引浜です。
テルキさん、コメントありがとうございます。
冒頭の砂浜ですね。今画像やストリートビューを見てみましたが、映画と一致していますね。
おかげさまでスッキリしました。感謝感謝です。
後ほど本文に追記させていただきます。
ありがとうございました!
あ、おそくなりましたが、『狼男アメリカン』と『刑事フォイル』での拙写真のご紹介ありがとうございます。今後ももし協力できるものがありましたらご連絡させていただきます。
この映画ずいぶん昔観ました。ただ、今印象に残っているのは、
>思いっきりハイキーで撮られて
いる冒頭のシーンと、河原で内ゲバから逃げるシーン、あとラストで日本刀を抜くシーンくらいです。前作の『無常』といい、だいぶATG映画にしてはヒットしたようで、それらはたぶん性描写の激しさが大きな理由だったのでしょうが、実相寺監督という人も特異な天才だったのでしょう。
なお
>刀剣商
原保美さんのお店。
やはり京都でしょうか?
ですが、こちら
https://blog.goo.ne.jp/ikandesu_2009/e/dce8b4f0735378bd8116181d47031a81
によると、
>東大路通の鈴木古道具店
だそうです。それなりに有名な店のようです。
https://blog.goo.ne.jp/mimoron/e/f6d1a9d730268bb0766c295ab1e52ce4
ところでATGの映画などは、当時公開と同時に発売されていたパンフレット兼ATGの定期刊行物であった「アートシアター」に、作品によっては情報が掲載されているかもですね。また単なる京都つながりですが、『ザ・ヤクザ』などは、当時の映画雑誌や、東映側のスタッフの回顧録などにあるいはロケ地のヒントがあるかもですから、私もちょっとチェックしてみます。地図の読み方ほかについては、冗談でなく居ながら様の弟子になりたいくらいです(笑)。
Bill McCrearyさん、刀剣商の情報ありがとうございました。
ご紹介いただいたブログも、マニアックでなかなか良さげですね。
この映画について他に気になるのは、最後の浜でしょうか。
これは地形から粘ればわかるはずなので、ヒマな時少しずつチェックしていくことにします。
こんにちは。特にこの映画のロケ地探求という意味ではなかったのですが、実相寺監督の研究本を読んでいましたら、桜井浩子のインタビューがありまして、彼女が
>鳥取砂丘とか龍安寺とか行ってね。(p.256)
とあるので、どうやら鳥取砂丘で決まりです。私もこの映画を観たのはるか昔ですので、再鑑賞すると同時にパンフレットや当時の映画雑誌、実相寺監督の著書などで確認したいと思います。
https://www.amazon.co.jp/dp/4800303850
以下余談です。桜井は、ウルトラシリーズで、例の封印になった「セブン」12話にも参加しているくらいで、小林昭二なども常連さんでしたが、いまにしてみるとこの時期のATG映画でひし美ゆり子(菱見百合子)が出演してくれたら面白かったろうなと思います。彼女はまだ東宝の専属でしたから、いくらATGが東宝系の会社ではあるとはいえ、出演ましてやヌードは難しかったでしょうが、それでも実現すればよかったなと思います。
それからすみません、これもほとんど関係ない余談ですが、1974年制作の「ウルトラマンレオ」第37話に実相寺監督夫人の原知佐子が出演していまして、鳥取砂丘まで3日間日帰りでバスで行ったなんて話があり、最初意味が分からなかったんですが、つまり往復とも深夜にバスで往復したんだということに気づき、視聴率が悪くてよっぽど予算がなかったんだ、さすがに初代やセブンの時代なら、そんなことはなかったろうなと同情してしまいました(苦笑)。若手はまだしも、原さんは大変だったでしょう、いや、彼女は別格?
https://animageplus.jp/articles/detail/26887/2/1/1
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
鳥取砂丘で正解でしたか。
あとは船をこぎ出した浜がやはり気になっていて、時々マップをチェックしていますが、まだわかっていません。
ここから先は、こうした資料や書籍に当たっていくしかないのでしょうね。
ATG映画でひし美ゆり子さんというのは、意外な組み合わせで面白いことになっていたかもしれませんね。実現していたらきっと見に行っていたと思います 🙂
私はウルトラシリーズは第1期だけで、「ウルトラマンレオ」は見ていませんでしたが、日帰りバス往復というのはわびしいですね……
今はNetflixのアニメ「ULTRAMAN」を楽しんでいますが、これを見ることができるのも、とにかく何十年とこのコンテンツを続けてきてくれたおかげですね。
>入口に«茶屋「小径」»。
3月に哲学の道の桜を見物して、こちらにもお邪魔しました。よろしければ写真をお使いになってください。
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/302e6f3158f0fc99e62225a2b7764e17
店の方に『曼陀羅』の話をしたところ、やはり大林宣彦監督の映画の聖地巡礼をする方が多いようですね。あとすみません、おなじ記事の中で
>この店の北側2本目の橋が、『OSS117/東京の切り札』で、「の魅力」と書かれたなんちゃってトラックが渡ったところ。
の写真を撮影しようとしたのですが、映画を観ていないので、確信はありません。
それにしても3月末で京都の桜が満開というのも、ずいぶん早くなったというのが1つ、またこの時期ほんと雨が多く降っています。ピーカンのもとでの桜見物というのもなかなか難しい気がします。
いずれにせよ海外にいけないので、これからも国内で感染しないように気をつけながら写真を撮って行きたいと思います。
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
京都へいらっしゃったのですね。画像ありがたく頂戴しました。
他の画像も拝見しましたが、お天気のせいか思ったほど人出が多くないような。
京都でこれなら密を気にせずにあちこち国内旅行へでかけても良いのかと思ったりしました。
哲学の道のあたりはずいぶんSVが使えるようになっていて、しばらくウロウロしてみましたが、まあ以前の桜の時期は凄い人の数ですね。外国の方もいっぱい見受けられて、こうしたインバウンドがごっそり消えたのはかなりの痛手だろうと今更ながら感じました。
それから『OSS117/東京の切り札』の方まですみません。この橋でバッチリです。そちらのエントリーで使わせていただきました。
ちょっとおもしろかったのは、トラックのショットは横から写していて、アングル的に背景にちょうど「小径」のあたりが写っているのですが、今とは外観が違っていて、そう言えば『曼陀羅』も玄関先が今とは変わっていますね(昔のは平屋)。
それにしても、抹茶フロート、美味しそうです 🙂
刀剣屋(現鈴木古道具店)の写真と撮影してきました。
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/95767e8e7d19d87654e8c1406dcf0ea6
撮影は、2024年4月1日です。
撮影時とはちがうでしょうが、やはりこういう古い建物はいいですねと、無責任な旅行者はつい考えてしまいます。
Bill McCrearyさん、画像アップいたしました。
作業遅れまして申し訳ありません。
このお店、現在はなかなかの佇まいとなっていますね。
入るのに少々勇気がいりそうな……といいますか、そもそも自分の身体を無理やり入れたら自転車が上から落ちてこないか心配になります。
脇に貼られたSECOMのシールがギャップ萌えですね。