作品メモ
ひとつ前のエントリー『非行少女』(1963)と同様、内灘町の米軍試射場跡が登場する映画です。
あちらが日活の新星監督による60年代前半の映画なら、こちらはいかにもATG的たたずまいの作品。
並べてみると同じ場所で撮っているとは思えないタッチの違いがあります。
私的にはこの映画、ワケわからめで本来ならとても苦手な作品のはずですが、なぜか昔から名画座にかかると「ぴあ」片手に良く見にいっていました。
主人公の青年に石橋蓮司。どうやら棒高跳びの選手だったようですが、今では気ままに旅をしながら、ヤワそうな人たちから喝上げして暮らしてます。
途中で出会ったカップルに桃井かおりと加納典明。2人は聴覚障碍者という設定でセリフがありません。桃井さんはこの年映画デビュー。写真家として知られる加納さんは、これが数少ない出演作の最初の一本。
自警団風の連中のひとりに蟹江敬三。
緑魔子も凄い役で登場していますが、蓮の池の場面では昔名画座で見ていて笑いが必ず起きました。
他に蜷川幸雄の名前がありますが、どこに出てましたっけ?
監督・脚本、清水邦夫・田原総一朗、撮影奥村祐治。
ロケ地
主なロケ地は石川県。能登半島の西側の海岸線のようです。
蓮司さんが降りた駅
駅名がはっきり写ります。
北陸鉄道能登線、三明(さんみょう)駅W
http://ycp.jp/hokutetn.files/hokuten1.htm
1972年に廃線、廃駅。
映画の最後の方で列車の前に3人が乗っているショットがありますが、もしかすると廃線が決まっていてサービスでそんな絵を撮らせててくれたのかもしれませんね。
駅舎ももうありませんが、道路と並行して広い幅で空き地となっている部分が駅だったところと思われます。
「日本人の心のふるさと 日本海へようこそ」の裏で女子学生がもめていたのは、道路と線路の間ですから、このあたり。
アーケード
誘った主婦の狂言で住人にボコられた蓮司さん。
その前に賑やかなアーケードを歩いていましたが、町の男衆が「近江町市場」の印が入ったものを着ているので、おそらくぴょんと金沢にワープしてこちら。
※18/10/15追記
Bill McCrearyさんから近江町市場の画像を提供していただきました。
他にもご自身のブログに多くの画像をアップされていますので、ぜひご訪問ください。
ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学) > ちょびっと金沢に行ってきました(美女編)
2018年撮影のホヤホヤの画像ですが、アーケードの様子など今も変わっていないようですね。
ありがとうございました♪
留置場
金沢あたりの洋館でしょうか。
不明
駅前
蓮司さんがバンドをやとってワケがわからない演説をするところ。
おそらく国鉄(当時)七尾線羽咋(はくい)駅。
鉄塔はもうありません。
廃墟
後半の舞台となる海岸の施設。
内灘闘争で知られる米軍砲弾試射場のもので、砂に埋まったカマボコのようなものは弾薬庫跡。
『非行少女』で和泉雅子さんが秘密基地にしていました。
弾薬庫はすでに撤去されていますが、内灘海水浴場のだいたいこのあたりにありました(以下マップ情報は『非行少女』からの転記)。
昔の空撮写真でなんとか確認可能です。
- 電子国土Web.NEXT(ライブラリーの「写真1974~78年」にチェック入れる) ……70年代でも弾薬庫は確認できます
- 国土交通省地理院 地図空中写真閲覧サービス MCB625-C3-3(1962/05/19)
- 同・画像直リンク
- 国土交通省地理院 地図空中写真閲覧サービス MCB734-C3-5(1973/05/15)
- 同・画像直リンク ……画像左上。比較的鮮明
その他米軍試射場跡のマップ情報は、下の「ロケ地マップ」と、『非行少女』のエントリーをご覧ください。
ロケ地マップ
石川県を舞台にした少し昔の映画のロケ地マップ
資料
更新履歴
- 2018/10/15 「アーケード」にBill McCrearyさんの画像を追加
- 2014/11/16 新規アップ
コメント
>他に蜷川幸雄の名前がありますが、どこに出てましたっけ?
下の本によると、「厚生省薬物部の男」だそうです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4845991926
といっても私もこの映画は未見なので(題名は昔から知っていますが)、具体的にはよくわからないのですが、ネットでストーリーを追うと、ラストのあたりの
出演ですかね。
彼のWikipedia記事を読むと、意外とおそくまで俳優活動していたんだなと思いました。私が思い出すのは、「Wの悲劇」の演出家役ですが、でもあれ役名が「安部幸雄」なんですよね(苦笑)。ついでに、加納典明氏も、スチールを担当しています。これは当然か。
>1972年に廃線、廃駅。
先日まもなく廃線になる三江線に乗りましたが、やはりこれでは廃線も仕方ないかなあと思う感がありました。廃線直前の鉄道にはよく乗りますが、(当然ながら)「もったいない」と思ったことはいまだありません(苦笑)。もちろん写真としてよさそうだとか映像としてはでしたら「もったいない」のもほどがあります。石川県の廃線では、のと鉄道能登線に、廃止直前に乗ったことがあります。ちょうどその日、福岡で大地震がありました。
ところで貴サイトは、日本映画はATG映画を多く取り上げておられますね。私は、ATG映画は、大島渚監督作品などのほかはまだまだ未開拓ですので、そろそろ本格的に観ようかなと考えています。上の本は91年に発売されて、92年の「濹東綺譚」でATGは活動を停止したわけで、それからでももう四半世紀を超えた年月なわけですが、セットよりロケ中心の映画が多いわけで、確かに貴サイトの趣旨にそぐうかもですね。
Bill McCrearyさん、情報ありがとうございます。
「厚生省薬物部の男」ですか。確かに最後の方にそれらしき人たちが出てくるのでそこだけチェックしてみましたが、皆白衣に白ヘルメット、アップなしなので区別がつきません(汗)。
おそらく5人並んだ時の中心にいる人物だと思いますが……
でも出ていることは確かそうなので、おかげさまでスッキリしました。
三江線いらっしゃったのですね。テレビでいろいろ取り上げられていたので、それで知りましたが、高いところが苦手なので、天空の駅は自分が行っても眺めを楽しめなかったと思います……
ATGを多く取り上げているというのは、意識したことはありませんでしたがおっしゃるとおりかもしれませんね。拙サイト自体が自分の記憶をとどめておく役割もあったりしますので……
それから確かにスタジオセットだけで作った映画は、拙サイトでは原理的に扱えませんよね(笑) ロードムービー、確かに好きです。