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『OSS117/東京の切り札』 Atout coeur à Tokyo pour O.S.S. 117 (1966)

Atout coeur à Tokyo pour O.S.S. 117

作品メモ

ちょっと昔の日本で撮影された外国映画シリーズ。
ひとつ前のエントリー『Stopover Tokyo』(1957)に続けて『007は二度死ぬ』(1967)といきたいところですが、こちらはWikipediaを見たらロケ地が詳細に解明されていたのでパス。
代わり?にそれより一足早く日本を舞台にしたこの作品をチェックしてみます。

少し前WOWOWで『アーティスト』のジャン・デュジャルダン主演の『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』(2006)や『OSS 117 リオデジャネイロ応答なし』(2009)といったお○カな映画を楽しんだばかりでしたが、そのパロディ元といいますか、オリジナルのスパイ映画シリーズですね。
『東京の切り札』はシリーズ4作目。
主演がちゃんと来日してそれなりにしっかり作っていますが、007ほど知られていなかったためか、あるいは「なんちゃって日本」がブレーキとなったか、日本では未公開、ビデオ化もなし。
フランスでは数年前にDVDが出て今でも入手可能です。

日本語字幕はありませんし、フランス語はわからないので、私の解説はアテにならないと思います(汗)。
この手の映画は紹介しているサイトがいろいろあると思いますので、詳しい物語等はそちらをぜひご覧になってみてください。

余談ですが、旧シリーズを見てからジャン・デュジャルダン版を見ると、ミシェル・アザナヴィシウス監督がとてもよく旧作を研究して、忠実に再現していることがわかります。
こだわり度合いはもはやオタクのレベル。
そういえば『アーティスト』もサイレント映画の再現度やこだわりがハンパなかったですね~。
どれもパロディにして楽しむというよりは、そういった映画のノリそのものが好きでたまらないという感じがあふれていました。
『アーティスト』がフランス映画なのにアカデミー賞の主要部門を射止めることができたのも、そんな映画に対する愛情が共感を得たからかもしれません。

キャスト&スタッフ

コードネームOSS117ことユベール・ボニスール(Hubert Bonisseur)にフレデリック・スタフォード。
ヒロイン、エヴァ・ウィルソンに『哀愁のパリ』のマリナ・ヴラディ。
その夫ジョンに『突然炎のごとく』のアンリ・セール。
敵ボス役に翌年の『冒険者たち』で日本人実業家役でちらりと登場したヴァレリー・イキジノフ。
日本の俳優さんは、吉村実子さん、二本柳寛さん、南廣さんなどが日本側のエージェント役で活躍しています。

監督はこの後『個人教授』や『さらば夏の日』を撮るミシェル・ボワロン。
原作ジャン・ブリュース。
脚本は「ファントマ」シリーズのピエール・フーコーと初期007シリーズの監督テレンス・ヤング。
撮影マルセル・グリニヨン、音楽ミシェル・マーニュ。

ロケ地

IMDbでは、

Fondation Maeght, Saint-Paul-de-Vence, Alpes-Maritimes, France
Kyoto, Japan
Tokyo, Japan

1966年ともなると、東京オリンピックも無事終了、いよいよ高度成長まっしぐらの日本。 街並みは一見クレージーキャッツや社長シリーズなどに近い雰囲気ですが、古式ゆかしい場所の多くは京都で撮影されているようです。
東京も京都もごっちゃになった圧縮効果によって、なまじ場所が把握できる日本人にとっては悩ましいカオスが形成されています。
以下、気になったところだけメモ書き。

羽田空港

空港ターミナル前の赤い鳥居という、外国の方が大喜びの構図。
確かに昔の羽田にありましたね。
鳥居だけぽつんとあるのが不思議ですが、本来は空港近くの穴守稲荷のもの。
穴守稲荷は戦後すぐ米軍の接収に伴い現在の位置へ移転しましたが、鳥居はいろいろあってそのまま。
1999年にようやく弁天橋近くに移されていますので、映画に登場したのはもちろん移転前。

現在の位置はこちら。

首都高速

浜崎橋ジャンクションW(カメラ西向き)。

車は羽田から都心に向っているという設定でしょうけど、実際には羽田に向って走ってます。

日本庭園

景観的にまた京都洛東あたりの料亭かと思いましたが、よく見たら違うかも。
調査中。

川縁

もし京都だとすると、哲学の道あたりの雰囲気に近いような気がします。
おそらくこの↓あたりかと思いますが、次に京都に行ったとき確かめてみたいですね。できれば桜の時期とか。

塀の中はスタジオセットであることがありあり。
外観に使われたのは個人の住まいでしょうから、もし見つけたとしても中を覗いたり門を開けたりなどなさらないようお願いします。

渋谷

車は東急文化会館脇の高速道路(首都高速3号渋谷線)を都心に向って走って行きます。

奥手に代々木の競技場も見えていて、なかなか良い構図です。
次のショットでその下をもう一度走行しますが、これは東京タワーを見せるためでしょうか。

浅草

雷門、仲見世、浅草寺など。

トラック

なぜかいきなり「の魅力」と書かれた「なんちゃって仕様」のVWピックアップトラック。
トラックがスタートするのは上記川縁の門のあたりですが、次のショットで川を渡るのはすぐ南側、車の向きとは逆方向にあるこの橋(カメラ南向き)。

▼21/4/18 追記
Bill McCrearyさんから画像を提供していただきました。
今年(2021年)3月に京都を訪問された時のものとのことです。
映画ではトラックはこの橋を手前に向かって渡っていました。

