『Mishima: A Life In Four Chapters』 Mishima: A Life In Four Chapters (1985)

作品メモ

ひとつ前のエントリー『幸福号出帆』は三島文学の映画化でしたが、その三島由紀夫氏を正面から描いた日米合作映画がこちら。
製作総指揮フランシス・フォード・コッポラにジョージ・ルーカス、監督ポール・シュレイダーと錚々たるメンバーが製作に関わり、出演者も緒形拳、坂東八十助、三上博史、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行、烏丸せつこ、池部良等々ずらり揃っていましたが、日本ではいろいろあって公開は見送り。放映もソフト化もなく幻の映画となっています。
見られないとなると逆に興味を惹かれ、米盤VHSに手を出した方も多そうですね。
ジャケットの緒形拳さんがインパクトありすぎでした。

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結局本邦では公開されなかったのに、日本語版Wikipediaでは『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』とカタカナ書きのタイトルを項目名にしています。ちょっと迷いましたが、このエントリーでは、未公開で日本での放映やソフト化もないことを示す意味でも、英語原題をそのままエントリータイトルとしようと思います。
もしカタカナ表記が日本での正式タイトルとして正しく存在するなら修正しますので、ご存じの方ぜひ教えてください。

物語は、1970年11月25日、つまりちょうど50年前の今日、あの事件の日の朝から始まり、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決を遂げるまでの時系列を軸に、タイトル通り、3つのチャプター(三島文学からピックアップ)と、1つの自伝的内容のチャプターの計4つのチャプターが連なり有機的に重なり合うという凝った構成になっています。

ドキュメンタリー的な描写もありますが、映画では一応注意書きが以下のように示されます。まあそりゃそうでしょうね……

Yukio Mishima is acknowledged to have been a real person, but his acts have been fictionalized by writers. Other persons and events in this film are fictitious. Any similarity to actual persons and events is unintentional.

一方でリアリティからは離れていかにもセット然としたパートも見られますが、複雑な対象に様々な手法で迫り、1本の映画に昇華しようとした作り手の努力は、十分に感じられる映画かと思います。

スタッフ、キャスト、事の成り行きなど詳しい話は、例えば日本語版Wikpediaなど他の資料をご覧になってください。

聖セバスチャン

▼20/11/30 項目追加
映画の中で登場する《聖セバスチャンの殉教》のイメージですが、milouさんからメールでいろいろと情報を寄せていただきました。

まず、まとまった記事としては、こちら↓が参考になるかと思います。

横浜美術館ブログ > 篠山紀信展 学芸員コラム vol.6 「聖セバスチャン」の奇跡 上
https://yokohama.art.museum/blog/2017/02/-vol6.html

この写真、映画では細江英公氏による「薔薇刑」に含まれているような印象となりますが、実際には撮影は篠山紀信氏。

1968年11月に刊行された澁澤龍彦責任編集の雑誌『血と薔薇』の創刊号で、5人の写真家によるグラビア特集「男の死」の冒頭を飾りました。三島の生前に世に出た貴重な一枚です。

とありますが、milouさんはその創刊号をお持ちとのことで(凄い)、目次他の画像を提供していただきました。 権利的にちょっとアレかもしれませんので、写真の方はひかえて目次の方を拡大画像なしでご紹介しますと……

By milou

こちら↓はmilouさんによりますと、「たまたまウイーンに行ったとき手に入れた。聖セバスチャンに関する美術展のチラシ」とのこと。チラシですし一部画像なので、こちらは紹介させていただきます。

上掲ブログでも紹介されてる通り、篠山紀信氏によるこの写真は、写真集「男の死」として上梓されるはずでしたが、例の事件で世に出ることがなくなりました。
それが没後50年の今年(2020年)ようやく日の目をみたようです。

まず9月になぜか海外で先に出版されました。
“Yukio Mishima: The Death of a Man”
0847868699

続いて国内版が、命日である11月25日に出たようです。
タイトルは『OTOKO NO SHI』。
B2判という巨大仕様で、お値段なんと税込55万円 \(◎o◎)/

