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『ロング・グッドバイ』 The Long Goodbye (1973)

ロング・グッドバイ [DVD]

作品メモ

一つ前のエントリー『映画に愛をこめて アメリカの夜』から、言うことを聞かない猫つながり。
映画史上人間様の言うことを聞かない猫様は多々いるかと思いますが(そもそも言うことを聞くようなのは猫じゃないし)、『ロング・グッドバイ』の猫はいかにも猫らしい振る舞いに於いて頂点を極めていて、一度でも猫を飼ったことがある人なら「あるある~」とうなずくこと必至。
しかもこの猫は原作にはない登場ニャン物なので、ポイント極めて高いです。

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) 原作はもちろんレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』。
映画字幕の大家清水俊二さんの翻訳で、黄色い小口のハワカヤポケットミステリーやハヤカワミステリ文庫で親しまれた方も多いかと思います。
ポケミスはいっとき映画のスチルをカバーにしていた時もありました。

ロング・グッドバイ 昔は「長いお別れ」といえば小説、「ロング・グッドバイ」といえば映画と自動的に区別がついたものですが、近年出た村上春樹さんの翻訳本が『ロング・グッドバイ』となったためこの仕分けはあっさり無意味に。
最初に出たとき分厚い単行本なのに書店で平積みコーナーができていて、村上さんの人気に改めてビックリしたものです。
映画の方の『ロング・グッドバイ』は数年前DVDになりましたが、もしかするとこれも村上さんの翻訳本のおかげかもしれませんね。

個人的には、ポケットミステリ- → 文庫 → 文庫の自炊ときて、今はKindleに落ち着いています。都合3回支払っていますが、原作者、翻訳者、出版社にそれぞれ御布施を1回ずつみたいな気持ち。

Kindleのような電子書籍は、何冊でも持ち歩けるというメリットの他に、全文検索が簡単にできるというのもとても便利ですよね。
試しに「猫」で検索してみたら5件ヒットしました。もちろんマーロウが飼っていたという描写は無し。
こういうのを原典で素早く確認できるのですから、電子書籍やっぱりエラいです。

ついでに「ギムレット」は22箇所登場 😉

キャスト&スタッフ

私立探偵フィリップ・マーロウ(Phillip Marlowe)にエリオット・グールド。
ロバート・アルトマン監督とは、『M★A★S★H マッシュ』 (1970)、『ジャックポット』(1974)、『ナッシュビル』(1975)の他、『ザ・プレイヤー』(1992)でカメオ出演。

彼を頼ってきた友人テリー・レノックス(Terry Lennox)にメジャーリーグ投手だったジム・バウトン。
俳優としての活躍はこれ以外にはTVのコメディぐらいのようです。イチローが古畑任三郎に出たようなもんでしょうか?(違うか……)
キネマ旬報データベースではこの役が「ハリー(デイヴィッド・アーキン)」となっていますが、「テリー(ジム・バウトン)」の誤り。

マリブの海岸に住むリッチな作家ロジャー・ウェイドにスターリング・ヘイドン。IMDbによると身長6’5″ (1.96 m)。
この役監督は初め『ボナンザ』のダン・ブロッカー(Dan Blocker)を考えていたようですが、撮影前に死去。映画は彼の思い出に捧げられています。

夫の捜索をマーロウに依頼したウェイドの妻アイリーンにニーナ・ヴァン・パラント。
ロジャーの治療を担当していたドクター・ヴァーリンジャーにヘンリー・ギブソン。当サイト的には『ブルース・ブラザース』のネオナチのボスであり、最近ではドラマ『ボストン・リーガル』の個性的な裁判官。
テリーがらみで大金を追うギャング、マーティ・アウグスティンにマーク・ライデル。

同房の饒舌な男「ソクラテス」にデヴィッド・キャラダイン。クレジットなしですが、「コオロギ」の『燃えよカンフー』の頃ですから、カメオってことでしょうか。

アーノルド・シュワルツェネッガーの SF超人ヘラクレス (字幕スーパー版) [VHS] やはりクレジットなしのカメオ……というより無名時代のアーノルド・シュワルツェネッガーがマーティの用心棒役で登場。ターミネーターより無口でブリーフ一丁のムキムキ姿を披露しています。
これが映画初出演かと思いきや、その前に『SF超人ヘラクレス』(1970)てなものに主役で出てました。

