目次
作品メモ
このところ昔の日本で撮影された外国映画を続けていますが、今回は『サヨナラ』で少し触れた『トコリの橋』。
『サヨナラ』同様ジェームズ・A・ミッチェナー原作による朝鮮戦争時の物語です。
ロマンス中心だった『サヨナラ』に対し、こちらは海軍ジェット機編隊の戦いがメイン。
パイロットたちがつかのまの休息を日本でとった後、ふたたび戦地に赴き、作戦を遂行する姿が描かれます。
初代『スターウォーズ』が登場したとき、凄まじい対空砲火をかいくぐって繰り返し目標を攻撃する様子が「『トコリの橋』のようだ」と例えられていました。今見返してみると、事前のミーティングの様子も似ている感じがします。
映画の見どころのひとつがそうした手に汗握る橋の攻略場面であることは確かですが、一方で自国から遠く離れた戦地で命を賭して戦う軍人たちの孤独や苦悩もきちんと描かれています。
ご覧になった方はおわかりの通り、特に後半の展開はかなりシリアス。
昔からテレビで何度か見てきましたが、見るたびに終わって思わず「う~ん」と腕組みして考えてしまいました。
一方日本が舞台となる前半部分は、コミカルな場面もあってなごむことができます。
ウィリアム・ホールデンとグレイス・ケリーが日本の温泉につかるというとてもレアな絵が見られるのもこの映画。
その後の展開が「なんちゃって日本」モードとなりかけますが、「裸のおつきあい」的微笑ましい場面に仕上がっていて、このくらいの勘違いは「ま、いいか」でしょうか。
キャスト&スタッフ
米国海軍ハリー・ブルーベイカー大尉にウィリアム・ホールデン。弁護士をしていたのに朝鮮戦争で海軍に戻ったという設定です。
その妻ナンシーにグレイス・ケリー。
しょっちゅうトラブルを起こすものの憎めないキャラ、マイクにミッキー・ルーニー。
マイクがご執心の日本女性キミコに淡路恵子。
ジョージ・タラント提督にフレドリック・マーチ。
監督マーク・ロブソン、撮影ロイヤル・グリッグス、音楽リン・マーレイ。
トコリ?
映画に描かれた橋の爆撃計画とヘリコプターによる救出作戦については、Wikipediaにこうあります。
Michener based his novel on actual missions flown against rail bridges at Majon-ni and Samdong-ni, North Korea, in the winter of 1951–1952, when he was a correspondent aboard the aircraft carriers Essex and Valley Forge. The rescue attempt at the climax of the novel and film was a composite of a pair of unrelated rescue attempts on February 8, 1952, both in the vicinity of Wonsan, with the second involving a propeller-driven Douglas AD Skyraider off the Valley Forge shot down bombing the railroad bridges at Samdong-ni. However, while the downed aviators in the second attempt were initially listed as “Missing in action”, they survived the incident but were captured by North Korean soldiers.
「トコリの橋」爆撃作戦は実際の作戦を基にしたフィクションだとして、昔から疑問だったのですが「トコリ」という地名。
タイトルのハングル表記は、”원한의 도곡리 다리”。
“도곡리”をGoogleマップで検索するといくつも出てきますので、珍しい地名ではなさそう。
またこちら↓は1976年10月22日の東亞日報テレビ欄ですが、ここでは「怨恨의道谷里다리」。以前の漢字表記ではこうなるようです。
ロケ地
IMDbでは、
Fujiya Hotel, Miyanoshita, Hakone, Kanagawa, Japan (exterior)
USS Oriskany, Pacific Ocean
Yokosuka, Kanagawa, Japan
日本の場面は多くが別撮りに見えますが、中にはウィリアム・ホールデンたちが実際に来日していることを示すものもあります。
ただ残念ながらグレース・ケリーはスクリーン・プロセスやセット撮影がありあり。
空母
空母サヴォ号(Savo Island)として撮影に使われたのは、オリスカニー(Oriskany)W。
Wikipediaでは、他にキアサージ(Kearsarge)Wの名前もあります。
軍港
横須賀。
ホテル(外観)
『双頭の殺人鬼』でも登場した老舗、箱根宮ノ下の富士屋ホテル。
そこでも書きましたが、1952年6月まで進駐軍に接収されていました。
http://www.fujiyahotel.co.jp/ja/history/
車がくぐる門
『Stopover Tokyo』(1957)でも登場した、東京、芝大門。
同じ様に車は増上寺の方からやってきます(カメラ西向き)。
車が通る道にこういう門がかかっているというのは、かなりエキゾチックに映るのでしょうね。
MP
マイクを引き取りに来たところ。
これまで合成が続いていましたが、この場面はウィリアム・ホールデンが実際に来日していたことが確認できます。
具体的な場所ですが、建物を出るとき「東京美術倶楽部」という表札が見えます。
芝大門から数ブロック北のこちら↓。goo地図で当時の建物を確認できます。
オフィシャルサイトの沿革に画像がありました。
http://www.toobi.co.jp/about/history.html
平成3年(1991年)に現在のものに建て替えられているようです。
ショウボート
Wikipediaによると新橋に実在したお店。名前は聞いたことがありましたが、画像を見るのはこの映画が初めてだったかもしれません。
場所ですが、ロングショットで右手奥にドームを戴いた建物が見えます。
これは『東京暗黒街・竹の家』でチェックした三井銀行新橋支店。
したがってお店はこの位置。
カメラは国鉄の線路脇、当時あった橋のたもとあたりで、東南向き。
余談ですが、goo地図で昭和38年の状態を見ると、首都高はまだ建設中だったりしますね。
3人が出てきたショウボートの裏通りも実際に日本の路地と思われますが、場所は不明。
ロケ地マップ
より大きな地図で (ちょっと昔の)日本が舞台の外国映画 を表示
関連記事
昔の日本が舞台の外国映画
- 『Mishima: A Life In Four Chapters』 Mishima: A Life In Four Chapters (1985)
- 『OSS117/東京の切り札』 Atout coeur à Tokyo pour O.S.S. 117 (1966)
- 『Stopover Tokyo』 Stopover Tokyo (1957)
- 『ゴースト・イン・京都』 The House Where Evil Dwells (1982)
- 『サヨナラ』 Sayonara (1957)
- 『ザ・ヤクザ』 The Yakuza (1974)
- 『トコリの橋』 The Bridges at Toko-Ri (1954)
- 『ブラック・レイン』 Black Rain (1989)
- 『モスクワわが愛』 Москва, любовь моя (1974)
- 『双頭の殺人鬼』 The Manster (1959)
- 『惑星ソラリス』 Солярис (1972)
- 『東京ジョー』 Tokyo Joe (1949)
- 『東京ファイル212』 Tokyo File 212 (1951)
- 『東京暗黒街・竹の家』 House of Bamboo (1955)
- 『歩け走るな!』Walk Don’t Run (1966)
- 『追撃機』 The Hunters (1958)
コメント