紹介記事↓

ロッテルダム映画祭での上映

▼20/11/30 項目追加
コメント欄(2020年11月28日 22:06)でmilouさんから情報を寄せていただきました。
この映画、2000年のロッテルダム映画祭で上映されたとのことですが、プログラムガイドでも、中々上映されないレアな作品と紹介されているようです。

こちら↓はタイムテーブル。  

『Mishima』も気になりますが、『Ghost in the Shell』と同日の『Godzilla versus the Netherlands』ってなんじゃらほい。
それはともかく、前項目と合わせて、貴重な資料ありがとうございました。

ロケ地

IMDbでは、

Japan
Tokyo, Japan

で役に立ちません。

例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

自宅

某所にあるホンモノです。
現在も残っていて、表札にまだ故人の名前が記されています。
当然ですが、マップでは略。

建物の全貌や内装などは、篠山紀信さんが撮影したこの本で知ることができます。

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クルマに乗って出かける外の道路もホンモノの場所。

市ヶ谷駐屯地

あのバルコニーのある建物は今でも残っていますが、これはさすがに現地での撮影は無理。
撮影に使われたのは福島県のこちら↓です。

郡山合同庁舎(旧郡山市役所)

映画では少し意匠を加えていますね。
ここへは(ロケ地探訪とは別件で)行ったことがありますので、すぐに判明しました。えへん、とちょっと自慢。

映画のラスト、いよいよの瞬間、『豊饒の海・奔馬』の最後の一文がシンクロするように引用されます。

日輪は瞼の裏に赫奕と昇つた

『青春の蹉跌』の「蹉跌」もそうですが、「赫奕(かくやく)」もまたこの一節があまりにも有名で、覚えたところで他では恥ずかしくて使えないという、ちょっとやっかいな単語となっています。

資料

更新履歴

  • 2020/11/30 「聖セバスチャン」「ロッテルダム映画祭での上映」項目追加
  • 2020/11/25 新規アップ

コメント

  1. milou より:

    この映画はロッテルダム映画祭で
    2000年 2月2日 19:30から LUXOR で見ました。
    自分が見ているから “幻の映画”という強い意識は
    なかったが映画祭プログラムガイドの作品紹介にも
    Seldom seen on the big screen these days.
    とあり、すでに外国でも見る機会はまれだったようです。
    映画の内容はほとんど覚えていなかったが、やはり
    舞台装置というか演劇的なセットの印象が強く
    当時の僕の評価は高かったです。
    (沢田研二と李礼仙と言えば「唐版・滝の白糸」を思い出す)
    ちなみに映画にも出てくる『憂国』も当然ATGの
    封切り時に見ています。『小間使いの日記』の併映でした。

    ロッテルダム映画祭は素晴らしい映画祭で、
    この年は 1月26日から 2月6日までの 12日間で
    全期間参加して毎日 10時から夜の 12時まで 5,6本、
    全部で 63本見た。だからロッテルダムに2週間いたのに
    映画館とホテルを往復するだけで街の記憶すらないという
    異常な旅行(?)でした…

    この年は深作欣二特集もあって『MISHIMA:』と同じ日に
    『やくざの墓場』も見ている(本人も来ていて少し話せた)。

  2. 居ながらシネマ より:

    milouさん、コメントありがとうございます。
    別途画像もいつもありがとうございました。明日の夜には作業できると思いますので、もう少しお待ちください。
    そういえばこの映画、舞台っぽいところが「憂国」っぽいですね。
    と思ったら、『憂国』が『小間使の日記』と併映とは全然知りませんでした。短いので洋画の配給と組み合わせたのでしょうか。濃い組み合わせですね。

    ロッテルダム映画祭のお話しもいろいろ凄いですね。『やくざの墓場』や『仁義の墓場』ならようやく時代的に話についていけます(笑)
    ただ外国行っても映画館とホテルの往復って、milouさんなら通常運転で全然異常な旅行ではないような……