監督ロバート・アルトマン、原作レイモンド・チャンドラー。
脚本リー・ブラケット。SF作家としても知られていますが(エドモンド・ハミルトンの奥様ですね)、脚本家としてはマーロウものの『三つ数えろ』に始まり、『リオ・ブラボー』、『ハタリ!』、『エル・ドラド』、『リオ・ロボ』と、ハワード・ホークス監督作の最後の頃に関わっています。
撮影ヴィルモス・ジグモンド。

音楽ジョン・ウィリアムズ。
ブルージーなテーマ曲は、全編にわたりアレンジされてくりかえし流れます。歌詞ジョニー・マーサー。

 

映画のフィリップ・マーロウ

年代逆順。
タイトルのリンクは、邦題がallcinema、原題がIMDb。

タイトル 原題 年代 監督 マーロウ役
大いなる眠り The Big Sleep 1978 マイケル・ウィナー ロバート・ミッチャム
さらば愛しき女よ Farewell, My Lovely 1975 ディック・リチャーズ ロバート・ミッチャム
ロング・グッドバイ The Long Goodbye 1973 ロバート・アルトマン エリオット・グールド
かわいい女 Marlowe 1969 ポール・ボガート ジェームズ・ガーナー
三つ数えろ The Big Sleep 1946 ハワード・ホークス ハンフリー・ボガート
湖中の女 Lady in the Lake 1946 ロバート・モンゴメリー ロバート・モンゴメリー
ブロンドの殺人者 Murder, My Sweet 1944 エドワード・ドミトリック ディック・パウエル

ロケ地

IMDbでは、

9000 West Sunset Blvd., West Hollywood, California, USA (skyscraper)
High Tower – High Tower Drive, North Hollywood, Los Angeles, California, USA
Hollywood, Los Angeles, California, USA
Lincoln Heights Jail – 401 N. Avenue 19, Lincoln Heights, Los Angeles, California, USA
Lincoln Heights, Los Angeles, California, USA
Los Angeles, California, USA
Malibu Lagoon State Beach – 23200 Pacific Coast Highway, Malibu, California, USA (beachfront house)
Malibu, California, USA
Mexico
North Hollywood, Los Angeles, California, USA
Pasadena, California, USA
Sunset Blvd., Hollywood, Los Angeles, California, USA
Westwood, Los Angeles, California, USA

マーロウの住まい

この映画でいちばん気になるのがここ。
IMDbのリストにある、”High Tower”云々がそれ。
プライベートな物件でしょうからマップでは示しませんが、このアドレスで簡単に見つけることができます。 40年も前の映画ですが、周辺の建物含めて今でも同じようなたたずまいで残っているようですね。
塔の部分は映画でも見られるように下界とつながるエレベーター。
すぐ北側にハリウッド・ボウルWがあります。

※2013/11/30追記
milouさんから画像を提供していただきました。
(いつもありがとうございます♪)
撮影は1979年12月とのこと。
本編には登場していませんが、参考画像としてアップさせていただきます。

スーパーマーケット

メキシコ国境

ティフアナ(Tijuana)近くのここでしょうか?

※2014/08/11追記

milouさんから画像を提供していただきました。
撮影は1996年3月とのことです。

おそらくこの位置にある陸橋で、カメラ東向き。
つまり上記SVのカメラ位置の方向を向いているものと思われます。

マリブの道

犬に行く手を阻まれたところ……と曖昧に書いてしまいますが、要はMALIBU COLONYの入口です。
あれだけ映画ではっきり写っているので、マップでも示してしまいますと……

ウェイドの家

海辺のリッチな家。
映画ではそのままMALIBU COLONYの中にあるような描写ですが、実は少し離れたところです。
番地がはっきり写っているので場所がわかりました。
白い扉が今でもあることも確認できましたが、マップで特定するのは避けることにします。
IMDbのトリビアによると、当時のアルトマン監督の住まいとのこと。

