L’INDIDATEUR DE POLICE
目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー『サムライ』同様、ジャン=ピエール・メルヴィル監督のノワールな映画。
やはりトレンチコートにソフト帽の世界がクールに展開します。
「いぬ」とはまたシンプルな邦題で、以前チェックしたロシア映画の『こねこ』みたい。
でも頭に「サツの」をつけるとがぜん印象が違ってきます。
「サツのこねこ」といっても何それ?ですが、「サツのいぬ」となるとこれはいけません。
原題のLe doulosについては、冒頭に説明が入ります。
隠語”デュロス”とは帽子のことである
この帽子をかぶる者を、警察とならず者の間で”デュロス”と呼ぶ
警察のいぬを指すのである
VHSでの字幕はこうなっていますが、「この帽子をかぶる者」と言われてもなんだかわかったようなわからないような。
原文はこのようですが……
En argot, « doulos » veut dire chapeau. Mais dans le langage secret des policiers et des hors-la-loi, doulos est le nom que l’on donne à celui « qui en porte un »… l’indicateur de police.
厚めのフランス語辞典をいくつかあたってみましたが、«doulos»という単語そのものは載っていませんでした。
隠語というからには、何かの単語を本来とは別の意味で使っているのか、あるいはまったく創作のことばなのかどちらかと思いますが、後者なのでしょうか。
お話の方もぼーっと見ているとわけがわからずおいてけぼりをくらうかもしれません。
2回見るとようやくわかってきますが、今回久々だったのでやはり2回見ることになってしまいました。
出演は、ジャン=ポール・ベルモンド(シリアン)、セルジュ・レジアニ(モーリス)、ジャン・ドサイ(クラン警視)、ファビエンヌ・ダリ(ファビエンヌ)、モニーク・エネシー(テレーズ)、ルネ・ルフェーヴル(ジルベール)、ミシェル・ピコリ(ヌテッチオ)。
他にレミ役のフィリップ・ナオンは最近のフランス製ホラーでキョーレツな役を演じていますが、IMDbのリストではこれが最初の出演作。
監督脚色ジャン=ピエール・メルヴィル、製作カルロ・ポンティ、原作ピエール・ルズー、撮影ニコラ・エイエ、音楽ポール・ミスラキ。
役名と監督の名前の正しい発音は、こちらの予告編をどうぞ 😉
(※15/8/1動画差し替え)
ロケ地
IMDbでは、
Studios Jenner, Rue Jenner, Paris 13, Paris, France (studio) (studio, and Cotton Club exteriors)
Rue Watt, Paris 13, Paris, France (opening scene: Faugel walking under railway)
Place des Fêtes, Paris Metro, Paris 19, Paris, France (subway)
Saint-Gratien, Val-d’Oise, France (burglary)
Boulevard du Lac, Enghien-les-Bains, Val-d’Oise, France (shootout between police and burglars)
Guerville, Yvelines, France (car falling off cliff)
例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
手持ちのVHSでチェックしていますが、画質がかんばしくありません。
『サムライ』と違って現在DVDが入手しやすいようで、このくらい買えば良かったかと反省しているところです。
タイトルバック
冒頭モーリスが歩いて行く長いガード下。
素晴らしい導入部に、ハートをぎゅっとわしづかみにされます。
Rue Watt, Paris 13, Paris, France (opening scene: Faugel walking under railway)
- Google Maps(SV) ……2008年5月
- Bing Maps(概観図・西向き)
- WikiMapia
ここは『サムライ』でジェフが男と遭遇した陸橋のすぐ北側です。
近年だいぶリノベートされていますが、Google Earthの時間スライダーでさかのぼると、雰囲気を再現できます。
やってきた家
線路際の戸建て。ジルベールが仕事をしています。
カメラはまず遠くにそびえるサクレクールをとらえ、ズームバックしつつゆっくり左へパンして、線路際をやってくるモーリスをとらえます。
場所はサクレクールの見え方から逆算してつきとめることができましたが、冒頭のガード下からは10kmほど北へワープしたところ。