  3. milou より:

    あまり関係ない話だが、三島の没後50年でもあり
    芸術新潮 12月号(11月25日発売)は三島由紀夫特集。
    映画については四方田犬彦氏が書いているが、
    わずか2ページで、やはり三島が出演した
    『からっ風野郎』『人斬り』『憂國』だけで
    『MISHIMA:…』には触れていない。
    なお大島渚の『儀式』に出演予定だったとか…

  4. 居ながらシネマ より:

    milouさん、コメントありがとうございます。返信遅れてすみません。
    没後50年ということで、拙サイトも頑張って当日3本アップするという無茶をやりましたが、おかげでその後サイトを見ている時間を作れないでいました。
    実は『からっ風野郎』も書きかけたのですが、さすがに力尽きました(笑)。ロケ地チェック的には面白い映画なので、いつかとりあげようと思います。

    本エントリーも、おかげさまで貴重な情報と画像が詰まったコンテンツとなりました。
    最近なかなか書店へ行けないのですが『芸術新潮』もチェックしてみます。
    それにしてももう50年前のことなのですね。自分はまだ子供でしたが(ホント?)、家が朝日新聞をとっていて、衝撃的なスクープ写真は記憶に焼き付いてしまっています。

  5. Bill McCreary より:

    この映画のDVD、ニューヨークの紀伊国屋書店にありまして、速攻で買っちゃいました。で、それ以前の時代に、なぜか自宅近辺のレンタルビデオ屋にこの映画のVHSがありまして、それどう考えても法律上やばいのですが、私も嬉々として借りてしまったという黒歴史があります。

    さて今年、三島と東京大学の全共闘との討論を記録した映画を観ましたが、このくだりは、この映画でもありましたね。

    https://gaga.ne.jp/mishimatodai/

    ソフトが手元にないのでうろ覚えになりますが、たしか三島(緒形拳)が、大要「君たちになくて僕にあるものが1つある。それは天皇というジョーカーだ」というセリフがありまして、その1年後に三島が自殺したことを考えると、天皇はなんら三島にとってのジョーカーではなかったのだなと思いました。大島渚監督も、三島が訴えたい相手は、つまりは天皇だったのだろうと書いていました。

    >朝日新聞をとっていて、衝撃的なスクープ写真は記憶に焼き付いてしまっています。

    あの写真ですね。私もこの事件を調べていて、あれにはさすがにぎょっとしました。

    ところでこの映画については、ご存知かもですが、撮影を克明に記した本が出ています。

    https://www.amazon.co.jp/dp/4870310236/

    これを図書館で読むことができまして、例のクライマックスシーンのロケ地も知ることができました。

    以下まったくの余談です。

    この記事でも取りあげられている『青春の蹉跌』は『モスクワわが愛』とカップリングでして、当時ですからたぶん『モスクワわが愛』のほうがメインの映画だったのでしょうが、現在の視点では、萩原健一のほうが後世に残ったのかな・・・という気がします。

  6. 居ながらシネマ より:

    Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
    さりげなくレンタルしてしまうお店というのも、なかなかですね 公開されたなかったということで、逆に需要が出てきた様な気もします。DVDも良いお土産になりましたね。

    東大全共闘白熱教室(笑)の場面は「MISHIMA」でも結構臨場感たっぷりにうまいこと撮れていたと思いますが、記録映画のほうも面白そうですね。ソフトか配信になったら是非見てみたいです。
    きっと学生たちの集中砲火を浴びているようでいて、実はけっこう嬉々として、あるいはウットリしていたのではないかと勝手に思っていますが、それがどうして最期ああなっちゃったのか、いまだに腑に落ちないものがあります。
    (朝日新聞の写真、当時ホントにドキっとしました。「鬼滅の刃」みたいな漫画やアニメならともかく、モザイク入れてよという感じです……)

    余談ですが、本日当サイトのサーバーを移転しました。結構表示が速くなったと思いますので、また今後もぜひお気軽にお立ち寄りください。

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