『熊座の淡き星影』 Vaghe stelle dell’Orsa… (1965)

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作品メモ

ひとつ前のエントリー『舞踏会の手帖』で、ヒロイン役のマリー・ベルについて触れた際、このタイトルを挙げましたので、次はこちら。

ヴィスコンティ監督が、ソポクレスのギリシャ悲劇「エレクトラ」をベースに、旧家のドロドロを描きます。
物語を完全になぞっているわけではありませんが、母親とその男による父親の謀殺、娘の母親に対する複雑な感情、姉弟の禁断の関係など、イメージはだいぶ重なります。

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キャスト&スタッフ

エレクトラに相当する姉サンドラにクラウディア・カルディナーレ。
60年代の彼女はそれはそれは美しく、モノクロフィルムに残されたその姿は余計に深い魅力をたたえています。
これまでのエントリーで言えば『ブーベの恋人』(63)でも様々な表情をモノクロのアップで捉えられていましたが、これだけの被写体を前にして、引きで撮るなんてありえないのかも。
ヴィスコンティ監督も我慢しきれなかったか、突然ぐい~んと迫るズームアップで捉えます。かと思うと急にズームバックしたりして、つい「お、落ち着いて、伯爵」と声をかけたくなったりするのでした 😇
監督特有のこのカメラワークは特に後年目立つような気がしますが、どのあたりから始まったのでしょうね? 少なくとも前作の『山猫』(63)ではなかったように思いますが。

それはともかく彼女とヴィスコンティ監督の組み合わせは、たぶん以下の4本(年代逆順)。

  • 『家族の肖像』 Gruppo di famiglia in un interno (1974) ……クレジットなし
  • 『熊座の淡き星影』 Vaghe stelle dell’orsa (1965) 
  • 『山猫』 Il gattopardo (1963)
  • 『若者のすべて』 Rocco e i suoi fratelli (1960) 

オレステスに相当するサンドラの弟ジャンニ(Gianni)にジャン・ソレル(Jean Sorel)。これまでのエントリーで言えば『昼顔』のドヌーヴの夫役のひとですね。フランスの俳優さん。

サンドラの夫アンドリュー・ドーソン(Andrew Dawdson)にマイケル・クレイグ(Michael Craig)。リアルではイギリス系オーストラリア人のようですが、映画ではアメリカ人という設定です。

この2人、IMDbで執筆現在、

Jean Sorel … Gianni / husband
Michael Craig … Andrew / Sandra’s brother

と、ジャンニが夫でアンドリューが弟となってしまっていて、これは逆。
IMDbとて完璧ではないのはわかりますが、メインの役柄を間違えているのは珍しいかも?

サンドラたちの母コリンナにマリー・ベル(Marie Bell)。出番は少ないですが、狂気を孕んだ演技は強烈な印象を残します。

義父アントニオ・ジラルディーニ(Antonio Gilardini)にレンツォ・リッチ(Renzo Ricci)。姉弟の父親はユダヤ人の科学者でしたが収容所で死亡。義父となったこの男が母親と財産を目当てに父親を告発したのでは?と姉弟に疑われている人物です。

旧友の医師ピエトロ・フォルナーリ(Pietro Formari)にフレッド・ウィリアムス(Fred Williams)。こちらはドイツの俳優さんのようです。名前が英語風ですが、WikipediaWを見ると本名はFriedrich Wilhelm Löchererとか。

といった具合に、「ヨーロッパ映画あるある」で出演者が各国入り乱れていますが、メインの台詞はイタリア語。おそらくイタリア語ネイティブの人以外は吹き替えられているように見えます。

監督・脚本(共作)ルキノ・ヴィスコンティ、撮影アルマンド・ナンヌッツィ。

各資料で音楽セザール・フランクとありますが、「前奏曲、コラールとフーガ ロ短調」Wのこと。

タイトル

邦題はイタリア語原題の直訳。[1]アメリカでのタイトルはヒロインの名前をとって単に”Sandra”。
原題は、ジャコモ・レオパルディGiacomo LeopardiWの詩”Le ricordanze”の冒頭から。

例えばWikisourceならこちら↓

https://it.wikisource.org/wiki/Canti_(Leopardi_-_Donati)/XXII._Le_ricordanze

Vaghe stelle dell’Orsa, io non credea
Tornare ancor per uso a contemplarvi
Sul paterno giardino scintillanti,
E ragionar con voi dalle finestre
Di questo albergo ove abitai fanciullo,
E delle gioie mie vidi la fine.