こちらもGoogle Earthの時間スライダーで1949年6月にさかのぼると、だいぶ映画の雰囲気に近づきます。
サクレクールからズームバックしたとき写る給水塔は、1949年6月の空撮ではこの位置↓に確認できます。
この時カメラは南向き。
カメラがパンした後モーリスがやってくるカーブした道はここ。
建物がある側は昔から墓地のようですので、建物自体は別の場所のセットでしょうか。
夜の街
0:23頃
シリアンが地下鉄の階段を降りていくところ。
調査中。
何か標識が見えますが、つぶれて判読不能。
駅
モーリスとレミがメトロに乗ったところ。
車窓の映像で、駅名標示が『サムライ』でも登場したプラス・デ・フェット駅(Place des Fêtes)Wのように見えます。
IMDbのリストにもありますので、おそらく正解。
屋敷
「ヌイイ グルニエ将軍通り86番」とセリフではありますが、IMDbのリストにあるこちら。
Saint-Gratien, Val-d’Oise, France (burglary)
具体的な場所は不明ですが、個人宅っぽいでしょうか。
逃走
0:34
Boulevard du Lac, Enghien-les-Bains, Val-d’Oise, France (shootout between police and burglars)
刑事と鉢合わせたのはこの曲がり角。
Cotton Club
Studios Jenner, Rue Jenner, Paris 13, Paris, France (studio) (studio, and Cotton Club exteriors)
※15/6/28追記
コメント欄でmilouさんから情報寄せていただきました。
Cotton Clubの正面はスタジオのようですが、1:13頃シリアンが車でやってくる場面は、16区のRue du Docteur Blanche 19番地のプールの前。
その後歩きながら手袋をする場面のバックに見える建物はRue de l’Yvette との角。
入っていった通路は28-34番地まである大きな建物の現在パン屋さんの左にある駐車場出口。
この場面どこだか気になっていたので、これでスッキリ。
milouさん、ありがとうございました♪
崖
1:31
Guerville, Yvelines, France (car falling off cliff)
眼下に見える2本の煙突は発電所で、おそらく『突然炎のごとく』で車がダイブする場面や、『若草の萌える頃』で若者が高台で演奏する場面で写っていたものと同じ。
ピアノバー
シリアンが真相を語るところ。
実在しそうですが、不明。
シリアンの住まい
不明。
ロケ地マップ
※17/1/15追加
パリが舞台となる似通ったジャンルの映画をまとめてみました(随時更新します)。
資料
更新履歴
- 2017/01/15 「ロケ地マップ」追加
- 2015/08/01 動画差し替え
- 2015/06/28 「Cotton Club」追記
- 2015/06/21 新規アップ
コメント
この作品も判別できる場所が少なく特に追加することもないのだが…
☆Cotton Club 正面は Studio Jenner の入口を偽装したらしいが、このスタジオは『サムライ』でも使っているので調べるとメルヴィルの個人(?)スタジオだった。だから『賭博師ボブ』でも『ギャング』でも使っているが『サムライ』撮影中に大部分を焼失したとのこと。
しかし調べた情報によると Cotton Club に車で乗り付ける場面は16区のRue du Docteur Blanche でシリアンは車を19番地のプール(?)前に駐める。プールや左の建物は現在もほぼそのまま残っている。
シリアンは(あるはずの)店の正面を通り過ぎ裏口から入るが歩きながら手袋をする場面のバックに見える建物はRue de l’Yvette との角。入っていった通路は28-34番地まである大きな建物の現在パン屋さんの左にある駐車場出口(!?)で左の円柱越しに撮っている。ヌテッチオは21番地の前に駐め店は真向かいなので店は非常に巨大になる。
☆崖は間違いないだろうが新聞記事ではパリの反対側 SUCY EN-BRIE の石切場になっている。
☆メトロも壁面の文字から見て Place des Fetes であることは恐らく間違いないだろうが、不可解な点がある。列車が止まったすぐ左手の壁面に待避用なのかアーチ型の凹みがある。現在の駅の画像にもも凹みは見つかるが基本的にホームの壁面はロンドンのTube ほどアールがきつくはないがチューブ状なのに映画の壁面の凹みはまっすぐになっている。
★またGoofs だが39分過ぎからの車のバック(スクリーン・プロセス)最初に右折したバックの建物と30秒後ぐらいのオーバーラップしたあとの建物はまったく同一。暗さから見ると1時間ぐらい同じ場所を回っていることになる??
