真夜中のトム・ソーヤーたち
目次
作品メモ
ひとつ前のエントリー、『幻の湖』でデビューした南条玲子さんの出演作。
原田眞人監督が、幼なじみとの再会に心が揺れ動くヤクザの姿を叙情的に描きます。
英題”Heartbreak Yakuza”。
原田監督のことは『さらば映画の友よ インディアンサマー』で初めて知りました。
独特の映像表現もさることながら、日本を飛び出しロサンゼルスで映画の勉強をされていたというキャリアがまたとても新鮮で、以来気になる監督さんのひとりに。
この『さらば愛しき人よ』も当時映画館へのこのこ見に行きましたが、あちこちに『トム・ソーヤーの冒険』になぞらえた仕掛けがほどこされ、郷愁たっぷりの甘酸っぱいテイスト、気恥ずかしいぐらいのセリフ回しがあるかと思えば、クールなアクションシーンも展開し、個人的には十分堪能できました。
情緒纏綿たるハードボイルドという、ある意味矛盾した内容とも言えますが、そのあたりの雰囲気になじめるかどうかで評価が分れるかもしれません。
残念ながら、ソフトはVHSのみでDVDの発売は無し。ケーブルテレビなどでも見た記憶がありません。
良い画質で見たいので、DVDかBlu-ray化、ぜひお願いします。
※19/3/25追記
コメント欄でBill McCrearyさんから情報を寄せていただきました(2019年3月24日11:01)。
北米盤DVDが出ていました。他にファン用のBOXで出ていたようですが、詳細不明。
※19/4/15追記
「ケーブルテレビなどでも見た記憶がありません」とか書いちゃいましたが、チャンネルnecoの録画を持っていました……orz
放送は2012年1月2日。おそらくその前後で何度か放送されたと思います。
キャスト
主役は郷ひろみさん。モンモン背負ったヤの人早坂修史を熱演、激しいアクションシーンや大胆なラブシーンも様になっていて、俳優としての魅力をしっかり放っていました。
その愛人のホステス由美子に南条玲子さん。『幻の湖』に比べると、だいぶ演技が自然になっているような……。
幼なじみのひとみに石原真理子さん。『ふぞろいの林檎たち』の数年後でしょうか。はかなげな美しさが印象に残ります。
修史の弟分福島哲夫に木村一八さん。
バー、Stormfield(ストームフィールド)のマスターに内藤陳さん。
宿敵木内義政に佐藤浩市さん。キレちゃった感じがなかなか面白く、『ザ・マジックアワー』を見た際、例のペロペロなめるシーンでこの映画のこの役を思い出しちゃいました。
その他ヤの世界の登場人物は、安岡力也さん、高品格さん、柄本明さん、笹野高史さん、嶋大輔さんとくせ者揃い。
中でも大地康雄さんが良い味出していました。
カメオっぽい出演者としては……
0:28 警官役で内田裕也さん。これはまるきり『十階のモスキート』♪
0:39 ラジオで思い出話を語る大竹まことさん。
0:40 ディスコの支配人に原田芳雄さん。
などなど、個性豊かな面々がちらりと登場するだけで楽しめます。
音楽
音楽は中西俊博さん。
オリジナルの他、トラディショナルを多用して、ノスタルジックといいますか古き良きアメリカ的な雰囲気を醸し出していました。
ビューティフル・ランデブー
中西さんオリジナルのテーマ曲。
エンドタイトルで流れる他、アレンジを変えてラブシーンなど随所で流れていました。
ひたすら甘美にして感傷的。ハートブレイクなヤの人の世界をうまく表現していたと思います(ピアノはフェビアン・レザ・パネ)。
映画本編はなかなか見る機会に恵まれないと思いますので、せめてテーマ曲だけでもどうぞ。
バーバラ・アレン
スコットランド民謡。
オープニングタイトルの曲。
他に、0:51と1:42にハーモニカバージョン、1:00にピアノバージョン、1:11にストリングスバージョン等とあちこちで流れます。
中西さんのアルバムでは、『大草原の小さな家』(1986)に収録。
今ならベスト盤『オーガニック・スタイル』でも入手可能。
トゥ・ラ・ルー・ラ・ルー・ラル
アイルランドの子守歌。
0:23頃、ひとみに連れられて修史がストームフィールドにやってくる場面。
1:23頃、やはりストームフィールドの場面でハーモニカバージョンが流れた後、ストリングスに引き継がれます。
悲し過ぎし日も
Has Sorrow Thy Young Days Shaded?
アイルランドの唄。
0:37頃、内藤陳さんにクギを刺される場面から、大竹まことさんのラジオ出演場面にかけて流れます。
トラストフォール
南条玲子さん演じる由美子の得意技?