イタリア語のニュアンスまでは到底わかりませんが、きっと映画の中身としっかり重なっているのでしょう。

ロケ地

IMDbでは、

Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (all sequences except the opening one)
Geneva, Canton de Genève, Switzerland (opening sequence: party at Sandra and Andrew’s apartment)
Palazzo Inghirami, Piazza Martiri della libertà 1-3, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Palazzo Luzatti)
Palazzo Viti, Via dei Sarti 41, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Palazzo Luzatti)
Porto all’Arco, Via Porta dell’Arco 62-64, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Etruscan gate)
Piazza San Giusto, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Sight shown to Andrew by Gianni)
Chiesa dei Santi Giusto e Clemente, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Churh shown to Andrew by Gianni)
Badia Camaldolese, Stada provinciale volterrana, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Abbey shown to Andrew by Gianni)
Villa Palagione, Palagione, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Corinna plays the piano)
Museo Etrusco Guarnacci, Palazzo Desideri Tangassi, Via Don Minzoni 15, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Gilardini keeps an appointment with Andrew)
Comune di Volterra, Piazza dei Priori 1, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (scenes at the town hall)
Cisterna romana, Parco arceologico Enrico Fumi, Viale Wunsiedel, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Roman cistern)

と詳しいです。資料としてはこれで十分かと。

例によって、IMDbのリストとウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。

パーティー

Geneva, Canton de Genève, Switzerland (opening sequence: party at Sandra and Andrew’s apartment)

移動ショット

場所はジュネーブで、レマン湖のほとりを走っています。

水辺の道1

0:04

最初のショットは信号機のアップからはじまりますが、T字路を左折しているように見えます。
道路標識はこういった↓感じ

         → Annecy
←Paris Lyon  → Chamonix Evian

おそらく湖の南端あたり。
現在信号があるのはこちら↓ぐらいなので、ここかも?

水辺の道2

次のショットは、レマン湖の南西端、ローヌ川に入ったあたり。
こちら↓の橋を北向きに渡っています。

Pont de la Coulouvrenière(クルヴェルニエール橋)W

映画では円柱のようなものがフレームを横切りますが、Wikipediaによれば1970年に橋を拡張した際、柱を取り除いたとあります。
こちら↓はflickrにあった1910年代の写真ですが、中央部分に4本の円柱が立っているのを確認できますので、これが映画で写っていたものと思われます。

水辺の道3

こちら↓の道を東へ移動。

高速

このへんはあまり追究しても……

0:08

舞台となる町はヴォルテッラ VolterraW
設定通りそちらで撮影。

Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (all sequences except the opening one)

最初にクルマでぶーっと通過して、ざっくり紹介されます。

「この町よ」

ちょうどこのあたり↓を走行。

「聖フランチェスコの門」
「下がチェチナの町」
「エトルリアの壁よ」

ここまでがワンカット。

要塞の下

ここでカットが変わり、城壁のような高い壁の下の道をクルマが登ってきます。

これは今までお城だと思っていましたが、要塞のようです。

Fortezza Medicea (Volterra)W

実家

サンドラの実家ルッツァティ(Luzatti)家の邸宅。

入り口外観と内部

0:09

IMDbのリストのこちら↓

Palazzo Inghirami, Piazza Martiri della libertà 1-3, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Palazzo LuzatIi)

館内も、ネットで画像や動画を確認すると、柱が並ぶパティオ部分、サンドラが登っていき家政婦のフォスカと話す階段、多角形のテーブルがあるダイニング、ダイヤ柄の廊下、寝室などすべてこちらと判明しました。

こちら↓はヴォルテッラ観光局の案内ページ。画像を何点か確認できます。

https://volterratur.it/en/poi/inghirami-palace/

「プライベートな物件だが時折公開される」と書かれていますね。

こちら↓の動画でも静止画を確認できます。音楽が大きめに流れますのでご注意。

0:19

除幕を待つ父親の像がある庭。ここら一帯を町に寄贈するというプランのようです。
この場面だけでは分かりづらいですが、ラスト近く1:34あたりで日中の場面があり、そこでは周囲の景色から、上述Palazzo Inghiramiのすぐ南側とわかります。
ガラス戸の裏口からここへ出ることも可能みたいで、庭といってもあながち間違いではなさそう。

マップ位置は「除幕式」参照。

施錠された部屋から先

0:30, 0:51, 1:12

階段登って左手の施錠されていた部屋。
サンドラが扉を開けた瞬間に、上述とは別の建物へワープしています。
IMDbでもう一軒撮影地としてリストにあるこちら↓。

Palazzo VitiW, Via dei Sarti 41, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Palazzo Luzatti)
http://www.palazzoviti.it/palazzo/

