作品メモ
ひとつ前のエントリー『ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』はドイツの文豪ゲーテのお話でしたが、こちらはロシア文学代表選手、ゴーゴリのお話。
実話に基づいたフィクション……どころか、思いきり作り物に振り切ったはっちゃけダークホラー・ファンタジーとなっております。
時に1829年、サンクトペテルブルクの三等書記官ニコライ・ゴーゴリは、作家を目指すものの処女作はさんざんの評判でやけくそ気味。
殺人事件の実況見分を記録中にバタっと失神するのですが、その時に見たビジョンで事件を解決するという思わぬ能力を発揮。
それを著名な捜査官に買われて、ウクライナの小さな村で起きた猟奇連続殺人事件を解決すべく現地へ同行する……というのが冒頭の展開。
その村はディカーニカ村という名前で、つまりは『ディカーニカ近郷夜話』で語られた奇怪な出来事やキャラが、黒騎士による連続殺人という映画オリジナルの設定のもとに、原型をとどめないほど大胆にアレンジされて登場します。
このエントリーでは仮に「ゴーゴリ三部作」としましたが、劇場用映画としては三部作。それぞれが2話構成となっていて、計6話をもってひとつの物語となっています。
ロシアでは順に2017年8月31日、翌年4月5日、8月30日に公開。
日本では1作目が2019年10月の「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」で特集上映。
他2本とあわせて、WOWOWで放送された後、ムービープラスでも放送。DVDソフト化もされています。
さらに、ロシアでは2つのエピソードを追加したテレビドラマ版が、2019年にТВ-3(TV-3)で放映。映画版の続編も制作中と、人気を博している模様。
あくまで個人的な感想ですが、1本目あたりはロシア製のファンタジーものとしてまあまあ合格点……ぐらいに受け止めていましたが、その後どんどん盛り上がっていき、3本目が怒濤の展開となってびっくり仰天。全体としては結構楽しんで見ることができました。
『ナイト・ウォッチ』あたりから始まるロシアVFXファンタジー映画群も、ここにきてだいぶ安定感が出てきたと言いますか、良い感じに仕上がってきたかな~という気がします。
ただ激しい光の点滅や、広角でぐいぐい迫るカメラなど映像表現が過剰な箇所があり、生理的に受け付けられない人もいるかと思いますので、鑑賞の際はご注意を。
監督イゴール・バラノフ(Егор Баранов)。作品は初めて見る……と思ったら、ムービープラスで見た『愛の囚人』もこの監督だったとは……。
音楽ライアン・オッター(Ryan Otter)。Netflixのミニシリーズ『トロツキー』の音楽の人ですね。
『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』(2017) Гоголь. Начало (Gogol. The Beginning)
- 第1章 ディカーニカ村の殺人 Глава первая. Убийства в Диканьке
- 第2章 赤いジャケット Глава вторая. Красная свитка
「赤いジャケット」は、『近郷夜話』の「ソロチンツイの定期市」に出てくる不思議な上衣から。
『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』(2018) Гоголь. Вий (Gogol. Viy)
- 第3章 魔法のかかった土地 Глава третья. Заколдованное место
- 第4章 ヴィー Глава четвёртая. Вий
「魔法のかかった土地」は『近郷夜話』収録タイトル。
「ヴィー」は短編集『ミルゴロド』の収録タイトル。以前記事を書いた映画『妖婆死棺の呪い』(1967)の原作。
『魔界探偵ゴーゴリIII 蘇りし者たちと最後の戦い』(2018) Гоголь. Страшная месть (Gogol. Terrible Revenge)
- 第5章 黒騎士の隠れ家 Глава пятая. Логово Всадника
- 第6章 恐ろしき復讐 Глава шестая. Страшная месть
「恐ろしき復讐」は『近郷夜話』収録タイトル。
第6章は怒濤の展開で結構盛り上がります。
回想部分など、『ゲーム・オブ・スローンズ』っぽいところも感じました。
《Гоголь》(2019 テレビシリーズ版)
ТВ-3(TV-3)で2019年3月~4月に放送。
劇場版を1話ずつばらした上で、劇場版2本目のE3とE4の間(「ヴィイ」の手前)に本筋には影響のない2つのエピソードをE4,E5として挿入、全8話の構成となっています。
- E1 Убийства в Диканьке (2019/3/25)
- E2 Красная свитка (201/3/26)
- E3 Заколдованное место (2019/3/27)
- E4 Мёртвые души (2019/3/28)
- E5 Колодец крови (2019/4/1)
- E6 Вий (2019/4/2)
- E7 Логово Всадника (2019/4/3)
- E8 Страшная месть (2019/4/4)
日本では未放映。
《Гоголь 2》 (2020? 公開予定)