参考までに経年変化含めたこのあたりの空撮画像。

オタトクラン

テリーが自殺したメキシコの村。
綴りは”Otatoclan”ですが、架空の名前と思われます。
ロケ地を探るのは難しいでしょうか。

資料

更新履歴

  • 2014/08/11 「メキシコ国境」にmilouさんの画像を追加

コメント

  1. milou より:

    まずメキシコのオタトクランですが、どこかにOtatoclan と出てましたか?
    原作ではオタトクランだがDVD英語字幕ではOtatitlan バスの車体にはTransportes OMETOCHTLI,TEPOZTLAN YAUTEPEC と書かれている。
    全て実在する地名だが今のところ、特徴的な教会は見つかっていない。

    犬に行く手を阻まれるところは記載のとうりだが実際はSVで少し西で後ろに Union Federal Saving の建物が見える。現在はColdwell Banker Residential Brokerage で
    屋根も左右4枚(?)の壁板も同じに見える。

    どこかで得た情報では2匹の犬(種類?)はSchnauzer と Bowzer らしいが猫の情報は見つからず。なぜか猫の出入り口には El porto del Gato とスペイン語で書いてある。ロサンジェルスだから不思議ではないが、どうせ猫には読めないはずなのに…

    ラストの名台詞(?)でテリーの“You’re a born loser 所詮、お前は負け犬だ”に対しマーロウは”Yeah, I even lost my cat. ああ、だから猫にも逃げられた” と最後にも猫を登場させるのだが字幕では“そうかもしれん”とあっさり無視されてしまった。
    もう1つ字幕の誤訳、in the County of Los Angels ロサンゼルスの(ある)郡をロス郡なんて訳していた。

    ちなみに96年にサンディエゴに何泊かしたとき歩いて国境を越えたいと、あの国境を越えてティファナに入った。どうやら町に映画館がないようで10ドルの安ホテルに1泊しただけだがホテルがアメリカ映画で見るようなロビーに長期貧乏滞在者がたむろするアパートのような感じで入ると一斉にじろじろ見られた。
    ハイアライという変な球技(?)場に入って1時間ほどゲームを見ていたがギャンブルの対象だった。それもふくめ色々ビデオを撮ったが例によって行方不明。

  2. milou より:

    訂正。馴染まないがロサンゼルスはロサンゼルス郡内の都市なので誤訳とは言えない…

  3. inagara より:

    milou さん、コメントありがとうございます。
    映画では地名違いましたか。今全然チェックしている時間がないので、来月頭ぐらいに更新します。
    その時にアルバムにアップしてくださったハリウッド・ボウルの画像も貼らせていただきますね。

    この記事書いた後、原著も電子書籍で買ってみたのですが(今度はkoboで)、”cat”で検索したら確か4箇所しかヒットしませんでした。どこで1匹増えたのか、まだ調べてません。

  4. milou より:

    例によっての余談だが、キネマ旬報社「ロバート・アルトマン」を読むとラストの名台詞は、親友だと思っていたテリーに利用されるのは、エサにありつけるときだけ(利用できるときだけ)そばにいる冒頭の猫につながる“友情”のエピソードとして猫で始まり猫で終わるという意図があったと言っている。
    そうであれば猫の出入口はメキシコとの国境の象徴としてスペイン語にしたのかもしれない。

  5. inagara より:

    milouさん、返信遅れてすみません。やっとサイトに時間割けるようになりました。
    Otatoclanですが、彼の自殺を報じた新聞記事にOTATOCLAN, MEXICOと書かれてありました。
    DVDは持っていなくて手持ちはHD放送の録画だけなのですが、これでかろうじて読めます。DVDだと難しいかもしれません。
    あまり関係ありませんが、映画の調べ物をするときはDVDの方がずっと取り回しが簡単で使えますね。BD-Rもせめてキャプチャーが簡単にとれれば調べ物が楽なのですが。

    あのセリフは録画でも「そうかもしれん」となっていました。
    猫には逃げられたくないので、我が家では猫にLoc8torつけています。
    ふだんはアンモニャイト状態で寝ているだけなので、逃げる心配もなさそうですが。

    猫の扉の話、ディープですね。そういう意味があったとは。もう一回通して見返してみたくなりました。

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