ザ・シネマで録画したものなので、ベルモンドが地下鉄に降りるときチラッと見える表示板にMusée Marmottanという文字がはっきり見えます。マルモッタン美術館の最寄駅を地図で探すと、ラ・ミュエット駅が見つかりました。この表示板の指す方向に美術館があります。
4 Chau. de la Muette
doulosという言葉について、
「新約聖書には、”ほかの人に属する者″、又は自分自身の所有権のない奴隷”という意味のdoulosということばが124回出てきます。」
https://www.gotquestions.org/Japanese/Japanese-freedom-in-Christ.html
思うにギリシャ語のδούλοςという言葉がフランス語に入ってきて、聖書に親しんでいるフランス人にとっては、doulosと聞くと、はいはい、あの意味ね、という共通認識があって、この映画のdoulosというタイトルに対しても、警察の「いぬ」ねと分かるのかもしれませんね。我々が刑事モノを観ていて「ほとけ」という言葉が出てきたらその意味がわかるような感じですかね。
ほりやんさん、コメントありがとうございます。
地下鉄の入り口階段、マップで確認できました。
降りてからはわかりませんが、地上部分はここで間違いなさそうですね。
またまたおかげさまでスッキリできました♪
のちほど記事に追記させていただきます。
doulosについてもありがとうございます。
きっと大きなフランス語辞典には俗語として収録されているとは思うのですが、まだチェックしていませんでした。
ギリシャ語までさかのぼれるんですね。
確かにネットで新約聖書を拾ってみると、δοῦλοςとかδοῦλοί とかぽんぽん出てきますね。
たとえば(自分用のメモとして)……↓
https://el.wikisource.org/wiki/%CE%A0%CF%81%CE%BF%CF%82_%CE%A1%CF%89%CE%BC%CE%B1%CE%AF%CE%BF%CF%85%CF%82#6:1
英訳だと、直訳slaveだけでなく、servant of、completely dedicated to などいろいろあって、解釈とか表現が絡むと、横文字同士の翻訳でも難しいものだと思います。
まして日本語では、ですよね~。パウロを「イエス・キリストの奴隷」とは流石に訳せないと思うので、工夫がいりそうです。
それはともかく、現在のフランス人、あるいは欧米人にdoulosといって普通に通じるのかどうか気になります。
最近増えてきた欧米系のインバウンドの人たちに街頭でいきなりdoulosと声をかけて、反応をみてみたくなりますが、自分はアマプラ見るので忙しいので、代わりにほりやんさん、ぜひお願いします(ご無事だったらあとでご報告してください 😛 )。
あまり関係ありませんが、中学の時の英語の先生がなにかの折に、女性にb**とは絶対に言ってはいけない、とマジ顔で教えてくださって、その後しばらくは欧米系の女性を見かけるたびにかえってその言葉がちらついてしまったことがありました
(なにせ中学生ですから……)
でもおかげで、fやnとともに禁忌ワードとしてしっかり刻み込まれたため、今日軽い感じでカタカナ的に使われているのを見ると、ギョッとしてしまいます。
自分もアマプラ観るのが忙しいのでムリムリ。
それにしてもアマプラの古い邦画の充実ぶりにはビックリです。いま私は浜かおる、こと浜川智子の出演映画を観ているのですが、彼女のデビュー作「仲間たち」を観ていたら、出演者の中に藤竜也(新人)とあったので、えっ、まだこのとき新人扱いだったのか、やっぱり芦川いづみさんはえらいなぁ、ということで、藤も出ている佐藤蛾次郎が大活躍する原田芳雄主演の「反逆のメロディー」を観て、お次は、梶芽衣子の「野良猫ロック」を観て…、浜川智子はどうなっとるんや、ですけど、とにかく邦画漬けになっております。
ほりやんさん、アマプラは昔の日活がずらりそろってますよね。
さすがに見ていないものだらけで、監督や俳優名でクリック連鎖を続けていると人生いくら時間があっても足りない感じです。
うっかり有料コンテンツをクリックしないように気をつけねば。
『反逆のメロディー』もありましたか。パラボラアンテナの借景、カッコイイですよね。