続編《Гоголь 2》も2020年公開を目指して制作中のようですね。
登場人物
役名/俳優名。
名称は字幕版の表記にできるだけ揃えていますが完全ではないかも。
ゴーゴリとその一行
- ニコライ・ゴーゴリ(Николай Гоголь)/アレクセイ・ペトロフ(Александр Петров)
- サンクトペテルブルクの三等書記官。作家志望だが、処女作はさんざんの評判。時々失神しては謎のビジョンを見るが、それが真相解明への手がかりとなったりする変わった能力の持ち主。
- ヤコフ・ペトロヴィッチ・グロー(Яков Петрович Гуро)/オレグ・メンシコフ(Олег Меньшиков)
- ゴーゴリをスカウトした探偵。極めて優秀で、冒頭の殺人事件もたちどころに解決。赤いコートがオサレ。
- ヤキム・ニムチェンコ(Яким Нимченко)/エフゲニー・シティ(Евгений Сытый)
- ゴーゴリの従者。ゴーゴリが生まれる前からゴーゴリ家に仕えていて、いろいろ知っている模様。常に献身的で信頼できる。
村人
- アレクサンダー・ビンフ(Александр Христофорович Бинх)/エフゲニー・スティチキン(Евгений Стычкин)
- 地元の警察署長。やや頑迷なところはあるが、職務を全うしようと奮闘。
- テサク(Тесак)/Артём Сучков
- 署長の部下……というよりは村の駐在みたいな感じでしょうか。設定がよくわからずじまい。マジメだが少し気弱。ダメージがあると飲んだくれてしまう。
- ボンガート(Леопольд Леопольдович Бомгарт)/ヤン・ツァプニク(Ян Цапник)
- 村の医者(レオポルド・レオポルドヴィッチ・ボムガルト)。いつも佐渡先生のように飲んだくれている。メスを握れないが、それには理由が……
- ヴァクーラ(Вакула)/Сергей Бадюк
- 村の鍛冶屋。寡黙な大男。とっつきは悪いが、一本芯が通っていて信頼できるかも……
モデルは「降誕祭の前夜」の鍛冶屋? 名前は同じですが、キャラは全然違うような……。 - ヴァシリナ(Василина)/マルタ・ティモフェーヴァ(Марта Тимофеева)
- ヴァクラの娘。やたら可愛くてマトリョーシカの一番内側にいそうな感じ(笑)。いつも人形を大事にしているが、何か秘密が?……
- クリスチーナ(Христина)/Светлана Киреева
- 宿屋と酒場を切り盛りする村の老婆。フリスチーナ。
- アレクセイ・ダニシェフスキー(Алексей Данишевский)/アルチョム・トカチェンコ(Артём Ткаченко)
- 郊外の館に住む伯爵。リーザの夫。
- エリザベータ・ダニシェフスカヤ(Елизавета Данишевская)/タイーシャ・ビルコヴァ(Таисия Вилкова)
- 愛称リザ(Лиза)。ダニシェフスキー伯爵の妻。ゴーゴリに気がありそう……
その他
- オクサーナ(Оксана)/ユリア・フランツ(Юлия Франц)
- ゴーゴリのビジョンに現れる謎の美女。どうやら水に関係しているようだが……
モデルは、名前が「降誕祭の前夜」の「オクサナ」からで、キャラは「五月の夜、または水死女」の令嬢(パンノチカ)から? - 黒騎士(Тёмный Всадник)/Валерий Рыбин
- 連続殺人事件の犯人と目されるが、何者かは謎。
モデルは「スリーピー・ホロー」(汗)? - 鼻のない男/Анвар Либабов
- ゴーゴリの悪夢に出てくる謎の人物。包帯で鼻のあたりを隠している。広角カメラでぐーっと寄ってくるので、ちょっと怖い。
モデルは『近郷夜話』にはいなさそうですが、ゴーゴリと言ったら「鼻」なので、そこから来たキャラかも。 - ホマー・ブルート(Хома Брут)/アレクセイ・ヴェルトコフ(Алексей Вертков)
- あのホマーが第4話で登場。「ヴィー」の話ですからね 🙂 果たして彼の運命は??
- Александр Сергеевич Пушкин/Павел Деревянко
- プーシキンもちらりと登場♪
第6話(歴史パート)
- ダニーラ(Данила)/Олег Гаянов
- 第6話で登場するコサック村のリーダー(アタマーン Атаман)。
モデルは「恐ろしき復讐」のダニーロ・ブルリバーシュ(Данило Бурульбаш)? - マリヤ(Мария)/ダーナ・アビゾヴァ(Дана Абызова)
- 第6話で登場するダニーラの娘。妹とともに父親の敵討ちに向かう。
- マゾフシェのカジミール(Казимир Мазовецкий)/
- 第6話で登場するポーランド軍の指揮官。魔力を用いて、ダニーラたちコザック軍を返り討ちにする。
ロケ地
IMDbでは記載がありません。
大半がセットとVFX。
リアルなロケ地はわずかでしょうか。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
敵の砦
『III』の第6話で、美しき姉妹が復讐に訪れるところ。
- Google Maps(SV)
- 57.710871, 27.860971
資料
更新履歴
- 2020/03/31 新規アップ
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