側にいる男性が支えてくれることを前提に、まっすぐ後ろに倒れていきます。
これを見たのは、この映画が最初だったでしょうか。
こういうのをトラストフォール(trust fall)と言うようですが、昔からある表現なのか不明。
原田監督のことだから、アメリカで見聞きしたネタなのかと勝手に想像しています。
女性が仰向けで後ろに倒れていく場面となると、SF映画で見た印象が強いかも。
倒れていくと言いますか、高所から仰向けで落ちていくイメージですが、『エイリアン3』とか『ゴースト・イン・ザ・シェル』(アニメも実写も)とか『マトリックス』とか。
高所からそんな姿勢で落ちていくのはリアルでは無理ですから、SF映画ばかりって当たり前ですね……
ロケ地
例によって、ウェブマップを頼りに画面とにらめっこでチェックしています。
間違えていたらごめんなさい。誤りのご指摘大歓迎です。
鉄橋と河原
OPの他、途中とエンディングにも登場する想い出の河原。
- Google Maps(SV)
- 36.083941,139.114380
川沿いの団地
0:04
東京都江戸川区にあるこちら↓
なぎさニュータウン
車を停めていたのはここ
- Google Maps(SV)
- 35.6456984,139.881673
- 地理院地図・電子国土Web(1984-87)
川は標識にある通り旧江戸川で、その河口近く。
ホテル
0:17
京葉線千葉みなと駅近くのこちら↓
ホテル・ニュー・ツカモト
Stormfield
湾岸エリアにある内藤陳さんのバー。
調査中。
0:35頃の埋め立て地のショットから粘ればわかるかも。
「ストームフィールド」はマーク・トウェインが晩年住んでいた邸宅の名前(コネチカット州)。
貨物線
0:51
「バーバラ・アレン」のハーモニカバージョンが流れる場面。
おそらく汐留。現在は跡形もありません。
- Google Maps
- 地理院地図・電子国土Web(1984-87) ……修史がたたずんでいたあたり
ケーブルカーが見える通り
1:29
ケーブルカーは箱根登山鉄道。
具体的には公園下駅すぐ側のこちら↓
- Google Maps(SV)
- 35.249917,139.045505
ラスト
ラスト近く車を停めていたガード下は、前述荒川橋梁、北側(左岸)のここ↓
- Google Maps(SV)
- 36.0846406,139.1139435
ひとみのセリフは、『トム・ソーヤーの冒険』の最後の方、トムとベッキーが洞窟で迷子になってしまった時のベッキーのセリフから。
あれ、どうして眠ることできたのかな
どうせなら 目が覚めなければ良かったのに
嘘よ 嘘だってば、そんな顔しないで 修ちゃん
私今ね とてもきれいな田舎の夢見てて
私たちこれからそこへ行くの
…… 『さらば愛しき人よ』“Oh, how could I sleep!
I wish I never, never had waked!
No! No, I don’t, Tom! Don’t look so! I won’t say it again.
I’ve seen such a beautiful country in my dream.
I reckon we are going there.”
…… Mark Twain “The Adventures of Tom Sawyer”
資料
更新履歴
- 2019/04/15 「作品メモ」に放送情報追記
- 2019/03/25 「作品メモ」にDVD情報追記
- 2019/03/18 新規アップ
コメント
どうも、数日前貴サイトが閲覧できなかった際は、う、突然更新停止・削除かとものすごくあせりました。ただ「403」でしたので、たぶん障害ではないかなとは思いましたが(404ならやばい?)、無事復活していただいて何よりです。貴サイトを参考にしてこれからも世界中でロケ地を確認するつもりですので、削除されたら痛すぎます。過去、付き合いのあったいくつかのサイトさんが、完全削除されて大変残念な思いをしたことが少なくありません。
>残念ながら、ソフトはVHSのみでDVDの発売は無し。ケーブルテレビなどでも見た記憶がありません。
良い画質で見たいので、DVDかBlu-ray化、ぜひお願いします。
こういうものが発売はされているみたいですね。
https://www.amazon.co.jp/dp/B002LFPBF6
当方も未入手、未見ですので、画質その他はわかりませんが。またユーザーレビューに
>日本版のDVDは、郷ひろみのファン用のBOXのみの販売として
ともあります。なんか出演者に、トラブルメーカーっぽい人たちが散見されますね…。
実はこの記事を最初に見たとき、ああ、この映画ねと勘違いしてしまいました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NYQ9GBM/ref=pd_sbs_74_2/358-2969655-2818900?_encoding=UTF8&pd_rd_i=B07NYQ9GBM&pd_rd_r=fbfa1aba-4dd7-11e9-8b8f-f76b96b21e7a&pd_rd_w=1gkYK&pd_rd_wg=2×278&pf_rd_p=ad2ea29d-ea11-483c-9db2-6b5875bb9b73&pf_rd_r=5FDHPR5H1M0JFNN7J97C&psc=1&refRID=5FDHPR5H1M0JFNN7J97C
こちらのほうは、「女よ」でしたね(苦笑)。
Bill McCrearyさん、コメントありがとうございます。
ご心配おかけしてすみません。
サイトに不具合が出て修正している内にドツボにはまり、最後は全部削除してバックアップから復元しようとしたら、レンタルサーバーの会社と連絡が必要になり、そのレスポンスが遅くて……と今回は結構時間をとってしまいました。たぶん途中からエラーは404になっていたかと思います。やばいです(汗)。
バックアップはいつもとってあるので、記事や皆さまのコメントがこの世から消えてしまうことはまずないはずなのですが、復元に手間取ると焦りますね……
DVD情報ありがとうございます。
記事のトップに置いておいた画像がこれでした。北米盤はあったということですね(自分でトップに揚げておいて記事には反映していませんでした……)。
ファン向けのBOXというのも気になりますが、ファン的にはこの映画どうだったでしょうね。
「さらば愛しき○○」は似たようなタイトルがいろいろありそうですね。
ロバート・ミッチャムのはすでにエントリー書いたつもりでしたが、自分のサイトを検索したらありませんでした。
おかしな話ですが、このサイトを自分の脳の外部記憶装置として使っているので、サイトが無いときとても不便でした(笑)