この物件は通常であれば公開されていて見学できるようですね。

最初にサンドラが灯りをつけた大きな部屋は、こちら↓のボールルーム(舞踏室)。


その先、メモやら手紙やらを持ち出した奥の部屋は、リアルでは「赤い部屋」と名付けられています。↓

というわけで、映画ではわからなかった壁紙の色は赤でした。

この物件は、映画の中ほど(0:50)、サンドラがアンドリューを伴って入っていく場面でも登場しています。
そこでのコースは、ボールルームのガラス戸を開けてこちらのラウンジ(Salotto del Terrazzo)↓を通過。

その隣が「ママの部屋」という設定。

メッセージが隠されていた時計は、撮影用の小道具でしょうか。

1:12~で医師と義父を招きディナーをする場面で、いったん集まったのもこのボールルーム。
お酒を用意してあったのが上記ラウンジ(Salotto del Terrazzo)。
続くディナーでは、ラウンジの向かい側のダイニングルーム(Sala da Pranzo)が使われます。

夜の街案内

サンドラが奥の部屋に入っている間、ジャンニがアンドリューを案内します。

修道院の跡

0:29

廃墟と化した修道院は、

Badia Camaldolese, Stada provinciale volterrana, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Abbey shown to Andrew by Gianni)
Abbazia dei Santi Giusto e ClementeW

映画では暗くてよくわかりませんが、こうして↓空撮で見るとまさに崖っぷち。
修道僧たちが逃げ出したというのもわかります。

2人が立っていたのは修道院の北西側のこのあたり↓

  • 43.416317,10.849317

こちら↓は映画でアップになった壁面ですが、映画と比べて上の方が失われてしまっていますね。

サンジュスト教会

0:32

修道院からひと山向こうに見えた教会。直線で500mほど南。

Piazza San Giusto, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Sight shown to Andrew by Gianni)

Chiesa dei Santi Giusto e ClementeW, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Churh shown to Andrew by Gianni)

母親の別荘

0:40

Villa Palagione, Palagione, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Corinna plays the piano)
http://www.villa-palagione.com/

見晴台で医師と待ち合わせますが、そこからの眺めは、こちらの西側のものと一致しています。
ピアノを弾いていた部屋は画像では確認できませんでした。

市庁舎

サンドラが遅れてやってきて署名したところ。

Comune di Volterra, Piazza dei Priori 1, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (scenes at the town hall)

Palazzo dei Priori (Volterra)W

古代の水道施設

0:56

サンドラがメッセージに誘われてやってきたところ。

Cisterna romana, Parco arceologico Enrico Fumi, Viale Wunsiedel, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Roman cistern)

WOWOW放映版の字幕では「水道塔」となっていましたが、ローマ時代の貯水槽の遺跡でしょうか。


参考までに、地上の入り口(螺旋階段の上)はこんな↓感じ。

ここからサンドラのように螺旋階段を降りていきます。
高いところが苦手なので、画像見ているだけで怖いです……

映画撮影の際は機材もここから上げ下ろししたのでしょうか?
重量制限とかないのか、急に気になりました。

で、下まで降りるとこんな↓感じ。
見上げると天井にもう一つ大きな穴が空いていて、日が差し込んでいます。ここから落ちたらさあ大変。
でも撮影機材はここからクレーンで下ろせたのかもしれませんね。

ジラルディーニとの会話

1:01
アンドリューが師弟の義父ジラルディーニに会いに来たところ。
エトルリアの博物館でした。

Museo Etrusco GuarnacciW, Palazzo Desideri Tangassi, Via Don Minzoni 15, Volterra, Pisa, Tuscany, Italy (Gilardini keeps an appointment with Andrew)

ひとかかえぐらいの大きさの彫刻がずらりと並んでいますが、どれも四角い箱の上に像が乗っかっている様式で、これは骨壷ですね。
このあたりでだいぶ死を暗示しているように感じてしまいます。

除幕式

「庭」で書いたとおり、実家の建物(2軒あるうちの、入り口が写された方)の南側。
現在公園となっている高台。

こちら↓のSVで、現在金網が設けられている石垣のすぐ向こう側と思われます。そのさらに向こうが実家の建物で、さらに向こうにそびえている塔は、市庁舎のもの。

ロケ地マップ

資料

更新履歴

  • 2021/04/10 新規アップ

References

References
1 アメリカでのタイトルはヒロインの名前をとって単に”Sandra”。

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