Bill McCrearyさんはこちらの画像を含む旅行記をご自身のブログにアップされていますので、ぜひご訪問ください。

ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
京都の桜(2021年3月)(哲学の道-5)(6)
https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/302e6f3158f0fc99e62225a2b7764e17

大きな橋

その後トラックが渡る大きな橋。
懐かしい薫りがするトヨペットサービスセンターの建物が特徴的。場所は調査中。

※15/11/20追記
コメント欄でいびやまさんから情報を寄せていただきました。
「国道1号線の酒匂川橋を小田原から東京方面へ走行している」とのことで、場所はこちら↓

おみごと大正解です 🙂
空撮画像でも、当時のトヨペットサービスセンター(ドライブイン)の建物を確認できました。
現在はトヨタカローラ小田原店になっているようですね。

いびやまさん、どうもありがとうございました。

富士山の見える坂

やっぱり富士山は欠かせませんね。
祝世界文化遺産登録(ほぼ決定)。

おそらく西側、富士宮市あたりからの眺めに見えます。
参考位置。

夜の橋

道頓堀?

夜の大通り

車が行く夜の大通り。 左側に不二家が見えますので、おそらく数寄屋橋。晴海通りを東南向き。

不二家は昔のビル。
右側奥に三愛ドリームセンターの三菱の広告が見えます(63年完成)。
いったん停まってからスタートしたショットで背景に見えるのが、おそらくその三愛ドリームセンター。

旅館

桜が咲いているお風呂場で、関取と対決するところ 😀 。
「なんちゃって日本」的には、この場面がクライマックスでしょうか?
内部はセットだとして、入口外観は京都でしょうか。

カーチェイス

五重塔が見える急な坂道をバイクで爆走する場面。
『サヨナラ』『Stopover Tokyo』でも登場していた法観寺、八坂の塔Wの周辺ですね。
ここらあたりでカーチェイスシーンというのは珍しいかも?
光の方角を見ると早朝ではなく夕方の撮影のようですね。よく撮れたものです。

法観寺・八坂の塔

まさにこの道も登場します。

Photo from Wikipedia (public domain).

 

追跡

アンリ・セールの乗ったタクシーを南廣さんが追跡するところ。

南座

わかりやすいのが四条通、南座前。車は西向き、カメラは南東向き。

やはりこういう建物は撮りたくなるのでしょうか。

平安神宮

その直後到着したのがまたしても平安神宮。
これも撮りたくなるような物件なのでしょうね。

この先南廣さんが残念なことになる境内の場面は、平安神宮ではなさそうです(調査中)。

誘拐

エヴァが誘拐されるのは、いかにも京都の撮影所っぽいですね。
たとえば現在の東映太秦映画村はこちら。

黒い門

救急車が入っていった門。
「名勝渉成園」とはっきり読めます。

渉成園W


大きな地図で見る

中は別の場所(調査中)。

ヨコタの住まい

IMDbのリストにあるこちら。
Fondation Maeght, Saint-Paul-de-Vence, Alpes-Maritimes, France

Fondation Maeght(フォンダシオン・マーグ)W
http://www.fondation-maeght.com/

ロケ地マップ


より大きな地図で (ちょっと昔の)日本が舞台の外国映画 を表示

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昔の日本が舞台の外国映画

資料

更新履歴

  • 2021/04/18 「トラック」Bill McCrearyさんの画像を追記 マップ情報更新
  • 2015/11/20 「大きな橋」追記

コメント

  1. いびやま より:

    初めまして 突然失礼いたします。 お書きになられている 「大きな橋」、 これは国道1号線の酒匂川橋を小田原から東京方面へ走行しているものと思います。 背景に出てくるトヨタ・ドライブインは、今から53年位前(笑)父親と箱根方面へドライブする際に必ず立ち寄った場所でした(第3京浜・東名が完成すると、1国を走ることは全く無くなりましたが)。 もし既に解明済みでしたら無視してください。

  2. 居ながらシネマ より:

    いびやまさん、いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
    こちらで間違いないですね。お見事大正解です。おかげさまでスッキリしました。
    現在は普通のトヨタカローラ店のようですが、当時はドライブインだったのですね。
    東名高速の登場で1国の役割が変わっていったのと同様に、こちらのお店の役割も変わっていったのかもしれませんね。

  3. Bill McCreary より:

    3日前にゴダールのWikipediaを見ていましたら、


    1966年4月28日、初来日する。ミシェル・ボワロン監督の『OSS117/東京の切札』の撮影のため滞日中のマリナ・ヴラディと会い、次回作の出演を依頼すること、『カイエ・デュ・シネマ』の依頼で羽仁進と今村昌平にインタビューすることが主な目的だった

    とありまして、


    5月4日 依田義賢の案内で満願寺の溝口健二の墓参り。
    東山の料亭で撮影中の『OSS117/東京の切札』のロケ現場を見学。

    とありますね。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AB

    ゴダールが溝口の墓参りをしたのは知っていましたが、マリナ・ヴラディを追っかけていたのは知りませんでした。それでその時の日程が、


    柴田駿、白井佳夫「ゴダール監督の日本の10日間」 『キネマ旬報』1966年6月上旬号、50-54頁。

    をもとにしているというので、原典を当たるとなかなか面白い情報もあるかもです。ロケ現場には、やはりヴラディもいたんですかね? すみません、未見ですのでめったなことは言えません。

    ところで浜美枝とゴダールが面会しているのは、やっぱり007の関係でしょうか。たぶんそうでしょうが、ゴダールと娯楽映画の権化のヒロインが会わされるというのも、いまとなっては「?」なところはあるかと思います。

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